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2021年6月 2日 (水)

鼠径ヘルニアについて

今日のFM放送(FMレキオ、FM21:18〜19時)で放送したヘルニアについて話をしました。以前書いたヘルニアの特集を再編集しました。

「ヘルニア」って 聞いたことがありますか? 恐らくよく聞く病名と思います。 ヘルニアと言っただけでは、人によって全く違う病態を考えてしまうだろうと、私は想像しています。

実は色々な名前のヘルニアがあります。まず「ヘルニア」という言葉の定義を述べてみます。

 ヘルニアとは臓器またはある組織が、元々あった場所から、直接その横から飛び出すことを言います。 ですから、実際に「○○ヘルニア」など沢山の病名が存在します。 それを区別するため、飛び出した臓器や場所を頭につけて「○○ヘルニア」という病名にして区別している訳なんです。 

 たとえば足の付け根のところは医学用語では、鼠径部(そけいぶ)と呼びますので、その場所にお腹の腸などが飛び出すことを「鼠径ヘルニア」と言っています(俗に言う脱腸です)。

 腰椎には椎間板という腰の骨と骨の間のクッションの役割をする軟骨組織があり、それが重いものを持ったときなどに飛び出してしまい、神経を圧迫して痛みを生じる場合があります。 

ではこの場合は Q:何ヘルニアと言うのでしょう?。・・・・A:そうです。「腰椎椎間板ヘルニア」といいますね。 皆様方も急に医学用語を使いこなせた気になりませんでしたか?(*^m^) 

外科の日常診療で一番遭遇するヘルニアは鼠径ヘルニアです、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。

脱腸と俗に言われている鼠径(そけい)ヘルニアは子供の病気と思われていますが、実際は子供よりも成人に多くみられます。しかしその発症のメカニズムも治療・手術方法も子供と大人の場合では異なってきます。

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<鼠径ヘルニアの症状は? >

 初期のころは、立ったり、お腹に力を入れた時(子供の場合は泣いた時など)、鼠径部の皮膚の下に腹膜や腸の一部などが出てきて柔らかい腫れができます。しかし力を抜いたり、指で押さえると引っ込みます。

 また 鼠径部に何か出てくる感じがしてきますが、それはお腹の中から腸や腹腔内の組織がはみ出てくるために起きる症状です。腸が脱出することが多いために「脱腸」と呼ばれるようになったのです。必ずしも飛び出してくるのは腸だけでなく、お腹の大網や腸の脂肪部分だったり、女性だったら卵巣だったりと様々です。

小児期の一時期を除いて、自然に治ることはなく、手術が必要となります。

 いつもは出たり引っ込んだりするのに、この腫れが急に硬くなったり、押さえても引っ込まなくなると、お腹が痛くなったり吐いたりします。この状態になってしまうと、飛び出した腸が次第に腫れて、更に引っ込まなくなります。 経時的に入り込んだ部分の腸の血液が流れなくなり腸が腐ってきます。この様な状態では発症から5〜6時間で急いで手術をしなければなりません。放っておくと、お腹を開けて、腐った腸を切除しつなぎ直さなければならなくなり、場合によっては命にかかわることになります。 鼠径ヘルニアと診断されたら治療法は手術しかありませんので手術の次期のご検討をされて下さい。

おおよそ、小学校入学までに起こる小児の鼠径ヘルニアは先天的に鼠径部のヘルニアの通り道が通常より大きいために起こります。それに対し大人ではヘルニアの通り道の筋肉を含めた周囲組織が緩んできてヘルニアとなります。子供の場合はヘルニアの出口を縛ってしまえば手術は終了で、筋肉をよせたり補強する必要はありません。

大人では基本的にメッシュという補強用の布を使用して、広がった穴(ヘルニア門)を修復する手術を行います。そけい部の皮膚を切開して、直接上方から腹膜の上まで剥離してから補強する方法と、腹腔鏡を使って、お腹の中からヘルニアの入り口を塞ぐ方法が主流です。それぞれ一長一短がありますので、担当医と相談して方法を選択されたらいいと考えます。

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医療」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
拝聴させて頂きました。
ヘルニアの種類など詳しく有難うございました。
ヘルニアは私は椎間板ヘルニアで
物凄い痛みで一歩も歩けず救急車で
入院でした!幸い手術無しでしたが、
今も腰痛ありです。
甥っ子は鼠径ヘルニアで確か?
2、3歳の時に手術でした!
その際、将来子供が出来ないかも?と
言われたそうですが、幸い2人の娘を授かったものの
離婚でした!

昭和の香り漂うお歌でしたね!
私は西島三重子さんは存ぜず!池上線は五反田駅から
何度も利用しましたよ。
あとは存じており、院長先生の弾き語りの
「あなたの心に」は一緒にハモらせて頂きました。
懐かし曲でしたね!

マコママさん、こんばんは。

FM放送も聴いて頂きありがとうございます。

ヘルニアの言葉の意味を知っていると色々なヘルニアがあることが理解出来ると思います。脊椎と脊椎の間には椎間板という軟骨組織があり、圧迫されると潰れてそばに飛び出すことがあります。これが脊椎椎間板ヘルニアです。飛び出す場所が神経なら痛みが強かったりしびれが出ます。マコママさんは凄く痛かったのですね。

甥っ子さんは、子供に多い先天的なそけいヘルニアだったのでしょう。小児期のヘルニアは通常は簡単に結紮だけですので精索をいじることもありませんので、不妊の心配はないと考えます。

FM放送での3曲目は私の弾き語りですので「あなたの心に」を流しました。一緒に唄って頂きありがとうございます💖

夫は5歳のとき脱腸の手術をしています。
看護婦さんが綺麗だったので幼心に恥ずかしかったそうです。
子どもが出来ないことがあるのでしょうか。
結婚の時そんな話は聞かなかったわ。たぶん本人も知らなかったのでは?
今日の先生のお話を夫に聴かせたかったです。原因のようなこともよく分かって納得できたのではないでしょうか。
丁度夕食の支度の時です。ラジオを聴きながらあっという間の1時間ですね。
お忙しいのに、いつ歌の練習をされているのだろうと思いました。
「あなたの心に」懐かしく拝聴しました。イイネボタンがあれば連打でした^^

おたまさん、こんばんは。

ご主人さんは5歳頃の記憶が鮮明に覚えていたのでしょうね。看護婦さんが綺麗だったとは流石男の子です😊
子供のヘルニアでは、ヘルニアで飛び出した腹膜を単純に閉鎖することが殆どですので、精索に入っている精かんを触ることはありません。ですから不妊とは関連がないのが殆どです。 ただし、大人でヘルニアになると周りの筋肉を補強するために、精索を剥離することがありますので、場合によっては精子が運ばれる精かんを傷つけることがあるかも知れません。その時には不妊の原因になるかも知れませんね・・・まあ両方ありますので右を縛っても左が残っていれば不妊にはならないと思います。

おたまさんにとっても中山千夏さんの「あなたの心に」は懐かしかった事でしょうね。
ラジオを聴いて頂きありがとうございます✨️

こんばんわ・・・
ヘルニアの話に、ああなるほどと読ませて頂きました。
ところでいつもながらの”医療相談”になるのですが・・・
俺は首元が怠い症状があり、首のヘルニアと言われて
いますが・・・やはり首等にもヘルニアってあるのでしょうか・・・
この治療法ってありますか。今は湿布薬を貼ったりしています。

でんでん大将さん、こんばんは。

脊椎は頸椎、胸椎、腰椎、仙骨となっています。頸椎(首の骨)も骨と骨の間には椎間板と言われる軟骨組織があります。その軟骨の部分が亀裂を生じて外にはみ出すものを・・・さて・・・大将さん何と呼ぶのでしょう?

・・・「頸椎椎間板ヘルニア」と言います。ですので首にもヘルニアはあります。
ただ実際に多いのは頚椎症です。これは首の骨や椎間板が年齢による変化で長い年月をかけて少しずつ変形し、神経を圧迫する場合で、ヘルニアと同じ様な症状になることがあります。診断は頸椎のMRIを撮れば判断出来ます。 治療は湿布や鎮痛剤、リハビリ(牽引療法を含め)を主に行いますが、手術するかどうかはその病態に合わせてでしょうか?

加齢的な意味合いもありますので、治療法は検査を行ってから決定することになると思います。整形外科の担当医がいればご相談下さいね。

こんばんは!
鼠径ヘルニアって病気は、きっと太古からあったと思いますが、外科手術の無かった昔は不治の病だったのでしょうか?
それとも、何か民間療法の様な治療法があって、寿命を永らえることが出来たのでしょうか?

FUJIKAZEさん、こんばんは。

もちろん古代よりこの病気はあったと思いますし、中には腸閉塞、腸壊死を起こして亡くなる方もいたと思います。(今でこそ虫垂炎で死亡する方は少ないと思いますが、100年前なら死んでいた方も多いと考えています。

脱腸に関しては、昔は脱腸帯と言うのがあって、ヘルニアの出てくるところを押さえ込むベルトがありました。出たり入ったりするのは改善したかも知れませんが、根本的な解決にはならないので、現在は病院で使われることはありません。命と関わるヘルニアの嵌頓状態ではこのバンドは意味をなさないのです。 その意味では民間療法では出るのは抑えることは出来ても寿命を延ばすことはなかったと思います。

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