皆様方も病院や健診などで尿検査を受けたことがあると思います。昔からある検査だけど今どき必要あるの?と思ったりしませんか(これは私の患者さんからも定期の採血で腎機能も調べているので尿検査は不要ではと質問を受けたことです)
もちろん腎機能をみる目安にもなりますが、糖尿や腎盂炎、膀胱炎などを見つける検査にもなります。針が苦手な人にとっては痛くないですし、尿は簡単に採取出来て便利です😅
皆様方もご存じのように尿検査では主に尿の中に含まれる糖、蛋白、潜血の有無やその程度を調べることで重要となします。実はそれ以外にも尿比重、尿沈渣(にょうちんさ)など詳しい項目が含まれていることもあります。
以前にも書いた様に、腎臓には血液を濾過し、再吸収しながら尿を作り出します。尿の異常が出た場合に腎臓のどの部分が障害されているのかもある程度推測することも可能なのです。
①尿蛋白について:(基準値):陰性(-)
腎臓は血液を濾過して余分な物を尿として排出します。しかしながら人間にとって必要な血液の蛋白も同時に排出してしまうことがあります。尿蛋白が検出されると言うことは、腎臓が正しく機能していないということが推測されます。
ただし腎機能が正常な方でも、激しい運動をした後や生理前後、発熱時、ストレスがあるときなどは異常値が出ることもあるので、再検査を受けて再度尿蛋白が検出されるかどうかが重要となります。
(異常があった場合に考えられる病気)・腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎など腎臓の病気が主ですが、時々膀胱炎や尿道炎などといった尿路感染症でも認められることがあります。
②尿糖について:(基準値):陰性(-)
本来血液の中にある糖分(血糖)は私達の栄養源ですので無駄に尿に逃がす必要はありません。尿に糖が出ると言うことは、血液の中の糖分が多すぎたり(糖尿病)、あるいは糖の再吸収が落ちる腎臓の機能低下が起きた時に糖が尿中に漏れ出てきます。それ以外に時々、妊娠中や高齢の場合は糖が出やすいです。それ以外にも疲労やストレスで糖が出てくることがありますので、異常が見られる際には日を改めて検査を行います。
(異常があった場合に考えられる病気)
糖尿病、甲状腺機能亢進症
③尿潜血(尿の中の赤血球)について:(基準値):陰性(-)
尿に血液が混じっているかどうかを調べる検査で、尿が排出されるまでの器官に異常があると、潜血が見られます。一時的な潜血はよくあることで、一度潜血が見られたからといって疾患があるとは限りません。
また、生理中の女性が尿検査を受けると、潜血と診断されることもあります。正しい結果を知るためには、いずれの場合も再検査が必要です。
(異常があった場合に考えられる病気)
・急性腎炎、慢性腎炎、腎結石などの腎臓の病気や腫瘍
・尿管結石、尿管腫瘍、尿管異物などの尿管の病気や腫瘍
・膀胱炎、膀胱結石などの膀胱の病気や腫瘍
・尿道炎、前立腺炎などの尿道の病気や腫瘍
①②③が主に皆様方が通常の病院での検査や人間ドックなどの健診で主に行われる検査となります。次の尿沈渣や尿比重は更に踏み込んで診たい場合に追加することが多い項目となります(最初から検査に組み込まれている場合もあります)。
④尿沈渣について
尿沈渣は①、②、③を調べ終わった尿を遠心分離器にかけて、沈殿した中の細胞成分を調べる検査となります。これを顕微鏡で観察して、細胞成分の数や形状から分析します。
1・赤血球がみられる場合:腎臓・尿路疾患および全身性の出血疾患の一部に見られます。
細かな病名としてはIgA腎症、膜性増殖性腎炎、急性糸球体腎炎、ループス腎炎、間質性腎炎、急速進行性腎炎、嚢胞(のうほう)腎、腎梗塞、遊走腎、特発性腎出血などが疑われます。
2・白血球がみられる場合:腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎などの腎臓、尿路系の感染症が疑われます。
3・上皮細胞がみられる場合:上皮細胞には扁平上皮細胞、尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞、円柱上皮細胞、卵円形脂肪体、核内封入体細胞、異型細胞などがあります。癌などの発見に繋がることがあります。
4・円柱がみられる場合:尿が尿細管で停滞し、濃縮されて鋳型となったものが硝子円柱です。腎臓・尿路疾患の病態や重症度の把握が可能となります。
5・それ以外に細菌、真菌、原虫などの病原体が発見されることがあります。
⑤尿比重について
皆様方も脱水の時には尿が濃縮していることに気がついていると思いますが、腎臓は体内の状況に応じて濃度の異なる尿を作って排泄させることにより、体内の水分量を調整しています。しかし、腎臓に異常があるときは調整が利かず、基準値に比べてより高い数値が出ることがあります。
(異常があった場合に考えられる病気)
・尿比重が高い場合…糖尿病、ネフローゼ症候群、心不全、脱水症など
・尿比重が低い場合…慢性腎炎、腎不全、尿崩症など
このように尿の検査で色々なことが分かるのです。最初の質問の答えとなったでしょうか? ただし特に問題なくても異常値が出ることがあるために再度検査を行う必要もあります。
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