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医療

2025年11月12日 (水)

中性脂肪は私達の味方(悪者にしないでね😊)

今日のFMレキオは中性脂肪についてお話をしました。中性脂肪はお腹のたるみだけでなく生活習慣病とかメタボリックの関係で兎角嫌われがちですが、本当にそうでしょうか?


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いつもは悪い側面だけを話すことが多いのですが、本来の中性脂肪は正義の味方であって悪ものではなす。今日は彼ら(中性脂肪)の名誉回復のために記載します

 

中性脂肪を蓄える組織が脂肪細胞でその細胞が集まった組織を、皮下脂肪や内臓脂肪などと呼んでいるわけです。脂肪細胞は成人で250〜300億個あります。その細胞の特徴は内部に中性脂肪を蓄えることで、大きさが3〜4倍まで増大できます。そのため私達は痩せたり太ったりする訳なのです。

 

中性脂肪の役割としてまず上げられるのが「効率のより備蓄用のエネルギー源」です。糖分や蛋白質と較べ同じ重さなら2倍以上のカロリー(糖質と蛋白質は1gで4カロリーですが、脂肪は1gで9カロリー)を有し、食事の間や長時間の運動などではエネルギー源として消費されます。

山で遭難したり、地震災害で何日も水だけで生きていけるのはそのためです。脂肪には「断熱材」としての役割があります。寒い冬などでは外気より体を守り、体温を一定に保つ為に必要となります。衝撃を受けた時には「クッション材」として働き、スポーツなどのコンタクト競技でも骨や筋肉、内臓を守ってくれます。女性の場合は皮下脂肪の比重が多いお陰で柔らかく赤ちゃんを抱っこしても衝撃を吸収してくれます。

 

中性脂肪の不思議を解くために、少し掘り下げみます。中性脂肪の構造はグリセリン脂肪酸からなっています。ですので中性脂肪が分解するとまずグリセリンと遊離脂肪酸になります。グリセリンは肝臓で代謝されブドウ糖になります。糖分をとらなくても、脂肪が分解されブドウ糖が出来、直ぐにエネルギー源になれる訳です。

次いで脂肪酸はどうなるかと言いますと。主に筋肉(骨格筋や心筋)に運ばれて酸素と反応して私達の細胞のエネルギー源であるATP変換され消費されて最終的には炭素と水になります。このことよりウォーキングをはじめてとする有酸素運動が脂肪燃焼にはよいと言うことが分かるかも知れませんね。                        

さっと通り過ぎましたが脂肪を含め栄養素を分解すると体の中で水(代謝水)が作られるのです。おおよそ人間は1日に300mlの水を体内で作っているのです。

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脱線ついでにラクダのコブの中には多量の脂肪組織が含まれているため、ラクダは飲まず喰わずに歩いても、そのコブの脂肪を燃焼させることでカロリーを作り出し、更に代謝水を作り出すことで乾燥地帯でも生きて行く術を身につけた動物となっていったのです。

 

過酷な環境を生き抜くラクダたちも既に自然界ではヒトコブラクダは存在せず、今いるのは家畜だけだそうです。フタコブラクダはモンゴルや中国のゴビ砂漠などにわずかに生き残っているのみで、絶滅危惧種に指定されており、個体数は減少傾向にあります。なんとなくラクダはシルクロードの商隊やアラビアのローレンスをイメージさせてくれる動物です。これからも地球上で生き残って欲しいものです😊

2025年11月 5日 (水)

手のトラブル:爪周囲炎について

今日のFM放送は指のトラブルについて説明をしました。以前のブログには「突き指について」「腱鞘炎とばね指」を書いていますので見て頂けたらありがたいです。

今日は皆様方も時々経験する爪周囲炎(そうしゅういえん(爪囲炎:そういえん))について説明をします。急性の場合が殆どと思いますが、慢性化したり時には、指全体に感染が広がり治癒するまでに時間がかかったり、場合には指を切断することもある瘭疽という病態もあります。

急性爪囲炎は多くの場合は、さかむけ、爪郭の外傷などが原因で細菌が爪の周囲の皮膚に入り込み炎症を起こすことで発症します。子供の場合は指を噛んだり、しゃぶるなどの行為によってもおきます。 慢性的な刺激や急性の爪囲炎を繰り返すことで、爪の横にぶよぶよした肉芽ができる場合もあります(=不良肉芽)。

診断は簡単(?)で、爪の縁側に沿って発赤、熱感、痛みが出ます。の先は皮下脂肪や周りに余裕がないために、腫れ出すと、ズキンズキンとした拍動性の痛みが強く出ます。進行すると爪の周りに膿が貯まり、ぶよぶよしたり、皮膚の色が白く変色したりしてきます。そうなると結構痛くて病院を受診すると思いますが、診察で皮膚の下に明らかに膿が貯まっている場合には小さなメスや注射針で穿刺して膿を出す(排膿:はいのう)処置をします。 

もしも皮膚が一部分白くなりかけれいる場合は皮膚の壊死が始まっていますので、麻酔しなくてもこの部分は殆ど痛みを感じません。切開した部分から多くの場合は褐色状の膿が溢れて、痛みも軽減するはずです。急性の場合の起炎菌は皮膚の表面に多い「黄色ブドウ球菌」が殆どですので、それに効果のある抗生剤を一緒に処方することもあります。

何時ものように文書力がないために図を書いてみました(文書を書くより図を描く方が時間がかかりました・・😰)

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何度も炎症を繰り返していると、上の3段目の様に、爪の周りにぶよぶよしたピンクっぽい盛り上がった組織ができてしまいます(不良肉芽)。塗り薬や抗生剤で様子をみますが、なかなか改善しない場合には、爪の刺激が大きいのでその部分の爪を斜めに切ることがあります。爪が生える頃には炎症も治まっています。
これまでは外来でも皆様方も経験すると思いますが、もっと怖いのは4段目の瘭疽という病態です。菌が指の内部まで入り込んでしまい、指全体は大きく腫れて、色も悪くなります。 激痛と炎症反応も強くなり、指の腱や骨にも炎症が及ぶ場合もあります。 その場合には膿瘍が形成されていると分かれば局所麻酔を行って指を貫通させるようなドレナージ術が必要になることもあります。
最後に爪の周りの炎症ですので、どの科に行けばよいのかと質問されることも多くあります。 個人的な意見しては炎症が軽ければ、皮膚科、整形外科、外科、内科でも構いません。 膿瘍が形成されている場合には、外科>整形外科>皮膚科という感じです。 瘭疽になると、入院施設のある形成外科、整形外科、外科のどちらかで行うことになると考えています。  最近は細分化されていますので、整形外科でも指は得意でない場合もありますし、外科でも瘭疽をみたことのない医師もいると思うのです。 瘭疽の場合は早めに治療が必要ですので病院を必ず受診して下さいね(まあ、ここまで来ると我慢はできないと思いますが・・・糖尿病性神経障害などがある場合には特に注意が必要です)。
手の爪回りの炎症は多くの方が経験すると思いますが、ひどい場合には早めに病院を受診して下さいね。

2025年10月22日 (水)

乳がん:自己検診の重要性

10月は乳がんの啓蒙月間で各地でピングリボン運動などが開催されていることだと思います。今日のFM放送は乳がんについて説明をしました。ブログでは自己検診の重要性やリスクについて書いてみたいと思います。
統計的なことは国立がん研究センターの「がん情報サービス」が分かりやすいです(☞がん種別統計情報:乳房
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乳がんは年々増え続け女性がかかる癌の中でトップとなっています。他の癌が年齢と共に増えるに対して中年以降頭打ちになるのと比較的若い年代からかかる病気である点も注意が必要です。 癌の中では治療に反応し死亡率は第5位となっています。特に早期発見では100%に近い生存率となっているのです。
乳がんは乳汁を作り出す組織の乳腺の小葉上皮に出来る「小葉がん」と乳汁の通り道である乳管に出来る「乳管がん」の2つが主な種類になりますが、特殊な乳がんとして乳頭や乳輪に湿疹状のただれを主症状とするパジェット病と乳房全体が赤く腫れ上がる炎症性乳がんがありますが、炎症性乳がんは短期間で全身転移を起こしやすく予後不調ながんとなります。

 

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癌がその発生部位から回りに飛び出して行かず、小葉内や乳管内に留まっている場合を非浸潤がんと呼び、癌が周りの血管やリンパ管に浸潤しているのを浸潤癌と呼んでいます。当然、非浸潤癌の方が予後がよくなります。                                                                

 

乳がんの多い欧米などでは非浸潤性の小葉がんは悪性疾患とは扱わずに、このまま様子を見ることが原則となっています(日本では部分切除が殆どです)。                                                       

 

乳がんの90%は痛みのないしこりとして気づくことが多いのです。全くの自覚症状なしで検診のみで診断がつくのは数パーセントと言われますので、如何に自己検診が重要であるかが伺えます。
お風呂上がりにでも毎日チェックをして欲しいと願います。 その時に鏡に映して正面、斜め、前屈や背屈、さらには両手を挙げたり下げたりして全体をチェックして下さい。
①皮膚の状態:色、表面の窪み、盛り上がりなど
②左右差、形や大きさのチェック(経時的な変化)
③えくぼ兆候:おっぱいの一部が引っ込んでいる様な状態
④乳頭の変化:乳頭の形や湿疹、痒みや乳頭分泌液のないかどうか
⑤陥没乳頭:昔から陥没してたのでした問題ないのですが、次第に陥没した場合
それ以外にお風呂で石けんをつけながら乳房にしこりがないかどうかチェックして下さい。   
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→このようなことで多くの乳がんが発見されます(もちろんしこり=癌ではありませんので心配するより、まずは病院を受診されて下さいね)。   
                          
また乳がんの危険度も報告されています。少し古いデーターですが平均の女性と比べて何倍乳がんになり易いかの指標になりますので記載しておきます
①乳がんになったことがある人6倍 ②母親、姉妹、娘が乳がんになっていた方2.8倍 ③初潮が12歳未満 1.9倍 ③30歳以上の未婚女性3.0倍 ④初産年齢が30歳以上1.7倍 ⑤閉経が55歳以上1.6倍 ⑥閉経後の肥満1.4倍 ⑦高度肥満(BMI30以上) 2倍

 

その他身長が高い方(身長160Cm以上は148Cm 以下と比べて閉経前1.5倍、閉経後で2.4倍)、飲酒量が多い方(1.75倍)、喫煙習慣のある方(1.9倍)は増加します。<色々な研究結果から抜粋しましたので、正確さは多少変動する場合があります>

 

一番忙しい年代の女性が多く罹患するがんですので、忙しいからではなく忙しいからこそ検診を受けるように、そして毎日の自己検査をしてくださいね。

2025年10月 8日 (水)

脈の取り方と危険な不整脈

今日のFM放送いきいきタイムは不整脈を中心に心臓の役割や心臓の大切さについて話をする予定です。

心臓はたとえご主人が怠け者でも一生働き続ける働きもので、疲れたから休憩なんかしません(私とは違い勤勉です)

心臓は1回の鼓動で全身に血液を600〜700mlずつ送り出している筋肉でできたポンプです。1分間に70回動くすると、1日では7.2トンの血液を毎日送り出していることになります。 皆さん7.2トン(7200ml)とトンでもない数値です

心臓は1分間におおよそ50〜100回一定のリズムで収縮・拡張を繰り返しています。不整脈はこの規則正しいリズムを刻む神経の伝わり方やリズムを作り出すところの異常により脈が乱れることを言っています。

ここで脈の取り方です。利き手の人差し指から薬指までの三本を揃え、反対の手のひらを上にして、親指側の手首の下の窪みを探ってみて下さい(手首の親指側1/4外側)。判りづらい場合は、強く押したり緩めたりしながら優しく触れると、指の下でトントンと拍動を感じると思います。

1分間数えて、50以下は除脈、100以上は頻脈と呼んでいます。「トン、トン、トン」と一定のリズムで動いているか確認下さい。「トン、トン、トトン、トン、トン、トトン」とか「トン、トン、トン、うん(脈が抜ける)、トン」などリズムが狂う場合は不整脈を疑います。

 

不整脈は心臓が必ずしも悪いわけではなくて、睡眠不足、疲労、喫煙、カフェイン摂取、飲酒でも出る場合があり、心配しないですむ不整脈もあります。

脈の異常を感じたら病院で心電図や1日記憶するホルター心電図などを行う必要があるかも知れません。心配なら受診して下さいね。

心電図で詳細に解析しないと分析できない不整脈もありますが、自分で脈をとったり、自覚するようなことで不整脈を発見出来る機会はあると考えます。 まずは脈の取り方を書いてみます

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上の図を参考に自分の脈が取れるかどうか試してみましょう

<自分で判る不整脈>

安静時に脈をとりながら、判る不整脈は主に次の3種類になると考えます。

①通常より遅い不整脈(徐脈):心拍数50回/分未満(特に40以下は要注意、治療開始へ)

②通常より早い不整脈(頻脈):心拍数100回/分以上(特に120以上は要注意、治療開始へ)

③脈が飛ぶ;単発の不整脈(期外収縮):脈が一定のリズムではなくて、急に短くなったり長くなったりする

 

多くの不整脈はその日の体調などでも健康な人でも出現することはありますが、次の場合は気をつけましょう。

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まず危険度の高い不整脈の症状は・・・不整脈があり「めまいや血の気が引いたり、失神する」ような場合は危険です。これは脈が遅すぎたり、速すぎたり、あるいは心臓が上手く機能せずに、全身に血液を充分に送り出せない状態になった場合に起こる症状です。すぐに病院に受診あるいは救急要請して下さい。
不整脈と言ってもほっといても問題ないものから致死的な不整脈までありますので、まずは正確に診断をつけることが大切でしょうか。

 

2025年10月 1日 (水)

腰痛は温めるべき?冷やすべし?

厚生労働省の令和4年年の国民生活基調調査の中で、自覚症状の統計があります。男性の場合の自覚症状は多い順番に①腰痛 ②肩こり ③頻尿 ④手足の関節が痛む ⑤鼻が詰まる・鼻汁が出る となっています。女性では①腰痛  ②肩こり ③手足の関節が痛む ④目がかすむ ⑤頭痛 となっています。いずれも関節に関しての訴えが多く、腰痛が全体で一番多いことがわかります。 

(ちなみにアメリカでは頭痛が1番手で2位が腰痛だそうですので人種やライフスタイルによっても違うのかも知れません)

                         

私達の腰回りは 体を支える大黒柱の脊椎(腰の部分は腰椎)、周りの様々な筋肉、神経、結合組織、皮膚などからなっています。 上半身を支え、前後左右の運動をしなければいけません。 腰は姿勢を維持するだけでも沢山の努力をしないといけないので、絶えず緊張(ストレス)を強いられている組織でもあります。人類が進化の過程で二足脚歩行を選んだ結果、人間にとっては腰痛が持病となってしまったと言われています。

腰痛は内臓疾患や婦人科、泌尿器科の疾患によっても起こりますが、それはその病態を正確に診断して治療する必要があります。

<では一般的な腰痛(筋肉や神経、骨から来る整形外科的な腰痛)に対して、冷やした方がいいのか温めた方がいいのについて書いてみます>

以前の突き指の時にも書いたのですが(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-878d.html )、急性期や炎症があれば冷やすべきですし、慢性期には温めた方が良いことが多いです。

 

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では、基本的に冷やすと温めるではどのような生理現象が起こるのでしょうか。

皆様方も経験上も分かると思うのですが、冷やすことによって、血管は収縮し血流は弱くなります。冬眠と同じで神経や細胞の活動も抑えられることになります。 この様なことから急激な炎症や打撲などでは止血効果や腫れを抑制しますし、炎症の波及を抑え、神経の感覚を鈍らすために痛みを取る効果が期待されるのです。→この様なことより、急性の腰痛(ギックリ腰、打撲)などでは2〜3日間は冷やす方が一般的です。

では「温める」とどうなるかと言うと、血管が広がり血流が増加します。神経や細胞も活発になり修復が早くなります。多くの慢性の腰痛など凝り固まった筋肉をほぐし、血流を良くすることで腰痛の改善をはかります。

・・・腰痛に限らず、この様に「冷やすこと」と「温める」ことのポイントを抑えておけば他の打撲や怪我や火傷、肩こりなどの際にも応用できるはずです。

2025年9月24日 (水)

胃食道逆流症(逆流性食道炎)

今回のラジオ放送は「胸焼け」などの原因となる“胃食道逆流症の話”をしました。

傍製薬会社のCMでも流れていましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかも知れませんが、それでも「胃食道逆流症」は余り馴染みのない病名かも知れません。

 以前は、胸焼けというと「逆流性食道炎」という病名をつけることが一般的でした。今でもこの病名はありますが、これは内視鏡(胃カメラ)で食道にただれがある場合につける病名でした。

 しかし、実際に胃の内視鏡検査をしてみると、食道はきれいで全くただれていないのに、胸焼けを感じる方がいます。内視鏡の結果から、これらの方が約3〜4割もいることが判ってきました。そこで最近では食道のただれの有無に関わらず、胸焼けやげっぷなど、食道内へ胃酸などの逆流に伴う症状 があれば胃食道逆流症と呼ぶようになりました。

胃食道逆流症は以前は、主に欧米人に多い病気でしたが、最近では日本人にも増えてきているのです。 ひとつの理由としては、食生活が欧米化し脂肪分の多い高カロリーの食事を取る傾向にあるためと言われています。もう一つは病気自体がお年寄りに多いため、日本の高齢化により、高齢者人口が増えた分だけ、その発症頻度が増加してきたということもあります。

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胃は胃酸という強力な酸に対しても比較的強いのですが、食道粘膜は胃酸に対する抵抗性がありません。胃液が食道に逆流すること「胸焼け」をはじめとする諸症状が出現します。

これまであまり関係のないと思われていた、慢性の咳や、胸の痛み、のどの痛み、耳の痛みなど多様な症状をもたらすことが分かって来るようになりました。胸焼けだけでなく、呼吸器科や耳鼻科領域の症状とも関連がある場合もあり、最近注目されている病気の一つでもあるのです。

・・・慢性の咳で病院に行って医者から胃カメラを勧められて憤慨した患者さんがいましたが、実は名医なのかも知れませんよ・・・😆

2025年9月10日 (水)

頭痛について(種類や対処法など)

今日のFM放送は頭痛について話をしました。頭痛は脳外科や内科で診ることが多く、外科医の私の専門外ですので一般的なことを記載いたします。

「頭がズキズキする」「目の奥が痛む」「締めつけられるような感覚がある」・・・など頭痛に悩まされた経験は多くの方にあるのではないでしょうか? おおよそ日本人の3人に1人は「慢性的な頭痛持ち」とも言われています。

今回は、日常的によくある「頭痛」について、原因や種類、頭痛が起こるメカニズムや対処法、そして病院に行くべきサインについてわかりやすく解説します。

その前になぜ頭痛を感じつかについて記載しておきます(その方が後のが理解しやすいかも)

頭痛:脳が痛みを感じるの?

頭痛は「脳実質が痛みを感じている」と思われがちですが、実は脳そのものには痛みを感じる神経(痛覚受容体)がありません。では、なぜ頭が痛くなるのでしょうか?

 実際に痛みを感じているのは、次のような脳の周囲の組織です:①頭皮や筋肉(後頭部・側頭部など)、② 脳を覆っている硬膜や血管、③三叉神経などの脳神経、④首や肩まわりの筋・筋膜、靭帯 など

脳実質ではなくてい①〜④組織が炎症を起こしたり、緊張・収縮・拡張したり、圧迫されたりすることで、痛みとして感じるのが「頭痛」の正体です。

 

<1次性頭痛の3大タイプ>

まず頭痛には大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」があります。一次性頭痛は特定の病気が原因ではない慢性的な頭痛(日本人の約40%が経験)で、以下の3つが代表的です(多くの方の頭痛持ちはこのタイプです)。二次性頭痛は明らかな原因がある頭痛となります。

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A:緊張型頭痛(日本人の約22~30%) ・以前書いたブログ→(筋緊張性頭痛)
最も多いタイプの頭痛です。
特徴は「締めつけられるような痛み」や「帽子をきつくかぶっているような感覚」で、後頭部から首筋にかけて鈍い痛みが広がります。長時間のデスクワーク、姿勢の悪さ、ストレスなどが誘因となります。

頭痛のメカニズム:長時間のデスクワークやスマホ操作、ストレスなどで首や肩の筋肉が緊張・収縮し、その筋肉内の血流が悪くなります。その結果、筋肉や筋膜から発痛物質(ブラジキニンなど)が出て、痛みの信号が脳に伝わることで「鈍い痛み」や「締めつけ感」として感じられます。

対処法:
・姿勢を正す
・ストレッチや軽い運動
・十分な休養や睡眠
・市販の鎮痛薬(ただし連用には注意)

B:片頭痛(偏頭痛)(日本人の約8~10%(女性では男性の約2.5倍))

若い女性に多く見られる頭痛で、発作的に起こります。
特徴は「ズキズキとした拍動性の痛み」で、頭の片側に現れることが多いです。光や音、においに敏感になり、吐き気を伴うこともあります。

誘因:・寝すぎ、寝不足・月経やホルモンの変化・空腹、ストレス・赤ワインやチョコレートなどの食品

メカニズム:ストレスや寝不足、ホルモンの変動、光や音などの刺激をきっかけに、脳の神経が過敏になり、血管が一時的に収縮→拡張します。拡張した血管が周囲の神経を圧迫・刺激することで、炎症反応が起き、痛みの物質(CGRP=カルシトニン遺伝子関連ペプチドなど)が放出され、「ズキズキする拍動性の痛み」が生じます。

 同時に、光・音・においに対する過敏さや吐き気なども引き起こされます。

対処法:
・静かな暗い部屋で休む
・冷やす(首筋やこめかみ)
・処方薬(トリプタン系)を早めに服用する

C:群発頭痛(有病率は0.1%未満と稀ですが、ほとんどが男性)
非常に激しい痛みが片側の目の奥に集中し、一定期間(1~2ヶ月)に毎日決まった時間に発作が起きます。男性に多いのが特徴です。

メカニズム:詳細な原因はまだ完全には解明されていませんが、視床下部の異常な活性化や自律神経の乱れが関係していると考えられています。

 目の奥の血管が急激に拡張し、周囲の神経(三叉神経など)を刺激することで、片側の目の奥に激烈な痛みが生じるのが特徴です。

涙や鼻水が出たり、目が赤くなったりするのも自律神経の関与による症状です。

対処法:
・純酸素吸入療法
・医師の処方による薬(トリプタン系など)
※市販薬ではほとんど効果がないため、医療機関の受診が必須です。

 

二次性頭痛は注意が必要!

脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎などの重篤な病気が原因で起こる頭痛を「二次性頭痛」と言います次のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

危険なサイン:

  • 突然、激しい頭痛が起きた(バットで殴られたような痛み)
  • 今までに経験したことのないような頭痛
  • 麻痺、しびれ、ろれつが回らない、意識がぼんやりする
  • 発熱、吐き気、項部硬直(首の後ろが固くなる)
  • 高齢者で初めて頭痛が出現した
  • 頭痛がどんどんひどくなる

これらは「命にかかわる頭痛」の可能性があるため、すぐに病院を受診することが大切です。

 

最後に多くの方が頭痛持ちで日頃から頭痛薬を常用されている方も多いと思いますので注意点を記載しておきます。

市販薬との付き合い方

頭痛薬はドラッグストアなどで手軽に購入できますが、「飲みすぎ」に注意が必要です。月に15日以上頭痛があり、鎮痛薬を頻繁に使う人は「薬物乱用頭痛(MOH)」になることも。

予防のためには:

  • 頭痛日記をつけて自分の頭痛パターンを知る
  • 予防薬の相談を医師にする
  • 日常生活のリズムを整える(睡眠・食事・運動)

頭痛との上手なつきあい方

頭痛を完全になくすことは難しくても、「うまくつきあう」ことはできます。そのためには自分の頭痛のタイプを知り、誘因を避け、早めの対処を心がけることが重要です。

おすすめのセルフケア:

  • スマホやPCを使う時間を見直す
  • 入浴やストレッチで血行をよくする
  • ストレスマネジメント(瞑想、深呼吸、趣味の時間)
  • 睡眠の質を高める

最後に

頭痛は「よくある症状」だからと軽く見てしまいがちですが、生活の質を大きく下げてしまうこともあります。少しでも気になることがあれば、我慢せず専門の医師に相談してみましょう。「ただの頭痛」と思わず、自分の体からのサインに耳を傾けることが健康への第一歩です。

 

2025年9月 3日 (水)

夏バテの原因と対策

今日のFMレキオは「夏バテ」に関してお話をしました。 何度か書いていますので同じ内容です🙏


夏バテは本来は夏が終わる秋口に、夏の疲れを引き続いで起こる体調の不良をさしています。

同じ夏の暑さにより引き起こされる熱中症と夏バテの違いは、ボクシングの試合を例にとると、暑いという強烈なKOパンチを浴びたのが熱中症で、ボディブローのように少しずつダメージを受けて最後にダウンするような感じが夏バテと言えますでしょうか? 

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夏バテの正確な医学用語はないのですが、強いて言うなら慢性の暑熱性障害(慢性熱中症)や熱衰弱に近い病態となります。

夏の終わり頃に次第に体調が悪くなるのが夏バテですが、「全身の疲労感」「体がだるい」「熱っぽい」「立ちくらみ、めまい、ふらつく」「むくみ」「食欲不振」「無気力になる」「イライラする」「下痢、便秘の胃腸障害」・・・・など多彩な症状、なんとなくスッキリせず体が重く感じるのが夏バテの症状となります。

 

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何故そのようになるのかを、左の図にまとめてみました。

日本の夏は暑く湿度も高い状態が続きます。多量の汗をかいたり体温を維持するために私達は多量のカロリーを使ってしまいます。さらに暑さのため食欲不振も続き、体が慢性的なカロリー(ビタミン、ミネラル)不足となってしまい、次第に疲れが貯まってしまうのです。 

2番目の原因としては、夏の暑さのためクーラーを使用するのですが、その内外の温度差が大きいと、暑い屋外と寒い室内を1日何回もいったいきたりしたら、私達の体は夏なのか冬なのか判らなくなり、体温や発汗などを調整する自律神経が疲弊してしまいます。 いわゆる自律神経失調状態(熱っぽい、イライラする、無気力、胃腸障害など)となってしまうのです。 

さらに夏は暑さのため、睡眠不足、熟眠障害がおこり疲れが蓄積してしまうのです。

この様に夏の長い暑さで少しずつ、ダメージを受けた体は秋口にはとうとう悲鳴を上げてしまい、夏バテの症状が出現してしまうのです。

症状も徐々に蓄積しますので、対策は①、②、③の病態を考えて、しっかりと食事を取ってカロリー、ビタミン、ミネラルを補充する。クーラーは外気温と5度以内を目標に設定する。昼が長くなってもしっかり睡眠時間を確保して、暑さ対策をして熟眠ができる環境を整える。

この様なことに気をつけて、残り少ない夏を乗り切って下さいね

2025年8月27日 (水)

胆石症

今日のFM放送は胆石症について話をしました。ブログには20年ほど前にテレビ出演した際の懐かしいジェーマを記載したいと思います。

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日本における胆石症の頻度は人口の約1割とされいて、多くの日本人がドックなどで胆石症の診断を受けたことがあると考えます。その全てが手術するわけではなくて、腹痛などの有症状の胆嚢結石症に対しては腹腔鏡下胆嚢摘出術が強く推奨されています。また症状がなくても胆嚢内に結石が充満している場合も手術を勧めています。NCD(手術等の情報を登録するデータベース)によると、日本国内では年間約10万人に胆嚢摘出術が施行されていますので、これまで腹腔鏡下の手術で一番多く手術が行われ、外科医にとっては最も頻度が高い手術の1つだと考えます。

ただし無症状の胆石患者でも、毎年約1〜3%の確率で症状が出現する可能性があり、その場合は手術の適応となります。

以前のTV番組用に作ったシェーマがありますので記載します。

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私が外科医になって暫くすると日本で腹腔鏡の胆嚢手術が始まりました。これまで誰もやったことがありませんでしたので、手術の手技のビデオを復讐しながら、初めのうちは直ぐに開腹手術に切り替えるように無理をせずに覚えていった記憶があります。
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40年間で外科医の手術が開腹・開胸から腹腔鏡下、今ではロボットの時代へと変わりつつあります。しかしその反面緊急事態でメスだけで開腹や開胸を行える外科医が少なくなったことも現実です。人間の能力には限りがありますので、特殊手技にのめり込むと他の基本手技ができなくなる状況もあります。これからはバランスを考えながら減少する外科医を育てないと行けないかも知れません。

2025年8月13日 (水)

加熱しても予防できない食中毒もあり注意が必要です。

先週に引き続いてFMラジオでは夏場に多い食中毒の話をしました。

多くの皆さまの食中毒のイメージは傷んだ食べ物や保管衛生管理が出来ていない食品にバイ菌が付いて起きると考えていると思います。間違いではありませんが、食中毒は口から入って来た有害・有毒生物・物質により、下痢や嘔吐、発熱などをきたす疾患の総称なのです。

食中毒といってもその種類別に ①細菌性食中毒(微生物が原因で一番多い)②ウイルス性食中毒(冬場のノロウイルスなど)③化学性食中毒(ヒ素、水銀など)④自然毒食中毒(キノコ、フグなど)⑤その他 に分類されています。

もう一つの分類方法に食中毒を直接的な原因で分けると、原因物質が毒素を持っている為に起こる毒素型と細菌・ウイルスが体内で増殖することで症状を起こす感染型に分けることが出来ます。毒素型は最初から毒を持っていますので、症状も早く出ます。感染型は微生物が体内で増殖するにはある程度時間が掛かるため、症状が出るまで時間がかかる訳なのです。

多くの皆さんにとっては食中毒の範疇は種類別では①と②が殆どで④もありかな・・・そして直接原因では感染型が食中毒と考えている方が多いと考えます。

また多くの方は加熱したら食中毒菌も死滅して食中毒にはならないと考えていると思っています。果たしてそうなのでしょうか?

 

例えば夏場の食中毒の原因ともなる黄色ブドウ球菌について考えてみます。この菌自体は熱に弱く加熱処理すれば死滅します。

黄色ブドウ球菌は特別な菌ではなくて自然界に沢山存在します。例えば私達のニキビやおでき、水虫に混在する感染巣に存在する代表的な菌です。それ以外にも健康な私達の鼻腔や動物の皮膚や腸管にもいます。

 

この菌も夏場の細菌性食中毒の代表菌で、毒素型になります。Th__2この食中毒はブドウ球菌が作り出した毒素(エンテロトキシン)により起こるので、熱処理してブドウ球菌が死滅しても、残ったエンテロトキシンを食事と共に食べてしまい食中毒になります。エンテロトキシンは100度で20分間加熱しても分解されません(フグの肝を鍋で煮て食べてもあたるのと一緒です)。

黄色ブドウ球菌は普通の方の皮膚にも付着していたり、手指などに切り傷や化膿巣の中にもいます。ですから傷のある方は食品に直接手を触れないように工夫して下さい。

直接毒を接種して症状が出ますので、感染型より早く症状が出ます。食事をして30分から6時間で、嘔気、嘔吐、腹痛がでて、下痢になる場合もあります。あまり高熱にはなりません。多くは24時間以内に改善することが多く、特別な治療も有しません。

食中毒は熱処理すれば多くは防ぐことが出来ますが、過信しないで下さい。手や調理器具も綺麗にして新鮮なものをよく水洗いして、加熱して召し上がって下さいね。

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