最高血圧と最低血圧の差について
去年、高血圧の診断基準が改正されたために、このブログでも説明しました(→高血圧と食塩(血漿浸透圧)との関係)。
先月診察室で、昔と比べて上の血圧と下の血圧の差が広がってきたんですが、差が大きいことは悪いことでしょうか?と質問されました。それの答えを見つけながら今日はその辺りを書いてみたいと思います。
血圧の上昇には色々なファクターが存在します。その中で避けることができないのは加齢と共に動脈が硬くなる変化です。動脈硬化を進める危険因子としては皆様方がよくご存じの「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」「高尿酸血症」「内臓脂肪増加」などがあります。
どのように頑張っても加齢と共の動脈は次第に硬くなり、若い頃のような弾力はなくなります。
- 心臓は心臓の筋肉(心筋)により拡張と収縮を繰り返し、4つの逆流を防ぐ弁のために、ポンプのように全身に血液を送り出したいます。
- 収縮期血圧(=最高血圧、上の血圧)は心臓(左心室)が収縮し大動脈に血液を送った時の1番高い血圧のことで、拡張期血圧(=最低血圧、下の血圧)は心臓弁(大動脈弁)が閉じて、左心室が拡張を迎えた時の血圧となります。
- 一般的には動脈硬化は全身の細い血管の方が先に起こり影響が出ます。そのために初めの頃は拡張期血圧が少し高くなることが多いと思います。
- その後、中心部の太い血管にも動脈硬化が表れることで、次第に収縮期血圧も上昇します。多くの方は拡張期血圧も収縮期血圧も高い状態となって高血圧と診断されて、治療を受けることが多いと考えます。
- 更に動脈が硬くなると最高血圧は上昇しますが、最低血圧はあまり上昇せず、むしろ低下傾向のなる場合もあります。そうなると私の患者さんの質問のように、最高血圧と最低血圧の差が大きくなリます。
- 最高血圧と最低血圧の差を脈圧(みゃくあつ)と呼びますが、一般的に年齢とともに大きくなってゆきます。通常の加齢的変化では脈圧は65mmHg以内が目安となります。
- もしもそれ以上に大きくなると心臓弁膜症(大動脈閉鎖不全)を考慮する必要もあります。大動脈弁閉鎖不全症では心臓から拍出された血液がまた心臓に戻ってまた拍出されるので、左心室に溜まる血液が多くなり、収縮期に更に多くの血液を出すために最高血圧が高くなります。今度は拡張期には血液が心臓内に逆流するために最低血圧が低くなります。脈圧が大きい場合は主治医の先生と相談することを勧めます。
« 世界を夢みて(241):エッフェル塔 | トップページ | 今週の生け花(令和3年5月第2週) »
「医療」カテゴリの記事
- 「バテる」とはどのようかことか?(2024.09.04)
- 尿管結石が出来やすい条件とは(2024.08.28)
- アニサキスの食中毒(2024.08.14)
こんばんは。
拝聴させて頂きました。
私はれっきとした?高血圧症で
長い間、治療薬を服用です。
家族性・遺伝性はございませんか?
妹達、カナダのいとこ達、皆、高血圧症です。
毎朝、毎晩、血圧、脈拍記入して
定期検診時に主治医に見て頂いております。
お話を伺い、こうして図解入りで載せて頂くと
よく理解できますね!ありがとうございます。
排便・排尿にも気をつけて減塩も心がけます。
忌野清志郎さんはRCサクセションで存じておりました。
派手なメイクとお衣装でしたね。
早世されて残念でした。
カバー曲も初めて聴き、懐かしい曲ばかり〜!
院長先生の弾き語りのモンキーズの「デイドリーム・ビリーバー」
よくTVで観てましたよ!
来週は旅行記楽しみにお待ち申し上げております。
今日もお疲れ様でした。
投稿: マコママ | 2021年5月12日 (水) 20時16分
マコママさん、こんばんは。
今日もラジオ放送を聴いて頂きありがとうございます。高血圧はやはり遺伝的な因子も関係がありそうです。また同じ家族の場合には同じ食事、味覚を持っているために同じ様な好みの食事が選ぶこともありますので、似て来るのかも知れません。
今日の番組で話したように血圧が高い程、血管の壁を傷つけてしまいますので、血圧が高くない方と比べると動脈硬化が進行します。毎日血圧手帳をつけてコントロールして下さいね。
今日の音楽は忌野清志郎さんを取り上げました、見かけよりもシャイな方で色々な問題点を発信された方でした。
来週は第3週で番組は私の担当でありませんので、恐らく旅行記でしょうか😊 いつもありがとうございます💖
投稿: omoromachi | 2021年5月12日 (水) 21時37分
こんばんわ・・・
俺も降圧剤を服用しています。母も高血圧で降圧剤を服用していましたから
遺伝がらみなのでしょう・・・
ところで一度降圧剤を服用すれば、死ぬまで飲み続けなければならないと
聞いた事がありますが、どうなのでしょう。
きょうの記事もまた、関心抱いて読ませて頂きました。
投稿: でんでん大将 | 2021年5月12日 (水) 21時50分
でんでん大将さん、こんばんは。
日本で高血圧と診断される方は4200万人もいらっしゃいます。遺伝もあるでしょうが、日本人の味覚は塩気がないと美味しく感じないことが多く、子供の頃よりこの味覚で育ちます。減塩になれていないのです。
大将さんが書かれていますように、多くの方が「降圧剤を飲み始めたら死ぬまで飲み続けなければならない」と言うことを信じているようです。どんなに節制しても加齢と共に動脈硬化は進み、血圧は高めになることが殆どです。ですから、加齢的原因も加味しますので多くの方が一生飲むことが多いのです。
むかし救急をやっていた時に血圧が高いものの先ほどの理由で薬を飲まない方が多かったことにビックリしました。 薬を飲まずに、脳卒中で半身麻痺で過ごすことになったり、心筋梗塞、動脈解離などで死亡することも多かったのです。
→私は患者さんに「一生飲み続けることを心配するより、飲まずに、早死にするか、半身麻痺になることを心配した方が良いのでは」と説明しています。
投稿: omoromachi | 2021年5月12日 (水) 22時57分
こんばんは。
私も50代よりかれこれ四半世紀、血圧の薬を飲んでいます。初めは1種類でしたが、今は2種類の成分が入った薬に変わっています。 減塩はやっているつもりです。
診療所の先生より「血圧手帳」を頂き、朝夕記録しております。最後のイラストに描いてあるように、病院で測ると普段より20も高くなることがあります。私の方は脈圧は50程度です。
毎回分かりやすい解説を無料で楽しめております。先生には本当に感謝致します。これからも宜しくお願い申し上げます。
投稿: 信州の隠居老人 | 2021年5月12日 (水) 23時09分
信州の隠居老人さん、こんばんは。
初めは1種類で今はいわゆる合剤と言う2種類の薬効が異なる降圧剤が1錠になっている薬の内服となっているのですね。 血圧の薬をはじめる時にはいきなり多くの種類を投与したりしませんし、量も少ない量から初めてゆきます。 その後効果をみながら薬を変えることがあります。
多くの方は病院で測ると10〜20ぐらい自宅で測るのと違うと訴えています。これは仕方ないことで、緊張感は血圧を上昇させます。病院と言う独自の空間と、回りにスタッフや患者さんも多くいらっしゃいますので、緊張しない方がおかしいと思います(笑)。 脈圧はやや大きいのですが正常範囲と思います。
私は難しいことが苦手ですので、簡単に書くようにしています。このように仰って頂き、私こと励みになりますし、感謝しています。いつもありがとうございます。
投稿: omoromachi | 2021年5月13日 (木) 00時18分
ラジオ拝聴しました。
血圧のお話、大変よく分かりました。特に「塩分」と「血圧」の関係が納得できました。
高血圧のお友達に話してあげようと思います。
そして、こちらでブログを読ませていただくと更に頭に入って来ます。
まるで、学校の勉強をしているようで楽しいです。
PPMもモンキーズもどっぷりの時代ですので嬉しかったです。
海外では有名人が政治的なことも含めて自分の考えをきちんと表現されます。
清志郎さんはとても貴重な方だったと思います。
あ。先生とハモっておきました。えへへ(〃´∪`〃)ゞ
投稿: おたま | 2021年5月14日 (金) 09時50分
おたまさん、こんばんは。
ラジオ番組も聴いて頂き、ありがとうございます。アナウンサー向きの声ではないために自分ではやりたくないのですが、何故か10年以上続いている番組です。
高血圧の範疇に入る日本人は4000万人を超えると言われますので、身近にも沢山の方が降圧剤を飲んでいらっしゃると思います。 楽しんで頂いて貰えたら本当に嬉しいです。
忌野清志郎さんの曲も1年に1回ぐらいはかけています。今の時代だからこと清志郎さんが生きていてくれたらと思います。
投稿: omoromachi | 2021年5月14日 (金) 19時32分