2019年に糖尿病治療薬のまとめをしながら、タイトルも「地球に優しくない糖尿病治療薬?」ど題して記載しました(主にSGLT2選択的阻害薬について記載しました) 。このタイトルは余り良い表現ではないと思いましたが、安易に使用する方が増えないかと考えていたので書いてみたのです。
しかし最近話題となっているのが糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬がダイエット目的で使用されて、社会問題となっています。食事をとると小腸からインスリンの分泌を促進する働きをもつホルモンが分泌されます。これをインクレチンといい、GIP (グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド) とGLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1) があります。2型糖尿病に対する治療薬として注目されるのがGLP-1です。
この薬を使用すると、インシュリンの分泌が促され血糖値が下がります。胃腸の動きも抑えられ、脳の食欲中枢にも作用して食欲が湧かなくなるのです。過食による糖尿病の治療薬としては理にかなっています。しかしながら副作用も当然あります。中には急性膵炎などの重篤な副作用もあります。
それと共に私が危惧するのが、いわゆる薬に頼る依存が出来上がってしまうのではないかということです。食事療法と運動療法などをあんなに努力しても達成出来なかったことが、薬を飲んだり注射したら直ぐに改善してダイエット出来た(綺麗になった?)となると精神的に手放せなるのではないかと考えてしまうのです。
もう一点はこれは私の憶測ですが、インシュリンを促す薬ですので無駄にインシュリンを膵臓の細胞が出し続ければ、Ⅱ型糖尿病の発生と同じ様にやがて膵臓からのインシュリンが分泌できなくなるのではないか、そうなると将来的には実際の糖尿病にならないか心配なのです。
大変だとは思いますが、まずは食事療法と運動療法を毎日続けてダイエットに取り組んで欲しいと願いますし「痩せ=綺麗」ではないことも知って欲しいと願っています。
**以下は2019年のブログの内容です**
日本人の糖尿病患者さんは急激に増加し糖尿病を疑われる患者さんは900万人を越え、この50年間に35倍以上に増加しています。いまや40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍です。日本人の体質(インシュリン分泌の遺伝的背景)がこんなに急激に変われるわけはないのですから食生活・運動を含めた生活習慣の変化が糖尿病急増の原因なのです。
外科医の私に取っては糖尿病患者さんの外科治療も担当になることもありますが、基本的に手術後の薬を飲めない時間帯は注射によるインシュリンの治療が原則となっています。ただし上記のように今や多くの糖尿病患者さんを術後も診ることがあり、内科と連携しながら治療を行っています。
今回は、このブログを見ている一般の方には難しいと思いますが、私の錆びた頭の整理のために大まかな糖尿病治療薬一覧を書いてみました。
糖尿病は糖分とインシュリンの関係ですので、糖尿病に対する治療薬は①インシュリン出させるように働きかける ②小腸から糖の吸収を抑えるか、肝臓での合成を抑える ③糖の分解を促進 ・・・この様なことが治療薬としては考えられていました・・・
ところが、私からすると何となく「ドーピングのよう?」な毛並みが違う薬が最後の「SGLT2選択的阻害薬」です😰(糖尿病を担当している先生からは怒られそうですが・・・)
本来、私達の体にはエネルギーとなる糖分が無駄に尿に流れないようにする仕組みが備わっています。その再吸収するメカニズムを抑えて、血液の中の糖分をオシッコに流してしまおうと言う薬となります。 食糧事情からすると地球に優しくない治療薬のようにも思えます(笑)。 当初は私の方も、もう食事の制限を放棄しても大丈夫となる厄介な薬だと思っていました。 食べても栄養分がオシッコに流れるのですから、糖尿病もよくなるし体重も減るわけです。この薬は体重も減るという画期的な薬でもあることより爆発的に売れている薬となっています。
ただ否定的な部分だけでなく、体重が減ることでインシュリンの抵抗性が改善したり、腎機能や心機能にもいい影響があるのではないかなどのエビデンスも出てきています。合剤も造られて、更に世界中で使用頻度が高くなると考えています。
糖尿病治療薬としては画期的な薬ですが、地球に優しくない治療薬でもあるかも知れませんね。体のエネルギー(糖)を単にオシッコに流すだけなら食べなければと思うのですが、人間の食欲はなかなか抑えられないようです😠
最近のコメント