2021年7月28日のFMレキオ「いきいきタイム」は「尿管結石」の話題に急遽変えましたが(夏場のこの時期に患者さんが増加するため)、ブログは予定通り「高尿酸血症・痛風」について説明をいたします。
最近テレビのニュースでビール各社がプリン体ゼロのビールを発売し、味だけでなく健康志向の方をどう取り込むかがヒットにつながると話をしていました。糖質ゼロ、プリン体ゼロの文字がビールのラベルにも大きく載っています(ついでにアルコールゼロならもっといいのに?←もうビール🍺とは言えませんね
)
高尿酸血症は血液の中の尿酸値が高くなる病態です。では尿酸は何処で作られるのでしょう。 尿酸の元になるのは「プリン体」という物質です。
A:人間の体は常に新陳代謝を繰り返しています。①古い細胞が壊れる時に細胞の中の核酸が壊れ、プリン体ができます。②通常のエネルギー代謝では糖分が使われて、プリン体は放出されませんが、過度の運動では「プリン体」が発生します。
B:体内で発生するプリン体が(A)の部分でプリン体の7〜8割を占めます。後の2〜3割は口から入る食品(肉類や卵、ビールなどは多く含まれます)
<さてビールは本当にプリン体が多いのか?・・・・アルコール100g中に含まれるプリン体はビール:5.7mg、日本酒:1.5mg、ワイン:0.4mg > ウイスキー:0.1mg、焼酎:0.1mgとなります。ビール党の皆様には🙏の結果です>・・・ついでに何故そうなるのかというと・・・酒類は醸造酒と蒸留酒に大別されます。一般的に醸造酒を蒸留したものが蒸留酒になります。ワインやビール、日本酒などは醸造酒、ウイスキーやテキーラ、ブランデー、焼酎などは蒸留酒に分類されます。醸造酒は元々の原料の成分が多く含まれますので糖質やプリン体も多く含まれています。蒸留酒は蒸留(アルコール成分だけが主に残る)の過程で糖質やプリン体などが失われるため、痛風の引き金になるとも言われるプリン体も少ないとされています・・・・。
AとBの工程で出来たプリン体は主に肝臓で分解されて尿酸になります。 尿酸は一時的に体内に貯め込まれた後は、尿と便(尿>>便)として体外に排出されます。
通常は生成される尿酸と分解され体外に排出される量が均衡を保っていて血液中の尿酸値も正常範囲となっています。
高尿酸血症に関しては、症状が激烈なためそれによって起こる「痛風」が有名かも知れません。
高尿酸血症においては、尿酸の濃度が高くなり、血液中に溶けなくなった尿酸の結晶が体中に出てきます(水に溶けた塩が水分が蒸発して濃くなると結晶として出てくるようなうなイメージです)。 これが関節の中に出てくると、私達の体は異物とみなして白血球が攻撃をして、炎症を起こし関節が腫れ上がって痛みが出てきます、これが痛風です。1番多いのは足の親指の関節です(他の関節にも起こります)。
痛みは強く、風が当たっても痛いとのことで「痛風」という名前になっています。痛みが強いときは鎮痛薬と尿酸を下げる薬を使います。 何もしなくても一週間程度で収まりますが、高尿酸血症を放っておくと6〜12ヶ月に1回程度再発し、次第に間隔も短くなり、関節も広範囲になっていきます。
痛風発作は殆どが男性で起こります。これは女性ホルモンが腎臓から尿酸を排出する作用があるからで、閉経後の女性は尿酸値が高くなる傾向となります。
戦前の日本人には少なかったのですが、高脂肪・高カロリー食となった日本では糖尿病と一緒に増加しています(痛風は昔は贅沢病と言われていました😢)。
最後に、プリン体ゼロのビールは痛風(高尿酸血症)を防げるか?・・・・アルコールの分解の過程で尿酸値は上昇しますし、尿酸の排泄を遅延させます。ですので完全に防ぐことは出来ませんが、プリン体が含まれていない分だけ抑制されると考えられています。 まだ日本では長期的にプリン体ゼロのビールを沢山飲んだ時に尿酸値を抑制したかについてはまだ分かっていません・・・折角期待していた方にとっては余計な一言でしたでしょうか
最近のコメント