今日のFM放送は頭痛について話をしました。頭痛は脳外科や内科で診ることが多く、外科医の私の専門外ですので一般的なことを記載いたします。
「頭がズキズキする」「目の奥が痛む」「締めつけられるような感覚がある」・・・など頭痛に悩まされた経験は多くの方にあるのではないでしょうか? おおよそ日本人の3人に1人は「慢性的な頭痛持ち」とも言われています。
今回は、日常的によくある「頭痛」について、原因や種類、頭痛が起こるメカニズムや対処法、そして病院に行くべきサインについてわかりやすく解説します。
その前になぜ頭痛を感じつかについて記載しておきます(その方が後のが理解しやすいかも)
頭痛:脳が痛みを感じるの?
頭痛は「脳実質が痛みを感じている」と思われがちですが、実は脳そのものには痛みを感じる神経(痛覚受容体)がありません。では、なぜ頭が痛くなるのでしょうか?
実際に痛みを感じているのは、次のような脳の周囲の組織です:①頭皮や筋肉(後頭部・側頭部など)、② 脳を覆っている硬膜や血管、③三叉神経などの脳神経、④首や肩まわりの筋・筋膜、靭帯 など
脳実質ではなくてい①〜④組織が炎症を起こしたり、緊張・収縮・拡張したり、圧迫されたりすることで、痛みとして感じるのが「頭痛」の正体です。
<1次性頭痛の3大タイプ>
まず頭痛には大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。一次性頭痛は特定の病気が原因ではない慢性的な頭痛(日本人の約40%が経験)で、以下の3つが代表的です(多くの方の頭痛持ちはこのタイプです)。二次性頭痛は明らかな原因がある頭痛となります。
A:緊張型頭痛(日本人の約22~30%) ・以前書いたブログ→(筋緊張性頭痛)
最も多いタイプの頭痛です。
特徴は「締めつけられるような痛み」や「帽子をきつくかぶっているような感覚」で、後頭部から首筋にかけて鈍い痛みが広がります。長時間のデスクワーク、姿勢の悪さ、ストレスなどが誘因となります。
頭痛のメカニズム:長時間のデスクワークやスマホ操作、ストレスなどで首や肩の筋肉が緊張・収縮し、その筋肉内の血流が悪くなります。その結果、筋肉や筋膜から発痛物質(ブラジキニンなど)が出て、痛みの信号が脳に伝わることで「鈍い痛み」や「締めつけ感」として感じられます。
対処法:
・姿勢を正す
・ストレッチや軽い運動
・十分な休養や睡眠
・市販の鎮痛薬(ただし連用には注意)
B:片頭痛(偏頭痛)(日本人の約8~10%(女性では男性の約2.5倍))
若い女性に多く見られる頭痛で、発作的に起こります。
特徴は「ズキズキとした拍動性の痛み」で、頭の片側に現れることが多いです。光や音、においに敏感になり、吐き気を伴うこともあります。
誘因:・寝すぎ、寝不足・月経やホルモンの変化・空腹、ストレス・赤ワインやチョコレートなどの食品
メカニズム:ストレスや寝不足、ホルモンの変動、光や音などの刺激をきっかけに、脳の神経が過敏になり、血管が一時的に収縮→拡張します。拡張した血管が周囲の神経を圧迫・刺激することで、炎症反応が起き、痛みの物質(CGRP=カルシトニン遺伝子関連ペプチドなど)が放出され、「ズキズキする拍動性の痛み」が生じます。
同時に、光・音・においに対する過敏さや吐き気なども引き起こされます。
対処法:
・静かな暗い部屋で休む
・冷やす(首筋やこめかみ)
・処方薬(トリプタン系)を早めに服用する
C:群発頭痛(有病率は0.1%未満と稀ですが、ほとんどが男性)
非常に激しい痛みが片側の目の奥に集中し、一定期間(1~2ヶ月)に毎日決まった時間に発作が起きます。男性に多いのが特徴です。
メカニズム:詳細な原因はまだ完全には解明されていませんが、視床下部の異常な活性化や自律神経の乱れが関係していると考えられています。
目の奥の血管が急激に拡張し、周囲の神経(三叉神経など)を刺激することで、片側の目の奥に激烈な痛みが生じるのが特徴です。
涙や鼻水が出たり、目が赤くなったりするのも自律神経の関与による症状です。
対処法:
・純酸素吸入療法
・医師の処方による薬(トリプタン系など)
※市販薬ではほとんど効果がないため、医療機関の受診が必須です。
二次性頭痛は注意が必要!
脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎などの重篤な病気が原因で起こる頭痛を「二次性頭痛」と言います。次のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
危険なサイン:
- 突然、激しい頭痛が起きた(バットで殴られたような痛み)
- 今までに経験したことのないような頭痛
- 麻痺、しびれ、ろれつが回らない、意識がぼんやりする
- 発熱、吐き気、項部硬直(首の後ろが固くなる)
- 高齢者で初めて頭痛が出現した
- 頭痛がどんどんひどくなる
これらは「命にかかわる頭痛」の可能性があるため、すぐに病院を受診することが大切です。
最後に多くの方が頭痛持ちで日頃から頭痛薬を常用されている方も多いと思いますので注意点を記載しておきます。
市販薬との付き合い方
頭痛薬はドラッグストアなどで手軽に購入できますが、「飲みすぎ」に注意が必要です。月に15日以上頭痛があり、鎮痛薬を頻繁に使う人は「薬物乱用頭痛(MOH)」になることも。
予防のためには:
- 頭痛日記をつけて自分の頭痛パターンを知る
- 予防薬の相談を医師にする
- 日常生活のリズムを整える(睡眠・食事・運動)
頭痛との上手なつきあい方
頭痛を完全になくすことは難しくても、「うまくつきあう」ことはできます。そのためには自分の頭痛のタイプを知り、誘因を避け、早めの対処を心がけることが重要です。
おすすめのセルフケア:
- スマホやPCを使う時間を見直す
- 入浴やストレッチで血行をよくする
- ストレスマネジメント(瞑想、深呼吸、趣味の時間)
- 睡眠の質を高める
最後に
頭痛は「よくある症状」だからと軽く見てしまいがちですが、生活の質を大きく下げてしまうこともあります。少しでも気になることがあれば、我慢せず専門の医師に相談してみましょう。「ただの頭痛」と思わず、自分の体からのサインに耳を傾けることが健康への第一歩です。
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