ジカウイルス感染症:ジカ熱について
今日のFMレキオはジカウイルス感染症について話をしました。外科医の私にとっては専門外ですが、今年注意して欲しい感染症ですので注意喚起の意味でも放送しました。
ジカウイルスなんて聞き慣れない名前です。このウイルスは1947年にアフリカのウガンダのアカゲザルから発見されてたため、その猿の住む「ジカの森」より名付けられました。蚊を媒介する感染症として1952年にウガンダとタンザニアで人への感染が確認され、その後徐々にアフリカ、アジア、南米へと広がっています。
特に2015年よりブラジルを中心に大流行が発生し、妊娠中に感染した場合に、中枢神経の障害をともなる小頭症の児が多数生まれたことで重要となっています。2016年の2月1日にWHOは国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言しました。
これを受けて日本でも2月15日より「4類感染症」に指定し、診断した医師は保健所に届ける義務が必要となりました。これにより早めの対策と情報が共有される態勢を取れるようになりました。
ジカウイルスに対するワクチンはありませんし、まだ世界中の多くの方はこれに感染したことはありませんので、抗体を持っていません。特に今年は最流行地のブラジルでオリンピックがあります。日本のみならず世界中から人や物が移動するはずです。世界中での大流行が危惧されているのです。
以前話題となったデング熱と感染の症状はあまり変わりません。感染しても60〜80%の方は、殆ど症状が出ません。ジカウイルスは主に蚊を介して感染するのですが、性行為を介しても感染しますし、輸血によっても起こります。感染後5〜10日して、軽度の発熱、結膜充血、筋肉痛、関節痛、頭痛、斑点状丘疹が起こりますが、殆どは4〜7日で軽快します。
この感染が問題となっているのは、全身特に四肢の麻痺を起こすギラン・バレー症候群と因果関係があると考えられていて、この場合は少ないですが死亡者も出てしまいます。
最も危惧されているのは、妊婦さんへの感染です。私達沖縄は1965年に風疹が大流行し、その時に感染した妊婦さんより、目や聴力の障害をともなった先天性風疹症候群の子供が406名生まれたことを経験しました。当時のWHOも復帰前の沖縄の流行を調査してその後の公衆衛生に参考にしています。
ブラジルでの調査では、昨年末から今年の半年間で、小頭症の子供の出生が過去5年間の10倍に当たる2401人だった報告しています。これは明らかに何らかの原因が存在すると思われ、疫学調査などで妊婦中のジカウイルス感染が疑われたのです。もちろんジカウイルス感染のならなくても小頭症は発生します。
世界がクローバル化する中で、地方病と考えられた疾患も世界中で大流行することもあるはずです。
今年はブラジルのオリンピックがあります。感染地域への渡航も増えるはずですし、日本に住む蚊もウイルスの媒介となります。
特にこれから妊娠を希望される方々は今後、ジカウイルス感染症に関する情報には敏感になって欲しいと希望致します。
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