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医療

2021年11月24日 (水)

肺がんの分類と治療戦略

高齢化なども進む中で、日本人の死亡原因の1位ががんとなっています。今や日本人の2人に1人ががんに罹る率となっています。 その中でも1番多いがん死亡率のトップは肺がんとなっています。(2019年の全国統計では男女合計の死亡率は1位から順に、肺、大腸、胃、膵臓、肝臓となっていて男女別では男性では肺、胃、大腸、膵臓、肝臓の順女性では大腸、肺、膵臓、胃、乳房)。

今や専門家の間でも色々と新しい治療や統計が出るために、非常に細分化されているのが肺がん治療です。

難しいことを書いても分からないと思いますので、この2点は伝えておきたいと考えています。

まず1点は肺がんと言っても少なくとも4つの違う組織型が混在していること。また治療法が大きく異なることより小細胞がんと非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)に分けていること。それぞれが進行の仕方や治療法が全く異なる肺がんが含まれていること。

2点目は「肺がん=喫煙=男性が圧倒的に多い」と考えていると思います。それは間違いではありません。しかし年々、肺がんの中で腺がんの比率が高くなっています。その腺がんでは女性で尚かつ非喫煙者の比率が高くなっているのです。ですから私は「タバコを吸わないから肺がんにはならない」は通用しないと言う点です。

現在に大凡の頻度や治療法を図にまとめて見ました。小さいですがクリックすると大きくなると思います。


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肺がんは、がん細胞の形や状態から、大きく非小細胞肺がん」と「小細胞肺がんに分けられ、非小細胞肺がんは「扁平上皮がん」と「非扁平上皮がん」に、非扁平上皮がんは「腺がん」と「大細胞がん」にわけられます。

上の図でも分かる様に肺腺がんは、最も多い種類の肺がんで、男女別でみると肺がん男性の40%、肺がんの女性70%を占める特徴があります。また、非喫煙者や女性の肺がんの多くは腺がんとなります。

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上の図は以前ブログに書いた図となりますが、肺がんの発生部位により、肺の入り口付近の太い気管支にできる「中心型(肺門型)」と肺の奥のほうにできる「末梢型(肺野型)」に分けられます。肺腺がんは肺の末梢に発生するため、血痰などの症状が早期には出ない特徴があります(検診で偶然発見されたり、症状が出た頃には進行している場合も多いと言う事になります)。

現在肺がんの治療の進歩は著しく、手術にしても開胸や胸腔鏡を用いた定型的な手術から、縮小手術、拡大手術などが行われています。従来の抗がん剤の化学療法も進歩し、更には分子標的薬やノーベル賞となった免疫チェックポイント阻害剤などが加わった多剤併用療法や、放射線療法に関してもより細かな照射を可能にする工夫もされています。

これだけ色々な治療法が出ると言うことは、逆を言えばまだまだこれ1つで十分というのがないのが肺がん治療の現状です。 やはり肺がんにおいても早期診断、早期治療に勝るものはないのです。

2021年11月10日 (水)

心臓病の中の不整脈

2021/11/10のFMレキオは不整脈を中心に心臓の役割や心臓の大切さについて話をしました。

心臓はたとえご主人が怠け者でも一生働き続ける働きもので、疲れたから休憩なんかしません(私とは違い勤勉です)。

心臓は1回の鼓動で全身に血液を600〜700mlずつ送り出している筋肉でできたポンプです。1分間に70回動くすると、1日では7.2トンの血液を毎日送り出していることになります。 皆さん7.2トン(7200ml)とトンでもない数値です

心臓の病気は大まかに5つに分けること出来ます。

心臓そのものの構造による異常(先天的な病気が主で、心房(心室)中隔欠損症などが代表) 

心臓の筋肉自体の異常(肥大型や拡張型心筋症などで、心臓移植を必要とすることもあります) 

心臓の弁の異常(いわゆる弁膜症で狭窄と閉鎖不全が主) 

心臓自体を栄養する冠動脈の異常(狭心症・心筋梗塞など) 

心臓のリズムの異常(不整脈) 

心臓は1分間におおよそ60〜100回一定のリズムで収縮・拡張を繰り返しています。不整脈はこの規則正しいリズムを刻む神経の伝わり方やリズムを作り出すところの異常により脈が乱れることを言っています。

ここで脈の取り方です。利き手の人差し指から薬指までの三本を揃え、反対の手のひらを上にして、親指側の手首の下の窪みを探ってみて下さい(手首の親指側1/4外側)。判りづらい場合は、強く押したり緩めたりしながら優しく触れると、指の下でトントンと拍動を感じると思います(詳しくは→脈の取り方)。

Photo1分間数えて、60以下は除脈、100以上は頻脈と呼んでいます。「トン、トン、トン」と一定のリズムで動いているか確認下さい。「トン、トン、トトン、トン、トン、トトン」とか「トン、トン、トン、うん(脈が抜ける)、トン」などリズムが狂う場合は不整脈を疑います。

不整脈は心臓が必ずしも悪いわけではなくて、睡眠不足、疲労、喫煙、カフェイン摂取、飲酒でも出る場合があり、心配しないですむ不整脈もあります。

脈の異常を感じたら病院で心電図や1日記憶するホルター心電図などを行う必要があるかも知れません。心配なら受診して下さいね。

 

不整脈に気づくようなことがあれば「自覚症状を伴う不整脈」とのことになります。多くの場合は不整脈そのものが命を脅かすことはありませんが、日常生活に大きな支障を来す場合も含まれます。特に、心房細動、心房粗動、上室性頻拍などの頻脈発作を繰り返す場合や、期外収縮の多発などは、ほとんどの患者さんが強い動悸を自覚し、気分不良や不安感を助長させます。また短期間心臓が止まるような発作性洞停止では強いめまいや失神発作を来たすことがあります。頻脈発作と洞停止を繰り返す徐脈頻脈症候群と呼ばれる特殊な病態もしばしば見られます。このような場合には早めの治療やペースメーカーの挿入が必要となります。

不整脈は単に脈の乱れだけでなく、長時間持続することで心臓が慢性的に機能しなくなる心不全の状態になってしまうこともあります。また心房細動などのために心臓内に血の塊が発生し、それが脳血管を詰めてします脳梗塞の原因にもなります。比較的若年で動脈硬化も強くない方が、心臓の不整脈で突然半身麻痺(脳梗塞)になることもあることを覚えて欲しいと願います。

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更に最も重篤となる致死性不整脈などは放置すると短期間に死亡に至ってしまうこともあり、1分1秒を争う不整脈もあります(心室細動、持続性心室頻拍、トルサード・ド・ポワンツ、房室ブロック、洞不全症候群など)。健康だと考えられていた人が、突然に致死的心室性不整脈(心室細動など)に見舞われて急死(心臓突然死)する日本人は年間約6〜8万人がいますので、決して人ごとではありません。

不整脈に関しては放置してより不整脈から致死的な不整脈まで様々な病態が含まれています。自覚する不整脈やドックや検診などで指摘された場合などは、必ず病院(循環器内科)を受診して、どのタイプの不整脈になのかを正確に診断しておく必要があると考えます。

2021年11月 3日 (水)

爪周囲炎の病態と治療法

今日のFM放送は指のトラブルについて説明をしました。以前のブログには「突き指について」「腱鞘炎とばね指」を書いていますので見て頂けたらありがたいです。

今日は皆様方も時々経験する爪周囲炎(そうしゅういえん(爪囲炎:そういえん))について説明をします。急性の場合が殆どと思いますが、慢性化したり時には、指全体に感染が広がり治癒するまでに時間がかかったり、場合には指を切断することもある瘭疽という病態もあります。

急性爪囲炎は多くの場合は、さかむけ、爪郭の外傷などが原因で細菌が爪の周囲の皮膚に入り込み炎症を起こすことで発症します。子供の場合は指を噛んだり、しゃぶるなどの行為によってもおきます。 慢性的な刺激や急性の爪囲炎を繰り返すことで、爪の横にぶよぶよした肉芽ができる場合もあります(=不良肉芽)。

診断は簡単(?)で、爪の縁側に沿って発赤、熱感、痛みが出ます。指の先は皮下脂肪や周りに余裕がないために、腫れ出すと、ズキンズキンとした拍動性の痛みが強く出ます。進行すると爪の周りに膿が貯まり、ぶよぶよしたり、皮膚の色が白く変色したりしてきます。そうなると結構痛くて病院を受診すると思いますが、診察で皮膚の下に明らかに膿が貯まっている場合には小さなメスや注射針で穿刺して膿を出す(排膿:はいのう)処置をします。 もしも皮膚が一部分白くなりかけれいる場合は皮膚の壊死が始まっていますので、麻酔しなくてもこの部分は殆ど痛みを感じません。切開した部分から多くの場合は褐色状の膿が溢れて、痛みも軽減するはずです。急性の場合の起炎菌は皮膚の表面に多い「黄色ブドウ球菌」が殆どですので、それに効果のある抗生剤を一緒に処方することもあります。

何時ものように文書力がないために図を書いてみました(文書を書くより図を描く方が時間がかかりました・・😰)

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何度も炎症を繰り返していると、上の3段目の様に、爪の周りにぶよぶよしたピンクっぽい盛り上がった組織ができてしまいます(不良肉芽)。塗り薬や抗生剤で様子をみますが、なかなか改善しない場合には、爪の刺激が大きいのでその部分の爪を斜めに切ることがあります。爪が生える頃には炎症も治まっています。
これまでは外来でも皆様方も経験すると思いますが、もっと怖いのは4段目の瘭疽という病態です。菌が指の内部まで入り込んでしまい、指全体は大きく腫れて、色も悪くなります。 激痛と炎症反応も強くなり、指の腱や骨にも炎症が及ぶ場合もあります。 その場合には膿瘍が形成されていると分かれば局所麻酔を行って指を貫通させるようなドレナージ術が必要になることもあります。
最後に爪の周りの炎症ですので、どの科に行けばよいのかと質問されることも多くあります。 個人的な意見しては炎症が軽ければ、皮膚科、整形外科、外科、内科でも構いません。 膿瘍が形成されている場合には、外科>整形外科>皮膚科という感じです。 瘭疽になると、入院施設のある形成外科、整形外科、外科のどちらかで行うことになると考えています。  最近は細分化されていますので、整形外科でも指は得意でない場合もありますし、外科でも瘭疽をみたことのない医師もいると思うのです。 瘭疽の場合は早めに治療が必要ですので病院を必ず受診して下さいね(まあ、ここまで来ると我慢はできないと思いますが・・・糖尿病性神経障害などがある場合には特に注意が必要です)。
手の爪回りの炎症は多くの方が経験すると思いますが、ひどい場合には早めに病院を受診して下さいね。

2021年10月27日 (水)

正しい情報を元に治療法を選択しよう

今日のFM放送は10月が乳がん撲滅のピンクリボン月間となっていますので、10月の最後になりましたが、乳がんについてこれまでに何度が説明をしました。(以前のブログ→乳がん発生年齢に注意

今日のブログの方は「正しい情報を元に治療法を選択してもらいたい」との思いで記載しました。治癒切除が可能だのにビタミンC多量投与や不適切な温熱療法などの民間療法に移ったり、あるいは詐欺まがいなベストセラーの本を信じて、現在の標準医療を拒否してしまう方がいらっしゃいます。 最終的に手の施しようなくなったり、金銭的に続かなくなりもう一度病院に駆け込む例もあります。私の経験上も何度もあり悔しい思いをすることもありました。

乳がんなどは乳房を切除すること自体に精神的な苦痛を伴うことも多くあります。消化器の癌や呼吸器の癌に関しても手術への恐怖や術後の回復過程を心配して躊躇することも多いと考えています。 今ではネット上に多量の医学情報が溢れています。 例えば、手術が嫌な場合は手術を避けるための都合のよい情報を観てしまいがちになります。 中にはひどい詐欺や有害な情報を医療者として発している場合もあります(私からすると医師免許は取ったとしても医師ではなくて詐欺師や悪徳商人、あるいは盲目的な教祖としか思えません)。

人は苦しい時にワラをも掴みたくなります。そのような時にこのような悪質なサイトや本に捕まってしまうのです。1度捕まるとなかなか巧妙な罠から抜け出せなくなってしまいます。

私が考えている医療情報の信頼度とネットの情報での信用性の乖離が起きていることが一つの要因になっているのではと思うのです(下図)。

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詐欺療法の医師の発言レベルは、医学情報の信頼レベルでは1番下の赤い部分となりますが、ネットや書物の情報では図の右側となり、目にすることも多くなる傾向があります。海外などの論文も引用したりして自分の都合のよい記事に仕上げて、最もらしいことを主張して素人を欺すのです。多くの医療者(専門家)のチェックを受けた信頼度の高い論文になることは決してありません。この種の詐欺医師は本などの印税や、訳の分からない高額な治療費を請求して金儲けはしても、人の命の責任は取らないのです。

もしもがんなどと告知された場合には、できるだけエビデンスの高い情報を得て欲しいと願っています。今では日本でもがんセンターなどが一般向けに情報を発していますので、この辺りを参考に調べて欲しいと願っています(→がん情報サービス)。
今の日本の医療体制は標準医療を基本に行っています。日本のがん治療の標準治療は手術・放射線療法・薬物治療・緩和治療を組み合わせて行っています。 なかには治療の話をすると、もっと新しく、最先端の治療を選択できないかと相談する方もいらっしゃいます。 恐らく「標準医療=普通医療<最先端医療」と誤って認識していると考えています。最先端医療は有効なものもありますが、まだ確率された治療法ではなく、最終的な解析で無効と判断されることもあるのです。 
可能な限りの現時点のデータを元にした常にアップデートされた最良・最善の治療法として、副反応も許容範囲であるのが現在の「標準医療」だと考えています
正確な情報を元に救える命は救いたいと願っています。詐欺療法に飛びつく方々の中には医療への不信感から入り込んだ方もいると考えます。 それを防ぐには医療者として患者さんに真摯に向き合い、二人三脚で治療を行うことを地道に実践して行くことが求められています。医療は患者さんためにあることをもう一度肝に銘じなければならないと自分に言い聞かせているのです💖

2021年10月13日 (水)

出血した方に同じ血液型だからと言っても直ぐに輸血しない理由(輸血後移植 片対宿主病 (GVHD)について)

今週のFM放送は、血液型について話をしました。一般の方では「血液型と性格」などが多くの方が関心があるのかも知れませんが、医学的な意味ではあまり興味がありません(笑)。 これまでにABOの血液型についてはお話しましたので(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-5820.html )、今回は輸血製剤の種類や輸血の際の検査法について少し記載します。

私がこの正月にハマった韓国ドラマの「愛の不時着」(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-e3ca5e.html)では銃で撃たれ出血した主人公を助けるためにお互いが輸血し合うシーンが出て来ます。実際に私のように手術を担当していると「何かあれば同じ血液型ですので私の血液を使って下さい」と親戚や友人から申し出ることがありました・・・・では実際は使うかとなると・・・丁重にお断りをしています。もし輸血を行ってもいいとなれば赤十字血液センターで皆のために献血して下さいと話をしています。

私の外科のスタートは心臓血管外科でしたが、当時35年以上前には心臓の手術日の朝には5〜10人程度の方(家族や同僚など)の献血を行い手術に備えたのです。そのため私も最初の数年間は朝6時には大学病院に着いて、手術に使う輸血の準備をしていたのです・・・今では脱血した血液をこのまま使う(=全血輸血)ことはなく、献血してとった血液をそれぞれの成分に分離した製剤を使用します(主に赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤の3種類に分けています)

皆様方から頂いた血液は血液センターで当然ですが、ABO血液型検査、Rh血液型検査、不規則抗体検査、HLA検査(一部)などをチェックすることになります。 実はそれ以外にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、HIV、HTLV-1抗体、ヒトパルボウイルスB19検査の検査などを行っているのです。折角献血して頂いてもウイルスなどがあれば輸血に回されず破棄されます。

私達の血液は血球成分(赤血球、白血球、血小板)と血漿成分(アルブミン、免疫グロブリン、凝固成分など)に分かれます。白血球は好中球、リンパ球、単球などが含まれています。 現在の輸血は成分輸血と書きましたが、白血球製剤はないのに気がつきましたか? ・・・白血球は免疫の司令塔的な役割です。そのためには自分と他人(異物)を見極め排除する作用が高いのです。 輸血をするにしても白血球が入っていると、輸血された患者さんの中で免疫反応のトラブルが起こり、最悪の場合は死亡することが分かっているのです。

二つ前の段に戻ると、以前の心臓手術では手術の直前に多くの方に献血してもらい、手術時に使うことが行われていました。なぜなら時間が経つと血小板や凝固因子が減少するために、出血の多い(人工心肺の回路を使うため)心臓の手術では止血の意味も含めて全血輸血が使われていました。 しかし手術は上手くいったのに、1〜2週間たってから肝機能障害や下痢、汎血球減少が起きて出血や感染で亡くなる方(GVHD(Graft Versus Host Disease:移植片対宿主病))が、1980年代の胸部外科の手術では660例に1例の割で発症したことが報告されていました。その前の年代ではこのような病態も判っていなかったのです。

現在ではGVHDは輸血された血液(移植片)に含まれる細胞障害性Tリンパ球であることがわかっています。 そこで、このGVHDを予防するために、輸血用血液に放射線を照射し、リン パ球の増殖機能を壊してから輸血することで防ぐことが分かるようになりました。平成12年からGVHDの確定例の報告はなくなりました。

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・・・ここまで真面目に読んで頂ければ、余程の状況下でなければ、例えドラマのように銃で撃たれて緊急の輸血が必要になってもヒロインから直接輸血をすることはないと言うことなのです。

 

2021年10月 6日 (水)

腰痛症と神経ブロック

今日のFM放送は腰痛について話をしました。私は外科が専門で整形外科やペインクリニックが扱う腰痛については素人ですが、多くの国民が感じている症状ですので、説明をしました。

厚生労働省の国民生活基調調査のデーターによると自分が普段感じている症状について、男性の場合は多い順番に①腰痛 ②肩こり ③咳や痰が出る となっています。女性では①肩こり ②腰痛 ③手足の関節が痛む となっています。        

2021年のノーベル医学生理学賞を皮膚の痛みや熱さ冷たさ(温度センサー)と皮膚の圧力を感じる(触覚センサー)基本となる「温度・触覚受容体」の発見を行った、米国のジュリアス教授と、パタプティアン教授の2人に決定されました。 そのセンサーは様々な組織に存在し、オシッコが溜まったり、食事が胃に入り満腹を感じたり更には呼吸の気管の空気量を調整することにも一役かっていることが判るようになったそうです。

今日の話題とした痛みのメカニズムの解明にも役立ち、慢性疼痛など様々な病気の治療法にも貢献できたそうです。

さて話を戻して、腰痛についてですが、まだまだ解明がされていませんが、悩んでいる国民は非常に多いことだと報告でも分かっています。(以前のブログに記載は→「ギックリ腰」頸椎症について

今日は神経ブロックにについて記載します。私の専門ではありませんので、日本ペインクリニック学会に神経ブロックのことが書いてありましたので紹介致します。

神経ブロックとは主に末梢神経(脳脊髄神経や交感神経節)に直接またはその近傍で局所麻酔薬を注入したり、高周波熱凝固、パルス高周波通電を利用して一時的あるいは長期間にわたり神経機能を停止させ痛みを軽減することを目的とした治療法とのことです。

神経ブロックの意義は、「知覚神経をブロックすることで(痛みの伝達を除外することで)痛みが低減」、「交感神経ブロックによる血行改善効果(血管を収縮する作用のある交感神経をブロックすることで血管が拡張し血行が改善)」、そしてこれらの作用に基づく「痛みの悪循環を遮断する効果」にあります。

神経ブロックの効果は、飲み薬や点滴と違い全身に影響を与えず病変部位に限局して発揮できる点も特徴的です。また、痛みを起こしている神経を遮断することにより痛みが本当に軽減するかを確認することにより、その神経が痛みの発生に関与しているか否かを判定するための診断的ブロックとしての役割もあります(痛みの発生部位の原因追及になります)。

素人の私がまとめた一般的な神経ブロックの種類は適応についてまとめました。ご参考にされて下さい。

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なかなか改善しない痛みの場合には専門外来(ペインクリニック)などで神経ブロックを受けるのもよいかも知れません。

急性腰痛など大凡1週間程度で痛みは改善すると考えますが、長引けば無理せずペインクリニックや整形外科の専門医の診察を受けて下さいね。

 

2021年9月22日 (水)

白癬症はなぜ水虫とかタムシと呼ばれたのか?

今日のFM放送は「白癬症」について話をしました(私は外科医ですので皮膚科は専門外ですので調べた範囲内で話をしました)

日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン(2019)によると、足白癬(足の水虫)の有病率は21.6%で日本全体での患者数は2,500万人程度。また、爪白癬(爪の水虫)は 10.0%(1,200 万人程度)と報告されています。

真菌の菌類(きんるい)とは、皆様ご存じのように、一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物のことなんです。その中の皮膚糸状菌(白癬菌)が皮膚に感染することを白癬症と呼んでいます。皮膚糸状菌は、タンパク質の一種であるケラチンを栄養として必要とする糸状菌(真菌の一種)です。ケラチンは人間の皮膚の外層を構成する成分で、同時に毛や爪の主な材料でもあります。皮膚糸状菌は、生きのびるために皮膚、毛、爪を養分とする必要があります

糸状菌のうち、皮膚の一番表面の角質層に感染して起こす皮膚疾患を白癬症といい、そのうち足に発生するものを俗に水虫(足白癬)といいます。外陰部に感染した場合は「いんきんたむし(股部白癬:コブハクセン)」、手足以外の胴体、腕などに感染したものを「たむし」や「ぜにたむし」(体部白癬)と一般的に呼びます。 さらに頭に感染してできる皮膚疾患は「しらくも」(頭部白癬)と呼びます。ですので水虫も、タムシ、インキンタムシ、ゼニタムシ、シラクモも、場所の違いで名前も変わってしまいますが、原因となるのが、皆、白癬菌であることには変わりありません。

以前は高温多湿となる梅雨時から夏にかけて多くなる季節病でしたが、暖房の普及、靴を初めとする生活の西洋化で、サラリーマンの4人に1人、オフィスレディの5人に1人が感染している通年病、国民病ともなってきています。(実際の白癬症のタイプについてては以前のブログを読んで下さい→水虫は季節病から通年病へ

今日の白癬症という医学用語での話ですが、俗に言う水虫といったりタムシ(田虫)と呼んだりと、カビなのに何故「虫」といったのでしょうか?

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折角ですので調べてみたら次のようなことがYahooニュースに書いてありました(→https://news.yahoo.co.jp/articles/6989228ad35c8a3631f3dfba7f37593288768bdf)。きっと医学書には載っていないと思います😅

「水虫という名前が登場したのは江戸時代のことだそうです。 田植えなどの田んぼ仕事の季節になると、当時は、足に強いかゆみがある水疱(すいほう)のできる人が数多くいたそうです。恐らく、1日中田んぼの水の中に入っていたでしょうし、帰って来ても雨の時期でもあるし、当時の農家の家の中も湿気が多かったと推測します。水虫にかかる環境ではあったはずです。 しかし当時は裸足だったでしょうから、冬場にはこのような症状はなくなっていたと考えます。 ですので、当時の人々は田んぼの中にいる虫が影響して足がジクジクと痒くなったりしたと考えるのごく当然のような気がします。 当然 今のように医学が発達している時代でもなかったので、カビが悪さをしているとは思いもせず、水の中にいる正体不明の虫に刺されたと思い込んでいた様だと記載されていました。なるほどこれが水虫とか田虫と呼ばれ始めた由来なのですね。

色々と調べると面白いです。

2021年9月 8日 (水)

胃がんの原因<慢性炎症や慢性の刺激による発癌のリスク>

今日(2021年9月8日)のFMレキオは「胃癌について」の説明をしました。

日本は世界的にみても胃癌の発生が多い国の1つです。

胃癌の診断や手術をする際に「どうして胃癌になったのでしょう」と質問を受けることがあります。今現在でも答えは簡単ではありません。

癌の一番の原因は・・・・「年齢です」・・・と答えるとある意味正しいのですが元も子もありません。 寅さん風に言うと「それを言っちゃあ、おしめいよ〜」となるわけですので、まじめに話をすすめます😅

現在の胃がんの主なリスクとしては①ヘリコバクターピロリ菌感染 ②多量の塩分 ③喫煙 ④多量飲酒 ⑤緑黄色不足・・など

胃がんは胃の粘膜から発生しますが、癌化はその粘膜内で何らかなの長期的な刺激や感染によるダメージの継続で細胞のDNAが次第に破壊されて癌化が始まって来ます。

昔ブログで書いたイラストを再度利用して、もう一度まとめてみたいと思います。

<胃の粘膜への長期的な刺激で何故がん化が起こるのか>歴史的な経緯を参考に簡単にまとめてみました。

(A) 少し歴史を遡りますが、発がんのメカニズムについて、19世紀にはデンマークのフィビガー先生の提唱した「寄生虫発癌説」とドイツのウィルヒョウ先生が唱えた「癌刺激説」の二大論争が起こりました。
当時ヨーロッパで煙突掃除夫の間で陰嚢癌が多発しました(陰嚢がんはこれまで稀でした)。ススがズボンの中に入り、陰嚢の部分に貯まることが原因ではないかと考えられました。

それを実験で証明したのは、実は日本の病理学者の山極勝三郎先生と市川厚一先生でした。今のように日本人の科学者が正しく評価されていたら恐らく日本にノーベル医学賞があとひとつ生まれたのは確かですこの2人は来る日も来る日もウサギの耳にコールタールを塗ることを繰り返すことで、塗った部分から癌が発生したのです。世界で初めて実験で癌を作り出すことに成功し「癌刺激説」が優位となりました。 持続する刺激や炎症が発癌と関与すること示唆する重要な実験でありました。

 →皆様方もB型やC型肝炎ウイルスの持続感染により慢性肝炎、肝硬変となり肝癌が発生することやパピローマウイルスの感染により子宮頸がんが発生することは皆様もマスコミ等でご存じと思います。

これらの歴史的な疫学により、上記のウイルスなどの持続感染でも癌化が起こることが分かっていたのですが、胃酸(=塩酸)がある胃の粘膜にはウイルスや細菌は住み着かないと研究者の間でも思い込んでしまっていました

胃酸の様な強力な酸性の中でも生き延びる細菌(ヘリコバクタ・ビロリ菌 )が胃の粘膜で見つかり、色々な病気と関連があることで、2005年のノーベル医学・生理学賞を受けることになったのです。

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これまで強力な酸性の胃液(塩酸)で細菌やウイルスは死滅するものと考えていたのですが、実際はピロリ菌はこの強力な胃酸から身を守りながら胃の壁に食い込むように生きていて、胃に慢性の炎症を引き起こします。慢性萎縮性胃炎とよばれ、胃癌の発生母地と考えられています。 胃に慢性の炎症を引き起こすことで胃癌になりやすい状態を作っていたのです。肝炎ウイルスの持続感染と似たメカニズムです。 ピロリ菌は幼少期に感染が起こると言われていますので、胃がん発生には何十年も慢性炎症を起こした結果、発症すると考えられています。胃がん以外にも現在ではピロリ菌関連疾患も次々と関連がはっきりして来ています。

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日本人の50代以上の年齢ではピロリ菌をかっている(?)のが70%を越えます。しかし皆が胃癌になるかというとそうでもありません。ただピロリ菌のいない人で胃癌になるのは稀でもあります。

ではピロリ菌だけが胃癌の発生と関与するのか? つい10〜20年前まで塩辛い食べ物を食べる地方で胃癌が多いため、塩分過剰摂取が胃癌発生に関与する最大の原因と言われていました。 今でも食塩濃度の高い食事の関与は明らかです。 その他に喫煙多量のアルコール緑黄色野菜不足食品添加物生活習慣病、加齢などなど・・・発癌と関与することが疫学的に分かっています。 さらに遺伝子の異常による関与も解明されつつあります。1つの因子だけでなく色々な原因が絡み合って癌が発症します。

私のような老外科医には遺伝子レベルのことにはついていけませんので、簡単に胃がんのリスクとなる慢性炎症や刺激を引き起こす原因をある程度排除出来れば胃がんの発生はかなり減少すると思います(年齢は防ぎようもないので😅)

日本では今後胃がんが減少して行きます。そして大腸癌や膵癌、乳がん、前立腺がんなどが増えて行くと思いますし、喫煙率の低下と共に肺がんも徐々に減少に転じると考えています。 

そのようなことを考えると日頃の生活習慣や嗜好品なども重要だと改めて思うのです(私はあまりやれていませんが😂)。

2021年9月 1日 (水)

夏バテの原因と対策

今日のFMレキオ「いきいきタイム」は夏バテについて話をしました。このブログでも夏バテについては何度か書きましたので同じ内容です😅

では「夏バテ」とはどのような状態でしょうか? 

実はその定義は難しくて、多くの場合は夏場に起こる疲労、倦怠感、無気力、めまい、食欲不振、不眠などを称して定義されます。夏バテは医学用語ではありませんので、強いて言うなら「暑熱性障害」とか「熱衰弱」が近いかも知れません。

(A)人間は体温の維持に沢山のエネルギーを費やしています。暑いと体に貯まった熱を逃がすため、体表の血管を広げ、汗をかいて体温の維持に努めます。そのため莫大なエネルギーを必要とすると共にこれらを調節する自律神経にも負担がかかります。

(B)クーラーなどがなかった時代は熱の放散のためエネルギーを費やされ、食欲も落ち、暑さのため眠れなくなり体の衰弱として現れました。いわゆる「夏負け」の状態で、夏に体重が落ちていく原因となりました。

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(C)それに加え(今はこちらの方が多いでしょうが)、現代社会ではクーラーの不適切な使用により、自律神経に更に負担がかかり異常をきたします。  クーラーのかけ過ぎた室内と暑い屋外を出入すると人間の体は夏なのか冬なのかわからない状態となってしまうのです。いわゆるクーラー病の状態で体温を調整する自律神経のリズムが乱れて、体全体の不調となります(暑い屋外で体表の血管や毛穴や汗腺が開き汗がでやすいようにしますが、急に冷えたクーラーの中に入ると血管・汗腺・毛穴などが閉まります、この調整をしているのが自律神経です。これが1日に何度も繰り返されると自律神経は疲れ果ててしまい、「もう勘弁して」となるのです)。

現代の夏バテは前者(A),(B)加えて後者(C)の病態も加わった、エネルギーの消費増大自律神経の不調が大きな要因となるのです。この様に夏の長い暑さで少しずつ、ダメージを受けた体は秋口にはとうとう悲鳴を上げてしまい、夏バテの症状が出現してしまうのです。


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<夏バテ対策>上の図を参考に夏バテ対策をとるように心がけましょう。

①ただでさえ高温高湿度の夏は自律神経に負担をかけています。現代人はそれに加えてクーラー使用のために短時間で温度差のある室外と室内を往来することもあります。私達の体にとって無理のない気温の適応範囲としは5度以内と言われています。極端に外気が暑い場合を除いて、外気温と室内のクーラーの温度差は5度以内に調整出来たら良いのかも知れませんね。出来ない場合は屋内では一枚余分に羽織ることが出来る衣服なので調整して欲しいと思います。

②気温が上昇すると動物は食欲が低下します。これは本来は寒い方が体温を維持するために莫大なエネルギーを消費するために食欲が増加するように作られ、暑いと熱産生は必要が少ないため食事の量も多くは必要としないためです。しかし適温以上に暑くなると発汗のためにエネルギーを使うことになります。夏は食べやすい様な食品を選んだり、十分なカロリーや水分やミネラルの補給なども心が得て欲しいと願います。

③暑いと寝苦しいものです。熱中症対策にもなりますので、夜間も上手くクーラーを使用して欲しいと思います。また夏は昼が長くて眩しい時間が多くなります。室内の明るさも上手く調整して寝やすい環境を整えて欲しいと思います。

9月に入りましたが、日本列島はまだまだ熱さが続くようですし、熱中症対策を取りながら夏バテを防ぐようにも心がけて下さいね。

 

2021年8月25日 (水)

抗体カクテル療法について

今日のFM放送は再度新型コロナウイルス感染症について話をしました。何度か話をしましたので、放送では、妊婦さんにとってのワクチンのメリットと感染した場合の連絡網の確認や危険性について追加して説明しました。後半では現在の新型コロナウイルス感染症の重症度と治療法について話をしました。私に取っては専門外ですので、可能な限り分かりやすくまた間違った情報でないことに気をつけて説明するつもりです。
まずはもう一度新型コロナウイルス感染症の症状と一般的な経過について、厚生労働省の新型コロナ感染症診療手引き第5.2班から引用します。言葉で説明するよりこの方が分かりやすいそうです。
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現在日本中、特に東京などで感染爆発に医療機関の入院体制が追いつかずに、本来なら入院の対象者が入院できずに自宅待機を強いられている厳しい現実に直面しています。 
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現在の症状を元に軽症から重症の診断基準や治療法について、上の図にまとめてみました。中等度1でも原則入院で急変時などに備える必要がありますが、東京では多くの方が自宅待機となっています。更にその上のより厳しい状態の中等度Ⅱの患者さんも入院できずに、不幸にも自宅で亡くなったというニュースで報道されています。 
ひとまずは感染者を減らして(=人流を抑えて)医療体制が追いつくまで全体の患者数を減らすことが僅々の課題です。 東京都や政府は酸素ステーションの前に人流をストップする政治決断をしなければならないと思うのですが・・・
新型コロナウイルスに打ち勝つには最も重要なのはワクチン接種率の増加です。多くの感染症では国民の6〜7割がワクチンを接種すれば集団免疫が出来て感染は落ち着くと言われています(デルタ株のような感染力が高い場合には7〜8割と更に多くの方の接種が必要になるようです)。
現時点で新型コロナウイルス感染症に対する特効薬はありませんでした。これまでは既存の薬を使うことで一定の効果を得ていますし、現在抗ウイルス薬(エボラ出血熱)のレムデシビルやリウマチの薬のバリシチニブや抗炎症作用の強いステロイド(デキサメタゾン)や血栓形成(D.I.C )予防のために抗凝固薬のヘパリンを用いる治療がなされています。 これらを組み合わせながら現場では使っています。酸素飽和度の状況で酸素投与や人工呼吸器到着、ECMOなどの体外循環装置を使用して救命を行っています。
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最近にわかに名前を聞くようになったと思いますが、コロナの切り札のように「免疫カクテル療法」が政治家からも名前が挙げられるようになっています。
以前免疫システムについては書きましたのでご覧になって頂きたいと思います→{免疫システムについて}ワクチンを打って感染を防ぐのはウイルスの持つスパイク蛋白質に反応する抗体を作ることにあります。 コロナウイルスが身体に入ると、私達の細胞の受容体にくっついて細胞の中に入り増殖します。もしもワクチンを打って十分な抗体が出来ると、ウイルスが入って来ても抗体がウイルスのスパイク蛋白に結合して細胞への侵入を塞いでくれます。
もしもワクチンを打っていなくて(ワクチンを打っても十分な免疫がついてない場合)も、外から(点滴で)この抗体に近い物質を入れると、免疫反応に近い状態に持って行くことが出来ます。 この抗体を遺伝子組み換えで作ることが出来るようになりました。 この抗体をいくつか作り出したいるのですが、1つでは不十分なために、有力な2種類の中和抗体(カシリビマブおよびイムデビマブ)を注射薬にしたのが、今回のワクチンカクテルと呼ばれているのです。 2種類の中和抗体であることより「カクテル」と呼んでいるのです。
このカクテル(中和抗体)はその原理から分かる様に、感染が起こって時間が経って使っても意味が余りなく、感染が起こった初期の段階で効果を発揮することがイメージとしても判ると考えます。 初期の段階から点滴治療を行えば重症化を防ぐことが可能という原理となるのです。海外の論文(→プレプリント)でも入院や死亡のリスクを70%減らすと報じられました。

これは素晴らしい!、画期的と思うのですが・・・では何が問題か・・・抗体を作るのにもの凄くお金がかかること、多量に作ることが現時点では出来ない為に供給量に問題がある点です。そのために現時点では重症化リスクのある対象者のみとなっています。光はみえているのですが、まだ一般的に使用できる段階になっていません。 
ですので現時点ではワクチンを早く全国民が受けれるようにして欲しいのです。

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