積み重ね(基礎)の重要性
(今日は第3週水曜日で私のFM放送はありませんので、医療ネタもありません)
先日、久々に大学時代の恩師の夢をみました。懐かしい顔で私もまだ若かったです(笑)。
私は博士論文を書くために数年間実験を繰り返したことがあります。 基礎の研究は恐らく99.9%(済みません根拠のない数字です)は日の目を見ないと思います。 実地臨床は今、困っている方を助けることが出来ます。しかし基礎研究は直ぐに臨床応用は出来ません。ただその中には病気の解明と治療を根底から変えるような大発見もあります。その発見で目の前の一人の患者さんだけではなくて、世界中の何十万あるいは全人類に恩恵をもたらすことが可能性があります。
私が基礎研究を行っている時、こんなことをしている時間があったら手術や救急患者を診て臨床力を付けた方がいいと言われたことがありました。当時はそうだなと考えながら実験をしていました。 大学での研究の数年間は毎日深夜の0時を超えて城達也さんの「ジェットストリーム」を聴きながら帰宅し、朝6時には自宅を出る生活でした。
そのような中で専任の教授からは「どんなに手術が上手くなってもそこには自ずと限界があり、病気の解明をすることで手術を含めた治療薬の開発や予防など総合的な治療法が手に入るかも知れない」と教えて頂きました。最も大切なことはデータに基づきながらも自由に発想出来る基礎力を実験を通して学ぶことであり、それは臨床で困ったときに応用できると教えられました。本当にありがたいお言葉でした。
日々の積み重ねを大切にして、成功だけでなく失敗からも学ぶことは実験だけでなく私達が生きて行くうえでも大切なことだと思うのです。どんなに華やかだとしても、基礎がしっかりしていなければ少しの外力だ倒れてしまいます。
日本の大学は基礎研究に進む学生が減り、教室の維持も大変なようです。日本はまだまだ基礎的な実験や学問に対してソフト面でもハード面でも対応が遅れています。国がもっと後押しをして基礎研究の評価をして貰いたいと願っています。
ノーベル賞などは特別でしょうが、誰かが偉大な発見をした時にある種の方々(歴代の首相を始めお偉い方々)は自分がやったように祝辞を送ります。基礎研究の大切さも分からずに、研究費を削っていった本人達が偉業をした方が発表されると、テレビにしゃしゃり出て謝辞を述べる姿は呆れてしまうのです。
日本の沢山の基礎実験に携わっている方々は本当に恵まれない環境で仕事を行っています。 ノーベル受賞者を礼賛するのであれば、日本の基礎研究費に十分な予算と光を充てて貰いたいです。 直ぐに成果が出るのも良いのですが、これからの社会のイノベーションを作り出すのはやはり基礎研究だと思うのです。 今は苦しくても将来に渡って大切にすべき基礎学問の重要性を再考したいものです。
日本は資源に恵まれない国です。国の力は私達1人1人の人間力です。そのためにはもう少し頑張ろう、あと1日頑張ろうともう1歩努力する大切さを噛みしめて生きて行きたいと思う晩秋の1日です。
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コメント
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院長先生
こんばんは。
今日もお疲れ様でございました。
医療だけではなく全てにおいて
基礎研究は大切だと思います。
積み重ねていくには沢山の費用も掛かりますね?
その点、先生の仰せの通り、日本は遅れていますね?
優秀な方々は資金豊富な研究ができる海外へー!
ひとり、ひとりの小さい力を発揮して頑張りましょう!
ババには何もできずにおりますが、せめて?
迷惑をかけないように過ごせたら、と思っております。
今日の拙ブログには「ファストドクター」を紹介させて頂きました。
このようなプロジェクトを初めて教えて頂き、
ドクターの方々には感謝いたします。
投稿: マコママ | 2021年11月17日 (水) 20時34分
マコママさん、こんばんは。
基礎研究は地味ですが、多くの方を救ったり、ダイナミックな変革をもたらします。 日本は基礎の分野で戦後頑張って来ました。 それは比較的自由な環境で研究がやれたからです。 もともと余り基礎研究にお金を出していない国でしたが、次第に成果主義が台頭して早く結果を出すことに移行しています。 今日本はノーベル受賞者を多く輩出していますが、これからは次第に少なくなり、米中が凌ぎを削ることになると考えます。
ファストドクターの制度はまだ始まったばかりですが、現在のニーズに沿っていると考えています。本来は公共医療制度がしっかりしている場合にはこのようなことは必要がないのですが、まだ制度がしっかりしていない日本では必要な体制だと考えています。 これからは中身が問われてくる状況だと判断しています。
いつもコメントを頂き本当にありがとうございます💖
投稿: omoromachi | 2021年11月17日 (水) 21時32分
omoromachi先生、こんばんは。
以前わたしは、様々なジャンルの研究者の方々と一緒にお仕事をした時期がありました。
その時 感じたのは、プロジェクトによって国から出される研究費に大きな違いがあり、短期間でパっと見が良い成果がでそうな研究には、比較的大きな額がすぐ動き、実証実験・実用化に辿り着くまで年数がかかる、根気のいる研究には
なかなか予算がおりないという現実があり、わたしは研究者でも何でもないんですけど(^^;、そんな状況に少し違和感を覚えたことを思い出しました。
先生もさまざまな想いをもちながら、過ごされていたのですね。。。
先生のような方々が一生懸命、各専門分野で研究してくださるからこそ、
いまのわたしたちの健康や、安心・安全な暮らしがあると思うので、
いまも地道にコツコツと研究を重ねている大勢の方々が、何の心配もなく研究に集中し、ちゃんと報われる環境が整備されるといいなと、思ったりしています。
投稿: アケ | 2021年11月17日 (水) 21時45分
アケさん、こんばんは。
私よりアケさんの方が多くの研究者に詳しいのかもしれません。基礎研究のテーマを出して細かな予算を請求するのですが、次第に日本でも成果主義が課せられ、見栄えのよく、直ぐにでも実用化しそうなテーマにお金が集中します。 しかし日本のノーベル受賞者の話を聞いて分かりようにノーベル賞レベルになると全く予期しないことから次第にすごい研究へと発展することが殆どです。
今の日本はお金は出さないが、研究者には結果を求めるプレッシャーが強くなりました。 次第に日本の基礎研究が尻すぼまりすることが心配です。 まだ多くの研究者は不自由な環境でも頑張っています。 これからも応援したいですね。
投稿: omoromachi | 2021年11月17日 (水) 22時11分
こんばんは。
日々の積み重ねと基礎研究の
重要性が本当に分かる気がしました
大学の研究室で黙々と働いていた
先輩を思い出しています。
寡黙でしたが飲むと饒舌で大きな
夢を語っていました。今では大手
企業の部長となって現場で働いて
います。
この先輩も失敗も大切なデーターで
決して無駄にしないことが後々の
研究の役に立つと話してくれました
理系もそうですが文系に関しては
もっと厳しい環境におかれている日本
の現状だと考えています。
今後日本からノーベル受賞者が減少
することが心配です。
今日の話も私の頑張りに繫がります
いつも忙しいなかこのような文章も
書いて頂き感謝です。
投稿: ツクシンボ | 2021年11月17日 (水) 22時56分
ツクシンボさん、こんばんは。
基礎研究は何度も何度も失敗を繰り返しながら、突破口が拓いて行くものだと考えています。
ツクシンボさんの先輩も研究室で頑張っていたのですね。酒を飲むと饒舌になって夢を語るですか・・・本にでもなりそうな先輩ですね😊
小泉政権後、日本の基礎研究は随分と予算が削られて大変な思いをしていると考えます。更にその後の政権も防衛がらみの紐付き予算は提供するのですが、純粋な基礎研究には予算配分がありません。
今後日本のノーベル受賞者は減ると思います。最近の受賞者は戦後の自由な雰囲気の研究から出て来ましたので、本当に今後が心配です。 その予算を組むのにも国民一人一人の頑張りも必要かと思っています。
投稿: omoromachi | 2021年11月17日 (水) 23時39分