今年は沖縄県を始め各地で、梅雨明けの時期が早まり6月に梅雨明け、夏日が来るなど異常事態となっています。毎年この時期にはFM放送で熱中症について話をしています。梅雨入りから初夏にかけては、湿度が高かったり、気温が急に上がる場合も多く、1年のうちこの時期は暑さ対策がより重要となります。時に今年は暑さに慣れる間もなく夏日となる異常高温ですので注意が必要となります。(昨年も書いていますので、ほぼ同じ内容です)
熱中症とは、私たちの体の中と外の「あつさ」によって引き起こされる、様々な体の不調の事を言います。 熱中症の臨床分類は①〜④となります。
①熱失神とは、暑い環境にいたり、作業やスポーツなどで体温が上がる状態になると体温を下げるために皮膚の血管が拡張します。そして脱水と相まって血圧が下がってきます。そのため脳へ行く血流が減って、気分不良、めまいや失神を起こす場合があります。
②熱けいれんとは、大量に汗をかくことで血液中のナトリウム(塩分)が汗と共に失われます。塩分を含まない水だけを補給すると、脱水状態の体は素早く水分を吸収します。更に血液の中のナトリウム濃度が低下してしまいます。 血液の中のナトリウムが正常より低くなると、脚や腕、お腹の筋肉がけいれんを起こしやすくなります。この様な原因でけいれんが起こることを「熱けいれん」と呼んでいます。熱けいれんと言いますが、体温がまだ上昇していない時に、けいれんが起こります(子供が高熱の時に起こる「熱性けいれん」とは違います)。
③熱疲労は大量に汗をかいて脱水になり、体温が維持できなくなり、体温上昇が始まり、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などが起こる状態となります。
④熱射病は熱中症の1番重傷となった病態で体温が40度以上に上がり、脳の機能(中枢機能)がマヒしてしまうために意識障害が起こり、さらには肝臓や腎臓などの多くの臓器がダメージを受けて、死に至る可能性が高まります。非常に危険な状態で一刻も早く救急車を要請し、その間とにかく冷やし続けることが重要となります。
これらの分類方法とは別に、「具体的な治療の必要性」の観点から熱中症の重症度分類もよく使われています。
熱中症の重症度分類のⅠ度:「熱失神+熱けいれん」の段階。涼しい場所に移動し、身体を冷やしたり水分補給を行って様子をみます。改善あればこのまま経過観察。
重症度分類のⅡ度:熱疲労の段階。水分補給が可能なら補給しながら病院へ搬送。
重症度分類のⅢ度:熱射病の状態。すぐに救急車を呼んで病院へ搬送。
コロナのパンデミックが始まって以来、夏の熱中症とコロナの感染が交差する機会が増えて来ています。医療現場では発症状況が分からない場合に発熱があり、気分不良や意識混濁などで救急搬送された場合に混乱が生じてしまいます。熱中症なのかコロナウイルス感染症なのか現場の対応は難しくなり、初期対応に時間を有する場合がでてきます。また熱中症で運ばれた患者さんの中にコロナウイルス感染も併発していることもあると考えます。
熱中症で重症度Ⅱ度や特にⅢ度は時間との闘いとなります。早く処置をして病棟などへ移動させたくても、もし万が一コロナウイルス感染症だったり、あるいは同時に併発している場合を考えると迅速な対応が出来かねない事態も予想されます。更に怖いのはコロナ抗原検査やPCRも100%の感度ではありませんので、もし検査をすり抜けた場合には、この方を介してクラスターが発生する危険性もあるのです。
まだまだ新型コロナウイルス感染症の新規感染者が高止まっている状態では予防にも限界がありますが、熱中症に関してはそれぞれが基本的な対策を講じれば防ぐことが多いので気をつけて欲しいと願っています。
<個人で行う熱中症対策>
①室内環境整備:熱中症で夜間・室内で亡くなる方の多くがエアコンを使っていないデーターがあります。もう一度自分の室内環境を考えて欲しいと思います。高齢者の多くがエアコンが苦手と訴える方が多いのですが、高温・高湿度の環境での睡眠は死の危険をもたらすことを認識すべきだと考えます。通気性や吸水性の良い寝具をつかったり、エアコンや扇風機を使って室内の温度や湿度を管理して睡眠環境を整え、寝ている間の熱中症を防ぐ対策が必要です。
②水分対策:熱中症の対策としては、水分を補給し汗が出やすい状態をつくることが大切です。汗は舐めたら分かるように塩分が含まれています。多量に汗をかいた場合は塩分も失われます。さらにカロリーも消費されることになります。
熱中症の対策としては先ずは水分(水でもお茶でも)を摂ることを心がけるようにします。 汗も多めにかいているようなら水だけでなく塩分も摂るようにします。更に作業やスポーツなどで多量に汗をかく場合はカロリーも消費されるため、水分、その次ぎに塩分、そして糖分を摂るようにして欲しいと思います。
スポーツ飲料は水分だけでなく塩分も糖分も最初から適量に入っていて、飲みやすくなっています。 ただし美味しいからといって汗もかかずに運動もしない場合にスポーツ飲料をガブ飲みすると塩分も糖分も必要以上に摂りすぎることになるため注意が必要です。
熱中症は身近の場所で起きますが、対策を講じれば予防出来ることも多いのです。今年の夏は水不足や熱中症などが早くも気になってしまいます。
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