腸管出血性大腸菌の特徴と抗生剤の使い方
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今日と来週の2回に分けてFMレキオ・FM21の「いきいきタイム」では食中毒について説明をしました。ブログには出血性大腸菌O-157(オーイチゴーナナ)を例にして抗生剤の使い方の要点や大腸菌が全て悪い悪玉菌ではないことを説明したいと思います。
自然界には大腸菌が何処にでもいます。私達の体にも周りの家畜やベットの腸の中にも沢山います。多くの大腸菌は普通は何も症状を起こすことはありません。この大腸菌のなかで少ないのですが人に下痢などの消化器症状を起こす菌がいて、これを病原性大腸菌と呼んでいます。
更にこの病原性大腸菌の中には毒素(ベロ毒素)を産生して、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS:毒素によって急激な腎機能・全身状態の悪化をもたらす)を起こる菌も中には存在します。代表的なものは「腸管出血性大腸菌O-157」ですが、それ以外に「O-26」「O-0111」などもいます。
厄介なことに、腸管出血性大腸菌は牛や家畜の便から時々見つかるのですが、家畜で症状がでなくて、普通に健康な家畜の腸にいることになります。 そのため人が牛の生を食べて0-157に感染するケースが後を絶ちませんでした(左の図は厚生労働省のデーターです)。 平成28年には千葉県と東京都の老人福祉施設における「キュウリのゆかり和え」による集団食中毒が起こったために死亡数が増えています。
現在の医療において感染症対策は大きな柱ですし、細菌に対しては有効な抗生剤があります。細胞内で産生するベロ毒素という毒素を持っている腸管出血性大腸も抗生剤によって菌を死滅させることも可能です。しかし、これまでの経験にて抗生剤がよく効いた方に重症が多く出たことも分かるようになりました
・・・・ではどうして?
強力な抗生剤を投与すると、一気にベロ毒素を持った菌が死滅すると同時にベロ毒素が多量に放出されます。菌は死んでも、この多量のベロ毒素によって人体は損傷をうけ、急激な腎不全やショック症状が起きてしまったのです。 ですので、これを参考に今では、O-157などの食中毒の場合は、抗生剤は強力なものは使用せずに、この大腸菌が増殖しない程度(静菌)の抗生剤を投与して、点滴などで脱水を防ぎ、体力の回復を図るようにしているのです。
追記:(大腸菌なのに大腸菌と呼ばれることのない菌がいます)・・・大腸菌は自然界の様々の場所にいます。全部が悪いわけではないため、病原性がある大腸菌を区別して病原性大腸菌と呼んでいます。しかし皆様方の多くの方も知っている「赤痢菌」は実は大腸菌の仲間です。
終戦後、赤痢の患者数は10万人以上で2万人近い死亡者も出た時期が暫く続いていました。そのため「赤痢菌」という単独の三類感染症として対策がとられていましたので、赤痢菌はすでに独立して「病名」となって分類されていたのです。 今日の話からすると「赤痢菌」も病原性大腸菌の範疇に入るのでしょうね。
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コメント
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こんばんは。
台風9号の影響が出ませぬように・・・。
10号の進路が気がかりです!
逸れてくれますように・・・。
大腸菌にもいいのと?悪いのがあるのですね。
そして強い抗生剤が逆効果とは・・・?
穏やかに効く方がいいのですね。
罹らないに越したことはありませんね。
以前、生のレバーで中毒が起きたのもこの類でしょうか?
拙宅では二人共、内臓類は一切いただけないのですよ。
投稿: マコママ | 2019年8月 7日 (水) 22時03分
マコママさん、こんばんは。
8月に入り相次ぐ台風の襲来ですね。地球温暖化と共に日本本土にも直接台風が向かうことも増えそうで心配です。今日の那覇市は風が強くなっていますが、直接的な大きな影響はなさそうです。
大腸菌は自然界に溢れていますし、当然私達の腸にも何億という大腸菌がいます。
以前牛の生レバーによるO-157の腸管出血性大腸菌により、死亡事故も起こり、その後厚生労働省から、生レバーの販売、提供は中止の法律が出来ました。
人間に取って病原性大腸菌でも動物達には何も問題ない大腸菌もあるわけで、どんなに衛生管理をしてもこの種の食中毒は起きてしまいますので、生の牛レバーは流通できなくなっているのです。
マコママさん宅の食卓には牛レバーは出ることがなかったのですね。 この季節、しっかりと熱を通したものを食べた方が良さそうです。
投稿: omoromachi | 2019年8月 7日 (水) 22時26分
omoromachi様、こんばんは。
大腸菌と聞いたら全て悪い者と
勘違いしていました。
人間にとって悪く働くから
病原性大腸菌なのであって
他の動物からすると普通の
大腸菌だったのですね
抗生剤の使い方も判り易く
納得出来ました✌️
最後の赤痢菌は目に鱗でした
大腸菌の仲間だったとは!
投稿: ツクシンボ | 2019年8月 8日 (木) 00時08分
こんばんは。
実は私、食中毒で入院したことがあります。
10年前に撮影で新潟の山中で夏のことです。
山のなかで、持参した昼食を手掴みで食べたところ(おにぎりです)翌日下痢と熱にやられました。
帰宅後、病院でO-152が検出されたので保健所にも報告しときますって。
点滴と投薬で回復はしましたが、O-157が話題になっていた時だったので驚きました。
怖さを思い知らされました。
投稿: EOSのパパ | 2019年8月 8日 (木) 01時55分
ツクシンボさん、おはようございます。
大腸と名前がつくのですから、動物の腸の中には沢山の種類の大腸菌が自然界には存在します。たまたま人間にとっては害を及ぼすので病原性と名がついただけとなります。
時々、食中毒症状で来られた方が、早く下痢を止めて下さいとか、抗生剤を使った方が治りが早いのではと申し出る方がいたので、記載しました。使わない理由があるのです。
私達医療者もつい忘れがちですが、赤痢も大腸菌の仲間なのです。この質問をしたら医学生でも半分は間違うのではないでしょうか(笑)
投稿: omoromachi | 2019年8月 8日 (木) 07時50分
EOSのパパさん、おはようございます。
パパさんも病原性大腸菌の経験者なのですね。大腸菌の中で「O:オー」という抗体を持った種類の大腸菌で、157番目に発見されたので0−157と呼んでいます。ですのでパパさんのは152番目に発見されたO抗体を持った大腸菌だったのですね。 その中でも0-157はかなり病原性が強いのが特徴です。
パパさんはO-152ですが、それでも食中毒は辛い症状ですので、大変だったと思います。
食中毒は現在社会でも減っていなくて難しい問題ですね。
投稿: omoromachi | 2019年8月 8日 (木) 07時57分
omoromachiさま
赤痢菌が大腸菌の仲間とは知りませんでした。
私、先月末に肝の冷える経験をしました。
便に赤いものが! しかも量も多い!
すわ 憩室出血か?痔か?直腸癌か?と想像を巡らせ、青くなりました。
病気に弱いので・・・当日かかりつけ医は休診日。
他に腹痛は無い。調子も悪くない。 1回きり・・・
はたと思い出しました。
前日に暑かったので冷えた大ぶりの小玉西瓜を一気に3/4食べたことを!
もうずっと前のことになりますが、子供が3か月くらいの時、西瓜を食べさせて
赤い便が出、下血かと大騒ぎをした時の事と重なりました。
で、様子を見ることにしました。
この間かかりつけ医にはこの事を話しました。
西瓜は便に出ることがあるので、多分そのせいかと思うけれど、又同じことが起きたら知らせて下さいねとことで落着しました。
ヤレヤレでした!
投稿: お黒ちゃん | 2019年8月 8日 (木) 21時23分
お黒ちゃんさん、こんばんは。
赤痢菌も大きな分類からすると大腸菌の仲間になります。1898年に日本の志賀潔先生によって発見された菌で、正式な属名もShigellaと志賀先生の名前がつけられています。病原細菌の学名に日本人の名前として唯一のことなのですよ。
この赤痢菌が生産する毒素も「シガトキシン」と呼ばれているのですよ、凄いですね。
お黒ちゃんさんは多量の血便?でビックリでしたか・・・確かに色素が多い食べ物を多量にとった後にこのようなことも起こるとのことです。 もしも病院に行けば、検査も進んでいますので、便を少しとって人間の血液かどうかすぐに判断がつきます。
次回は病院に行かれて、便潜血反応と貧血の進行の有無をチェックされて下さいね。
投稿: omoromachi | 2019年8月 8日 (木) 23時37分