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2021年1月27日 (水)

mRNAワクチンについて

このブログの記事をまとめたホームページを作りました。見て頂くと嬉しいです😃(ニライの夢:https://dreams-nirai.com )。

 

以前免疫システムについては記載しました(→http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2020/09/post-d3f9a1.html

。新しいmRNAワクチンの仕組みについて説明します(何時ものように難しい話は分かりませんので、間違っている箇所があるかも知れませんがご了承を🙇)

これまでのワクチンの種類は主に3種類でした。
①生ワクチン:生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を、症状がでないぐらい弱くした病原体を使用する製剤。弱毒化されたとはいえ、実際の病原体が体内で増殖するため、ワクチン接種後しばらくして発熱や発疹などの症状がでる場合があります。
自然感染に近い状態で免疫がつけられるので、ワクチンの効果がえられやすいです。
  ウイルス<はしか(麻しん)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)、ロタなど>、細菌<結核BCG>

②不活化ワクチン:培養して増やしたウイルスや細菌の病原体を加熱処理、フェノール添加、ホルマリン処理や紫外線照射などを行い病原性をなくした製剤。 生ワクチンと比較してワクチンの効果が低いため、複数回の接種が必要だったり、免疫効果と高めるために添加剤を入れる場合も多くあります。  ウイルス<ポリオ、日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎など>、細菌<百日せき、肺炎球菌、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(ヒブ)など>

③トキソイド:病原体(細菌)ある毒素だけを取り出しホルマリン処理を行って無毒化した製剤。免疫を作る能力を維持する一方で有毒な毒素はありません。不活化ワクチンと同様に複数回の接種が必要となります。  毒素<ジフテリア、破傷風>
これまでの3種類のワクチンの開発には生きた病原体(ウイルス、細菌)を扱うために、感染防御などやそれの飛散を防ぐ為の厳重な施設や、製造後に色々な実験などを得て、許可が下りるまでに長い時間がかかりました。
今回、コロナウイルスのワクチンで現在使用が可能なワクチンは①、②、③とは全く違う工程で作られるmRNAワクチンとなっています。
新型コロナウイルスCOVID19の遺伝子を調べて、人間の免疫システムが抗体を作り出すために必要なウイルスの遺伝子のある特定な部分を確定します。これが出来ればもう生きたウイルスは必要ありません。 コンピューター上でこの一部分(mRNA)の塩基配列を調べて、記号で表すことが可能となります。 これさえ分かればバイオ工場で、この遺伝子を設計図どおり作ればよいのです。 mRNAの一部分ですので、DNAの様にウイルスを増殖することは出来ません。人間の身体に入れても不安定で直ぐに消滅します。

Th_rna
図に書いた様に、ウイルスの抗体を作り出す微小単位のmRNAは不安定ですので、人間の体内に投与するためには特殊な脂質でコーティングして閉じ込める技術が必要です。 不安定なために、製造後から使用する間は、超低温で保管する必要があるのです(この点が苦労します・・・常温で管理できたら輸送も保管も簡単のですが・・)
今回のワクチンを筋肉内に投与すると、mRNAを含んだ脂質が注射部位の筋肉細胞に取り込まれ、そこでコピーが出来てきて細胞外にも顔を出します。それを私達人間の免疫細胞が病原体と捉えて、それに対する抗体を作り出すことになります。しばらくすると注射で入れたmRNAは分解処理され、これがウイルスのように体内で増殖することは在りません。
インフルエンザのように生きたウイルスを卵などで培養増殖する必要もなく、短時間で多量に作ることが出来ています。理論的には非常に安心なワクチンですが、まだ初めてのワクチンですので、慎重には慎重に対応する必要もあると考えています(この技術は何も今回の新型コロナウイルスに対して急遽研究された訳ではなく、もう何年も前から研究は進んでいたのです)。
昨年来これまでに世界中で多くの方が摂取していますが、元々アレルギーがある方や持病がある方の接種では要注意のようです(専門家の間では様々な情報が共有されていると考えています)。だた私の場合は理論的に安全性が高く、副反応より利点の方が高いと考えていますので、可能になれば直ぐにでも接種を受けたいワクチンです。
ワクチンの予防接種を受けるかどうかは個人の自由です。ただこのような世界的なパンデミックに関しては「個人を守る」だけでなく「社会を守る」の2つの役割があることも考えて行動してほしいと願っています。

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医療」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
緊急手術、お疲れ様です。

ワクチン接種はまず医療従事者から始まるようですね?
次は高齢者なので、出来たら私は予防接種お願いしたいと
思っております。
少しでも早く全員に行き渡り収束に向かって
欲しいと願っております。

今日も有難うございました。

ワクチンの話、大変な関心を抱いて拝読させて頂きました。なかなかテレビや新聞での解説をみても難しいのですが、今回、読ませて頂き何となく分かったような思いです。新型コロナウイルスに対応するワクチン、誰もが関心を抱いているでしょうが、今回のこのワクチンが急遽開発されたものはない事、副作用よりも作用の方が高い事、副作用が全くないワクチンはないと言われていますが、きょうの記事を拝見し少し安堵した気持ちになりました。
日本に入ってくるのは来月と予定されているようですが、ワクチンが入り、これによってコロナの感染が収束に向かうことを祈るばかりです。

先生 こんばんわ。

最近はワクチン接種が近づいてきたせいか、テレビでも、色々な大学病院の
お医者様が、安全性についての話をされています。
先生の丁寧なご説明からも、ほぼ理解を致しました。

接種をどうするか考えていた私ですが、どうやら大丈夫かなと
思えるようになりました。

今迄医師が処方した薬や注射で異常が起きた事は一度もありませんし、
元々基礎疾患等、ないので、接種しないでコロナにかかって、それこそ
色んな方に迷惑をかけるのは望んでいません。

今日は先生のご説明で意思がかたまりました。
有難うございました。

マコママさん、おはようございます。

昨日は忙しい1日でした。午前外来、午後手術、18時からラジオ、その後緊急手術で帰宅は0時を過ぎてからでした。

これからワクチンの接種が始まると思いますが、最初のワクチンは冷凍保存や輸送などの課題、どの順番に打ってゆくかなど、多くの課題があります。その前に供給量の問題もあります。
予防的な意味からは国民の8割がワクチン接種を行えれば良いのですが・・・

マコママさんももう少しお待ち下さいね。

でんでん大将さん、おはよございます。

私達医療者を含めてワクチンに関心があると思い、記事にしました。あくまで専門外の私が調べた範囲内ですので、間違っている箇所もあるかも知れません。これからのニュースなどの情報を参考になされて下さい。

mRNAワクチンの基礎研究は既に以前から行われていて、今回臨床に使われることになったのです。理論上はこれまでのワクチンより優れた点が多いと思いますが、初めての大規模投与ですので、注意深く見守る必要もあると考えています。 幸い日本は欧米より遅れての投与ですので、これまでの投与での副反応の情報は入っているはずです。 後は人種差があるかどうかでしょうか?

ガルボさん、おはようございます。

新型コロナウイルス感染症の新規発生者数が急増する中で、まだ特効薬もありませんので、世界中がワクチンに期待をかけているのです。

日本でも早ければ来月から投与が始まるかも知れませんが、輸送や保管に特別なことは必要ですので、この辺りの解決も医療とは別の問題として浮上してくるはずです。

現時点では、これまでにアナフィラキシー(アレルギー反応が強く重症となったケース)を起こした方は注意が必要です。投与する際には、このような副反応が起きた時に対応出来る様に医療機関では備えることになると考えています。

日本でも準備が整え次第、ワクチンについて国民に丁重に説明して欲しい思います。

mRNAワクチンの事、おかげさまで初めて理解できました。
安全性が確保できるまでは受けたくないわ。と思っていましたが少し安心しました。
米国在住の知人の話では年末から始まったワクチン投与に車中で4時間待ちしたとのことです。
やっと、出口の入り口が見えてきた気がします。
あと、ワクチンの効果というのはどれくらい持続するものなのでしょうか
接種もしていないのに、変な質問ですが。

こんにちは。
遺伝子組み換えワクチンということで、気になっていました。
要は、従来のワクチンであれば、すぐ結果が出るので、
副作用を確認するのは簡単ですが、
遺伝子組み換えワクチンを心配する方は、
遺伝子を組み替えられるために、新しい細胞ができ、
従来のようなすぐ反応する副作用以外に、
何年も先に出てくるかもしれない副作用が
あるのではないかと思われる方が多いようです。
それは、このような急場の治験では結果が得られないのではないか、
ということです。
年寄りならリスク回避の効果が高いかもしれませんが、
若い人、特に若い医療従事者に
半ば強制的に注射されてしまうことにならないか、
ということが、危惧されます。
医療関係者でも、打ちたくない人はやめられるのでしょうか。
また、遺伝子の一部は、不安定ですぐに消滅するということですので、大丈夫かな、とも思うのですが、先生はどのように思われますか。

おたまさん、こんばんは。

mRNAワクチンについては新しいことだけが強調されて、実際どのようなワクチンなのかの情報や、欧米で始まったワクチン接種に対しても、副反応などが全面に出ていますが、臨床試験を含めて、どれだけの人が接種し何人が副反応があったかをしっかりと情報として出して欲しいと考えています。

それを元に、ワクチンを接種した場合と、しない場合のリスクの差を冷静に判断して投与を決めたら良いと思うのですが・・

ワクチンの効果はまだワクチンの接種が始まって、どんなに長くても1年未満です。ですので長期は分かりませんが、投与後半年ほどたっても感染リスクは低いようです。 ただやはり2回は必要のようです。

ふうちゃん組さん、こんばんは。

まずmRNAワクチンはふうちゃん組さんを含めて一般の人が考えている「遺伝子組み換え」という概念のワクチンではありません。

よく植物などで「遺伝子組み換え食品」などを見聞きすると思います。 これは莫大な遺伝子の中で「実の甘さを出す遺伝子」を「甘さを多く出す遺伝子」に置き換える技術で育てた植物です。 植物のごく一部を変換したもので、それ以外は元の植物と変わりません。ですから水分と栄養をやれば、同じ様に育って、花をつけて実をつけます。 要するに、その植物自体で自然に増殖することも可能なのです。

私のような老外科医ですので、このようなワクチンには詳しくありませんので、一般の方が判りやすいようにはしょって説明します。
新型コロナウイルスの抗原となる部分をウイルスから取り出します。 これはウイルスの遺伝子と言っても取り出した部分には、増殖したり、私達の遺伝子の核に組み込まれて、私達の細胞が新たな細胞になることもありません。

名前がmRNAですが、ウイルスの遺伝子と捉えるよりも「抗体と作る物質」と考えた方がいいと思います。 物質ですので、抗体を作る作用はありますが、コロナウイルスが増えたり、このmRNAが私達の細胞の遺伝子に影響を与えることはないと考えられます。

医療関係者でも、余りそのような原理を知らずに、遺伝子由来なので、後々に私達の遺伝子に影響が出るのではと懸念する方もいます。これは単なる勉強不足だと考えています。もちろん私自身が研究者でもありませんので偉そうな事は言えませんが、私が調べて範囲では現時点ではこのように言えるのです。 

未知なことは誰にも分かりませんので、製造原理を理解しても打ちたくない方は医療者でも拒否していいと考えています。

mRNAが不安定なのは、輸送や保管では問題が出ますが、体内に入って抗体を造ったら速やかに体内で消失のは逆に有難いことです。体内で安定で長らく留まると、抗体も多くできるでしょうが、逆に過剰反応が心配になります。

ふうちゃん組さんが懸念されるように初めてのワクチンですので慎重にする必要はあると考えています。私の場合は生ワクチンや不活化ワクチンよりも安全性は高いのではないかと考えています。

早速お返事をいただき、ありがとうございました。
先生なら、納得できるようなことを教えていただけるのではないかと思っておりました。
こういうことを、多くの方が理解して、納得してワクチンを接種できるといいなと思います。したくない方はしなくても、ある割合以上の人が接種できれば、集団免疫を得られると聞いております。
そのためにも、今後、マスコミも含めて、ワクチン接種に係る方々が、広報していただけるとよいなと思います。

ふうちゃん組さん、こんばんは。

私の方は余り詳しいことは分かりませんが、遺伝子を使ったと聞いただけで、後々私達の遺伝子に影響がでると勘違いしている方は多いと考えます。

ただmRNAワクチンも世界的に投与するのは初めてですので、十分な観察は必要だと思います。今後、従来型のワクチンやまた新しいタイプのワクチンも承認されるかも知れません。 

集団免疫が出来るのは7〜8割が接種できたら、感染の広がりは抑えらることだ出来るようです。

もしも今回のmRNAワクチンが有効で、副反応も少なく、長期的みても害が少ないとなると、今後の世界的なパンデミックに対しても有効な手段になると考えています。今後の推移を見守りたいですね。

こんばんは。
とても気になっていたワクチンについて
理解出来た気になりました。
コメントの内容をみて遺伝子操作と
言うよりも、遺伝子の中の一部分
それは既に遺伝するものではなくて
抗体を作る物質と捕らえることで
やっと怖さがなくなりました。
このワクチンを打つことで人間が
ゾンビみたいになってしまうと
考えていました。実際私の友人たちも
このように考えていました。
これなら私もワクチン接種を希望
しようかと思います。
いつも分かりやすい解説
ありがとうございます😘
このブログが多くの方の目に
留まることをことを願っています

舞子さん、おはようございます。

恐らく舞子さんが書いてあるようなことを一般の方(1部の医療者も)が考えているのではないかと、今回書いてみました。
遺伝子組み換えのワクチンで、後々映画の「バイオハザード」みたいに人間が未知なものに変化するのではないかと想像しているのではないかと思ったのです。

mRNAのコーティング技術やその他の物質に対してアレルギー反応や過剰反応、いつまで効果が続くのか、新しい変異株(現在の変異株には有効のようです)が出現時にどう対応するかの方が私の関心事です。

これから色々と情報が出ると思いますので、舞子さんなりに理解してワクチン接種の判断をされて下さいね💖

 こんばんは。
 非常に興味深いお話を聞かせていただきました。
 私は難しいことはあまりよくわかりませんが、医療の現場にいらっしゃる方のこうしたお話を聞くと、今後どうしていったらいいか、どのように向き合えばいいかのヒントを頂けるように思います。そういう専門家の方の話を耳をふさぐがごとく聞かない政府を大変残念に思います。
 ありがとうございました。

いかさまさん、おはようございます。

ワクチン、特にmRNAワクチンの名前はこらから頻回に聞くことになると考えます。
私にも難しいことは解りませんが、遺伝子操作を行って新しいDNAを作る訳ではなくて、ウイルスの一部分(抗原として認識される部分=私達が抗体を作る部分)を利用する方法です。
今の政府はことあるごとに「専門家の意見を聞いて」と言いますが、都合よく利用している程度です。 最初の頃より専門家の意見を聞いていれば「台湾」のように封じ込めに成功して、経済成長もすることが可能だったと思うのですが・・・

これからワクチンについても情報が出てくると期待していますので、いくつか参考になされて下さいね。

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