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2022年9月14日 (水)

胃癌の原因について

2022年9月14日のFM「いきいきタイム(FMレキオ、FM21同時生放送)」は「胃癌について」の説明をしました。

日本は世界的にみても胃癌の発生が多い国の1つです。

胃癌の診断や手術をする際に「どうして胃癌になったのでしょう」と質問を受けることがあります。今現在でも答えは簡単ではありません。


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癌の一番の原因は・・・・「年齢です」・・・と答えるとある意味正しいのですが元も子もありません。 寅さん風に言うと「それを言っちゃあ、おしめいよ〜」となるわけですので、まじめに話をすすめます。

少し歴史を遡りますが、発がんのメカニズムについて、19世紀にはデンマークのフィビガー先生の提唱した寄生虫発癌説とドイツのウィルヒョウ先生が唱えた癌刺激説の二大論争が起こりました。


当時ヨーロッパで煙突掃除夫の間で陰嚢癌が多発しました。ススがズボンの中に入り、陰嚢の部分に貯まることが原因ではないかと考えられました。

それを実験で証明したのは、実は日本の病理学者の山極勝三郎先生と市川厚一先生でした。今のように日本人の科学者が正しく評価されていたら恐らく日本にノーベル医学賞があとひとつ生まれたのは確かです

この2人は来る日も来る日もウサギの耳にコールタールを塗ることを繰り返すことで、塗った部分から癌が発生したのです世界で初めて実験で(人工的に)癌を作り出すことに成功し「癌刺激説」が優位となりました。 持続する刺激や炎症が発癌と関与すること示唆する重要な実験でありました。国内でそれが評価され1919年(大正8年)に恩師・山極勝三郎東京帝国大学教授とともに学士院賞を受けることになりますが、ノーベル賞は与えられませんでした。

現在ではB型やC型肝炎ウイルスの持続感染により慢性肝炎、肝硬変となり肝癌が発生することやパピローマウイルスの感染により子宮頸がんが発生することは皆様もマスコミ等でご存じと思います。これも「持続する刺激や炎症が発癌に関与」する結果なのです。改めて先駆者の山極先生と市川先生の功績は大きいと考えます。

ここでやっと胃癌の話しに戻すことが出来ます。現在胃癌の発症のトピックはヘリコバクタ・ビロリ菌の感染との関わりです。胃の中には胃酸という強力な酸があり、胃の壁を住み家とするような菌はいないと誰でもが考えていました。

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実際はピロリ菌はこの強力な胃酸から身を守りながら胃の壁に食い込むように生きていて、胃に慢性の炎症を引き起こします。慢性萎縮性胃炎とよばれ、胃癌の発生母地と考えられています。 胃に慢性の炎症を引き起こすことで胃癌になりやすい状態を作っていたのです。肝炎ウイルスの持続感染と似たメカニズムです。

 

日本人の50代以上の年齢ではピロリ菌をかっているのが70%を越えます。しかし皆が胃癌になるかというとそうでもありません。ただピロリ菌のいない人で胃癌になるのは稀でもあります。

 

ではピロリ菌だけが胃癌の発生と関与するのか? つい10〜20年前まで塩辛い食べ物を食べる地方で胃癌が多いため、塩分過剰摂取が胃癌発生に関与する最大の原因と言われていました。 今でも食塩濃度の高い食事の関与は明らかです。 その他に喫煙多量のアルコール緑黄色野菜不足食品添加物生活習慣病、加齢などなど・・・発癌と関与することが疫学的に分かっています。 さらに遺伝子の異常による関与も解明されつつあります。1つの因子だけでなく色々な原因が絡み合って癌が発症します。

 

この様に「なぜ癌になったのですか」の質問に一言で答えることは出来ないのです・・・・ここまで読ませておいて何も無しかよとお叱りを受けそうです。お許しを

(私のiMacが壊れたため買い換え中のため、コメントの返事が難しいためコメントを閉じております。済みません😅)

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