アルコールが弱い人が飲んで鍛えることは出来ない
今日のFM放送は12月の忘年会にかけて、お酒と肝障害について話をしました。 日本人で肝臓病と言えば、これまでC型、B型などの肝炎ウイルスによる肝炎、肝硬変、肝臓がんが多いのですが、日本人のアルコール消費量の増大とともに、アルコール性肝障害が増えています。戦後日本人の一人当たりの飲酒量はここ数年は横ばいかやや低下にありますが、それでも戦前と比べると5倍ほど増えています。 おおよそ日本人の1人当たり純アルコール消費量は年間8〜10L程度と言われいます。飲酒習慣のある男性は35%、女性は8%だそうですが、その量に関しては結構偏りがあります。上位20%の人が国内の飲酒量の70%を消費しています。
アルコールは胃と小腸から吸収されて肝臓へと運ばれ、体内の分解酵素によりアセトアルデヒドへ分解され、さらにアセテートへと分解、代謝され、最後は炭酸ガス(息として)と水(オシッコ)になって排出されます。
体内で有害なアセトアルデヒドを分解して無害の酢酸にする一番重要な酵素がALDH2(2型アルデヒド脱水酵素)という酵素です。この酵素は父親、母親から1本ずつ遺伝子をもらって1対(2本)になって作られるんです。ALDH2の働きが強いか弱いかは、次の3タイプに分けられます。
このアルコールの分解能には個人差も人種差もあり、遺伝で決まっています。欧米人に比べて日本人はアルコールに弱い人が多いのです。日本人ではアルコールを分解、代謝する酵素の能力が高い遺伝子を持つ人が5〜6割、低い人が3〜4割、分解能力がない完全な「下戸(げこ)」が1割だといわれています。なぜそうなったかは以前のブログに記載していますので併せて見て下さい→(日本人にお酒が飲めい下戸がいる理由)
アセトアルデヒドは飲酒による害の多くを占めます。吐き気がしたり頭痛がしたり、あるいは色々ながんや肝機能を悪化せせる作用を持っています。身体にとってはアルコールを飲んでもこの「アセトアルデヒドの濃度が高く、長時間留まる方はお酒が弱いことになります。ALDH2が少ないのに飲める方と同じ様に飲むと長時間悪影響が出ることになります。 ですから、自分の遺伝子と相談して飲まないと身体を壊すことになるのです。
これを書くともう1つ反論が出ると考えますので、これも同時に記載してみます。 下戸はアルコールをそもそも受け付けないでしょうが、弱いけれど、飲んでいるうちに多く飲めるようになったのはなぜ? と言う方がいるはずです😊
最初に書いた様に1番大きな役割を果たすのは遺伝で決まっているALDH2です。アルコールの代謝には、最初に体内に入ったアルコールを最初に分解してアセトアルデヒドにするADH(アルコール脱水素酵素)やアセトアルデヒドを分解出来るカタラーゼとかミクロソームエタノール酸化系(MEOS)酵素群といった分解酵素が同時に働いています。それらの酵素類は遺伝とは余り関係がありませんので、お酒を飲むにあたり多少は影響をします。 それらが頑張って対応していることも考えられます。
アルコールがもともと弱い人が、頑張って飲めるようになったても他の機能を総動員しているだけであって、決してお酒が強くなった訳ではありません。
自分の身体(遺伝子)に合わせてお酒を飲んで下さいね😊
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手術を終え病棟に上がったら曇り空の中から光が差し込んでいました。思わず見とれてしまう光景でしたので追記してみます。
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コメント
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院長先生
こんばんは。
FM放送、拝聴させて頂きました。
このあとズーム会議でお疲れ様でございます。
私は不整脈発症する前は赤ワイン🍷を飲んでましたが、
その後は禁酒を徹底しております。
夫は下戸でしたが舅は晩酌!義妹も飲める口でした。
遺伝性ですね。
年末年始にお酒を飲む機会も増え
程々でお楽しみ頂きたいですね!
弾き語りの「酒と泪と男と女」は好きな曲でした!
伸びやかで甘い歌声を有り難うございました。😍
「東南植物楽園」のイルミネーションが全国3位と報じておりましたね!
院長先生もご覧になって載せて下さいませ。
今日も有り難うございました。
投稿: マコママ | 2021年12月 8日 (水) 19時17分
マコママさん、こんばんは。
19時30分から21時までズーム会議があり、今帰って来た所です。
マコママさんと赤ワインは似合っていそうです。アルコールは心拍数を上げますので、不整脈の場合は断念も仕方ないですね。
私の方は父が酒豪で母型が呑めないタイプです。お祝いなので親族が集まると両家では出てくるお酒の量がまるで違っているのも笑える点です。私は真ん中を引き継いだようです。
今日のFM放送はアルコールと肝機能でしたので唄もお酒にまつわる曲にしました。
「東南植物楽園」のイルミネーションが全国3位ですか・・・知りませんでしたが、以前ブログにアップしたように綺麗でしたよ。
毎回コメント頂き本当に感謝致します。
投稿: omoromachi | 2021年12月 8日 (水) 21時40分
先生、こんばんわ。
本日やっとFMレキオにて、先生のお話とギターの弾き語りを
聴く事が出来ました。
相変わらず伸びやかな歌声、素敵でしたよ♪
私は昔から下戸で、注射を打つ時もアルコー消毒は
避けて頂いている状態です。
多分アルコールアレルギーなんでしょうね。
友人との集会でも私だけ飲めなくて、つまりません。
両親は飲めたのに、なぜ?と云う感じです。
ただ食べ物のアレルギーが全くないのが救いです。
皆さんが飲んでいる時、私はひたすら、お料理を頂いています。
飲める方が羨ましい気もしますが、私はせいぜい
食事で楽しみたいと思います。
今日も有難うございました。
今後のFMレキオ、楽しみにしています。
投稿: ガルボ | 2021年12月 8日 (水) 22時44分
こんばんは。
いつも有用な内容を有難うございます。このような内容の濃いブログを無料で読めるのは有難いことです。お陰さまで私もこの年になって色々と医学の知識が増えて参りました。
私の方は昔は終電までよく飲み歩いたもので、恐らく分解酵素は多く持っていると考えます。しかし年のせいでしょうか随分と弱くなってきました。年齢と共に分解酵素も低下するのでしょうか?
手術後の眺めは素晴らしかったことでしょう。いわゆる天使のハシゴと言われる光芒が那覇市内へ降り注いでいますね。きっと手術の疲れも癒してくれたことと思います。本当に先生の病院の眺めは最高ですね。
投稿: 信州の隠居老人 | 2021年12月 8日 (水) 22時50分
ガルボさん、こんばんは。
FMレキオ(FM21も同時生放送)の放送を聴いて貰えたのですね。今では世界中で聴くことが出来ますので、下手のことは喋れません😅
ガルボさんは10%以下の数少ない下戸だったのですね。それはそれは世界的に見ても貴重な存在ですよ😊
両親が飲めて、ガルボさんが飲めないとなると、両親ともNn型で両親からそれぞれn型の遺伝子を貰って、ガルボさんはnn型の下戸になったのでしょうね。
私は弱い方ですので、普段は飲まなくていいのですが、ヨーロッパ旅行では飲める方が羨ましいです。
第3水曜日は運営会議がありますので、私の担当ではありません。第1.2.4週は今日のような医療情報、第5週は私のギター弾き語りの音楽番組としています。 これからも聴いて頂ければ嬉しいです。
投稿: omoromachi | 2021年12月 8日 (水) 22時59分
信州の隠居老人さん、こんばんは。
このように言って頂ければ恐縮ですが嬉しいです。今後も少しでも医療情報を伝えることが出来たらいいと考え続けています。
信州の隠居老人さんはお酒が呑めるタイプだったのですね。現役時代は東京でお過ごしでしたので、逆に終電があって良かったかも・・・なければ朝まで飲んでいたかもですね😊
丁度病棟に上がった時に外を見たら曇り空で暗かったのですが、次第に雲の間から光が差し込み大変美しい風景に変化しました。偶々iPhoneを持っていましたので撮ってみたのです。
このような眺めは私にとっても有難いことです。 コメント頂きありがとうございます。
投稿: omoromachi | 2021年12月 8日 (水) 23時04分
ラジオ拝聴しました。
アフリカ大陸から始まる我々の祖先は皆、酒飲み(いや、お酒が飲めた)というお話、大変面白かったです。
私は分解酵素を持っている縄文人なのですね。
旅仲間で、「わたくし、分解酵素を持っていませんので結構です」とお酒を断る人が居るんですよ。あだ名は「研究者」です。余談でした。
が。彼女の言っていたことは正しかったのですね。
堀江淳さんのメモリーグラス。大変懐かしく聴かせていただきました。
投稿: おたま | 2021年12月 9日 (木) 20時55分
おたまさん、こんばんは。
ラジオも聴いて頂きありがとうございます。私自身が自分の声が嫌いですので、初めラジオは断っていたのですが何故が10年以上続いています😊
そうなんですよ、一応人類の祖先はミトコンドリアイブと呼ばれる私達人類のお母さんから生まれたことになっています(女性だけが受け継ぐミトコンドリア内の遺伝子を辿って行くと、人類の共通の女性がいるようです。その為ミトコンドリアイブと呼ばれています)。
旅仲間の「研究者」さん実に理系的なお答えで分かりやすいです。私などは親兄姉や相棒も文系ですので、回りくどいです😅
堀江淳さん懐かしかったでしょ。他の曲を知りませんのでこの曲ぐらいしか番組でかけることはありません。
文系女子のおたまさんについて行けるように頑張ります。
投稿: omoromachi | 2021年12月 9日 (木) 23時24分
こんにちは・・・
酒の消費量日本一の秋田県です(笑)・・・確かに酒の強さは遺伝もあるのでしょうが、鍛えかた(適切な表現ではありませんね)と言うか、度々呑んでいれば強くなると思っていました。俺は勤め始めの頃は、酒を呑むと顔が青白くなり心配されたものでしたが、仕事柄結構呑む機会が多かったのです。そうしているうちに強くなっていると思っていました。呑まないに越したことはなかったのですが、農家の方々と懇親を持たないとと(お笑いでしょうが)呑むことにも責任感?を感じたものでした。秋田県人は口が重く、対等に酒を呑まないと信頼されない、そんなこともありましたから・・・それで呑むことにも慣れた、強くなったと思い込んでいましたね・・・
投稿: でんでん大将 | 2021年12月12日 (日) 13時47分
でんでん大将さん、こんばんは。
米どころは日本酒が美味しいところですので、アルコールの消費量が多いのも頷けます。もう一つは縄文人の方が弥生人よりもアルコール分解酵素が多いと言えます。日本の分布は中央が弥生人の遺伝が強く南北に行くほど縄文人の比率が高くなります。東北も九州(沖縄県)もアルコールに強い比率が高いと思います(私は弱い方になりますが・・・😢)
仕事や社会の中で飲まないといけない場合も多く、弱い方は大変ですよね。確かに最初は弱い人でも比較的飲めるようになるのは、分解酵素が中間の人々です。下戸は頑張っても強くなれません。
私の印象も秋田県民は口が重い気がしますが、その分信頼が出来る方も多いと感じています。美味しい日本酒を呑みながら話が弾むといいですね。
投稿: omoromachi | 2021年12月12日 (日) 17時20分