過敏性腸症候群の特殊性
慢性的に腹痛(あるいは腹部不快)を伴う便秘や下痢を繰り返すも、内視鏡や血液検査などをしても異常を指摘できない疾患を「過敏性腸症候群」と呼んでいます。(今の現代医学で解明されていないだけでもっと違う病態があるのかも知れませんが・・)。<以前のブログにも書いていますので重複する部分が多いです(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-221e.html )>
多くの方が緊張やストレスでお腹が痛くなったり、トイレに行きたくなった経験はお持ちだと考えます。 しかしこれが毎日となると辛いと考えます。通勤時、あるいは学校や会社で、何度もトイレに駆け込む場合は余計にストレスに感じるはずです。
私達の胃や腸(小腸、大腸)の運動は私達が意識的には調節出来ない自律神経がコントロールしています。この胃腸をコントロールする働きに異常が起こると、便秘や下痢などの排便異常、腸蠕動異常による腹痛、嘔気などが出現します。
便通異常は消化器疾患の中でも最も見かける症状で、日本人では10%程度の方に認められるそうです。頻度が高いのは20〜40代に多く、男女比では2:3でやや女性に多く認められます。男性では下痢型が多く、女性では便秘型が目立ちます。不思議なことに統計上、人種間や国別でも差があり、東南アジアで7%、南米で21%、米国で10%、フランスで2%で都市部や農村部、職種によっても有病率が違うのです。 これらを観ても様々なファクターが過敏性腸症候群に関与しており、簡単に原因や治療法を決定出来ない難しさを含んでいると考えられます。
過敏性腸炎のタイプは①下痢型、②便秘型、③交代型に分かれます。下痢型は突然起こる下痢が特徴です。そのために通勤や通学、あるいは仕事上で支障が出ます。便秘型は腸の蠕動がスムーズに行かずに便が停滞します。コロコロした硬い便となり排便が困難になったりします。交代型は下痢型と便秘型が交互に繰り返します。
原因として現在として上がっているのが、心理的なストレス、腸管内の細菌叢の異常、腸管粘膜の炎症、神経伝達物質(セロトニン、コルチゾール、ヒスタミン、一酸化窒素など)、遺伝などがあります。どれも決定打はありません。
この様な病態を踏まえて、治療は様々な角度から行ってゆきます。ストレスや環境要因を整理し、生活リズムや食生活(繊維質の増減、油脂減少、香辛料減少など)を整えるようにします。それと併せて薬物療法として下痢止めや鎮痙剤、下剤や高分子重合体、セロトニン受容体拮抗薬などを組み合わせて治療を進めて行きます。
多くの方が悩んでいますし、治療も一つで完結するものでもありませんので、家族や特に仕事場や学校などの周囲の理解が重要となります。
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院長先生
こんばんは。
こちらはやっと明日から暖かくなるようで
ホッとしております。
今日の「過敏性腸症候群」ですが、
私にもいささか?思い当たります。
病院へ行く前や普段でもおなか(下腹)の調子が・・・?
お腹がゴロゴロ、シクシクでトイレに何回も行きたくなる・・・。
便秘ではありません。
毎年、大腸がん検査も受けております。
以前、ポリープありと言われました。
今は「ミヤビM」顆粒が処方されております。
少し落ち着いておりますが・・・。
投稿: マコママ | 2019年4月 3日 (水) 22時09分
マコママさん、こんばんは。
関東も寒そうですね。沖縄も暖冬と思っていましたが、春先になっても普段より寒く感じてしまいます。
胃腸と精神的なストレスとの関連があることは良く判っていて、多くの方が緊張したりすると胃が痛くなったり、トイレに行きたくなるものです。マコママさんもこのようなことがあるのですね。
色々な方向から治療を試みられています。腸内細菌叢のためにはミヤビMはいいのかも知れません(断定は出来ませんが・・・)。
投稿: omoromachi | 2019年4月 3日 (水) 22時32分
2年ほど前に、俺もその診断を受けました。
俺の場合は、下痢や便秘ではなく、やや胸焼けがしたり、げっぷがでたり、ズボンのバンドの締め過ぎ?腹部の圧迫がそれを起こしているのでは?結局、「過敏性腸症候群」との診断でした。胃カメラがなかなかやれずに、それも透し撮影でした。薬が処方されましたが、その後は異常ありません。最近、メタボになってきましたので、第一の原因はこれかも知れません( ´艸`)
投稿: でんでん大将 | 2019年4月 3日 (水) 23時27分
でんでん大将さん、こんばんは。
大将さんも過敏性腸炎になったことがあったのですね。精神的なことはすぐに胃腸に来ますので、知らない間にストレスを感じていたかも知れません。
胸焼けやげっぷなどは食道裂孔ヘルニアなどがあると起こりやすいですし、逆流性食道炎も内視鏡上、異常を認めないこともあります。
メタボになると胃も押され気味になりますので、胸焼けが起こりやすくなりますので、今後注意ですね。
投稿: omoromachi | 2019年4月 3日 (水) 23時41分
おはようございます。
桜の季節ですが、先生も花見など楽しまれる時間はおありなのでしょうか?
息を抜く時間も大事ですね。
下痢、腹痛、嘔吐、便秘など、突然一斉に襲ってくることがあります。
病院に度々かけこみますが、私の場合は虚血性大腸炎と診断され一週間ほど入院し絶食生活を強いられます。
最近はこのような症状が起きると自分で絶食するようになりました。
暴飲暴食は若い頃はありましたが、今は滅多にないことです。
歳とともに、最近はいろいろ故障が起きています。
投稿: ぴえろ | 2019年4月 4日 (木) 09時57分
ぴえろさん、こんばんは。
本土の方では桜が美しい季節でしょうね。残念ながら私の方は殆どの場合、土日も病院と家との往復です。 しかしながら5年ほど前から年に1度のヨーロッパ旅行も再開していますので、今はそれだけで十分嬉しいです。
ぴえろさんは虚血性大腸炎と言われたのですね。腸にも動脈も静脈も通っているのですが、その動脈の一部が狭くなったり、血の塊で詰まってしまい、その部分の腸の血液不足で虚血性腸炎となります。
激しい場合は腹痛、下痢、下血で発症しますが、症状が劇的でない場合は一般的な腸炎や過敏性大腸炎との区別が困難なこともあります。
年齢とともに私達の体も中古品(?)になってしまい、色々とメンテナンスが必要となります。
若い頃のように暴飲暴食はせず、また症状が出たら、早めに絶食としますが、脱水になったら大変ですので、病院を受診されて下さいね。
投稿: omoromachi | 2019年4月 4日 (木) 19時20分
こんばんは。
既に6年ほど前になりますが過敏性大腸炎の診断を受けました。
1年近く治療を受けましたが完治せず、
病院を替えて再検査を受けたところ潰瘍性大腸炎と診断されました。
入退院を繰り返し
現在はレミケード点滴治療を受けて緩解を保っています。
完治する治療法はないものでしょうか。
投稿: kannkodori | 2019年4月 5日 (金) 18時45分
kannkodoriさん、こんばんは。
6年ほど前に過敏性大腸炎とまずは診断を受けたのでしょうか? 腹痛や下痢などは後で診断された潰瘍性大腸炎の症状とも重なる部分もありそのように考えたのでしょう。
過敏性腸症候群は上部や下部の内視鏡検査、炎症反応や血管性の病変がないかなどを否定して初めて言える病態です(もしかしたら今現在過敏性腸症候群と行っている中でも新たな病気が見つかるのかも知れません)
潰瘍性大腸炎は国の難病指定を受けている炎症性腸疾患です。20代発症の方が多いのですが、稀に高齢者でも発症しますし、男女差はありません。
現時点では残念ながら完治する治療法はありませんが、抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードやヒュミラなど)が出て、これが効果がある方の場合は随分とコントロールがしやすくなりました。
同じ炎症性腸疾患のクローン病と違い、大腸に限局して起こる病気ですので、各種の治療を行っても効果がなく重症化するケースでは大腸全摘を行うこともあります。
食事制限や内服、レミケードなど制約が多いと思いますが、主治医や栄養管理士、薬剤師などと協力して症状の安定化を計って欲しいと願っています。頑張ってくださいね。
投稿: omoromachi | 2019年4月 5日 (金) 19時21分
ありがとうございました。
70歳を過ぎてこの病気を発症するのは珍しいと主治医に言われました。
安定を保つよう頑張ります。
投稿: kannkodori | 2019年4月 5日 (金) 21時13分
kannkodoriさん、こんばんは。
私もこれまでクローン病や潰瘍性大腸炎の患者さんを診てきました。特に10代の遊び盛り、食べ盛りの子供達が発症するのは、治療をする私も可哀想に思うことが多くありました。それでも励まし、時には叱って治療を続けている方もいます。
kannkodoriさんも、これからも色々と節制しないといけないことも多いのですが、これも人生の修行だと思って乗り越えて下さいね。 頑張って下さい、応援しています。
投稿: omoromachi | 2019年4月 5日 (金) 22時11分
omoromachi先生
貴重なアドバイスは肝に銘じないといけないと思いました。
腸にも動脈、静脈が通っているなんて軽く考えていました。
最近は突然動悸が激しく不整脈が起きたりするとオリンピックは見られないなどと思ったり、この症状が去るとケロッとし、
百歳まで生きられるのではないかと心の中が忙しいです。
人間て不思議なもので若い頃(60代ごろまで)は死が
怖いと思いましたが、70歳越えると覚悟が出来るものですね。
それならば、悔いのない日々をと思うようになりました。
日々、楽しく暮らせることに感謝しています。
話がすっかりずれてしまいました。
先生の優しく丁寧なコメントに感謝です。
ありがとうございました。
今日の生け花素敵ですね。
私は可憐なスイートピーが大好きです。
投稿: ぴえろ | 2019年4月 6日 (土) 11時25分
ぴえろさん、こんにちは。
腸も血管で繫がっています。例えば食道癌の手術の再建術で、切除した食道の代わりに小腸を単に切り離して持って来ても、血管をまず繋がなければ血液が通いませんのでそのまま壊死して腐れて死んでしまうだけです。
ぴえろさんは発作性の頻脈が起こるのでしょうか? 自覚できる不整脈は気持ち悪いですし、不安に駆られてしまうと考えます。
人間は不思議で、何か起こっている時には不安になりますが、発作が治まれば、自分が健康体と思いたくなるものです。
ぴえろさんの中に悟りの感覚が芽生えたのかも知れませんね。皆死への恐怖は持つものですが、私達の何十倍も凄い先人達も皆亡くなっているのです。 70まで生きられたのですから、これからは感謝で朝を迎えられたら素敵なことだと思います。
まだ少し先ですが私もぴえろさんのような70代を目指したいと思います。 コメントありがとうございます。
投稿: omoromachi | 2019年4月 6日 (土) 16時21分