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医療

2019年6月12日 (水)

腎蔵の働き

今日のFM放送は「腎臓の働きや尿検査の異常」ついて話をしました。このブログでは腎蔵の機能について簡単に説明したいと思います。

腎蔵は後腹膜というお腹の袋(腹膜)より背中側にある左右一対の、そら豆型をした握りこぶし程の大きさの組織です。

腎蔵についてはよく知っている名前だけど具体的には何をする所なのでしょうか?・・・オシッコを作る所、悪くなったら透析になる程度は判っていると思います・・・皆様方(私の😰)も知識のまとめとして簡単に書いてみたいと思います。

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腎蔵には大きく次の5つの役割があります ①体の老廃物を処理する ②血圧を調整する ③赤血球を作る調整役 ④体液量・PH(ペーハー)・イオン濃度を調整する ⑤骨を強くする・・・多くの方は①は思いついてもその他は?ではないでしょうか。今日のブログはこれで十分ですが、少しだけ追記します😊

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①老廃物を処理する

腎臓は 左右あわせても200〜300g程度しかありません。しかしこの小さな組織に血液の1/4(25%)が流入します。 私達が生きて行く過程で分解されたり、余分に余った物質が血液の中に貯まってしまいます。 この血液の中の不要な物質を濾過して、必要なものは血液に戻して、不要なものはオシッコとして体外に排出する役目が腎臓がになっていることより、この小さな血液濾過装置の中を体の1/4の量が順繰り順繰り回っているのです。 ですから腎臓の中で血液は99%が戻され、1%(おおよそ1.5リットル)がオシッコとして処理されているのです。

②血圧を調整する

②−1:腎蔵には水分と塩分の排出量を調整することで、血管の中の水分の量と塩分の量(浸透圧)を変化させ、血圧を調整する役割があります。血圧が高い場合には、水分と塩分をオシッコに多く出すことで血圧を下げます。逆に血圧が低い場合には水分と塩分の排出量を減らして、血圧を高くするようにしています。 

②−2:また腎臓に入る動脈の部分には血圧のセンサーがあり、低い場合には腎臓から血圧を上げるエリスロポエチンというホルモンを出して血圧を上げるようにしています。

③血液を作る調整役

・血液成分(赤血球、赤血球、血小板)は骨髄のなかの細胞から作られるのはご存じかと思います。この中で赤血球の産生をコントロールするエリスロポエチンというホルモンは腎臓から作られます。貧血があると腎臓はこのエリスロポエチンというホルモン出すことで骨髄での赤血球を増やすようにして、貧血を是正してゆきます。 貧血などで一番多いのは鉄欠乏性貧血で鉄分の摂取が足りなかったり、女性で生理などで血液成分が失われる場合によく見かけますが、鉄分を摂取すれば比較的簡単に貧血は改善しますが、腎臓が悪くなると、エリスロポエチン産生されなくなり、腎性貧血になる場合もあります。

 

④体液量・PH(ペーハー)・イオン濃度を調整する役目

私達は普段水分を何リットル飲むかどうか、決めずに喉が渇いたら飲んだり、時には飲み過ぎになるほど摂ることがあります。しかし腎臓が正常ならとった水分の量の合わせて尿の量をコントロールして体の水分量を調整しています。また体の酸性・アルカリ性のバランスやナトリウム・カリウム、カルシウムなどのイオン濃度も調整してくれています。

 

⑤骨を強くする作用

カルシウムの体内への吸収を促す、活性型ビタミンDは腎臓で作られます。ですので腎臓が悪くなると、骨粗鬆症にもなりやすくなってしまうのです。

 

腎臓って小さいけど沢山の機能を担っている大切な臓器です。普段から水分をとる塩分を控えるなど腎臓に負担をかけないように意識していきましょう✌️

2019年6月 5日 (水)

胃酸分泌のメカニズムと潰瘍治療薬

今日のFMレキオは消化性潰瘍について話をしました。このブログでは消化性潰瘍の治療の変遷について書きたいと思います。

歴史上、消化性潰瘍と思われる症状や治療の記載は、ヒポクラテス(Hippocrates:紀元前460年)の時代と言われています。 近代的な治療は1700年代後半からで、1800年代には消化性潰瘍の原因として胃液の研究が進み、塩酸やペプシンなどの過剰によるもの、胃の粘膜の血流障害Th_説、迷走神経や自律神経失調などのストレス説など、現代に医療と結び付く説が学会で議論されるようになりました。

1963年に様々な意見を集約した形で攻撃因子と防御因子の破綻が潰瘍の原因とした説が認められ、現代まで支持されています。消化性潰瘍の原因を天秤にかけた状態でバランスが取れていたら潰瘍にならないが、何らかの原因で攻撃因子側に天秤が振れたときに潰瘍になるというモデルで、解り易いため現在でも説明に利用されています。

 

上の図のうち、潰瘍の治療薬の中心となるのは主に攻撃因子を防ぐことになります。

胃酸過多により胃痛や胸焼けなどの諸症状がおこり、内視鏡的観察では胃炎、潰瘍、逆流性食道炎などと診断されます。

<ここで胃酸の分泌が起こる仕組みについて書いてみます>

胃酸の分泌には「アセチルコリン」「ガストリン」「ヒスタミン」と呼ばれる神経伝達物質が主に関与しています。胃の粘膜組織にはこの神経物質を感じ取れる受容体が存在し、これらが出ると胃酸を分泌させる「プロトンポンプ」に作用して「胃酸の産生」が起こります。 これらの神経伝達物質は単独あるいは関連し合い胃酸の分泌を促進します。

例えば、空腹時に美味しい匂いを嗅ぐと「アセチルコリン」の分泌が起こります。アセチルコリンは胃の蠕動運動も促進しますので、「胃がグ〜」と動き出します(→側の人からも「お腹減ったの」と言われてしまいます😃)。 唾液の分泌も胃酸の分泌も促進されます。 今度は胃に食べ物が入ると、その刺激で胃壁から「ガストリン」が分泌されます。 アセチルコリンやガストリンは更に胃粘膜の細胞に作用して「ヒスタミン」を分泌させます。 

この3種類の神経伝達物質は最終的に胃酸の分泌を起こす「プロトンポンプ」に作用して、胃酸が分泌されるのです。

<次ぎに、胃酸の分泌が起こるメカニズムが判ったはずですので、治療薬の話を続けましょう>

昔は胃酸の産生を直接抑制する薬はなく、潰瘍の治療は酸を中和する制酸剤と胃の動き等を抑える抗コリン剤が中心で、大きな潰瘍に関しては効果が少なく、長期入院や手術が必要でした。

しかし1982年に開発された潰瘍治療薬のヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー:商品名としてはガスターが有名でしょうかが開発され、これはそれまでの薬と比べ画期的な効果をもたらすことになります。

更に最近では、最終的に「プロトンポンプ」が胃酸の産生に関わることより、回りくどいことはせず、直接この「プロトンポンプ」の受容体をブロックしてしまう薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)が開発され、現在では潰瘍や逆流性食道炎の治療薬の中心となっています。

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この薬が一般的に普及した1980年代後半からは、潰瘍による手術症例は激減し、今では出血、穿孔、狭窄の場合で内視鏡的な治療が効果がないと判断した場合に手術がおこなれています。 私より上の世代(70歳以上)の外科医は私達や更に若い世代よりも何十倍も胃・十二指腸潰瘍の手術を経験されています。 最近では更に胃酸の産生抑制効果の強いPPIが臨床で使われるようになり、大きな潰瘍も外来で治療可能となっています。

更に潰瘍と関係が深いピロリ菌の発見により、除菌療法も新たな治療として加わってきました。私がたかだか30年数年外科をやっているだけで潰瘍の治療も劇的に変化してきています(勿論その他の治療も劇的に変化してきていますが・・)。 医療が今後も進歩することで、様々な治療法が出てきたらいいなと願っています。 それでもやはり医療の中心は人です。 これからも禿げたオヤジ(←私です)はオヤジなりに頑張っていこうと思うのです

ピロリ菌は胃に住み着いて胃粘膜に慢性の炎症を起こすことより、萎縮性胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの様々な病気を引き起こすために、ピロリ菌陽性の場合はまず除菌療法を行い、その他の治療を組み合わせます。

 

2019年5月29日 (水)

表層性胃炎、びらん性胃炎、胃潰瘍の違い

今日のFM放送では消化性胃潰瘍の第1弾として話をしました。 消化性潰瘍については何度かブログでも書いていますが、今日は基本的な胃炎、潰瘍の違いについて説明したいと思います。

私達の身体の消化管(口腔内から出口の直腸まで)の表面は粘膜と呼ばれる薄い組織で被われています。この粘膜の下には、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)があり、これが基本的な消化管の壁の構造となっています。

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胃炎と言う言葉も皆様方は良くご存じだと思いますが、胃炎もその深さによって表層性胃炎とびらん性胃炎に分かれます。胃の表面の粘膜だけに病変があって、炎症を起こし赤くなったり浮腫んだりしている状態が「表層性胃炎」と呼びます。 様々な原因で粘膜が傷ついて、粘膜がえぐられ、欠損する場合があります。 粘膜が欠損してもその下の粘膜筋板までは達していない浅い病変の場合は「びらん」と呼んでいます。この状態が胃で起これば「びらん性胃炎」と呼んでいます。

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では、もっと傷がついて粘膜筋板より深い欠損となってしまう状態はとなると・・・これが「潰瘍」と言うこととなり、「胃潰瘍」の状態となるのです。 潰瘍でも浅いものから、筋層に及ぶもの更には漿膜を超えて胃に穴が空く(穿孔)と重篤となることもありますし、粘膜下層や筋層には太い血管もあり、潰瘍の部分にこの血管があると大出血をする場合もあり、吐血や下血やショックとなる場合もあるのです。

びらんと潰瘍を何故分けたかというと、びらんと比べて潰瘍はより重症と言うこともありますし、治った場合に、びらんの場合はすぐに正常な粘膜に被われ、後まで残る(瘢痕)ことはありません。 潰瘍(浅い場合は判らないことも)の場合は治った場合、回の粘膜に引きずれが起こって、潰瘍瘢痕として傷跡が後々まで残ってしまいます。 ですのでびらん性胃炎と言われていても治った後に胃カメラを受けても全く痕跡もなく判りませんが、潰瘍の場合には「以前潰瘍になったことがありますね」と指摘されるのです。

2019年5月22日 (水)

頸椎症について

今日のFM放送は首の痛みについて説明しました。 ブログにはその中から「頸椎症」について記載してみます。

人間の体の屋台骨を支えている椎体は上部から頸椎(7本)、胸椎(12本)、腰椎(5本)からなっています。この骨格は私達の姿勢の維持や運動を支えるだけでなく、椎体の真ん中に脊柱管というトンネルを作り、その中の脊髄神経を保護する役目をになっています。

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頸椎症の原因や症状に関しては頸椎だけでなく胸椎、腰椎に起こっても同じ病態ですので、イラストにしましたので皆様方も考えながら読んで頂くと嬉しいです。

・原因: 椎骨と椎骨の間にはクッションの役目を果たす椎間板という軟骨組織があります。椎間板は20歳を過ぎた頃より年齢と共に水分が失われて硬くなって、ヒビが入ったり、圧迫されて飛び出してしまうこと(ヘルニアと言います)も起こります。これも加齢と共に周りの椎骨自体も弱くなり、圧迫骨折をしたり、長年の使用で骨棘という骨の飛びだしが出たりします。また神経の入っている脊柱管の後方には強力な靭帯があるのですが、これが肥厚して硬くなって飛び出すこともあるのです。

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・症状: 脊柱管の中の脊髄という神経の束は私達の脳と体の隅々を結びつけているまさに大動脈の神経です。 ですので症状はどの部位で神経が圧迫されるかによって決まります。 上の図を見て貰うと判ると思いますが、椎間板ヘルニアや骨が前方に飛び出しても神経を圧迫しなければ頸椎症の症状は出ませんし、圧迫骨折があっても神経を圧迫しなければ、骨折による骨の周りの痛みだけで済みます。 しかし交通事故などで骨折と共に脊髄が圧迫されて、半身麻痺などの麻痺が起こる場合もあるのです。

頸椎の場合の症状としては、首の痛み、手(足)のしびれ感や感覚異常がでたり、ひどくなると痛みを感じないなどの知覚障害や手足などの細かい作業が出来なくなる場合もあります。脊髄神経は全身隈無く伸びていますので、時には膀胱や直腸の神経障害もでて、排尿障害や排泄障害も出現することもあります。

この様に圧迫される部位により多彩な症状が出ます。

・治療法に関しても様々です。 その人の生活環境や不自由さで選んでゆきます。 装具療法、薬物療法、牽引療法、温熱療法、理学療法(リハビリ)、神経ブロックに手術など色々ですので、専門の整形やペインの先生と相談して決定して欲しいと思います。

2019年5月 8日 (水)

大型連休明けの5月病に注意。

今回のような10連休は国民に取っても経験のないことでした。例年この時期に急に学校に行きたくない、仕事に行きたくない、辞めたいと思う方が増えてきます。一種の適応障害の範疇にはいりますが、日本ではこの時期に多くなることより5月病と名付けています(医学的な病名ではありません)。今年の10連休がどのように響くのかは今後検証が必要かも知れません。

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日本の場合は4月が年度初めで、大学進学、新入職や職場異動などが新しくはじめる時期となり、その1ヶ月間は多くの方が非常にストレスを感じる期間となります。 そして1ヶ月程度すると、少し慣れるとともに、希望や努力してやっと入った学校や職場に対して「そんなはずじゃなかった、目標と違っていた、こんな人間関係ではなかった」など違和感やギャップが出てくる時期ともなります。 疲労感や集中力の欠如、食欲の低下、不眠などが出やすくなってしまいます。そのようなサインが出たら「5月病」かも知れないと考えた方が良いかも知れません。 これはうつではなくて、いわゆる適応障害の範疇に入る症状です。 この時期にストレスを貯め込まないでリフレッシュしたり、同僚や家族に今の心境を話したり共有することが出来れば一番良いと思いますし、専門のカウンセリングや心療内科などの専門を訪ねるのも良いかも知れません。

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本来ならこのような時期には何処か出かけたり、自分の趣味を行ったりするのは良いと考えるのですが、今回の10連休は余りにも長かったことで、時間配分などを間違うと逆に肉体的にも精神的にも仕事や学校の生活に再度向かう気力を削いでしまう可能性がないかと心配します(専門家でもない私の意見ですので間違いかも知れません・・)。

長期的に休みを取れた方は仕事始めは辛いと感じると思いますし、特に5月病になりかけている方はもっと辛い状況だと思います。今は慌てることなく、まずは生活のリズムを取り戻すことにして専念して、頑張りすぎないことです。 本人が一番辛いのですから、職場や学校の関係者、家族もサインを見逃さないように声をかけて欲しいと考えます。 周りと自分との関連性において一過性の適応障害(5月病)を長期的なうつ状態(自分が悪いとか能力がないと内向的あるいは自虐的に落ち込んでしまう)にしないように早めにチェックして欲しいと願います。 

5月病になりかけた新人の皆様には、禿げた老外科医からのアドバイスとして「人生には無駄なことも、回り道のことも多いのです、急いで結果を出さずに構えてほしい」と訴えたいですね💖

2019年4月24日 (水)

高血圧ガイドラインが改訂されました

今日のFM放送は、高血圧について説明しました。丁度明日、5年ぶり改訂の高血圧ガイドラインが発表され、より早期に治療開始、高圧目標も厳しくなるとのことです。

血圧が高い状態の持続による脳心血管病発症のリスクを減らすことが目標となります。現在日本人の高血圧患者数は4300万人と言われていますので、如何に日本人が高血圧患者が多いかわかります。そのうち血圧を基準値にコントロール出来ている方は1200万にとどまっていることより、早期からの生活習慣改善によって高血圧患者と予備軍の方々の合併症を減らして生命予後の改善を目指すことを目標にガイドラインが改定されています。

・今回の改定にて、「高値血圧」という新たな血圧の分類が出来ました。これまでは高血圧症と正常血圧の間を正常高値血圧と定義していたのですが、そのうちでも血圧が130~139/80~89の方は統計的にリスクが増加していることより、この血圧の方に「正常」という名前で呼ぶと勘違いしてしまうために「正常高値血圧」から正常を覗いて「高値血圧」としています。
・・・もうちょっとましな命名法はないかとも思いましたが、ようは高血圧まではいかないが、推奨の血圧の120/80mmHg未満の「正常血圧」より注意が必要な血圧の方を拾い上げて、「高血圧症」になる前の注意が必要と促したことになるのでしょうか? 

<従来の高血圧の基準値:最高血圧(収縮期血圧)//最低血圧(拡張期血圧)mmHg>

・正常域血圧・・・①正常血圧     :120未満 /   (かつ)  / 80未満

         ②正常高値血圧:120~129/  (かつ)  / 80未満

         ③高値血圧  :130~139/ (かつ・または  )/80~89

・高血圧症は従来の基準と同じで Ⅰ度高血圧(140~159/90~99)、Ⅱ度高血圧(160~179/100~109)、Ⅲ度高血圧(180/110以上)

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今回のガイドライン改定に併せて、血圧を下げる目標もより厳しくなりました。例えば成人で75歳以上なら、これまでは140/90だったのが130/80 と10程度下げられていますし、75歳以下の場合は150/90だったのが最高血圧が10ほど厳しくなり140/90 となっています。 また糖尿病患者、冠動脈疾患患者(狭心症、心筋梗塞)、慢性腎臓病患者(蛋白尿陽性)などの場合は130/80以下に統一されています。

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これにより、血圧により早いうちから減塩に取り組むなどの生活習慣改善を促し、それでも高い場合はリスクをより減らすための厳密な血圧管理を行うようなっています。 

これまでこの境界域にある日本人は1000万人もいると言われますので、この方々が如何に減塩や運動療法、禁煙などの生活習慣を改めて、降圧剤を使わなくて済むようにしなければ更に医療費の増加を招くことになります。

血圧の管理を医療任せではなくて、自分の出来ることをまず行い、それでも高い場合には早めに内服治療を行い、心臓や脳の血管、腎臓などを保護して、健康長寿を達成したいものですね。

2019年4月10日 (水)

下剤の長期服用に 注意(警告?):大腸メラノーシス

Th_303965_1   便通異常(便秘や下痢など)は多くの方が経験していると思います。年齢とともに便秘気味になる方は多くいらっしゃいます。そのために便秘に対して長期的に内服治療を行っている方も多いと考えます。次第に何種類の下剤や浣腸などを行っても改善せずに、私達の外科で大腸の大部分を切除する方がいます。 その原因の一つに下剤の選択の誤りにより大腸メラノーシスとなり神経叢も破壊されて大腸が全く動かなくなった症例が多く含まれています。

正常な大腸はピンク色した粘膜で、鎮痙剤の注射をせずに大腸内視鏡を行うと規則正しく腸が動く蠕動運動を観察出来ます。 しかし中には腸の粘膜が真っ黒くなり、殆ど腸が動かない方を見かけます。この粘膜が黒ずんだ状態を大腸メラノーシス(大腸黒皮症)と呼んでいます。

この大腸メラノーシスはセンナ、大黄(ダイオウ)、アロエなどの大腸刺激性下剤(アントラキノン系下剤)を長期連用(平均して9ヶ月以上)している方に起こって来ます(もちろん全員に起きるわけではありません)。

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大腸メラノーシス(大腸黒皮症)は、メラニン様色素がマクロファージに貪食されることにより大腸粘膜が淡褐色から黒褐色を呈するもので、内視鏡で観ると本来ピンク色の大腸の粘膜が黒ヒョウ柄のどす黒い色に変色していること確認出来ます。

色が変わるだけなら良いのですが、、腸管内の神経叢も破壊し、腸の蠕動運動が低下し更に便秘状態を増悪させてしまいます。早めに気づいてこれらの下剤を中止すれば1年程度で回復することもありますが、戻らない方も実際はいらっしゃいます。

ですので、今回は私としてはちょっと強い口調となりましたが括弧して(警告)とタイトルに入れたのです。

便秘に対してはまずは水分を多めにとる、食事の改善(繊維質の多い食事)や運動などの生活の改善が先です。排便する姿勢も重要で洋式の場合で本を読むように直立姿勢では、排便時のいきみがお尻の後方(仙骨)に向かいます。実際の直腸は仙骨から前方に向かいますので、前屈みで力んだ方がいいのです。排便姿勢からすると和式の方に分配が上がります。

その次ぎに下剤を考えて下さい。

下剤の大まかの分類では①塩類下剤 ②腸管刺激性下剤 ③上皮機能変容薬 があります(もっと細かな分類方法もありますが)。 生活習慣を改善しながら①より使い始め、続いて③の下剤を試して行きます。それでも駄目だったり短期的な使用として②の下剤を検討するのが現時点での慢性便秘に対する考え方ではないかと思います。

②を多くの方が使っている理由に、ドラッグストアなどでのキャッチコピーの誤りがあると考えています。「漢方などの自然の生薬は体にやさしい」とか「毎朝スッキリ」などという言葉が並べられています。

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・・・・ここまで読んで頂いた方にはもうお分かりかも知れません。 アロエ、センナ、ダイオウ、カスカラなどの成分が含まれる市販下剤、医療品ではプルゼニド、センノサイド、アジャストA、ヨーデルなどの大腸刺激性下剤、漢方薬の成分に大黄が入っている下剤などは長期連用を避けるべきですし、もしも長期連用が必要なら時々は大腸内視鏡検査を行って自身の腸にメラノーシスが起こっていないかを確認する必要があると考えています。

・・・あら「私も飲んでいる」と言う方も多いはずです・・・決して飲んでは行けないと言っている訳ではなく、短期間にするか、長期に飲むなら大腸メラノーシスのことを理解して検査を受けて欲しいと思い今回は書いてみたのです。

きっと心配なされる方もいると思いますので追記しておきます。大腸メラノーシスにおける大腸がんの有病率は、メラノーシスのない場合の有病率と変化なく、発がんとの因果関係は否定的です。

 

 

2019年4月 3日 (水)

過敏性腸症候群の特殊性

慢性的に腹痛(あるいは腹部不快)を伴う便秘や下痢を繰り返すも、内視鏡や血液検査などをしても異常を指摘できない疾患を「過敏性腸症候群」と呼んでいます。(今の現代医学で解明されていないだけでもっと違う病態があるのかも知れませんが・・)。<以前のブログにも書いていますので重複する部分が多いです(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-221e.html )>

Th_742954  多くの方が緊張やストレスでお腹が痛くなったり、トイレに行きたくなった経験はお持ちだと考えます。 しかしこれが毎日となると辛いと考えます。通勤時、あるいは学校や会社で、何度もトイレに駆け込む場合は余計にストレスに感じるはずです。

私達の胃や腸(小腸、大腸)の運動は私達が意識的には調節出来ない自律神経がコントロールしています。この胃腸をコントロールする働きに異常が起こると、便秘や下痢などの排便異常、腸蠕動異常による腹痛、嘔気などが出現します。

便通異常は消化器疾患の中でも最も見かける症状で、日本人では10%程度の方に認められるそうです。頻度が高いのは20〜40代に多く、男女比では2:3でやや女性に多く認められます。男性では下痢型が多く、女性では便秘型が目立ちます。不思議なことに統計上、人種間や国別でも差があり、東南アジアで7%、南米で21%、米国で10%、フランスで2%で都市部や農村部、職種によっても有病率が違うのです。 これらを観ても様々なファクターが過敏性腸症候群に関与しており、簡単に原因や治療法を決定出来ない難しさを含んでいると考えられます。

過敏性腸炎のタイプは①下痢型、②便秘型、③交代型に分かれます。下痢型は突然起こる下痢が特徴です。そのために通勤や通学、あるいは仕事上で支障が出ます。便秘型は腸の蠕動がスムーズに行かずに便が停滞します。コロコロした硬い便となり排便が困難になったりします。交代型は下痢型と便秘型が交互に繰り返します。

原因として現在として上がっているのが、心理的なストレス、腸管内の細菌叢の異常、腸管粘膜の炎症、神経伝達物質(セロトニン、コルチゾール、ヒスタミン、一酸化窒素など)、遺伝などがあります。どれも決定打はありません。

この様な病態を踏まえて、治療は様々な角度から行ってゆきます。ストレスや環境要因を整理し、生活リズムや食生活(繊維質の増減、油脂減少、香辛料減少など)を整えるようにします。それと併せて薬物療法として下痢止めや鎮痙剤、下剤や高分子重合体、セロトニン受容体拮抗薬などを組み合わせて治療を進めて行きます。

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多くの方が悩んでいますし、治療も一つで完結するものでもありませんので、家族や特に仕事場や学校などの周囲の理解が重要となります。

 

2019年3月27日 (水)

春先からの感染症に注意

寒い冬の時期はインフルエンザやノロウイルスなどの感染性疾患の流行が起こります。春先に向けてインフルエンザなどは少なくなるのですが、春先から初夏にかけて流行しやすいウイスル性疾患に注意が必要となります。

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 これからの時期は昨年から流行が続いている風疹(三日はしか)、麻疹(はしか)と流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふく風邪)が流行する季節となります。 どちらもウイルス性感染症で予防にはワクチン(あるいは既に子供の頃に罹患し免疫が出来ている)しかありません。

日本では4月に新年度がはじまり、入園、入学、進学、新社会人として新しい(or初めての)集団生活に入る方が多くいます。新しい生活では、これまでと全く違う環境、集団生活の中で、多くの方と接する機会が一気に増える時期になります。 ワクチン摂取や罹患により十分な抗体を持っている方ならいいのですが、 特に子供達にとっては親子関係以外に密に接することがなかった中で初めてのウイルスに出会う機会が増えるのです。今度は子供達から大人の社会へと感染が広がることで、この4月以降、集団生活の中で麻疹、風疹、流行性耳下腺炎などが増えるのです。 また海外から日本に持ち込まれる機会も増える季節になります。

前回のブログでも書いた様に、春先は気候が目まぐるしく変わる季節で多くの方が知らず知らず体調を崩す季節でもあるのです。これまでの日本においてはワクチン行政の不備もあり、子供の頃に十分なワクチンの接種を行っていない世代も多く混在しています。

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このような社会的、気象学的な原因も重なって春先から初夏にかけてウイルス性の感染症が流行することもあるのです。皆様方も感染症の情報に気をつけたり、自分自身のワクチンの接種状況などを母子手帳などでもう一度把握して欲しいと願っています。 

2019年3月13日 (水)

咳喘息

今日のFMは春の季節に変化による体調不良について話をしました。その中で、咳が長引く咳喘息についても話をしましたので、ブログでは「咳喘息」について説明します。                        
冬から初春にかけて体調を崩す方の中で、風邪や気管支炎になる方も多くいらっしゃいます、インフルエンザもまだ流行っています。Th_
多くのウイルスや細菌による上気道炎・気管支炎は2週間程度では改善します。2週間以上咳が続く場合は、普通の風邪以外を考えて病院を受診した方が良い場合もあります。
肺がん、肺炎、心不全などの重篤な疾患以外に、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患COPDの悪化によるものもあります。            
・気管支喘息は一般的にはアレルギー反応にともなう気管支の慢性炎症により、気管の狭窄や痰詰まりがおこり、ゼイゼイ・ヒュージューなどの呼吸困難が起こってきます。アレルギーを主体とする病態ですので、ステロイドなどの吸入が基本の治療となります。
・しかしながら、元々は喘息がない方が、風邪をひいた後に、なかなか咳が治らずに続く方が最近多くなっています。 熱もないし、どうにか働ける為に病院にも行かずに我慢している方が多くいらっしゃいます。 ただ咳喘息は気管支喘息の1歩手前の病態で、放置することで3人に1人が気管支喘息に移行すると言われていますので、移行を食い止める必要があります。
Th__2 ・咳喘息はウイルスや細菌などが原因で気管に炎症が起こり、そのために気道の過敏性が増加して、咳き込みが治らなくなってしまう病態です。 
気道の過敏性が上昇することで、これまでには経験したことがない条件でも咳が誘発される様になります。 例えば、掃除をしたりホコリの多い室内だけでなく、冷たい空気に触れたり、香り、花粉、湯気などに接しただけで、咳き込んでしまうようになります。
・これまで喘息と言われたことがない方が長引く咳の場合はこの咳喘息に注意が必要になります。
咳喘息を疑う咳の特徴として、熱はないこと。そして「天気によって咳がひどくなる」 「夜間(寝入りばなや深夜、早朝に咳が出る」 「冷たい空気に触れたり、湯気が出る場所、エアコンなどの気流に接すると咳が出る」 「会話中や会議などで咳が出て、止まらなくなる」 「咳がいったん出るとなかなか止まらないも、出ない時には暫くでない場合もある」 「運動すると咳がでる」 「普段より息苦しい感じもあり、ゼイゼイやヒューヒューすることもある」・・・・・・
この様なことが2週以上続いたら、咳喘息の可能性がありますので、呼吸器内科などを受診された方が良いと考えています。
・印象としても最近増えて来ている気がします。皆様方も咳喘息には気をつけて早めに直されて下さいね。

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