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2019年3月 6日 (水)

舌がんについて

今日のFM放送は口腔内の疾患について説明しました。多くは口内炎などの一過性の病気で、殆ど1〜2週間で回復します。
今回ある女優さんが舌がんの手術を受けたことが報じられ、舌がんを知るきっかけになった方もいらっしゃるかも知れません。 私は外科医ですので、舌がんは専門外ですので、分かる範囲で書いてみたいと思います。            Th_165959
  私がこの女優さんが偉いと思ったのは、大変な手術にもかかわらず手術に臨んだことにあります。この様な病気が発見される中で、民間療法に走ったり、効果もないビタミン療法や免疫もどきの医療に手を出さなかったことが偉いと思いましたし、本来それが当然選ぶべき治療だと私は考えるのです。
 がんになると皆平静ではいられないはずです。そこで大切なのはしっかりとした科学的な根拠に基づいた医療を選択することにあります。 まずはがんセンターなどの大きな機関で情報を得るべきだと考えています。 今やネットを検索したら沢山の情報に溢れています。 安易な情報に流されずに、冷静に考えることが大切です。                     
<舌の役割>
舌は大きな筋肉の塊ですが、その筋肉によって、食事を混ぜ合わせる咀嚼(そしゃく)機能、食事を飲み込む嚥下(えんげ)機能と声を出す発語機能があり、それだけでなく舌の表面にある味覚や知覚を感じるセンサーも持っているため、味や温度や痛みを感知することも出来る受容器官でもあります。
<舌がんの頻度>
舌がんは舌に発生するがんで全部のがんの2〜3%となり、男女比では2:1と男性が多いです。口腔がん(口の中に出来るがん)としては最も頻度が高いがん(50〜60%)となります。
<舌がんの原因>
①飲酒・喫煙; 強いお酒は舌を通り、咽頭、食道へと流れます。 高濃度のアルコールはこの部位の粘膜(扁平上皮)にダメージを与え、がんの発生母地になります。禁煙も口腔内から気管から肺へ影響し、同様にがんの発生源となります。
②歯による慢性刺激; 舌が歯に慢性的に当たることで刺激され(実際に繰り返し炎症を受ける場合など)ることでがんの要因になると考えられています。
Th_ <舌がんの症状>
①硬いしこり; 舌がんの多くは口を開けて見える範囲の前方に多く発生します。特に歯と当たるような側面や後面に硬いしこりとして感じることがあります。 初期の場合は口内炎と似ているため、放置することがありますが、2〜3週経っても改善しない場合はがんの可能性もありますので、専門機関を受診されて下さい。
②持続性の痛み・出血; 舌には神経が豊富ですので、痛みを伴うことがあり、特に表面が潰瘍となると持続的な痛みが出現したり、出血を伴ってきます。 これも2週間程度で改善しなければ受診して下さい。
③稀に舌の症状よりも転移を起こしたために、顎の下や首周りのリンパ節の腫れで気がつく時もあります。風邪をひいてもリンパ節は腫れますが、あまり押しても痛みがなく硬いリンパ節ならこれも検査の対象ですので、医療機関を受診して下さい。
<検査・診断>
・診断や局所の細胞を取って病理検査を行い決定します。今でも訳の分からない医師が「がんもどき」などと言っていいる方もいますが「がんもどき」などありません。
・診断をつけると共に進行度を検査するCTやMRIなども行い、病期を決定します。
<治療>
・舌は上に書いたように重要な役割を持っています。このことより可能な限り機能を温存するようにします。しかし温存だけを考えてがんを残しては元も子もありません。
①外科手術:腫瘍を切除します。切除範囲が小さければ取り除くだけで良いのですが、大きく欠損が起きるとQOLを落とすため、体の一部の筋肉を移植する再建術が同時に行われうこともあります。
②放射線療法: 舌がんの多くは扁平上皮という粘膜面から出ます。この扁平上皮がんは放射線感受性が高いために、がんの治療として放射線は有用となります。
③化学療法; いわゆる抗がん剤療法となります。 殺細胞性の抗がん剤だけでなく分子標的薬が使用されています。最近注目を浴びている免疫チェックポイント阻害薬はまだ保険適用となっていません。
・・・専門外ですので、簡単にさっと書くつもりでしたが、長くなりました。 私の様な外科医からも言えることですが、情報過多の社会ですが、しっかりとしたエビデンスに基づいて治療法を選択して欲しいと願っています。 

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医療」カテゴリの記事

コメント

院長先生
 こんばんは。
いつ誰に起きるか分からない癌があまりにも
沢山ありますよね?
そして「舌癌」は酷い痛みがあるようで、
以前、私が通っていた
「ちぎり絵」教室で先輩の方が歯医者さんに通っていて、
そこで舌癌が分かり、T医科歯科大附属病院で
手術されました。その後、やめられたのでどうなさったか?
辛い経験をされたと思います。
今回、話題に?になられたHさんも早い快復をお祈りします。

マコママさん、こんばんは。

日本人の二人に一人がなる癌です。私達のあらゆる臓器で起こります。舌がんは癌のなかの2〜3%と思います。

舌は味覚や感覚神経などが集中していますので、ここが傷つくと痛みが強いのが特徴です。ただ初期には痛みがないことも有ります。 マコママさんの先輩もこの病気になられた方がいらっしゃったのですね。

舌がんも他の癌同様に早期発見が重要です。特に舌がんは私達が口を開ければ見える場所に出来ますし、痛みやしこりを自覚することも多いです。 ですのでドックなどの検査も受ける必要がありません。 心配なら早めに医療機関(耳鼻科、歯科口腔外科、内科など)を受けることが大切だと思います。

今回は早めの医療機関受診を促すために記載しました。手術や治療を行った患者さんが回復することをお祈りしています。

omoromachiさま

このブログを拝見した後、舌の両側が赤いのに気づき、ギョッとしました。
ヒリヒリするし、でも原因に思い当たることがありました。
今日は誰とも話していないからとキシリトールガムを多めに噛んでいました。
顎を鍛えた方が良いかもと思い、クチャクチャと長い間噛んでいました。
舌を刺激したのだと思います。
長く痛みや腫れが引かなければ、それから考えようと寝ましたら、翌朝はすっかり治っていました。

私は癌に対しては過剰反応しがちです。
27年前に癌の専門病院で手術を受けた後、主治医の先生が口を酸っぱくしておっしゃいました。
色々な民間療法を勧める人が居たり、記事を見ることがあると思うけれど、そんなに確かなものなら病院でも使いたい。病院で使えないと言う事は確証がないからなので、引っかからないで下さいと。
そんなお金があったら、美味しいものを食べたり、楽しいことに使ってくださいと。
その後、「これで良くなった」という情報を見るたび、転移や再発が怖いので、心は揺れましたが、主治医の言葉を思い出しては踏みとどまることが出来ました。
27年前の「癌」は未だ「死病」のイメージが強かったですが、今は怖い病気ではありますが、早期発見ならば治癒出来たり、共存可能な病気になりつつありますね。

医学の発展に期待したいです。


 

お黒ちゃんさん、こんばんは。

舌の痛みが起こりビックリしたのですね。まあ原因も推測され、翌日には改善していますので癌ではなさそうですね。

私は外科医として30年以上癌と付き合っています。なかなか直ぐに撲滅とはいきませんが、少しずつ進歩しているのは確実です。
私もお黒ちゃんさんの主治医と同じ意見です。 高濃度であろうがビタミン剤が効くなら、もう既にノーベル賞ものです。 世界中で多くの研究者が、莫大な研究費を使って癌の治療薬を開発しようとしのぎを削っている状況です。 

ですので、冷静に考えて欲しいと願います。副作用も少なく、簡単な治療で癌を死滅出来るのであれば、世界中の研究者も資金も必要ないのです。
もちろん予後不良の患者さんのことを思って、希望を失わせないために行っている先生もいるかも知れません。

しかしビタミン剤や免疫療法もどきや温熱療法もどきが蔓延しているのに憤りを覚えることがあります。 いくら高濃度でもビタミン剤の原価は安いのです。 それを一回何万円も取ってやっている方もいます。 わらにもすがる患者・家族を食い物にしている様に見えることもあるのです。

医学が進歩したとは言え、いまだに直せない方も沢山いらっしゃいます。私自身も患者さんを救えない時はいつも苦しいのです。 

これからの医療の発展に期待したいですね。

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