間歇性跛行の二大疾患(閉塞性動脈硬化症、脊柱管狭窄症)
今日のFMレキオは間歇性跛行(かんけつせいはこう)について話をしました。
間歇とは一定の時間をおいて、物事か起こったり止んだりすることを示します。
よく温泉地帯で一定の間隔をおいて蒸気が飛び上がるのを「間歇泉」などと呼んでいますが、この字と同じです。(左の写真は2006年頃の写真ですが画像が悪くてすみません😢)
跛行とは足を引きずって歩くという意味です。
間歇性跛行とは歩き始めは普通に歩けるのですが、しばらく(一定の距離を)歩くと足が痛くなったり重くなったり、しびれや冷えが出現し歩けなくなってしまい、休憩するとまた歩ける状態を呼んでいます。
この症状を起こす二大原因として、動脈硬化が足の血管で起こる閉塞性動脈硬化症(ASO)と腰の神経が通る脊柱管という神経の通り道が狭くなる脊柱管狭窄症があります。閉塞性動脈硬化症は外科、特に血管外科で扱いますし、腰部脊柱管狭窄症は主に整形外科で扱う疾患になります。
寒くなると、足が冷える、しびれる、ある程度歩くと足が痛くなる等の症状を訴える方が増えます。特に閉塞性動脈硬化症はもともと血液の流れがよくなくて、足が冷えている状態で寒さに弱いのが特徴です。
以前にも記載したシェーマですが、もう一度載せておきます(クリックするといつものように大きくなります)。
閉塞性動脈硬化症(ASO)では動脈硬化により血液の流れが悪くなるため、その領域の酸素不足が生じます。 運動すると筋肉の酸素消費量が増えるのですが、血管(動脈)が細いと必要量の血液が流れず酸欠状態となり痛みを感じてしまいます。そこで休むと筋肉も次第に必要な分の酸素が供給され、また歩き出すことが出来るようになります。
同じ症状が起こるのが脊柱管狭窄症です。しかし血管の病気ではありません。背骨の中の神経が通る場所(脊柱管)が元来狭かったり、圧迫骨折やヘルニアで神経が圧迫されるのが脊柱管狭窄です。歩行時には、脊柱管の中を通る神経に血液を送り込む血管も圧迫され、次第にこの神経を介して痛みがきます。横から人間の体を見ると背中の骨はS字に曲がり特に腰の骨は前方に傾斜しています。真っ直ぐな姿勢や逆の背屈の姿勢では神経が圧迫されやすくなり、症状が悪化します。
ASOは姿勢で変化はしませんが、脊柱管狭窄の場合は前屈で神経の圧迫が少なくなり楽となります。これを利用してこの2つの疾患をある程度見分けることが出来ます。
・平地歩行はきついけど自転車(体が前屈みとなりますので)なら何処までもいけるのなら脊柱管狭窄症です。一般的には平地歩行より坂道の上りがきつく、下りは楽なことが殆どです。しかし脊柱管狭窄では登りは前屈姿勢となりますので普通の人と変わりなく、楽になるはずの下りで(後屈姿勢となるため)きつくなるのが特徴です。
・ASOは登りの方が筋肉の酸素量が必要となりますので、正常の方と比べても早く足の痛みやしびれなどがきます。
年をとったから長い時間歩けなくなったと感じている方に、実際は年齢のせいではなく病気のせいで歩きづらくなっただけの方もよく見かけます。 診断がついて治療をすると元のように長い距離を歩ける方もいますので、生活の質が向上します。 もしも間歇跛行の症状があって、姿勢で変化があれば整形外科を受診され、自転車をこいでもきつくなるようなら血管外科を選択されたらよいかも知れません。 思い当たる方は一度病院を受診なされて下さいね。
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コメント
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院長先生
こんばんは。
祝日でも院長室からの放送だったでしょうか?
お疲れ様でございました。
聞いた事のある病名?ですが、
漢字は書けず!でした。
もう、何年前になるか記憶が途切れてますが、
一時、この間歇性跛行がありました。
特に左足先が痺れて本の少し立ち止まると歩ける状態でした。
椎間板ヘルニアにもなっていたので、
ずっと整形外科へ通い、メチコバール500を処方されていつの間にか?
たちどまらなくても歩けるようになりました。
今でも腰痛、膝痛ありですが、どうにか動けていられる事に感謝です。
院長先生、先日、どなたかが「カレイ(加齢)ではなくヒラメ」がいい!と
書いていらっしゃいました。私もヒラメが好きです💞
布施明さんは懐かしかったですね!
ギター🎸弾き語りの「そっとおやすみ」聞き惚れて歌詞に
夫が旅だったあとと重なりました。
今日も有り難うございました。
そっとおやすみなさいませ。
投稿: マコママ | 2022年2月23日 (水) 19時36分
マコママさん、こんばんは。
コロナの影響でもう2年以上、スカイプを使っての放送となっています。自宅でも可能ですが、もしもネットが中断したりした場合には病院からFM放送局へは走ったら5分でいけますので、病院長室から放送しました。
マコママさんは椎間板ヘルニアにより脊柱管狭窄症と同じ様な症状になったのかも知れませんね。軽症ではメチコバールなどで様子をみることもあるようです。重症化せずに良かったですね。
私のように病気について話をすると加齢による変化を話す機会が多いです。次からはヒラメの話題がないか考えておきます(笑)。
久しぶりに布施明さんの曲をかけましたが、布施さんの歌唱力に改めて感心しました。
何時も本当にありがとうございます。
投稿: omoromachi | 2022年2月23日 (水) 20時48分
先生、こんにちわ。
先生の医療関係のお話は、
いつも詳しくわかりやすいので参考にさせ頂いています。
様々な病気が沢山あるものですね。
私は胆のう結石があるものの、今までの先生のお話では
特に該当するものもなく、幸せに感じております。
今回の二大疾患は、今後なる可能性ありで怖いと思いました。
今のところ、1万歩位は比較的楽に歩けます。
今迄、腰が痛くなる事もなく、無事に過ごしてきました。
昨年春に変形性膝関節症にはなりましたが
ヒアルロン酸注射を、5回に渡って、受けましたが、
現在は病院に行く事もなく、通常生活を送っております。
今年の夏には喜寿となりますが、今までの健康に
感謝しつつ、これからも元気で過ごせたらな、と思っております。
投稿: ガルボ | 2022年2月24日 (木) 14時58分
ガルボさん、こんばんは。
読んで頂きありがとうございます。私の方も難しいことは判りませんので一般の方と同じレベルで書かせてもらっています。
胆嚢結石は日本人の10人に1名ぐらいが持っている病態です。ガルボさんもその1人になっているのですね。
1万歩歩けるのであれば、今回の2大疾患は大丈夫だと思います。変形性膝関節症も多くの方がなる病態で、長い間使ったために膝の軟骨がすり減って起こってしまいます。飲んでもヒアルロン酸が関節に入るわけではありませんので、直接関節内腔に注射で注入する必要があります。このまま状態が持ってくれたらいいですね。
もうすぐ喜寿ですか? これからも元気でお過ごし下さいね。
投稿: omoromachi | 2022年2月24日 (木) 19時37分
こんにちは・・・
いつも分かりやすい解説を有難うございます。
かなり以前から背中が怠いような重苦しさがあり、最近、呼吸も息苦しい時がありました。それは呼吸器科で診察を受けてい治療もしているのですが、首の違和感と関りがありそうで、先日頸部のMRI受けました。すると軽度のヘルニアということで、薬剤の投与と首にシーネを巻いています。今回の記事を拝見し、或いは脊柱管狭窄症かも?なんて思ったりします。整形外科の先生は、呼吸の息苦しさとは関係ないとは言いますが・・・高齢になってきますと、あれこれへの病気の不安や治療自体にも大変になって来ました・・仕方のない事ではありますが・・・
投稿: でんでん大将 | 2022年2月25日 (金) 11時02分
でんでん大将さん、こんばんは。
大将さんは呼吸器も少し弱かったので息苦しさとの関連があったのかも知れませんね。
頸部の椎間板ヘルニアがありそうですし、若い時から農業で重い物を持ったりして腰椎も酷使していると思います。足のしびれ感などの原因や腰痛の原因として椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄がありますので、これからも注意して観察されて下さい。
年齢と共に色々と不都合な場所が出て来ますね。病的でなければ付き合ってゆくしかありません。 ただ病気が原因の場合もありますので、正確な診断は必要かも知れませんね。
投稿: omoromachi | 2022年2月25日 (金) 20時39分
コメントと言うよりも質問になってしまい申し訳ありませんでした。それにご多忙な中をお答え頂き恐縮しております。誠にありがとうございました。貴重な時間を取らせて頂きましたことと併せて、深くお詫び申し上げます。
投稿: でんでん大将 | 2022年2月26日 (土) 10時13分
でんでん大将さん、こんばんは。
どういたしまして、私の方はこのようなコメントはとても有難いです。医学の情報はこれまでの人類の知識の集積ですので私は単に請負いで伝えているだけです。
これからもよろしくお願いします。
投稿: omoromachi | 2022年2月26日 (土) 18時45分