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医療

2019年8月14日 (水)

卵の賞味期限は?

夏場の食中毒の御三家にサルモネラ菌があります。サルモネラ菌は非常に増殖が速いのが特徴で、そのために食べてから食中毒の症状が出るのが早いのが特徴です。6時間から半日で下痢、嘔吐、発熱などの症状がでます。

 サルモネラ菌は自然界の何処にでもいる菌で、人(感染しても症状が出ない人もいます)、牛、豚、鶏などの腸内や、河川・下水などにも存在します。保菌している犬、猫、亀などのペットやネズミ、ハエ、コギブリなどからの感染もあります。そのことから外出したり、ペットなどを触った後は手洗いをする習慣をつけて下さい。

今日のFM「いきいきタイム」は食中毒の話題でしたのでブログもサルモネラ菌に関連して書いてみます。サルモネラ菌による食中毒のルートは主に牛・豚・鶏などの食肉と卵に付着するケースと感染者が調理する過程で混入する二次汚染食品による感染があります。

特に夏場のサルモネラの食中毒は卵やマヨネーズなどの卵製品によるものが多くなります

食中毒を予防や治療が私達医療者に対して求められるのですが、ときどき「賞味期限切れているけど大丈夫ですよね」と質問される患者も中にはいらっしゃいます・・・・医療者としての答えは「止めた方がいいのでは」となるのです。

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・・・上記のことを理解した上で、これからは自己責任で読んで下さいね(笑)・・・

米国の事情は余り知りませんが、ヨーロッパ等にての卵の賞味期限は日本より長いのが殆どです。 日本では食品衛生法により親鳥の管理から鶏卵の流通過程などで世界一と言えるほど衛生管理は徹底されていると考えます・・・では何故短い?

それは日本では生で卵を食べる習慣があるからです。鶏卵についてはヨーロッパ含めサルモネラの食中毒などを考え「生」で食べることを前提としていません。

日本での賞味期限の表示は「安心して生食出来る期間」のことなのです。ですので、ヨーロッパなどより賞味期限が短いのです。逆に考えれば「火を通して加熱処理すれば大丈夫な期間がある」ということにもなるのです。

考えてみても、余程親鳥が瀕死の感染をしていなければ、卵は無菌状態です。卵を産む過程で殻に自然界にいるサルモネラ菌が付着する可能性はあるのかも知れません。サルモネラ菌は熱には弱いのですが、乾燥状態や保存(特に常温保存)には強いのです。

状態のよい卵の見分け方は私より皆様方の方がよくご存じと思います。賞味期限を僅かに越えた状態なら、生で食べるのは遠慮して、殻を割って綺麗な状態の卵なら、70度以上の温度で1分以上しっかりと加熱処理するのであれば、他の食中毒は分かりませんが、サルモネラ菌の食中毒は防げると考えます。

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・・・やはり今日の話題は知識として止めて下さいね・・・

生卵(卵かけご飯が多い)が原因によるサルモネラ菌の食中毒で子供さんが亡くなる痛ましい食中毒もありますので、賞味期限内に正しく保存管理した卵を食べて下さいね。

2019年8月 7日 (水)

腸管出血性大腸菌の特徴と抗生剤の使い方

今日と来週の2回に分けてFMレキオ・FM21の「いきいきタイム」では食中毒について説明をしました。ブログには出血性大腸菌O-157(オーイチゴーナナ)を例にして抗生剤の使い方の要点や大腸菌が全て悪い悪玉菌ではないことを説明したいと思います。

自然界には大腸菌が何処にでもいます。私達の体にも周りの家畜やベットの腸の中にも沢山います。多くの大腸菌は普通は何も症状を起こすことはありません。この大腸菌のなかで少ないのですが人に下痢などの消化器症状を起こす菌がいて、これを病原性大腸菌と呼んでいます。

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更にこの病原性大腸菌の中には毒素(ベロ毒素)を産生して、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS:毒素によって急激な腎機能・全身状態の悪化をもたらす)を起こる菌も中には存在します。代表的なものは「腸管出血性大腸菌O-157」ですが、それ以外に「O-26」「O-0111」などもいます。

20190806-82112 厄介なことに、腸管出血性大腸菌は牛や家畜の便から時々見つかるのですが、家畜で症状がでなくて、普通に健康な家畜の腸にいることになります。 そのため人が牛の生を食べて0-157に感染するケースが後を絶ちませんでした(左の図は厚生労働省のデーターです)。 平成28年には千葉県と東京都の老人福祉施設における「キュウリのゆかり和え」による集団食中毒が起こったために死亡数が増えています。

現在の医療において感染症対策は大きな柱ですし、細菌に対しては有効な抗生剤があります。細胞内で産生するベロ毒素という毒素を持っている腸管出血性大腸も抗生剤によって菌を死滅させることも可能です。しかし、これまでの経験にて抗生剤がよく効いた方に重症が多く出たことも分かるようになりました

・・・・ではどうして?

強力な抗生剤を投与すると、一気にベロ毒素を持った菌が死滅すると同時にベロ毒素が多量に放出されます。菌は死んでも、この多量のベロ毒素によって人体は損傷をうけ、急激な腎不全やショック症状が起きてしまったのです。 ですので、これを参考に今では、O-157などの食中毒の場合は、抗生剤は強力なものは使用せずに、この大腸菌が増殖しない程度(静菌)の抗生剤を投与して、点滴などで脱水を防ぎ、体力の回復を図るようにしているのです。

追記:(大腸菌なのに大腸菌と呼ばれることのない菌がいます)・・・大腸菌は自然界の様々の場所にいます。全部が悪いわけではないため、病原性がある大腸菌を区別して病原性大腸菌と呼んでいます。しかし皆様方の多くの方も知っている「赤痢菌」は実は大腸菌の仲間です。

終戦後、赤痢の患者数は10万人以上で2万人近い死亡者も出た時期が暫く続いていました。そのため「赤痢菌」という単独の三類感染症として対策がとられていましたので、赤痢菌はすでに独立して「病名」となって分類されていたのです。 今日の話からすると「赤痢菌」も病原性大腸菌の範疇に入るのでしょうね。

2019年7月24日 (水)

戦後増え続ける尿管結石

今日のFM「いきいきタイム」は尿管結石について話をしました。
尿管結石は生活習慣(特に食事の欧米化)との関連も深く、日本においての罹患率は毎年上昇しています。戦後日本人の尿管結石はおおよそ2倍になっています(無症状を含めて日本人に10人に1人は尿管結石を持っています)。特に夏場は脱水となることもあり尿管結石の発作が増える時期にもなり注意が必要です。

<尿管結石とは>

私達の尿をつくり、体外に排出する組織は,泌尿器系と呼ばれ、腎臓、尿管、膀胱、尿道から構成されます。

Th_・尿を実際に作るのは左右にある腎臓で、腎臓以外の尿管、膀胱、尿道は尿を体外に排泄する通路ですので、ひっくるめて尿路と呼んでいます。この尿路に石ができたのを尿路結石と呼んでいます。

・尿路結石が出来る場所により、腎臓・尿道など上部尿管結石、膀胱や尿道などの下部尿路結石に分ける場合があります。 尿路結石は95%は上部尿管結石で殆どを占め、膀胱や尿道に出来る場合は前立腺肥大や尿道の狭窄など特殊な場合に出来、症状も強くありません。

<尿管結石の原因>

・私達の尿は腎臓で血液を濾過して造られます。尿路結石の原因として、尿の成分が結石(結晶)を造りやすい状態になっていることが上げられます。 

・尿に溶ける成分が必要以上に高くなると、石の元となる、微小な結晶が出来ます。脱水になると尿は濃縮しますので、結晶が出来やすくなります。これが夏場に尿管結石が起きやすい原因となります。

・尿管結石の成分はシュウ酸カルシウムが圧倒的に多く、その他リン酸カルシウム、尿酸などがあります。 男性ホルモンは結石の成分のシュウ酸を増やす作用があり、女性ホルモンは結石を出来にくくするクエン酸の増やす作用があります。これが中年男性に結石が多い理由となります(尿管結石の男女比は2.5:1で男性優位)。また閉経後の女性は男性と同じ頻度で尿管結石が起こりやすくなります。

動物性タンパクは尿中のカルシウムの増加、尿の酸性化、尿中尿酸の増加を来します。

・食事を分解吸収する腸の中の過程でシュウ酸はカルシウムと結合し便として体外に排出されます。しかし脂肪分の多い食べ物は消化管の中でカルシウムと結合しやすくなり、結果としてシュウ酸の吸収を増加させ、尿中のシュウ酸を増やして尿管結石の増加の原因となります。

塩分や糖分過剰も尿中のカルシウム濃度を増やし尿管結石を発生させます。ビタミンDやクエン酸の過剰摂取も原因となります。

<尿管結石の症状>                                       Th__2

結石があっても全く症状のない方や検診などでしか分からないような血尿もあります。典型的な症状は、疝痛発作(突然起こる間欠的な激痛)と血尿があります。

腎蔵に出来た結石が尿管の中に落ちると、細い尿管を結石が通過する時に、尿管のれん縮を起こして、間欠的(痛みが強くなったり弱くなっリ)激痛が生じます。痛みは場所によっても違いますが、多くは腰背部から脇腹にかけて激痛が起こり、下腹部へも痛みを生じる放散痛が特徴です。

夜間から早朝に起こることも多く、初めての場合は自分の体に一体何が起こったのかと恐怖心も伴う程の痛みもあります(初めての場合には特に解離性動脈瘤など致死的な病気の場合もありますので、救急要請をして受診して下さい)。ただし再発することが多い病気で、何度か経験された方は冷静に対応出来ると思います。

稀に石が引っ掛かって、腎盂腎炎を併発して高熱がでたり、腎機能の悪化を招く場合もあります。

<尿管結石の治療>

Th_3d23723ea8d2ea4728e3f1819fd3acc4_m ・一般的に尿管結石の大きさが4mm(〜8mm)以下なら自然に排石される可能性が高いため、薬による治療。それ以上なら、体外衝撃波砕石術(ESWL)、経尿道的結石砕石術(TUL)、経皮的腎・尿管砕石術(PNL)や開腹手術などがあります。(詳しい内容については省略します)

<再発予防>

・尿管結石は再発率が高く、生活習慣を適正にしなければ80〜90%再発します。各自の尿管結石の原因を細かく分けて再発予防を指導します。上記の原因を考えながら対策をとって下さい。

2019年7月10日 (水)

熱中症対策で何故クーラーを使うのでしょう?

今日のFM放送は熱中症について話をしました。これまで熱中症に関しては病態や注意点については何度か書いています。去年のブログでは、人間の体は燃焼機関である事を書きました(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-2a25.html )                                                                       
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私達は御飯を食べてエネルギーに変えて生きています。エネルギーを燃やして生きているわけですから、バイオ燃料の機械と同じで、熱を放出しています。

私達人間は恒温動物で、体温が35度から42度程度の範囲でしか生きれません。外気温が低い場合は、ブルブルと震えて熱を産生して体温の維持を図りますが、これ以上になると低体温症になり、機能を維持出来なくなり死んでしまいます。

今度は逆に体温が上昇し過ぎると、血管を広げ、汗をかいて、その気化熱で体温を調整します。

私達が生きてゆく以上は、体でカロリーを消費し、発熱しています。外気温が30度を超える場合には、汗をかくことで体温を下げるのですが、湿度が高い場合には汗が蒸発(気化)しづらく、上手く体温を下げることが出来ません。

・・・さて、ここでタイトルに書いたことを説明します。

人間の体温は36〜37度前後と思いますが、気温が30度を超えると、凄く暑く感じます。 考えてみたら、体温より低いのでひんやりと感じるのでは・・・と思いませんか? でも実際は暑いですね。 それは人間が常に熱を発散しているからなのです。 気温が30度なのでは十分に体を冷やしてくれないと感じるし、体温以上の気温になると、汗を多量にかいて気化熱を利用するしか手立てはなくなります。

・・・・熱中症による死亡者や重傷者は住宅内で起こり、それもクーラーなどを使用していないお年寄りに起こることが多いことがニュースなどでも報道されています。

Photo_20190709190801 クーラーが苦手という方も多いでしょう。しかし30度を超えるような密封した部屋で窓を開けずに、扇風機も使用せず、クーラーを使わないと、体温がこもる一方になります。 水分をとったように思っても汗が十分にでなかったり、日本のように湿度が高いと蒸発せずに熱がこもります。それで自宅で熱中症となるお年寄りが多いのです。

自分の命を守るためにも、寝る前に部屋の環境を十分に考えて下さるようお願い致します。 クーラーの苦手な方でも、蒸し暑い時には、クーラーの温度を26〜28度ぐらいに高めにしても良いですので、是非使って下さい。 それと水分補給もですね。

何故、クーラーを使用しないといけないかを理解して、上手くご利用下さい(決して私はクーラー会社の回し者ではありません😃)。

2019年7月 3日 (水)

多量飲酒習慣によるビタミンB1欠乏症

今週のFM放送はビタミン欠乏症による症状や対策について説明しました。

ブログには先週に引き続き、ビタミンB1欠乏について話をします。先週は日本人がただでさえ米を中心とした食生活の中で脱穀技術が進んだために、栄養分豊富な胚芽や糠の部分を捨ててしまい、ビタミンB1欠乏症(脚気)が国民病ともなったことを書きました。

現在では余程の偏食がなければ、脚気になることはありませんが、ビタミンB群はビタミンCと同様に水溶性ビタミンで過剰に摂っても尿に出てしまうだけですが、体内で多くを保存出来ない為に食事からビタミンを摂らないとするに枯渇してしまいます。もちろん通常の食事をしていれば心配入りません。

ビタミンB1は糖分の代謝や神経の働きに作用するビタミンで欠乏すると脚気(全身の倦怠感・食欲不振、足のしびれ、動機・息切れ、麻痺症状、心不全など)症状を引き起こします。

現在では脚気は少なくなりましたが、アルコール多量飲酒習慣のある方に脚気の症状が出ることがあり、特にアルコール依存者に起こるウェルニッケ脳症(眼球運動障害、運動失調、意識混濁)は有名でこれも多量飲酒によるビタミンB1欠乏症の症状です。

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ちょっと難しいでしょうが図にしてみました。上の図でアルコールが分解する過程やエネルギーが産生する箇所で「ビタミンB1」が必要な所があることを理解出来たら嬉しいです・・・その箇所でビタミンB1が消費されなくなってゆきます。

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多量飲酒の習慣は生活や家庭の崩壊にも繋がる可能性もありますし、上の図のように飲酒により細胞内での変化も起こってきますので、脚気に似た症状や脳症も起こることもあります。年齢以上に老けて見える場合もあります。

お酒は楽しむ程度でいきましょう🍺

<追記>

多量飲酒者でなくとも、ブドウ糖を代謝するためにビタミンB1が必要となりますので、特に運動選手や肉体労働者などで多量にエネルギーを消費する方や、病院などで高カロリー輸液をする場合にはビタミンB1の補充が必要となります。

飲酒が多い方やエネルギーを消費することが多いスポーツマンや労働者は、ビタミンB1が多く含まれる玄米・豚肉・ウナギ・枝豆などを意識して摂ってみては如何でしょう。サプリメントもこの場合には良いかもしれません。夏バテ予防にもなりますしね・・・毎日お酒を飲む貴方😊・・・ビタミンも気にかけて下さいね✌️

 

2019年6月26日 (水)

江戸わずらい(ビタミンB1欠乏症=脚気)

今日のFMレキオはこれまでにも何度か放送したビタミンについての第1弾と言うことで話をしました。

今回はビタミンB1欠乏症の脚気について説明します。脚気は今では殆ど診られなくなりましたが、ビタミンB1が欠乏すると、手足のしびれ、動悸、むくみ、食欲不振が現れ、進行すると歩行困難となり最終的には心不全で死亡します

今では誰もが知っていて、毎日のように見かけるビタミンについてはその存在が発見されてまだ100年しか経ちません。 昔は脚気は日本人にとって結核と共に不治の病と言われていました。 当時ビタミンについては誰も知りませんでしたので、脚気による死亡者が莫大でも、その原因は不明のままでした。 有史以来あった病気でしょうが、皮肉にも脱穀技術が進んだ江戸時代以降急速に増え国民病とまで言われました。
江戸時代、食生活は副食も殆どないのに、ビタミンを始め色々な栄養素を含んでいた玄米の糠や胚芽の部分を取り除き、白米にすることが出来る様になったため悲劇(脚気の蔓延)が起こったのです。

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江戸時代の一般的な食事:江戸の初期は1日2食で、中期からは1日3食へと変化しますが、食事の内容は粗食で、一汁一菜でたまに汁に鰯(イワシ)が入る程度で、主食の米に偏った食事となっていました。現代のような栄養素のことなど考える訳でもありませんので、炭水化物偏重でその他の蛋白・脂質・ビタミン・ミネラルは不足している状態でした。それでも玄米や雑穀米のためその中のビタミン等にて救われていました。

江戸時代中期になると脱穀の技術が進んでくるも、当初は一般人ではなく、やはり位の高い人しか食べられませんでした。地方ではまだお殿様でも玄米(胚芽米)でしたし、副食はそれ程多くはありません。 

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江戸幕府による「江戸上り」が行われると、地方から大名や武士なども江戸の屋敷で生活するようになります。 江戸では、これまで食べたことはない「白米」を主食とすることも多くなります。 それでも副食はタクアンなど質素なものです。 すると次第にビタミンB1が不足しだして「足元が感覚なくなり、食欲低下、全身倦怠感」などどうも体の不調が現れるのです。勤務を終え地方に戻り元の食事を摂ると体調が良くなり、また江戸にゆくと体調が悪くなる・・・ですので当時は「江戸わずらい」と呼ばれるようになったとのこと・・・「恋わずらい」は聞いたことはありますが「江戸わずらい」は聞いたことがありませんでした・・・どうもこれは脚気による症状だったのです。

ビタミンについても知らない時期に白米食が次第に全国に普及し、江戸後期から大正にかけて「脚気」は急速に増大し国民病とも言われるようになります。脚気は明治から大正にかけて日本人の死因の上位を占め、特に日露戦争では戦闘による死者の10倍以上の兵士を脚気で失います

脚気は昔のことと思われるかも知れませんが、インスタント食品など非常に偏った食生活の学生さんなどで脚気になる方もいますので、今でも気をつけなければならないのです。

 

 

2019年6月12日 (水)

腎蔵の働き

今日のFM放送は「腎臓の働きや尿検査の異常」ついて話をしました。このブログでは腎蔵の機能について簡単に説明したいと思います。

腎蔵は後腹膜というお腹の袋(腹膜)より背中側にある左右一対の、そら豆型をした握りこぶし程の大きさの組織です。

腎蔵についてはよく知っている名前だけど具体的には何をする所なのでしょうか?・・・オシッコを作る所、悪くなったら透析になる程度は判っていると思います・・・皆様方(私の😰)も知識のまとめとして簡単に書いてみたいと思います。

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腎蔵には大きく次の5つの役割があります ①体の老廃物を処理する ②血圧を調整する ③赤血球を作る調整役 ④体液量・PH(ペーハー)・イオン濃度を調整する ⑤骨を強くする・・・多くの方は①は思いついてもその他は?ではないでしょうか。今日のブログはこれで十分ですが、少しだけ追記します😊

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①老廃物を処理する

腎臓は 左右あわせても200〜300g程度しかありません。しかしこの小さな組織に血液の1/4(25%)が流入します。 私達が生きて行く過程で分解されたり、余分に余った物質が血液の中に貯まってしまいます。 この血液の中の不要な物質を濾過して、必要なものは血液に戻して、不要なものはオシッコとして体外に排出する役目が腎臓がになっていることより、この小さな血液濾過装置の中を体の1/4の量が順繰り順繰り回っているのです。 ですから腎臓の中で血液は99%が戻され、1%(おおよそ1.5リットル)がオシッコとして処理されているのです。

②血圧を調整する

②−1:腎蔵には水分と塩分の排出量を調整することで、血管の中の水分の量と塩分の量(浸透圧)を変化させ、血圧を調整する役割があります。血圧が高い場合には、水分と塩分をオシッコに多く出すことで血圧を下げます。逆に血圧が低い場合には水分と塩分の排出量を減らして、血圧を高くするようにしています。 

②−2:また腎臓に入る動脈の部分には血圧のセンサーがあり、低い場合には腎臓から血圧を上げるエリスロポエチンというホルモンを出して血圧を上げるようにしています。

③血液を作る調整役

・血液成分(赤血球、赤血球、血小板)は骨髄のなかの細胞から作られるのはご存じかと思います。この中で赤血球の産生をコントロールするエリスロポエチンというホルモンは腎臓から作られます。貧血があると腎臓はこのエリスロポエチンというホルモン出すことで骨髄での赤血球を増やすようにして、貧血を是正してゆきます。 貧血などで一番多いのは鉄欠乏性貧血で鉄分の摂取が足りなかったり、女性で生理などで血液成分が失われる場合によく見かけますが、鉄分を摂取すれば比較的簡単に貧血は改善しますが、腎臓が悪くなると、エリスロポエチン産生されなくなり、腎性貧血になる場合もあります。

 

④体液量・PH(ペーハー)・イオン濃度を調整する役目

私達は普段水分を何リットル飲むかどうか、決めずに喉が渇いたら飲んだり、時には飲み過ぎになるほど摂ることがあります。しかし腎臓が正常ならとった水分の量の合わせて尿の量をコントロールして体の水分量を調整しています。また体の酸性・アルカリ性のバランスやナトリウム・カリウム、カルシウムなどのイオン濃度も調整してくれています。

 

⑤骨を強くする作用

カルシウムの体内への吸収を促す、活性型ビタミンDは腎臓で作られます。ですので腎臓が悪くなると、骨粗鬆症にもなりやすくなってしまうのです。

 

腎臓って小さいけど沢山の機能を担っている大切な臓器です。普段から水分をとる塩分を控えるなど腎臓に負担をかけないように意識していきましょう✌️

2019年6月 5日 (水)

胃酸分泌のメカニズムと潰瘍治療薬

今日のFMレキオは消化性潰瘍について話をしました。このブログでは消化性潰瘍の治療の変遷について書きたいと思います。

歴史上、消化性潰瘍と思われる症状や治療の記載は、ヒポクラテス(Hippocrates:紀元前460年)の時代と言われています。 近代的な治療は1700年代後半からで、1800年代には消化性潰瘍の原因として胃液の研究が進み、塩酸やペプシンなどの過剰によるもの、胃の粘膜の血流障害Th_説、迷走神経や自律神経失調などのストレス説など、現代に医療と結び付く説が学会で議論されるようになりました。

1963年に様々な意見を集約した形で攻撃因子と防御因子の破綻が潰瘍の原因とした説が認められ、現代まで支持されています。消化性潰瘍の原因を天秤にかけた状態でバランスが取れていたら潰瘍にならないが、何らかの原因で攻撃因子側に天秤が振れたときに潰瘍になるというモデルで、解り易いため現在でも説明に利用されています。

 

上の図のうち、潰瘍の治療薬の中心となるのは主に攻撃因子を防ぐことになります。

胃酸過多により胃痛や胸焼けなどの諸症状がおこり、内視鏡的観察では胃炎、潰瘍、逆流性食道炎などと診断されます。

<ここで胃酸の分泌が起こる仕組みについて書いてみます>

胃酸の分泌には「アセチルコリン」「ガストリン」「ヒスタミン」と呼ばれる神経伝達物質が主に関与しています。胃の粘膜組織にはこの神経物質を感じ取れる受容体が存在し、これらが出ると胃酸を分泌させる「プロトンポンプ」に作用して「胃酸の産生」が起こります。 これらの神経伝達物質は単独あるいは関連し合い胃酸の分泌を促進します。

例えば、空腹時に美味しい匂いを嗅ぐと「アセチルコリン」の分泌が起こります。アセチルコリンは胃の蠕動運動も促進しますので、「胃がグ〜」と動き出します(→側の人からも「お腹減ったの」と言われてしまいます😃)。 唾液の分泌も胃酸の分泌も促進されます。 今度は胃に食べ物が入ると、その刺激で胃壁から「ガストリン」が分泌されます。 アセチルコリンやガストリンは更に胃粘膜の細胞に作用して「ヒスタミン」を分泌させます。 

この3種類の神経伝達物質は最終的に胃酸の分泌を起こす「プロトンポンプ」に作用して、胃酸が分泌されるのです。

<次ぎに、胃酸の分泌が起こるメカニズムが判ったはずですので、治療薬の話を続けましょう>

昔は胃酸の産生を直接抑制する薬はなく、潰瘍の治療は酸を中和する制酸剤と胃の動き等を抑える抗コリン剤が中心で、大きな潰瘍に関しては効果が少なく、長期入院や手術が必要でした。

しかし1982年に開発された潰瘍治療薬のヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー:商品名としてはガスターが有名でしょうかが開発され、これはそれまでの薬と比べ画期的な効果をもたらすことになります。

更に最近では、最終的に「プロトンポンプ」が胃酸の産生に関わることより、回りくどいことはせず、直接この「プロトンポンプ」の受容体をブロックしてしまう薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)が開発され、現在では潰瘍や逆流性食道炎の治療薬の中心となっています。

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この薬が一般的に普及した1980年代後半からは、潰瘍による手術症例は激減し、今では出血、穿孔、狭窄の場合で内視鏡的な治療が効果がないと判断した場合に手術がおこなれています。 私より上の世代(70歳以上)の外科医は私達や更に若い世代よりも何十倍も胃・十二指腸潰瘍の手術を経験されています。 最近では更に胃酸の産生抑制効果の強いPPIが臨床で使われるようになり、大きな潰瘍も外来で治療可能となっています。

更に潰瘍と関係が深いピロリ菌の発見により、除菌療法も新たな治療として加わってきました。私がたかだか30年数年外科をやっているだけで潰瘍の治療も劇的に変化してきています(勿論その他の治療も劇的に変化してきていますが・・)。 医療が今後も進歩することで、様々な治療法が出てきたらいいなと願っています。 それでもやはり医療の中心は人です。 これからも禿げたオヤジ(←私です)はオヤジなりに頑張っていこうと思うのです

ピロリ菌は胃に住み着いて胃粘膜に慢性の炎症を起こすことより、萎縮性胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの様々な病気を引き起こすために、ピロリ菌陽性の場合はまず除菌療法を行い、その他の治療を組み合わせます。

 

2019年5月29日 (水)

表層性胃炎、びらん性胃炎、胃潰瘍の違い

今日のFM放送では消化性胃潰瘍の第1弾として話をしました。 消化性潰瘍については何度かブログでも書いていますが、今日は基本的な胃炎、潰瘍の違いについて説明したいと思います。

私達の身体の消化管(口腔内から出口の直腸まで)の表面は粘膜と呼ばれる薄い組織で被われています。この粘膜の下には、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)があり、これが基本的な消化管の壁の構造となっています。

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胃炎と言う言葉も皆様方は良くご存じだと思いますが、胃炎もその深さによって表層性胃炎とびらん性胃炎に分かれます。胃の表面の粘膜だけに病変があって、炎症を起こし赤くなったり浮腫んだりしている状態が「表層性胃炎」と呼びます。 様々な原因で粘膜が傷ついて、粘膜がえぐられ、欠損する場合があります。 粘膜が欠損してもその下の粘膜筋板までは達していない浅い病変の場合は「びらん」と呼んでいます。この状態が胃で起これば「びらん性胃炎」と呼んでいます。

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では、もっと傷がついて粘膜筋板より深い欠損となってしまう状態はとなると・・・これが「潰瘍」と言うこととなり、「胃潰瘍」の状態となるのです。 潰瘍でも浅いものから、筋層に及ぶもの更には漿膜を超えて胃に穴が空く(穿孔)と重篤となることもありますし、粘膜下層や筋層には太い血管もあり、潰瘍の部分にこの血管があると大出血をする場合もあり、吐血や下血やショックとなる場合もあるのです。

びらんと潰瘍を何故分けたかというと、びらんと比べて潰瘍はより重症と言うこともありますし、治った場合に、びらんの場合はすぐに正常な粘膜に被われ、後まで残る(瘢痕)ことはありません。 潰瘍(浅い場合は判らないことも)の場合は治った場合、回の粘膜に引きずれが起こって、潰瘍瘢痕として傷跡が後々まで残ってしまいます。 ですのでびらん性胃炎と言われていても治った後に胃カメラを受けても全く痕跡もなく判りませんが、潰瘍の場合には「以前潰瘍になったことがありますね」と指摘されるのです。

2019年5月22日 (水)

頸椎症について

今日のFM放送は首の痛みについて説明しました。 ブログにはその中から「頸椎症」について記載してみます。

人間の体の屋台骨を支えている椎体は上部から頸椎(7本)、胸椎(12本)、腰椎(5本)からなっています。この骨格は私達の姿勢の維持や運動を支えるだけでなく、椎体の真ん中に脊柱管というトンネルを作り、その中の脊髄神経を保護する役目をになっています。

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頸椎症の原因や症状に関しては頸椎だけでなく胸椎、腰椎に起こっても同じ病態ですので、イラストにしましたので皆様方も考えながら読んで頂くと嬉しいです。

・原因: 椎骨と椎骨の間にはクッションの役目を果たす椎間板という軟骨組織があります。椎間板は20歳を過ぎた頃より年齢と共に水分が失われて硬くなって、ヒビが入ったり、圧迫されて飛び出してしまうこと(ヘルニアと言います)も起こります。これも加齢と共に周りの椎骨自体も弱くなり、圧迫骨折をしたり、長年の使用で骨棘という骨の飛びだしが出たりします。また神経の入っている脊柱管の後方には強力な靭帯があるのですが、これが肥厚して硬くなって飛び出すこともあるのです。

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・症状: 脊柱管の中の脊髄という神経の束は私達の脳と体の隅々を結びつけているまさに大動脈の神経です。 ですので症状はどの部位で神経が圧迫されるかによって決まります。 上の図を見て貰うと判ると思いますが、椎間板ヘルニアや骨が前方に飛び出しても神経を圧迫しなければ頸椎症の症状は出ませんし、圧迫骨折があっても神経を圧迫しなければ、骨折による骨の周りの痛みだけで済みます。 しかし交通事故などで骨折と共に脊髄が圧迫されて、半身麻痺などの麻痺が起こる場合もあるのです。

頸椎の場合の症状としては、首の痛み、手(足)のしびれ感や感覚異常がでたり、ひどくなると痛みを感じないなどの知覚障害や手足などの細かい作業が出来なくなる場合もあります。脊髄神経は全身隈無く伸びていますので、時には膀胱や直腸の神経障害もでて、排尿障害や排泄障害も出現することもあります。

この様に圧迫される部位により多彩な症状が出ます。

・治療法に関しても様々です。 その人の生活環境や不自由さで選んでゆきます。 装具療法、薬物療法、牽引療法、温熱療法、理学療法(リハビリ)、神経ブロックに手術など色々ですので、専門の整形やペインの先生と相談して決定して欲しいと思います。

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