エコノミークラス症候群を防ぐ下肢運動の重要性:筋肉のポンプ作用
今日のFM放送は先週に引き続き下肢の静脈疾患について話をしました。今日は主に深部静脈血栓症やそれに伴う急性肺血栓塞栓症についてでした。
皆様方の多くも「エコノミークラス症候群」と言う名前を聞いたことがあると思います。エコノミークラスに多い例えなのですが、何もエコノミークラスに限ったことではありません。要は長い時間同じ様な姿勢で座ったりすると、足(特に下腿)の静脈の流れが膝を曲げていることも重なり停滞してしまいます。長い間停滞すると、血管の中で血液が固まってしまうことがあります(静脈血栓)。
長時間のフライトから解放されて、立った時に、足の血液の流れも改善されます。すると足の静脈で固まった凝血塊も血液の流れに乗って心臓に向かって流れて行きます。 下大静脈から右心房→右心室にながれ、最後は肺動脈の中に移動します。 肺の中で血管は徐々に細くなるために、この凝血塊(血栓)が肺動脈に引っ掛かり詰まってしまいます。 これが肺血栓塞栓症で、大きな血管に引っ掛かる場合は急に呼吸困難や心不全となり急死することもあるのです。 この様な事態をエコノミークラス症候群と呼んでいました。
しかし、何もエコノミークラスでけに起こる訳ではなく、長時間の同じ姿勢では起こることもあり、地震の震災で車の中で同じ姿勢で過ごした方にも多く起こりました。
実際に日本人での調査では航空医学研究センターの調査では、エコノミークラス症候群の44人の内訳では、男性3人、女性41人、平均年齢61歳、座席別ではエコノミークラスが31人、ビジネスクラス6名、不明7人でうち死亡者が4人だったと報告しています。
この様なことは飛行機のみならず、車や列車の移動でも起こることより、旅行者血栓症(traveller's thrombosis)と呼ぶべきと言う方もいらっしゃいます。
では予防策はとなると、皆様方も飛行機に乗ると、足の運動の絵が入ったパンフレットを見ることがあると思います。ではなぜ、この様な運動をした方がいいのかについて説明したいと思います。
前回のブログで書いた様に、心臓の拍動により作り出された圧力の高い血液(動脈)は組織に酸素や栄養を配り、今度は殆ど圧のない静脈のなかを心臓に戻って行きます。圧がないために逆流もしやすいため、足や手に静脈には動脈にはない逆流防止のための静脈弁がついているほどです。
足は心臓からの距離もあり、座ったり立ったりする時には一番うっ血してる場所になります。足には見えませんが深い場所に大きな深部静脈が流れています。足の筋肉を動かすと中を通っているこの深部静脈も影響されてます。静脈弁もあることより、この静脈が筋肉の運動により停滞した血液の流れが移動しやすくなります。この筋肉の作用を心臓のポンプ作用になぞらえて筋肉のポンプ作用と呼んで、第2の心臓とも言っているのです。
この様にして足を運動させることで飛行機に乗っている時などに足の血流をよくするためにあのパンフレットがおいてあるのです。
長時間のフライトでは足の運動を行ったり、トイレタイムなどを利用して運動して深部静脈血栓症を予防して下さいね。
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omoromachi先生、こんばんは。
放送聞かせてもらいましたよ。色々と勉強になります。
東京ー沖縄間のエコノミー通いをしていますので
いつも気になっていた話題でした。
機内の雑誌に書いてある、足の運動の意味が
とてもわかりやすく書かれていて理解出来ました。
今度私の友人にも筋肉ポンプについて
鼻を高くして話してみたいと思っています
いつも正しい情報有り難うございます。
投稿: T.K | 2018年4月 4日 (水) 21時01分
T.Kさん、こんばんは。
FM放送も聴いて頂きありがとうございます。もともと東京都出身ですので、東京都への往復では飛行機になりますし、時間も結構長いので辛い時もあると思います。
長時間のフライトではどうしても下肢に血栓ができる可能性もあり、飛行機内で少しでもリスクを減らすように機内誌にもイラスト入りで足の運動が書いてあることが多いです。
窓際の方が通路側より起こる率が高いとも言われていますので、少しでも運動することでエコノミークラス症候群は減ると考えられています。
絵が下手なので上手に説明出来ませんが、筋肉ポンプの重要性を理解して頂けたら嬉しいです。
投稿: omoromachi | 2018年4月 4日 (水) 23時16分
先生、こんばんは。
エコノミーに乗る機会が多い我が家。
機内での運動はほぼトイレタイムのみ。
特に狭心症の主人の体調は気に掛かるところでしたが、
絵付きで詳しい説明をして頂いて大いに参考になりました
エコノミー症候群の事は認識していましたが、こういったメカニズムの事は知りませんでした。
御指導ありがとうございます
投稿: sharon | 2018年4月27日 (金) 17時46分
sharonさん、こんばんは。
飛行機の長期のフライトで辛いのは、動けないことですし、特にエコノミーでは膝を曲げた状態が続きますので、下肢の静脈血栓ができてしまうことがあります。
トイレなどに出られたらいいのですが、窓際の席だと簡単にも出れませんので、少しでも下肢を動かす運動をなされて下さいね。
上手には描けませんでしたが参考になれば嬉しいです。
投稿: omoromachi | 2018年4月27日 (金) 22時17分