今日のFM放送はは冬場に多い脳梗塞について話をしました。(以前のブログ➡︎脳卒中の病態と血圧との関係、➡︎脳卒中の病態、罹患率、予防法など)
私たちの体の中で、脳ほど不思議で、そして繊細な臓器はありません。
脳卒中や事故、高熱などによって、命は取り留めたものの、脳が回復せず植物状態や脳死に至った、という話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
なぜ脳だけが、これほど深刻な影響を受けやすいのでしょうか。
A:脳は「酸素欠乏(酸欠)」に極めて弱い臓器
脳は、栄養不足、特に低血糖にも弱い臓器ですが、それ以上に、酸素そのものに弱いのではなく、酸素が不足する状態――いわゆる「酸素欠乏(酸欠)」に極めて弱い臓器です。
脳への血液の流れが止まり、酸素が届かなくなると、人はわずか30秒ほどで意識を失います。
そしてたった4分で、脳細胞は回復できない致命的な障害を受けてしまいます。これを医学的には「不可逆的変化」と呼びます。
人間の体の中で、これほど短時間で取り返しのつかないダメージを受けてしまう臓器は、他にはありません。
B:心臓との決定的な違い
例えば心臓の場合、酸素が途絶えると4分ほどでほとんど機能しなくなりますが、心臓の組織そのものが壊れてしまうのは30分以上経ってからです。
つまり、心停止から4分で脳は致命的な障害を受けますが、心臓は30分以内であれば、適切な処置によって再び動き出す可能性があるのです。
この違いが、心肺停止後に「心臓は回復したが、脳だけが回復できなかった」という状態、いわゆる植物状態につながることがあります。
C:一見残酷、でも実は優しい仕組み?
この仕組みは、一見すると非常に残酷に感じられるかもしれません。
しかし別の見方をすると、これは人間にとって、とてもありがたい仕組みなのかもしれません。
もし脳が最後まで機能し続けてしまったら、重い外傷を負ったときの激しい痛みや苦しみを、最後まで感じ続けることになります。
拷問を受けても意識を失わない状態を想像すると、そのつらさは計り知れません。
脳は、酸素欠乏(酸欠)や死が近づいたときに、苦しみや痛みを感じないよう、他の臓器よりも先に機能を失うようにできている――
そう考えると、人間の体はよくできているとも言えるのです。
D:脳は小さいのに、とてつもなく働き者
脳は重さで見ると、実はとても小さな臓器です。
成人で体重が50〜80kgあっても、脳の重さは約1.4kg。体重のわずか2.5%程度にすぎません。
ところが、脳に流れる血液の量は全身の約20%、消費する酸素量も**約20%**に達します。
体重の2.5%しかない臓器が、血液も酸素も体全体の5分の1を使っているのです。
さらに、脳が1日に消費するエネルギーは約400〜600キロカロリー。
一日中休まず動いている心臓の消費エネルギーが約140キロカロリーですから、脳は心臓の3倍以上のエネルギーを使っていることになります。
それだけ、脳は膨大な情報処理を行っている臓器なのです。
E:過保護に守られた「最重要臓器」
脳は内部からも優先的に血液と酸素を与えられ、外側はヘルメットのような頭蓋骨に守られています。
人間にとって、それほどまでに重要な存在だということです。
少し言い方を変えるなら、脳は過保護なお坊ちゃまのような臓器なのかもしれませんね。
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