麻疹(はしか)の流行に注意
沖縄県では3月に海外旅行者が旅行中に麻疹(はしか)にかかったことが判明し、その方が接触した場所から発症者が出現、更に拡大し沖縄県内で麻疹(はしか)が流行の兆しにあるとして、はしかの警戒レベルを最高の「3」に引き上げました。
・何故はしかの感染が問題なのか?
なんと言っても麻疹の感染力の強さにあります。 周りに影響を及ぼす程、感染力が強いためにインフルエンザと命名されたインフルエンザウイルスですが、それと比べても、麻疹の感染力は驚異的に高いのです。おおよそのデーターではインフルエンザの10倍以上の感染力があることが判っています。
麻疹の抗体を持っていない方が、麻疹の患者さん(症状の出てない時期からでも)と接したり、買い物で釣り銭の受け渡しをしただけでも感染してしまい、体力のあるなしに関わらず感染した人の95%以上、ほぼ全員が発症します。
・年代による抗体の有無の推測
現在の所、はしかを予防出来るのはワクチン接種や過去の感染で得た抗体しかありません。そのため症状などを記す前に、先に抗体の有無やワクチン接種の既往について書いた方が安心かも知れません。(母子手帳等あれば確認して下さい)
・昭和52年以前に生まれた方:この当時予防接種はありません・・・残念でした・・・なかった分だけ多くの国民が麻疹(はしか)にかかった方が多いのです。1度罹ったらほぼ終生免疫を持っていますので、殆ど罹りません(もちろん例外はあります)。
・昭和52年から平成2年生まれ:この世代はワクチンの予防接種は1回のみの時期です。麻疹は1回だけでは弱く2回接種が必要です。しかし1回の方は罹っても重症化しにくいと言われています。ただし修復麻疹と言って、「自分は症状は軽くても」「他人にうつす可能性があり」注意が必要です。
・平成3年以降の生まれ:定期接種2回世代で、2回確実に打っていれば感染リスクは低くなっています。 現在は1回目の接種が満1歳と小学校入学前となっています。 また6〜9ヶ月までの赤ちゃんはお母さんからの移行抗体があります。 その為この時期の赤ちゃんで1回目の予防接種を受けてない場合や、学童期で2回目の接種がまだな子供は、流行期には前倒しで受けることも出来ますので、小児科や行政に問い合わせ下さいね。
私達の病院でも緊急時に備えて職員の抗体検査を行っている最中ですが、昭和52年以前生まれでも、抗体が低い方が思ったより多いため、現在全職員の抗体検査を施行を始めている所です。流行期には人混みに出かけるのは控えるべきだと考えています。
ではでは、感染経路や症状、合併症などについて記載してみます。
空気感染(飛沫核)の他に、飛沫や接触感染など、感染者が近くにいるだけでも感染しやすいウイルスです。ただし空気中に出されたウイルスは2時間程度で死滅します。
・症状・合併症
感染者と接触後、10〜12日間の潜伏期間があり、その後38度程度の発熱や咳、倦怠感(小児では不機嫌)や目の症状(結膜充血、目やに、羞明)などが2〜4日続きます。小児では下痢や腹痛も多くみられます。 その後、半日ほど解熱時期がありますが、それが過ぎた後に39度の発熱が出現し、更に口腔内のコプリック班と言われる、白い小さなブツブツが認められ、顔面から全身へと特徴的な鮮紅色の皮疹が表れます。
皮疹が出現後3〜4日経つと解熱し、全身状態も回復に向かいます。全身の皮疹は赤から黒ずんた色に変わります。しばらくは色素沈着として残ります。
麻疹は感染症の5類にあたり、保健所への届け出義務があり、本人も解熱後3日間は登校出来ません。
・合併症
麻疹の患者の30%に合併症が認められ、その大半が肺炎です。その他中耳炎、咽頭炎、心筋炎、脳炎などの危険性もあります。また麻疹を罹患して数年経ってから亜急性硬化性全脳炎という特殊な合併症を併発する場合もあります。
・医療機関からのお願い。
沖縄県で麻疹が広がりつつあります。不急の外出や人混みは避けて欲しいと思いますし、感染を広げないためにも、症状が軽ければ自宅待機で経過観察して頂きたいと思います。特に軽症な方が夜間の救急外来に来院されてもすぐに検査も出来ませんので、感染を広げるだけになる場合があります。
前回の新型インフルエンザの時にもそうでしたが、パニックにならずに自分自身で正確な情報を手に入れて、冷静に対応して頂きたいと考えています。麻疹に限らず、感染症は医療機関だけでなく国民1人1人の予防や対策が求められているのです。
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コメント
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院長先生
こんばんは。
この季節でも麻疹が流行しているのですね?
私は確か?小学3年生の3学期に罹り、
二人の妹にうつし、最後に治ったのも私でした。
いかに感染力が強いかですね。
早く終息しますように・・・。
投稿: マコママ | 2018年4月11日 (水) 20時26分
マコママさん、こんばんは。
麻疹は春から初夏にかけて流行することが多いようですので、マコママさんは早い時期にかかったことになるのでしょうね。
昔はワクチン接種がありませんでしたので、多くの方は子供時代にはしかにかかったことがあると考えています。ワクチンよりもかかった方が免疫力は強くつくことが多いようです。
麻疹は感染力が高いために、妹さん達にもうつしてしまったのでしょうね。
沖縄県では初期対応で封じ込め出来ませんでしたので、今後しばらく流行が続くことが予想されています。 病院では手術や免疫力の落ちた方が入院していますので、外来から院内へ受診が広がらないように対策をとっている最中です。 早く終息して欲しいです。
投稿: omoromachi | 2018年4月11日 (水) 22時46分
omoromachi先生、こんばんは。
放送も聴かせて貰い勉強になりました。
私も当然ワクチンを受けていない世代
ですが、はしかにかかった記憶が
ありません。妻の方はかかったことが
あるそうです。
私のような場合は抗体を検査すれば
判るのでしょうか?
抗体がなければ60過ぎても予防注射
は可能なのでしょうか?
お忙しいと思いますが宜しくお願い
申し上げます。
投稿: T.K | 2018年4月12日 (木) 00時04分
T.K さん、おはようございます。
「いきいきタイム」を聞いて頂き有り難うございます。麻疹は私達の世代ではワクチンそのものがありませんので予防接種もありませんでした。周りに子供も多かったので、沢山の方ははしかに罹ったことがあると思います。
ただ罹ったとしても昔のことですので、覚えていない方も多いと思います。病院で血液検査で抗体値を調べることで、罹ったことがあるかどうかは判ると思います。
もしも抗体がなければ、どの年代でも予防注射は可能です。予防注射が出来ないには妊娠中の方で、また接種後2ヶ月間は避妊が必要な方になります。
今那覇市にお住まいですので、ワクチンの確保が難しいカモ知れません。
新聞やニュースで情報を仕入れて、あまり人混みに出ない方が無難かも知れません。
コメントいだだき有り難うございました。
投稿: omoromachi | 2018年4月12日 (木) 08時34分
おはようございます
私は結婚直後に
麻疹に罹り、
お医者様に妊娠の可能性もあると
言ったところ、
薬も出してもらえず、大変な高熱で辛い
思いをした経験があります。
(幸いその時は妊娠中では無かったのですが)
どこから感染したのか分かりませんでした。
まだ罹っていない人は心配ですね。
投稿: monna | 2018年4月12日 (木) 09時16分
こんばんは
私も麻疹4歳くらいの時にかかりました。
子どもたちの時は、重篤な副反応があるという事で、MMRが受けられず、個別に摂取でした。
アメリカに来たら、子どもたちは学校に通うために、日本で受けた予防接種で回数の足りない予防接種を一度に受けさせられました。
州によって回数は違うのですが、息子は4回もMMR受けてます。
4回も受ければ免疫はつきますよね?
投稿: Yuuki | 2018年4月12日 (木) 12時10分
monnaさん、こんばんは。
結婚直後に麻疹でしたか 妊娠の可能性があるとワクチンは打てませんので辛い思いをなされたのですね。 風疹と比べて少ないのですが、妊娠初期に麻疹に罹ると流産や早産の危険も高いので、妊娠はしていなくてよかったと思います。
まだまだ麻疹は根絶にはなっていませんので、外国を含めた色々な所から感染が起こってしまいます。 抗体を持っていない方や抗体が十分でない方は今後注意が必要ですね。
投稿: omoromachi | 2018年4月12日 (木) 19時19分
Yuukiさん、こんばんは。
Yuukiさんは4歳の頃に罹ったのですね。おそらく抗体がしっかりとあると思いますので今後は大丈夫ではないでしょうか
米国育ちの子供達は日本とは違う接種義務がありそうですね。米国の方が日本よりも定期予防接種の種類も回数も多いようです。日本でやって米国でやらないのは結核(BCG)、と日本脳炎のワクチンぐらいでしょうか?
米国では州によっても接種が変わるのですね。日本のデーターでは2回で免疫は殆どの方がつくそうですのでMMRが4回でしたら、ほぼ免疫は大丈夫ではないでしょうか?
投稿: omoromachi | 2018年4月12日 (木) 19時27分
22歳のときにかかり、つらい思いをしたのを覚えています。
子供の病気に大人が罹るつらさを実感しました。
先生も最前線にいらっしゃるので、どうかお大事になさってください。
そして沖縄の皆様のために、どうかお願いします。
投稿: しげまる | 2018年4月13日 (金) 20時21分
しげまるさん、こんばんは。
成人してから麻疹に罹患したのですね。一般的に言えることですが、子供の頃に罹りやすい病気を大人で罹ると結構辛くなったり重症化したりしますので、しげまるさんも大変だったと思います。
早くも当院でも麻疹の疑いの患者さんが飛び入りで来られた様で、外来などが大変でした。
全職員ともに麻疹の抗体の有無を調べている所で、今週末か来週の初めには全職員の結果が判明します。これまでにも抗体が判明している職員もいますので、この職員で麻疹の診療に当たるようにマニュアルを作って診察に当たっています。
今後、沖縄だけではなく、全国にも感染が広がらないか注意深く観察が必要となると思います。
有難いコメント頂きありがとうございます。
投稿: omoromachi | 2018年4月14日 (土) 00時09分