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2021年8月25日 (水)

抗体カクテル療法について

今日のFM放送は再度新型コロナウイルス感染症について話をしました。何度か話をしましたので、放送では、妊婦さんにとってのワクチンのメリットと感染した場合の連絡網の確認や危険性について追加して説明しました。後半では現在の新型コロナウイルス感染症の重症度と治療法について話をしました。私に取っては専門外ですので、可能な限り分かりやすくまた間違った情報でないことに気をつけて説明するつもりです。
まずはもう一度新型コロナウイルス感染症の症状と一般的な経過について、厚生労働省の新型コロナ感染症診療手引き第5.2班から引用します。言葉で説明するよりこの方が分かりやすいそうです。
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現在日本中、特に東京などで感染爆発に医療機関の入院体制が追いつかずに、本来なら入院の対象者が入院できずに自宅待機を強いられている厳しい現実に直面しています。 
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現在の症状を元に軽症から重症の診断基準や治療法について、上の図にまとめてみました。中等度1でも原則入院で急変時などに備える必要がありますが、東京では多くの方が自宅待機となっています。更にその上のより厳しい状態の中等度Ⅱの患者さんも入院できずに、不幸にも自宅で亡くなったというニュースで報道されています。 
ひとまずは感染者を減らして(=人流を抑えて)医療体制が追いつくまで全体の患者数を減らすことが僅々の課題です。 東京都や政府は酸素ステーションの前に人流をストップする政治決断をしなければならないと思うのですが・・・
新型コロナウイルスに打ち勝つには最も重要なのはワクチン接種率の増加です。多くの感染症では国民の6〜7割がワクチンを接種すれば集団免疫が出来て感染は落ち着くと言われています(デルタ株のような感染力が高い場合には7〜8割と更に多くの方の接種が必要になるようです)。
現時点で新型コロナウイルス感染症に対する特効薬はありませんでした。これまでは既存の薬を使うことで一定の効果を得ていますし、現在抗ウイルス薬(エボラ出血熱)のレムデシビルやリウマチの薬のバリシチニブや抗炎症作用の強いステロイド(デキサメタゾン)や血栓形成(D.I.C )予防のために抗凝固薬のヘパリンを用いる治療がなされています。 これらを組み合わせながら現場では使っています。酸素飽和度の状況で酸素投与や人工呼吸器到着、ECMOなどの体外循環装置を使用して救命を行っています。
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最近にわかに名前を聞くようになったと思いますが、コロナの切り札のように「免疫カクテル療法」が政治家からも名前が挙げられるようになっています。
以前免疫システムについては書きましたのでご覧になって頂きたいと思います→{免疫システムについて}ワクチンを打って感染を防ぐのはウイルスの持つスパイク蛋白質に反応する抗体を作ることにあります。 コロナウイルスが身体に入ると、私達の細胞の受容体にくっついて細胞の中に入り増殖します。もしもワクチンを打って十分な抗体が出来ると、ウイルスが入って来ても抗体がウイルスのスパイク蛋白に結合して細胞への侵入を塞いでくれます。
もしもワクチンを打っていなくて(ワクチンを打っても十分な免疫がついてない場合)も、外から(点滴で)この抗体に近い物質を入れると、免疫反応に近い状態に持って行くことが出来ます。 この抗体を遺伝子組み換えで作ることが出来るようになりました。 この抗体をいくつか作り出したいるのですが、1つでは不十分なために、有力な2種類の中和抗体(カシリビマブおよびイムデビマブ)を注射薬にしたのが、今回のワクチンカクテルと呼ばれているのです。 2種類の中和抗体であることより「カクテル」と呼んでいるのです。
このカクテル(中和抗体)はその原理から分かる様に、感染が起こって時間が経って使っても意味が余りなく、感染が起こった初期の段階で効果を発揮することがイメージとしても判ると考えます。 初期の段階から点滴治療を行えば重症化を防ぐことが可能という原理となるのです。海外の論文(→プレプリント)でも入院や死亡のリスクを70%減らすと報じられました。

これは素晴らしい!、画期的と思うのですが・・・では何が問題か・・・抗体を作るのにもの凄くお金がかかること、多量に作ることが現時点では出来ない為に供給量に問題がある点です。そのために現時点では重症化リスクのある対象者のみとなっています。光はみえているのですが、まだ一般的に使用できる段階になっていません。 
ですので現時点ではワクチンを早く全国民が受けれるようにして欲しいのです。

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医療」カテゴリの記事

コメント

院長先生
こんばんは。
今日もお疲れ様でした。
FM放送拝聴させて頂きました。
ホームページへも同じ記事が載ってましたので拝見致しました。
お話と合わせて参考になりましたが、
やはり、ワクチン接種が大切な事と思います。
2回接種しても油断せず、3密守り不要不急外出は控えます。

好きな陽水さんのお歌でしたが玉置浩二さんや忌野清志郎さん、
奥田民生さんとのコラボは存ぜずでした。

弾き語りの「少年時代」も聴き惚れましたよ!
今週も有り難うございました。
次回はもう9月ですね?

院長先生、いつもお世話になっております。
今日の放送内容も沖縄県民として興味深く聞いておりました。千葉県にて感染した妊婦さんが受け入れ先がみつからずに、自宅で出産して子供が死んだニュースをみてここまで医療崩壊が来ているのかと心配でなりませんでした。今の状況では妊婦さんは大変だろうと考えております。 
一般外来で抗体カクテル療法の点滴が出来るというニュースを今日みたのですが、実際はまだ簡単ではないようですね。感染者がこれ程多い沖縄県でワクチンが進んでいないのは私も気になりました。
実は私も妻もおもろまちメディカルセンターでワクチンを2回終了しました。先生ともお会い出来て嬉しかったです。お薬の飲み方を家内が聞いた折にも親切にお答えになり本当に感謝しております。ご多忙とは存じ上げますが、これからも地域の私達の為にもお力を下さい。院長先生に言う言葉ではないと思いますが、どうぞお体ご自愛下さい。いつもありがとうございます。

ご苦労様です・・・
ワクチンカクテルのこと、秋田でのニュースでも取り上げていました。この療法で入院する方を少しでも抑えようとの話だったと思います。
それにしても感染が拡大していますね、いつ自分も感染受けるのか、恐怖です・・・
報道だと自宅療養されている方が亡くなられたの報道もありました、その親御さんが「これが日本でしょうか?」って言っておられました。きょうも緊急事態宣言の追加された県がありました。日本の地図にはそれを示すように、赤く示された都道府県が多いように思います。思い切ってこれならば全国にこの宣言を出し、外出も少し強制力のともなった施策も考える必要もあるのではと思います。当然ながら、少しでも感染の広がる恐れがあるものは中止や延期の措置が必要でしょう。何度緊急事態宣言だしても、日常とは違う事を訴えなければ、効果が期待できそうにないですね・・・

マコママさん、こんばんは。

普段は病院のホームページのお知らせ欄には載せないのですが、流石に沖縄県は800名を超える新規感染者が出ましたので、少しでも注意を呼びかけたのです。

マコママさんも2回ワクチンを接種していますので、感染のリスクや重症化リスクは減ったと思いますが、しばらくは気を緩めずに感染対策を行って下さいね。

いつもラジオも聴いて頂き本当に感謝致します。

omoromachi先生 こんばんは。

抗体カクテル療法のこと…とても気になっていました。
わかりやすく説明していただきありがとうございます。

さまざまな情報があちこちで飛び交い、
素人のわたしにはいまいちわかりにくいこともあったのですが
先生のお話を読むと安心するというか、頭の中が整理され、
落ち着いて状況を見守ることができます。

一般的に使用するには、まだ費用の問題もあるのですね^^;
なかなか難しいですね。

こちら東京ではオリパラ絡みのせいか、人流が減る気配がありません。
先生も日々、こころ休まる間もなくお忙しくされてるかと思いますが、
そんな中、こうして情報を発信して下さって、本当にありがとうございます。

言葉ばかりで何のお役にも立てませんが、
どうか先生もお体に気を付けてください。

翁○雄○さん、こんばんは(念のために名前のところを勝手に○を入れさせて頂きました)。

先週の千葉県での妊婦さんの件は心配していたことが実際に起こり、とても残念です。通常なら救えたかも知れない命です。 この時期の妊婦さんは本当に大変だと思います。妊婦さんがかかる原因の8割はパートナーからですので、二人あわせてワクチン接種をして頂きたいと考えます。

抗体カクテル療法は現実には軽症者の全員に打てるわけではありません。限られて方に投与することで重症化は防ぐことが期待出来ますので、これも供給が間に合えばいいのですが・・・

私は時間があればワクチン接種会場に足を運んで皆様方に声をかけるようにしています。奥様に変なことを言わなくてよかったです😅 宜しくお伝え下さいね。 ありがとうございます。

でんでん大将さん、こんばんは。

いま入院病床が確保出来ないなど、医療現場での対応に不安が増している国民が多くいらっしゃいます。政治家も自分達が何もやらなことに目を逸らすために、突然抗体カクテル療法の話題が出るようになった気がします。 米国の前大統領はワクチンを軽視していたのですが、自分がコロナにかかったら直ぐにこの療法を使ったのは記憶に新しいです。
今の日本は先進国の仲間なのかと疑いたくなるような医療状況になりつつあります。医療人として通常なら救える命に手を差し伸べることが出来ないことが辛いです。 
今回も緊急事態宣言の拡大を受けて首相がTVに出ていたのですが、何度出ても同じです。それよりも実効性のあることを政治判断でやるべきです。メリハリをつけなければ、また同じことの繰り返しです。 名前だけの緊急事態宣言なら誰も真摯にこれを受け止めてくれません。
コロナは急には収まりませんが、少しでも通常診療が出来るレベルまで感染者数を減らして貰いたいです。これは政治主導で人流を減らすことが出来るかにかかっています。

あけさん、こんばんは。

読んで頂きありがとうございます。私は老外科医で感染症は素人ですが、自分がやれることは皆様方に分かりやすく伝えることだと考えています。私自身の整理のために図を描いています。

この抗体カクテル療法はやはりまだ沢山作る訳には行かず、軽症者で早期に使うかどうかは選抜が必要となる状況です。

今の日本は火事場(感染拡大)の隣でお祭り(オリンピック・パラリンビック)を同時に行っている状況ですので、逃げるべきかドンチャン騒ぎに参加すべきか国民も訳が分からない状態と考えます。 感染拡大でも最後まで医療を施したいのが医者としての使命です。同時に政治家は人流を減らす使命があると考えます。 

あけさんから励ましのコメントを頂き有りがたいです。私もどうにか情報を発信しますので、読んで頂けたら嬉しいです😀

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