麻疹(+風疹)の流行に気をつけよう
2024年3月27日のFM放送「いきいきタイム」は春から初夏の時期に流行しやすい感染症について話をします。日本では新入生や新入社員など多くの人が新しい環境に入るのが春です。4月は新たしく入園したり、入学したり、あるいは新しい職場や大学などで移動することで、多くの方と交わる季節になります。行動範囲が広がればそれだけ流行する感染症に接する機会も増える訳です。抗体を持っていれば殆どかかりませんが、初めて風疹、麻疹、流行性耳下腺炎が起こるような学校や社会環境に身を置くこともあるので注意が必要なのです。
2018年に沖縄県で麻疹が流行した時にもラジオ放送で話をしました。2023年後半から海外で感染した方が日本で発症して周りに感染者が増加する事例が増えていて、医療機関を中心に感染リスクやワクチン接種について啓蒙しています。
皆様方の記憶にも残っていると思いますが、沖縄県では2018年3月に海外旅行者が旅行中に麻疹(はしか)にかかったことが判明し、その方が接触した場所から発症者が出現、更に拡大し沖縄県内で麻疹(はしか)が流行の兆しにあるとして、はしかの警戒レベルを最高の「3」に引き上げました。6月の解除までに県内で99名の感染者を出しました。今後も帰国者や観光客から持ち込まれ、突発的に感染が広がる可能性もありますので注意が必要です
・何故はしかの感染が問題なのか?
なんと言っても麻疹の感染力の強さにあります。コロナウイルスやインフルエンザウイルスと比べても、麻疹の感染力は驚異的に高いのです。おおよそのデーターではインフルエンザの10倍以上の感染力があることが判っています。
空気で感染するので通常のマスクでは感染を予防できません・・・これについて厚生労働省のホームページで「麻しんの感染力は非常に強いと言われています。医療機関へ移動される際は、周囲の方への感染を防ぐためにもマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り避けてください」と堂々と誤った(あるいは誤解を生じる) 記述がありました。
何もしないよりマスクをしなさいなら良いのですが、インフルエンザやコロナと違い通常のマスクでは麻疹ウイルスを防御できません(麻疹ウイルスは非常に小さなウイルスで、通常のマスクでは予防できないのです)。厚生労働省も誤解を与える記述はしないようにして欲しいです)→麻疹を疑うことがあれば医療機関に電話を入れてから指示を仰いで受診して頂きたいと思います。
実際に2018年の事例で沖縄県の麻疹の抗体を持っていない方が、麻疹の患者さん(症状の出てない時期からでも)と接したり、買い物で釣り銭の受け渡しをしただけでも感染してしまい、体力のあるなしに関わらず感染した人の95%以上、ほぼ全員が発症します。
もう1つ日本で問題となっているのが年代によってワクチン接種率が違う点です。
・年代による抗体の有無の推測
現在の所、はしかを予防出来るのはワクチン接種や過去の感染で得た抗体しかありません。そのため症状などを記す前に、先に抗体の有無やワクチン接種の既往について書いた方が安心かも知れません。(母子手帳等あれば確認して下さい)
・1972年9月30日以前に生まれた方:この当時予防接種はありません・・・残念でした😅・・・なかった分だけ多くの国民が麻疹(はしか)にかかった方が多いのです。1度罹ったらほぼ終生免疫を持っていますので、殆ど罹りません(もちろん例外はあります)。
・1972年10月から2000年4月1日生まれ:この世代はワクチンの予防接種は1回のみの時期です。麻疹は1回だけでは弱く2回接種が必要です。しかし1回の方は罹っても重症化しにくいと言われています。ただし修復麻疹と言って、「自分は症状は軽くても」「他人にうつす可能性があり」注意が必要です。
・2000年4月2日以降の生まれ:定期接種2回世代で、2回確実に打っていれば感染リスクは低くなっています。 現在は1回目の接種が満1歳と小学校入学前となっています。 また6〜9ヶ月までの赤ちゃんはお母さんからの移行抗体があります。 その為この時期の赤ちゃんで1回目の予防接種を受けてない場合や、学童期で2回目の接種がまだな子供は、流行期には前倒しで受けることも出来ますので、小児科や行政に問い合わせ下さいね。
何故ワクチン接種回数が問題になるのか?
・大きな問題点としてはワクチンが妊娠初期に使えない点です。1972年から2000年生まれの年齢の方はワクチン1回接種世代で、妊娠可能な年齢となっています。麻疹は妊娠中に感染すると、死産や早産になる可能性があるため、妊娠初期の妊婦さんは特に気をつけたい病気です。麻疹の免疫がない30代~50代の男性が感染源になることが多いので、配偶者の男性も(確立は少ないのですが風疹にかかったことがないジジババも感染源になる可能性もあります)当事者意識を持つことも大切です。
私達の病院では感染予防の点から職員の抗体検査を行っていますが、昭和52年以前生まれでも、抗体が低い方が思ったより多いのが現状です。流行期には人混みに出かけるのは控えるべきだと考えています。
ではでは、感染経路や症状、合併症などについて記載してみます。
<感染経路>
空気感染の他に、飛沫や接触感染など、感染者が近くにいるだけでも感染しやすいウイルスです。ただし空気中に出されたウイルスは2時間程度で死滅します(コロナウイルスとは違います)。
<症状・経過>
感染者と接触後、10〜12日間の潜伏期間があり、その後38度程度の発熱や咳、倦怠感(小児では不機嫌)や目の症状(結膜充血、目やに、羞明)などが2〜4日続きます。小児では下痢や腹痛も多くみられます。 その後、半日ほど解熱時期がありますが、それが過ぎた後に39度の発熱が出現し、更に口腔内のコプリック班と言われる、白い小さなブツブツが認められ、顔面から全身へと特徴的な鮮紅色の皮疹が表れます。
皮疹が出現後3〜4日経つと解熱し、全身状態も回復に向かいます。全身の皮疹は赤から黒ずんた色に変わります。しばらくは色素沈着として残ります。
麻疹は感染症の5類にあたり、保健所への届け出義務があり、本人も解熱後3日間は登校出来ません。
<合併症>
麻疹の患者の30%に合併症が認められ、その大半が肺炎です。その他中耳炎、咽頭炎、心筋炎、脳炎などの危険性もあります。また麻疹を罹患して数年経ってから亜急性硬化性全脳炎という特殊な合併症を併発する場合もあります。
私は外科が専門分野ですので、このプロジェクトとは関係していませんが、沖縄県の小児科医を中心にはしかゼロブロジェクトを立ち上げて予防啓蒙活動に取り組んでいます。こちらのホームページを紹介しておきます→(沖縄県麻疹`0(ゼロ)`プロジェクト)
10年前のブログに風疹についても書きましたのでリンクを張っておきます→(風疹について)
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院長先生
こんばんは。
今日も外来に手術も無事終えられて生放送でしたね!
お疲れさまでございました♡
拝聴させて頂きました!
麻疹は小学3年生の3学期に掛り、次々と妹たちに移して
結局!私が一番重症だった記憶があります!
終業式にも出られず友人が通信簿を届けてくれました!
抗体があるのですね?
感染力の強さにはビックリです!
お歌は山本潤子さんの曲でしたね♪
ギター🎸弾き語りは私が今回、唯一知っている「卒業写真」でした♡
素敵な歌声有り難うございました♡
今日も有り難うございました♡
少しでもお早くご帰宅できますように〜♡
おやすみなさいませ(^^)/
投稿: マコママ | 2024年3月27日 (水) 20時07分
マコママさん、こんばんは。
今、帰宅しました。
マコママさんは少し遅れて麻疹にかかったのですね。当時はワクチンはありませんので、家族の誰かがかかると罹ったことのない兄弟は皆かかってしまいます。そのため当時は殆どの方が子供の頃にかかって抗体を持っていました。
卒業式に出られなくちょっぴり寂しい記憶ですね😢 麻疹の感染力はインフルエンザやコロナの10倍程度ありますのですごい感染力です。
私のギター弾き語りも聴いて頂き有り難うございました。
それではお休みなさい💤
投稿: omoromachi | 2024年3月27日 (水) 20時33分
院長先生
おはようございます。
今日も手術がお有りと思いますがご活躍をお祈り申し上げます♡
いつも私のコメントに必ずお返事頂き有り難うございます♡
麻疹は小学3年の3学期に罹りましたので卒業式ではなく終業式に出られずでした。
今日は午後の予約で大学病院の泌尿器科で尿培養検査の結果を伺いに行って参ります。相変わらず下腹部痛ありですが?
今日も宜しくお願い致します♡
投稿: マコママ | 2024年3月28日 (木) 06時22分
マコママさん、おはようございます。
今日は検査、手術、夕方からは会議へと続きます。頑張りましょ😃
そうだったのですね・・・春先にかかることが多いので、終業式や入学式に病休で休む児童も昔は多かったですね。今の子ども達はワクチンを打っていますので麻疹が流行することはないと考えます。
今日は大学病院なのですね。疲れると思いますが気をつけて出かけて下さい。
今日も宜しくお願いします。
投稿: omoromachi | 2024年3月28日 (木) 08時04分
院長先生
こんばんは。
今日も検査、手術に会議でお疲れさまでございます。
お陰様で通院無事終わり帰宅しました!
泌尿器科で抗生剤処方で2週間後の予約と
なりました!木曜日は11時半から12時15分迄、
ヘルパーさん来宅なのでせわしいです😰
おまけにかかりつけ薬剤師さんさんも木曜日はお休み。
慣れない薬剤師さんからお薬頂いてきました。
今日も有り難うございました♡
少しでもお早くご帰宅できますように〜。
早めのおやすみなさいませ(^^)/
投稿: マコママ | 2024年3月28日 (木) 17時18分
マコママさん、こんばんは。
会議が長引きましたので、これから帰宅となります。
マコママさんも大学病院帰りで疲れたことでしょう。木曜日は日程が詰まっているようですね。どうせなら慣れている担当の薬剤師さんがいいですよね。いちいち説明しなくてもOKですので😂
いつも有り難うございます。いい夢みてお休みなさい💤
投稿: omoromachi | 2024年3月28日 (木) 21時10分
初めまして。いつもラジオ放送も聞かせてもらっています。
私の娘もワクチン1回世代で結婚を控えております。
母親としては情けないのですが母子手帳が見つからず
困っているのです。娘は麻疹には罹っていません。
麻疹ワクチンなどは抗体を測ってから打つのでしょうか?
抗体は普通の採血で行って分かることでしょうか?
予約なしで病院に行っても行うことができますか?
産婦人科での検査になるのでしょうか?
いきなり沢山の質問をして申し訳ありません。
ご多忙と存じ上げますが宜しくおねがい致します。
毎週ためになる医療情報と先生の歌声を楽しみに
しております。これからも宜しくお願い致します。拝
投稿: K.TANABE | 2024年3月28日 (木) 21時24分
K.TANABEさん、こんばんは。
ラジオ放送を聴いて頂いているのですね。有り難うございます。
結婚前の娘さんがいるのですね。ワクチン一回接種世代ですので、一回は予防接種は受けていると思います。婦人科の先生に聞いても妊婦さんの麻疹感染は殆ど見たことはないとのことです。ただし偶然が重なれば最悪となります。
わざわざ婦人科に行くまでもなく多くの病院で抗体価は測定できると思います。採血をすればよく特殊な検査でもありませんが、自費扱いとなります。 各医療機関で異なると思いますが、おおよそ5、6千円程度だと思います。 これから結婚妊娠を考えると、ついでに風疹、ムンプスなどの抗体も一緒に測った方が良いかもしれませんね。もちろん当院でも検査を行なったりワクチンを打つことは可能です。
病院のHPのラジオコーナーまでは知っているリスナーさんもいらっしゃいますがK.TANABEはこのブログも気が付いたのですね。これからも宜しくお願い申し上げます。
投稿: omoromachi | 2024年3月28日 (木) 23時04分
院長先生
おはようございます。
昨日は会議が長引きお疲れさまでした。
金曜日です!ご多忙と存じますがご活躍をお祈り申し上げます。
春の嵐?で気温も上がる予報です!
多分?靖国神社の標準木の桜🌸開花があると思います。
昨日、行った大学病院の通りにも桜並木がありますが、
全然!ダメでした!昨年は満開でタクシーの中から撮りましたが🌸
今週は生け花如何でしょうか?ご紹介お待ちしております。
今日も宜しくお願い致します🙇
投稿: マコママ | 2024年3月29日 (金) 06時28分
マコママさん、おはようございます。
今日は外来と検査です。第1から4週目の金曜日の夕方は最後に会議があるのですが、第5週は会議が組まれていません。会議が嫌いな私としては第5週金曜日はありがたいです😊
そろそろ関東も桜の季節となるのでしょうね。沖縄の寒緋桜と違い染井吉野は風情があり好きです。桜の季節に旅行がしたいです😢
今週は生け花クラブの活動があったようで生け花が飾られていました。20頃にアップしますね。今日も宜しくお願い致します。
投稿: omoromachi | 2024年3月29日 (金) 07時54分