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医療

2023年1月25日 (水)

寒い冬は浴槽内での溺死に注意

今日は全国各地でこの冬1番の寒気が流れ込んで交通網が遮断されたり被害が出ているようです。今日のFM放送はこの寒さのために急遽話題を変えて、寒い時期に起こる病気について話をしました。 新型コロナウイルス感染症がどのようになるのかも心配ですが、冬の時期の病気と言えば、まず思い浮かべるのはインフルエンザやノロウイルスなどのウイルス感染症だったおもいます。そして寒いために血圧の変動も強くなるため、脳卒中や虚血性心疾患、寒さのため厚着や雪などでの転倒・骨折も増える時期となります。

 

Th_704705最近ではマスコミでも取り上げらるようになった「ヒートショック」があります。水に溺れて死んでしまう状態を溺死と呼んでいます。何となく夏の海水浴シーズンにみられると思いがちですが、実は溺死は冬場に多いのです。

2020年の統計では交通事故による死亡者は過去最低の年間3000人を切るようになったのですが、入浴中の死亡事故は年間6900人と言われ、交通事故死よりもずっと多く、その中で4900人溺死と言われてもいます・・・少しビックリではないでしょうか? 家庭の風呂場で溺れて死亡した人数は交通事故死亡者数より多くなっているのです。

 

寒さは私達の体に刺激を与え、交感神経が緊張状態となります。急に寒い場所に出たときなどは血圧が30から50mmHgも上昇すると言われています。例えば普段から150/90と血圧が高い方が寒さの刺激を受けると、急に180から200まで最高血圧が上がることになります。それにより、心筋梗塞や脳卒中が増えると言われています。

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寒いとやはり暑い湯に浸かりたいと思うでしょう。ここにも落とし穴があります。寒い寒いと思いながら脱衣所で服を脱ぎます(血圧が一気に上がります)。 今度は熱い湯の中に入り込みます(すると急激に血管が拡張し、血圧が一気に低下します)。湯船に浸かりながれ急激な血圧の上昇、低下で意識がなくなる方もいます。 お風呂場は家族でも目に付かないところです。 湯船に入り意識を失い、湯の中で溺死しても誰も気づきません。 家族がお風呂から上がってくるのが遅いと風呂場に行ったら、水の中の沈んでいたということも多いのです。

このような血圧の変動を最小限にするためには、脱衣所の温度を18度から24度程度まで上げておくことが必要です。湯に入る前にかけ湯をして暑い温度にならしながら、湯船に入る、出るときもゆっくりを腰掛けたあとに出るなどの工夫が必要かもしれません(ヒートショックが起こり易い温度差は10度以上となっていますので、少なくとも通常の室内と脱衣所の温度差を10度以下、そして風呂場の温度とお湯の温度差も10度以下に保つ様にした方が良いかも・・正確なデータがありませんが🙏)。

家庭風呂での死亡者の90%は65歳以上が占めていますので、基礎疾患に加えて、高齢やはこの様な温度差に気をつけながら対策を練る必要があると考えています。ただし20代でも死亡例がありますので若くても気をつける様にして下さいね。

早く今回の寒波が過ぎることを祈っています。各地で被害がありませんように。

 

追伸:次第に時間が取れなくなってきましたので、ブログの中の「医療記事」はしばらく(永久に?)に中断したいと思います。旅行の記事は私の老後の楽しみのため書き続ける予定です。

2023年1月11日 (水)

ホルモンとは? ホルモンのフィードバック機構とは?

今日のFM放送は久々に甲状腺の疾患について話をしました。甲状腺の病気については2年前の記事がありました(→http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2020/12/post-29f43f.html )。

今回はもっと基本的な「ホルモンとはどんなものなの(焼き肉屋のホルモンではありません😅)」について記載したいと思います。甲状腺ホルモン、成長ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモン・・・などなど皆様も聞いてことがあるかも知れません。しかし実際のホルモンの数は解明されているだけでも100種類以上あるのです(°0°)

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ホルモンとは身体の中の内分泌臓器で作られる化学伝達物質で、私達の体の臓器機能や代謝の際の情報伝達として身体の内部環境を一定に保つ様に機能します。 100種類以上のホルモンが流れていますが、それぞれのホルモンの量は本当に僅かな量で、その濃度は「巨大なプールの水の中にスプーン1杯分程度(かなり大雑把ですが😊)」となります。

100種類以上あるホルモンが全ての細胞に関与するかとなるとそれはありません。そのホルモンに対応する細胞を標的細胞と呼んでいて、その細胞には身体を流れてくるホルモンがびったりとはまり込む鍵穴の部分があり、それがびったりと一致すると作用を発揮してゆくのです。

<ホルモンの種類>

①ステロイドホルモン:副腎皮質ホルモン、性腺(男性、女性)ホルモン、ビタミンD3

②ペプチドホルモン:成長ホルモン、インシュリン、サイトカイン

③アミノ酸誘導体:副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン)甲状腺ホルモン、

④プロスタグランジン:

<どのように量を調整しているのか>・・・

身体の中にはホルモンを作る細胞もそれを受け取る細胞もあります。ホルモンの量が多すぎても少なすぎても良くありません。そのために私達の体の中にはホルモンの量を調整する細胞がまた存在するのです。 この調節の役割を担うセンサーや司令塔としてはたらいているのが間脳の一部である「視床下部」と呼ばれる場所になります(全てではありませんが、この場所は重要ない部位となります)。難しく考えすぎるときりがないのですが、簡単に車の生産工場を例に例えてみました。

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人間の身体の中には現在のコンピューター制御よりも優れたフィードバック機構が備わっており、それぞれが役割分担をしながら、身体のホルモンを正常に保つように働いています。本当に人間(生き物)の身体は良く出来ています。

2023年1月 4日 (水)

時間の単位について

今年初めのFM放送「いきいきタイム」は時間とそれに関わる睡眠について話をしました。以前のブログで睡眠についてはいくつか書きましたので、今日は時間の不思議について書いてみます(以前のブログ→「睡眠と夢について」 、「睡眠と成長ホルモン」)。

毎年のように年始・年末の時期になると時間の単位のことを考えます。時間の単位である1分1秒の長さは、絶対的な単位で、どの人にとっても等しく変わりません。しかし私達の感じる時間の単位は、各自で違うと思います。

時間は絶対的な単位であるはずなのですが、実際には個人の年齢や状況によって非常に違いのある、相対的な単位だとも思うのです。

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例えば、その人の中でも夢中になって楽しいときには、時間はあっという間に過ぎますし、退屈で苦痛な時間はなかなか過ぎてゆきません。 時間とは不思議なものです。 ですから、私はいつも「人間は時間を生きる動物だ」と思っています。

当たり前と思っている私達の時間の単位とは、何を基準に決められたのでしょうか。

時間の大きな区切りを決定するのは、地球が24時間かけて回転する自転と太陽の周りを1年かけて回る公転だと考えます。 

もう一つおおよそ28日の周期で回転する月と地球の関係から発生する時間軸があると考えられます。

そのことより、地球と太陽、月との関係により、1日という区切り、28日というおおよそ1ヶ月という区切り、1年という周期がもっとも大きな意味合いを持つ時間の単位と思われます。

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単位という言葉が出てきました。 私達がお金を計算したり、掛け算九九などは1.10.100.1000.万と10がつく単位、つまり10進法で計算し物事を考えます。非常にシンプルで考えやすい単位だと思います。 丁度、私達の手を使って、指折り数えてる場合も、10の単位が便利です。

しかし時間の単位は1日24時間だったり、1時間が60分だったりとややこしいですよね。 自身が子供の時やあるいは小さなお子さんをお持ちの方は、子供に掛け算九九などの10の単位と同時に時間の単位も教えないといけなくなり苦労したと思います。

私は子供の頃、120秒は何分ですか?などの問題がいやでした。

1時間が100分で1分は100秒だったら「こんな問題でないよな〜」と思いました。 皆さんはどうでしょう?

ではどうしてこんなややこしい事になったのでしょう。 調べてみると色々な説がありそうです。 紀元前の大昔より、エジプトやバビロニアなどの古代文明で既に、日が昇り、日が沈むまでを12の単位で示していたそうです(日時計によるものでしょうか)。

それが時間の単位となり、1日にすると24という単位になったそうです。ここからがややこしいのですが、24時間をもとに1日の長さの24を分解した「2346」で割り切れる数字で時間を表すことになり、時計は60秒で1分、60分で1時間、24時間で1日となったのです。これは理論的に云々ではなく、覚えるしか手がないのかも知れません(タイムカプセルがあったら古代エジプトやバビロニア人に12じゃなくて10で分けたほうが子孫達が喜ぶよと伝えて、日時計の単位を変えて貰いたいです😃)。

まだまだ時間について考えていきたいのですが、長くなりましたのでまたいつか書きたいと思います。

それでは、新年早々から時間に遅れませんように!

2022年12月14日 (水)

口内炎

今日(2022年12月14日)のFM「いきいきタイム」は口腔粘膜疾患について話をしました。歯以外の口の中、歯肉や舌、のどの奥は粘膜という滑らかな組織に覆われてるため、そこに出来た異常を口腔粘膜疾患と呼んでいます。
局所的には耳鼻咽喉科や口腔外科が専門で、口内炎やウイルスや自己免疫との関連では内科や小児科が主に扱うことになります。外科の私としては外傷だったり、抗がん剤使用時の副作用や手術などによる消耗疾患で時々診察することがあります。ですので、これから書いてゆくのも素人と同じレベルとなります🙇

口の中は消化器や呼吸器の入り口としてみることも出来ますが、味覚や臭覚などの感覚器官でもありますし、唾液を出すことで消化を助ける役割、舌には発語としての機能もあり複雑な機能がこの部分には集約されています(唾液の細かな役割については→http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-a0e2.html  ) 。

沢山の病気がありますが、今日はアフタ性口内炎に絞って書いてみます。口の中や歯茎、舌などは表面を粘膜が覆っているのですが、何らかの原因でこの粘膜が傷ついて剥がれてしまうと小さな潰瘍となります。炎症が加わりますのでこの潰瘍の周りが赤くなり中心部分は白っぽくなります。

余り大きくはなくても、痛みが強いのがアフタ性(潰瘍性)口内炎の特徴です。口内炎のある場所を噛んでしまったり、刺激物やお醤油、暑いのを食した時などは激痛が走り、思わず「アガ〜(いて〜)」と叫んでしまいます。

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口内炎は試験勉強の時などに起こることも多く、ストレスが一因であると思われますが本当の原因は簡単ではありません。 鉄、亜鉛、ビタミンの不足だったり、ウイルス感染に伴うもの、義歯よる刺激唾液分泌の減少、鼻詰まりで口呼吸による口腔内乾燥睡眠不足などが影響し合って発症すると思われます。

通常のアフタは数ミリ以下の大きさで単発・多発両方あり、痛みは4〜7日続きます。重傷になると発熱や首の周りのリンパ節が腫れ、風邪のような疲労感が現れることがあります。 だたし大きさが1センチを越えたり、長い間治癒しない場合は医療機関で検査を受けた方がよいと考えます。 

治療は自然治癒するまで、痛みを和らげる対症療法が中心です。痛みが強い場合は麻酔薬の入ったうがい薬を使用したり、ペースト状になった局所麻酔薬を塗ったりします。アフタを保護して炎症を鎮めるような軟膏類や最近ではアフタを覆うようなパッチ製剤もありますので試してみて下さい。

特に年末は何かと生活が崩れたりストレスのかかる時期で、乾燥も続きますので口内炎が起こり易い環境ともなります。口内炎になったら少しでも休む時間を作るようにして体調の回復を図りましょう💪 

寒くなりましたので皆様もお体にはお気を付けて下さいね

2022年12月 7日 (水)

お酒と肝臓

1年はあっという間に過ぎて行きますが、今年も忙しい師走に突入致しました。

私にとっては12月は落ち着かない季節なのですが、皆様はどうなのでしょうか? コロナ禍で大規模の忘年会などはないかも知れませんが、内輪や家族での食事会なども増え、食べ過ぎ飲み過ぎにが気になる季節に変わってゆくと思います。

若い頃の12月はクリスマスや忘年会において楽しくて対は目を外して翌日の二日酔いが心配かもしれません。 少しお歳を召してくると、「忘年会行ってみれば老人会」と自分だけ若いつもりでいても、周りからみると五十歩百歩だったりするわけです。 年齢と共に忘年会の話題も、恋人から、子供や仕事について変わっていき、ついには健康談話へと移っていくのかも知れません。

年末ジャンボも発売され、忘年会の飲み過ぎにかけて「当たったら、肝臓も弱る宝くじ」・・クリスマス・忘年会→飲み過ぎ→肝機能障害となることもありますので、この時期注意が必要です。

 

ここ何年かは細かなことを記載しましたが、原点に返って肝臓の位置や役割とアルコールの代謝について説明したいと思います。

では、まず肝臓の位置はとなると、お腹の右上、主に右の肋骨の下に収まっています。見た目は人間の肝臓も、スーパーで売れている豚や牛などレバーと殆ど同じです。(ブタの肝臓などは大きさ的にも人間に近いために、異種間の臓器移植の研究が早くから行われている程です 

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肝臓の機能をまとめると、次の3(+α)項目の働きに分けることが出来ます。 (括弧内に肝機能が障害を受けた時の症状)

①消化管で吸収された栄養を体内で活用できる形に分解・合成。凝固因子の合成(→栄養障害、腹水などの貯留、出血傾向)。

②有害な物質の解毒作用<アンモニア・薬物・毒素など>(→アンモニアの上昇(意識障害、錯乱)、薬物の影響が遅延)。

③消化機能を補助する胆汁の産生(→脂肪の吸収障害、ビリルビンの代謝異常(黄疸出現))。

④女性ホルモンを分解作用(→男性で女性化乳房の出現)。

 

続いて、特にこの時期・気になる「お酒と肝臓」について簡単に記載します。

 日本人では、肝臓病というと、C型、B型などの肝炎ウイルスによる肝炎、肝硬変、肝臓がんが多いのですが、日本人のアルコール消費量の増大とともに、アルコール性肝障害が増えています。

 肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、肝障害が余程ひどくならない限り症状がでないのです。健診などで肝機能障害、脂肪肝を指摘された場合はしっかりと検査を受けて欲しいと思います。

<アルコールの体内での代謝>

アルコールは胃と小腸から吸収されて肝臓へと運ばれ、アセトアルデヒドへ分解され、さらにアセテートへと分解、代謝され、最後は炭酸ガス(息として)と水(オシッコ)になって排出されます。

・アルコールの分解能には個人差も人種差もあり、「日本人は欧米人に比べてアルコールに弱い人が多い」のです。日本人ではアルコールを分解、代謝する酵素の能力が高い遺伝子を持つ人が6割、低い人が3割、分解能力がない完全な「下戸(げこ)」が1割だといわれています。

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アルコールの強さは遺伝で決まっていますので、鍛えて飲めるのでありません 
分解能力の低い人が無理して飲む場合は注意が必要です。 このような人はアルコールの中間代謝産物で毒性の強いアセトアルデヒドが長い時間血液中を巡回することになりますので、その結果、頭が痛くなったり、吐いたり、“悪酔い”が長時間持続します。

宴会などで“一気飲み”して、急性アルコール中毒で急死するのもこうした人に多いのです。 

また、もともと酒が飲めない体質なのに、“鍛えて”飲めるようになっても、喜べるわけではありません。 なぜなら直接アルコールを代謝、分解する酵素が増えたわけではなく、肝臓の別の酵素が代役を務めるようになっただけのことなのですね。 実際には、アルコールの弱い人が、頑張ってお酒を飲めるようになっても、肝臓に負担がかかり、代謝能力が良い人に比べて、アルコールによる脂肪肝、肝線維症、肝炎、肝硬変へと進行する率が高いのです。 


酒は心身をリラックスさせてくれますが依存や肝障害などの原因ともなります。お酒は量の勝負ではありませんので、楽しく、ゆっくりとマイペースで飲んでいきましょう👍

2022年11月23日 (水)

(Ⅱ型)糖尿病のメカニズムと合併症

日本人の糖尿病患者さんは急激に増加し糖尿病を強く疑われる患者さんは1000万人を越え、この50年間に35倍以上に増加しています。同様に糖尿病を否定できない方も1000万いると考えられています。いまや40歳以上の3〜4人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍です。日本人の体質がこんなに急激に変われるわけはないのですから食生活を含めた生活習慣の変化が糖尿病急増の原因なのです。

糖尿病を考える場合には「糖分とインシュリン」は欠かせない物質です。

食事(炭水化物、砂糖)を摂ると消化・吸収され、血液中にブドウ糖として供給され血糖(=血液の中のブドウ糖)になります。血液の中の糖分は全身の細胞のエネルギー源として使われ、筋肉や臓器、脳を働かせる源になるのです。 しかし血液の中を流れるブドウ糖が単独で細胞に入り込むことはできません。細胞の中にエネルギー源として取り込まれるためには、膵臓から分泌されている「インスリン」というホルモンが必須です。インスリンの働きを借りて、血糖は細胞の中に取り込まれます。

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もしも私達が必要以上に食事(カロリー)を取りすぎると血糖を下げるため、インスリンを沢山作り出さないといけなくなります。こんな状態が続くと膵臓も次第に疲れはてて、インスリンを出す能力が低下します。 それだけでなく次第にインスリンに対する細胞の反応が鈍くなるのもですから、糖を上手く取り込むことが出来なくなり、ついには高血糖の状態となるのです。これが糖尿病(Ⅱ型糖尿病)の発症のメカニズムです。

上図を見て戦後日本人が急速に糖尿病が増えた原因が分かるのではないでしょうか?・・・しかし『欧米の方と比べて肥満率がそれ程高くない日本人がなぜ欧米人と同じ頻度で糖尿病になるの?』と疑問に思った方がいらっしゃるかもしれません・・・私も医学部に入る前はそう思っていました。

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そのメカニズムも分かって来ています。白人や黒人と比べて私達黄色人種のインシュリンを作り出す能力が低いことが細胞レベルで分かって来ています。おそらく日本人は粗食に耐えてきた民族で、これまで余り多くのインシュリンを使わずに生活して来ていたのかもしれません😢 食事の環境が急速に変わっても私達の細胞レベルはその変化に追い付いていないのが現実でしょうか。

 

血液中の糖分が高い状態が糖尿病なのですが、血液の中の糖が増えたからっといって通常の値では体に感じる症状は出ません。

無症状だからといって糖尿病を治療せずにいると、高血糖状態は私達の血管(特に微少な血管)を傷め続け「合併症」と呼ばれる様々な病気を起こしてしまいます。糖尿病は別名“合併症の病気と呼ばれるほどです。 

 

糖尿病は極端な話をすると、「血管をボロボロにしてしまう病気」と言えます(糖尿病を専門にしている先生方から大雑把すぎると怒られそうですが・・)

 

高血糖状態はまず微小の血管から障害が発生します。全身の小さな血管がボロボロになると、目の網膜が障害されて視力が低下する「糖尿病性網膜症」(日本人において中途失明の原因の2位)、次に腎臓の働きが低下する「糖尿病性腎症」(人工透析を受けている患者さんの原因の第1位)、それに末梢神経の障害で(手足のしびれ、知覚異常低下、血管閉塞)そのため下肢の潰瘍や切断の原因となります。

糖尿病のため動脈硬化が進み、次第に大きな血管がやられると、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性下肢動脈症など病気が起こって来ます。

健康診断などで血糖値の異常を指摘されていたり、既に糖尿病といわれてる方にとって合併症を如何に防ぐかが最大の目標となります。 図の原因を眺めながら、それにならない生活習慣を付けることが必要ですね。

食欲の秋ですが過食には注意が必要ですね

2022年11月 9日 (水)

改めてメタボリック症候群を考える

今日のFMレキオ・FM21は中性脂肪についてお話をしました。最初にこのブログで記載したのは10年以上前だったと思いますが、その当時はやたらと「メタボリックシンドローム」という言葉が流行り、検診やドックではそのことを中心に生活習慣病について話をすすめることが多くあった記憶があります。

私は外科医ですので手術をして実感するのは男女における脂肪の付き方の違いです。女性は皮下脂肪が多くても内臓脂肪が少なく手術は容易で、男性は内臓脂肪が多く手術は脂の中で腫瘍や血管などを処理しないといけませんので難しくなります。 内臓脂肪の多さは血液中の中性脂肪や悪玉のコレステロール値と関連があり、女性が男性より長生きできるのもうなずけます。

中性脂肪はかつては栄養を蓄える役目だけと考えられていましたが、増加した脂肪細胞からインシュリンの働きを弱める物質が分泌され、糖尿病が発生しやすくなり、動脈硬化を進める作用のある悪玉のコレステロールの値を増やす物質が分泌されます。 中性脂肪が増えると糖代謝が悪化し、コレステロールが増え、内臓脂肪も増え、さらには血圧も高くなる悪循環が出来てしまします。(以前書いた記事です→脂肪細胞の特徴

Photo30・40年前は高血圧、高脂血症(高中性脂肪、高コレステロール)、糖尿病はそれぞれが違う原因と考えられそれぞれに治療を行っていたのですが、それらの根本的な原因に肥満があることが解るようになって、メタボリック症候群という概念が生まれたのです。

メタボリック症候群の指標に腹囲がありますが、男性が85Cm以上、女性の場合は90Cm以上を異常とします。男性が身長も高いのに逆差別じゃないかと怒る男性諸君もいます動脈硬化を進行させる内臓脂肪に関してはCTの検査などから、腹囲で比較すると男性の85Cmと女性の90Cmが同じ内臓脂肪の量であることが分かり、日本ではこの値を基準として採用されたのです(最近はその単純な基準よりも実際の採血の結果を見てから個人個人にアドバイスをすることが殆どになったと考えますが・・・

外科医にとってはこれまでの手術の経験から男女差については理解していましたので、改めてメタボリックの概念が提唱された時には納得のいく数字でした。
 
世の男性の皆様やはり女性には勝てません。無駄な抵抗はやめましょう

2022年11月 2日 (水)

突き指の対処法と槌指

2022年11月2日のFM放送いきいきタイムは「手指のトラブル」について話をしました。

指の病気といっても、けがなどの外傷やタイピングなど指の使い過ぎによる腱鞘炎、リウマチなどの膠原病に伴う指の変形や痛みなど様々です。

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どなたも経験はしたことのある外傷に「突き指」があります。

運動や、何気ない日常で、何かに指をぶつけた時に「いて〜、突き指した〜」と騒いだ経験をお持ちだと思います。

手や足の指の関節等が何らかの原因で損傷を負う「けが全般」のことを突き指といっていますが、中には骨折だったり靱帯の断裂だったりと重症もあり、それと診断された時点で、○○骨折、○○靱帯損傷・・と言う病名に置き換わってしまいます。

突き指をすることによって引き起こされる症状は、打った瞬間の痛みがあります。その後、患部が皮下充血・内出血して腫れる事もあります。その場合はしばらく痛みが続きます。 

多くの場合は捻挫(ねんざ)の状態になっているのですが、それより強い損傷では(剥離)骨折や脱臼、靭帯や腱の損傷といった場合があります。 痛みや腫れのひどい場合は、単なる突き指と侮らず、病院で的確な、診断・治療を行うことが重要となります。このまま放置していると、指が変形する事もあります。

今回覚えてほしいのは「突き指でやってはいけないことと応急処置」です。

①やってはいけないことは、「指を引っ張ったり」「痛いのに一生懸命動かしたり」しないことです。よく、部活の先輩や、親などから「突き指」したら引っ張られたりしたことないですかね。私はあります。昔は正しいと思っていました。

突き指の応急処置は「冷やす」と「固定する」ことです。この2点は覚えて下さいね。

突き指の患部を冷やす事によって、血管が復旧・正常化する作用があり、また、神経感覚を鈍化させる作用がありますので、痛みや腫れ上がったりした症状を緩和する効果があります。  

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突き指は外因による急性の炎症ですので、野球のピッチャーが投球後に肩をアイシングしたのを見たことがあると思いますが、その要領で治療します。

手軽なアイシングとしては、ビニール袋に氷を入れて患部を冷やす方法があります。冷たすぎる場合には、タオルなどの上からアイシングをします。

痛みが強い場合や、腫れが強い場合は、我慢せずに、テーピングや、割り箸でも良いですので、動かさないように固定して、病院に行った方が良いでしょう。

通常は次第に痛みもひいて来ますが、痛みがひどい場合などは靭帯の断裂や骨折を伴うこともあり注意が必要です。

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関節リウマチなどはなくて、外傷後にこのような指の変形を見たことがありますか? これはマレット変形(マレットフィンガー:槌指(ついし、つちゆび))と呼ばれています。

上記したように、単なる突き指と思っていたのが、実際は腱の断裂や指先の骨折を伴う場合もあります。昔は病院に行く機会も少なくて指先の第1関節が曲がって変形した方を見かけることがありましたが、最近はだいぶ少ないのではないかと思います。 突き指した後で思うように指先が動かないとか変形している場合には最寄りの整形外科に受診して槌指になっていないかを判断して貰った方がいいと考えます。私の専門は整形外科ではありませんので、簡単に病態を書いてみました。

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突き指ならしばらくしたら元に戻ると思います。腱の断裂の場合でも固定など保存的に済むことが多いようですが、骨折を伴う場合には手術が必要になる場合もあります。担当の先生と相談して決めて下さい。

私などは偶に自室で、机の角に足指をぶつけた場合は怒りの矛先が見つからず思わず机を蹴りたくなってしまいますが・・・ここは大人として辛抱です(笑)。皆様方もきっと経験があるのではないでしょうか😃😅

2022年10月26日 (水)

乳がんのリスクファクター

今日のFM放送「いきいきタイム」は乳がんについて話をしました。

乳がんは戦後日本でも増加している癌の1つで、今や罹患率(生涯でがんになる確率)は女性14人に1人と最もかかる確率が高い癌となっています。 しかしながら手術や化学療法、ホルモン療法、放射線療法に反応しやすいため、日本人女性の癌による死亡率では第4位となっています(大腸癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、胃癌の順)。

 

Photo_20221026082701 これまで乳がん発症の色々なリスクファクターが検討されています。 よく知られている状態として 初経年齢が早い 閉経年齢が遅い(55歳以上) 出産経験がない 高齢初産(30歳以上) 長期間のホルモン補充療法 肥満 飲酒量・・・・・この様な文面を見たことがないでしょうか?

 

乳腺は二次成長期になり急速に発育します。 これには卵巣で主につくられるエストロゲンが関与します。 

乳房内には乳汁をつくり出す「乳腺組織」を含んだ小葉と乳汁を乳頭に運ぶ「乳管」があり、その周りを脂肪組織などが被い丸みを帯びた形になっています。 乳癌の90%は乳管から発症し、5〜10%が小葉から発生します。 

月経がある場合、生理に合わせて増減を繰り返しますがエストロゲンが比較的高い状態で経過します。また乳腺が発達する若い時期は、エストロゲンに対する反応が高いと考えられています。 妊娠や授乳中はこのエストロゲンは低下します(このため妊娠期間のない女性は高エストロゲンの期間が長くなることを意味します)。  

エストロゲンは乳癌の発症や増殖に関与します。そのためエストロゲンに曝される期間が長かったり、若い時期には感受性も高まっていますのでこの時期の高エストロゲン状態は乳癌のリスクを高めます。 またエストロゲンは卵巣のみならず副腎皮質や脂肪細胞からも合成されます                         Th_

 

このことを押さえて再度、リスクファクターをご覧下さい。 ①、②、③は高エストロゲン状態の期間が長いこと、①、④は乳腺のエストロゲン感受性が高い期間が長い、⑤は更年期障害などでエストロゲン製剤を補充したり、 

⑥の肥満に関しては閉経前と後ではリスクが異なってきます。世界的な疫学調査において、閉経前の肥満は乳癌のリスクを高めませんが、閉経後の肥満は乳癌のリスクを高めます。閉経後の場合は卵巣からのエストロゲンは低下しますが、肥満細胞が作り出すエストロゲンが増える結果、乳癌のリスクが高まると考えられています。

また飲酒に関しては、日本でのデーターが十分でないために結論は出ていませんが、外国においての調査では飲酒量が多いほど乳癌になる確率が高くなる結果が出ています。

 

その他としては、血のつながりのある家族に乳癌になった人がいる場合はいない人と較べ2倍程度、癌のリスクが高くなります。これには研究段階も含めて複数の乳癌発症遺伝子が関与しています。

 

乳癌は自分で気づくとこもありますので、自己検診をして下さい。 他の癌と較べ予後のよい癌です。5年生存率も90%を越えています。 しかしまだまだ欧米と較べ、乳癌検診の受診者が少ないのが日本です。 特に一番家庭の中心となっている30代〜50代の女性で検診が必要です。どうか家族のためにも乳癌検診を受けて下さいね

2022年10月12日 (水)

三大痔疾患

今日(2022/10/12)のFM放送(FMレキオ、FM21同時生放送)は痔について話をしました。以前書いたものをまとめてみました。

皆様も「じぬし」の方も多いと思います。私は借家住まいで土地なんか持っていませんいう方もいらっしゃるかも知れません。 土地持ちの「地主」ではなくて痔を持っている「痔主」のことです。 日本人の3人に1人は痔主です。

 

痔といってもイボ痔と言われる痔核切れ痔と言われる裂肛あなじと言われる痔瘻があり、頻度も原因も治療法も異なる3つの痔の疾患があるのです。 痔はコマーシャルで見かけるように必ずしも痛いわけではありません。 どうして同じ痔でも痛みの有無が出るのかが分かるように肛門の発生について下図にしました。 胎児の早期では口とお尻はつながっていません。腸が伸びてきて、肛門の皮膚が引っ込んでお互いが開通するのです。お尻の入り口は腸と皮膚の両方の性質があるのです。不思議ですよね

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男女とも肛門の静脈のうっ血でできた痔核が60〜70%と最多で、そのうち内痔核が殆ど(内痔核は痛みを感じる皮膚より奥にあり、痛みはなく突然真っ赤な血便でびっくり)、外痔核は肛門の皮膚の延長部位の静脈が腫れて血豆ができている状態:だから痛い!のです。 

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イボ痔は人間の進化、二足歩行となったことが大きな原因です。血液は心臓から動脈へ送り出され、静脈からゆっくりと心臓に戻ってゆきます。四つ足の動物では心臓と肛門の高さは同じなので肛門の周囲の血液のうっ滞は起こりません。二足歩行を選んだ人間は立っても座っても、体幹の中ではお尻が1番下の位置にあり、常に静脈がうっ血してしまいます。この静脈が腫れたのがイボ痔の正体です。

裂孔は女性に多く、便秘症で硬い便をする時に文字通り肛門の皮膚の延長部位が切れて(裂けて)しまう・・肛門周囲の皮膚は痛覚の神経が多いので痛いです。痛いので排便を我慢して更に硬くなって悪化する場合があります。裂肛が慢性化すると治りにくいので早めに痔用の座薬と緩下剤を使用し便を適度の硬さになるようにします。

痔瘻は男性にやや多く、元々腸と皮膚のつなぎ目の部分には所々に深い凹みの所があり、そこが化膿すると膿を出すために皮膚の部分に開通してしまいます。最初は肛門近くの皮膚が化膿したようになり破裂すると膿が出て、痛みや熱感は消失します。この時点で抗生剤などで改善する場合もあります。次第に道ができてると便が肛門近くの穴から出てくるようになります。これが痔瘻です。完全に道ができてしまうと手術しかありません。

多くの皆様も「じぬし」でしょうが、イボ痔は静脈のうっ血、切れ痔は肛門の外傷、痔瘻は炎症(感染)ですので、症状も頻度も治療も異なるのです。

排便時に便が赤い〜暗赤色便の場合にイボ痔と信じ込んで検査を受けずにいる人の中に少なからず癌が見つかりますので、痔の診断がついて治療を受けながら一度は大腸の検査も受けて下さいね。

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