増え続ける脳梗塞に対して今後ともメタボ対策、不整脈対策などが重要となります。
脳卒中にも異なる3つの病態に分かれることを以前に書きましたが、その部分を再度記載しておきます(日本では脳卒中のうち、脳梗塞が64%、脳出血が25%、クモ膜下出血が9%)。
これまで特に何もなかった人が、急に倒れて意識がなくなったり、半身に麻痺が起こったり、呂律が回らなくなるようなことを、先人達の多くの方が経験してきた訳です。 当然以前はこれが脳の中の出血や梗塞で起きたことなど分かりませんでした。
この様な病態も見て、昔の方は「脳卒中」と名付けました。「脳」は名前の通り脳みそ(脳実質)のことで、「卒」は「にわかに」という意味です。また「中」は命中とか適中などと同じ意味で「あたる」とのことになります。
ですから、今まで一緒に過ごしていた方が急に麻痺や意識消失を起こしたため「脳がにわかに(邪気に)あたった病気」として捉えたのです。
医学の進歩する以前は、それこそ悪霊が取り付いたとして、邪気を払うために荒治療や拷問に近いようなことも行われたと記録には残っているそうです。
やっとルネサンス期になり、解剖が行われるなかで、同じ様な脳卒中を起こす病態(症状が似ていいる場合)でも、血管が破けた場合と血管が詰まって起こる場合もあるのが判ってきました。 更に脳の出血でも脳実質の中に出血する場合(脳出血)とくも膜下のスペースに出血する場合(くも膜下出血)があること、脳の血管が詰まる場合にも血管そのものが動脈硬化が強くなり血管が狭くなっている場合(アテローム性脳梗塞)と心臓でできた血の塊(塞栓物質)が飛んできた脳の血管を詰まらせて起こる場合(脳塞栓症:心原性脳塞栓症)も分かるようになりました。
現代のように画像器機が進歩するまで、死んだ後に解剖で判って来たことで、治療には簡単には結び付きませんでした。 出血と梗塞では同じ様な症状でも治療は全く異なることになります。
単純にいえば、出血していれば血を固めて出血を止めたいですし、詰まっているのであれば血をさらさらにして固まらないようにしないといけません。 もしもこの病態と逆の治療をすれば、何もしないより更に悪化させることになります。
脳卒中の治療に福音をもたらしたのは、頭部CTの開発で、その後MRIなどの医療器機も開発されました。それらのお陰で、硬い頭蓋骨の中で起こった病態を短時間に把握出来て、早期治療が可能となったのです。
私達にできることは、いつも言われているメタボ対策、不整脈などの循環器疾患、脳ドックなどでの動脈瘤の有無などのチェックでしょうか。 寒い時に脱衣所が寒い場合などはヒートショックを起こしますので、周りの環境の対策も重要ですね(→前回のヒートショックについて)。
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