大腸ポリープ
今日(2023/6/28)のFMレキオ「いきいきタイム」は大腸癌について話をしました。 日本で胃癌は減少傾向にありますが、大腸癌は食事の欧米化と共に戦後一貫して増加を辿っています。大腸がんは40歳を過ぎる頃から増え始め、年をとるごとに罹患数が増えてゆきます。統計上、女性では14人に1人が、男性では11人に1人が一生のうち1回は大腸がんにかかることが分かっています。
2021年(令和3年)厚生労働省からの発表を見ると、日本人の死因の第一は悪性新生物(がん)で26.5%、心疾患14.9%、老衰10.6%、脳血管疾患7.3%となっています。
悪性新生物<腫瘍>の主な部位別に死亡率(人口 10 万対)をみると、男性では「肺」がもっとも高く、平成5年以降第1位となり、令和3年の死亡率は 89.3(死亡数は5万 3279 人)となっています。女性では「大腸」と「肺」が高く、「大腸」は平成 15 年以降第1位となり、令和3年の死亡率は 38.6(死亡数は 2 万 4337 人)となっています。 女性の大腸がんが第1位となる背景に大腸がんの検診(特に大腸内視鏡検査)を受けなていないことも要因の1つと考えます。 日本人の大腸がんの多くはポリープが次第に大きくなりガン化するのが多く、ポリープのうちに治癒切除できればほとんど亡くなることもないと考えています。
さて今日は以前にも記載したことはあったのですが、大腸癌だけに絞らず胃と大腸のポリープについて書いてみました。
バリウム検査や内視鏡検査でポリープを発見することはよくあります。 ポリープを指摘された場合「いよいよ駄目か」とびっくりする方や「な〜んだポリープ」かと平気な方まで反応が様々です。
では「ポリープ」とはどのようなものでしょう?
消化管や口や鼻あるいは女性の膣や子宮などの粘膜から発生する隆起性病変(盛り上がった病変)をポリープと呼んでいます。 胃や大腸のポリープ、子宮頸部ポリープ、鼻にできるポリープ(鼻茸)、声帯ポリープなどが有名でしょうか。
ポリープの原因は大きく炎症性と腫瘍性に分かれ、問題となるのは腫瘍性のうち良性なのか悪性(癌)なのかということになります。
ポリープも範囲が大きいので今回は胃と大腸のポリープの絞って説明します。
胃や大腸のポリープを指摘されたことがある方は多いと思いますが、同じポリープでも癌化の発現率に違いがあります。一般的に胃のポリープは大腸と較べて癌化率は低いです。
胃ポリープは①過形成性ポリープ、②胃底腺ポリープ、③腫瘍性ポリープがあります。①:胃過形成性ポリープはピロリ菌の感染や慢性の炎症のために粘膜が肥厚し隆起したもので大きさも形も様々です。大きくなって出血したり胃の出口を塞ぐようになると良性でもポリープの切除を勧めます。癌化率は1%程度です。 ②:胃底腺ポリープは胃底腺と呼ばれる組織が肥大化したもので、小さく多発するのが特徴で検診で最も多く指摘されますが、癌化することはなく大きくも殆どなりません。何もしなくてもよいポリープです。 ③:全体としては少ないですが粘膜が腫瘍化してできた腫瘍性ポリープは良性の腺腫が殆どですが癌のこともあり経過を充分行います。癌化率は10%程度ありますのでこの場合は胃のポリープの切除を早めに勧めています。
大腸のポリープは①過形成ポリープと②腫瘍性ポリープに分かれます。①:過形成ポリープは腸の粘膜の炎症でポリープ様になったもので一般的に経過観察のみとなります。 ②:腫瘍性ポリープは良性(腺腫)と悪性(癌)との鑑別が重要になります。 大腸の場合、平坦な粘膜がいきなり癌になることは稀で、多くの場合はポリープが徐々に大きくなり癌化することが一般的です。 このことより大腸癌の予防のためにはこのポリープを見つけて早めに処置をすることが重要となります。
ポリープの大きさと癌化率は大きさ4mm以下では0.05〜0.1%、5〜9mmで7〜8%、10〜20mmで20〜30%、20以上で30〜50%となっています。この殆どが粘膜内にとどまっている癌でポリープを切除するだけで根治が期待できます。30mmを越えると進行癌が多く内視鏡的切除の適応とならないのが殆どです。
今日この様なことを書きましたのは、患者さんから「ポリープをいわれたけど大丈夫でしょうか」とか「ポリープは癌にならないと聞いたけど本当」・・等の質問を受けることがありましたので書いてみました。 ポリープは癌にならないなどと極端なことを言う方も中にはいますが、正確な情報をもとに検査や治療をされたのがよいと思います。 極端な意見や根拠のない意見を発した方が注目されることはありますがその後の責任は負いません・・・不思議です。
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コメント
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院長先生
こんばんは。
今日もお疲れ様でございました。
オンエアのあとは院長会議との事!
お忙し過ぎますね?
少しでもお早くご帰宅できますように〜。
今日は大気が不安定のせいか?聴き取りにくくて
すみませんでした。
大腸ポリープは5個もとって頂き、
幸い悪性ではないとの事でしたが、
そろそろ内視鏡検査必要かと思っております。
毎年、便潜血検査は受けております。
今年はまだですが?
お歌の桜庭省悟さんは全く存ぜずでした。
ギター🎸弾き語りは「花嫁でしたね」♡
素敵な歌声有り難うございました♬
妹はレオン・ルーゴ・メリデから巡礼路を歩いたようですがサンチャゴ・デ・コンポステーラへも行くようです。
ここは以前行っていると思いますが?
投稿: マコママ | 2023年6月28日 (水) 19時39分
こんばんわ!
昨年7月に大腸検査をやりました。胃カメラも大変ですが、この大腸検査も正直
大変でした。以前にも”過敏性腸症候群”等と診断されたことがありましたが、排便が
スムーズでなかったり、便秘したり、また排便が1回につき少ない。それで1日に何度か
トイレに入っており、今般も癌が疑われるとの内科の先生の見方でした。しかし、1年
前の検査では、3年は大腸検査不要と言われていたのでした。それを話したら検査は
しないで、現在は整腸剤をのんでいます。
今回の話で少し納得していますが、大腸検査に代わる何か検査はあるのでしょうか。
ちなみにエコー検査もやりました・・・
投稿: でんでん大将 | 2023年6月28日 (水) 20時19分
マコママさん、こんばんは。
今日は、外来、手術、FM放送後病院長会議と目まぐるしい1日でした。沖縄県でのコロナの医療逼迫がテーマの話し合いでした。
日本人女性の死因の1位が大腸がんとなっています。大腸がんは決して予後不調ながんではありませんので、検査をせずにステージが進んだ状態で発見されることが原因です。
マコママさんはポリープ切除を受けて良性だったのですね。最後のカメラでポリープがほとんどない状況でしたら、しばらく便潜血の検査で良いと考えます。4〜5年したら大腸内視鏡検査を検討してください。
音楽も聴いて頂きありがとうございます。坂庭さんは甘いマスクでギターも唄もとても上手な方でした。
私はこれまで4回スペインには行きましたがサンチャゴ・デ・コンポステーラはまだ行っていません。ポルトガルを旅行先に選んだらサンチャゴ・デ・コンポステーラも組み込みたいと思っています。
投稿: omoromachi | 2023年6月28日 (水) 23時22分
でんでん大将さん、こんばんは。
私たちの病院では経鼻内視鏡と希望すれば安定剤の注射もしますので胃カメラはとても楽に受けれます。大腸は下剤など前処置が結構大変ですし、時間も大変ですね。癒着などがなければ大腸検査自体はあまり苦痛は無いはずです。大腸は個人差が大きいので簡単か難しいかはやってみないと分かりません。大腸検査は施行医の技術力があからさまに出ますので、上手な方に当たると楽です。
大腸内視鏡検査で何もなければ、毎年は勧めていません。3年後で十分と思います。アメリカの研究では5年に1度行えば内視鏡ではなくて実際の外科的な手術になるような大腸がんは少ないと言われています。
大腸内視鏡に変わる精密な検査はありません。検査だけならバリウムを使う注腸検査があります。時々便潜血検査を行なって経過を見てくださいね。3〜5年後に頑張って検査を受けてくださいね。
投稿: omoromachi | 2023年6月28日 (水) 23時33分
ご回答を有難うございました。
投稿: でんでん大将 | 2023年6月29日 (木) 22時56分
でんでん大将さん、こんばんは。
わざわざありがとうございます。これから雨や風のことが気になりますね。気をつけてお過ごしくださいね。
投稿: omoromachi | 2023年6月29日 (木) 22時59分