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2018年2月28日 (水)

胃内視鏡検査の進歩

今週のFM「いきいきタイム」は胃癌について話をしました。診断や治療における内視鏡の進歩には目を見張ることが多いです。 私が外科医としてやって来た30年あまりでも随分と進歩してきた実感があります。

Th_ ブログでは胃内視鏡検査の歴史と変遷について書いたみたいと思います。

つい近年までは胃癌は早期で見つかることはなく、手術や死んだ後の剖検でその病巣をみることしか手段はありませんでした。その後レントゲンが発見され、バリウムによる胃透視にて間接的に病気を見つけ出すことが出来るようになりました。

はやり胃の病変を直接みてみたいと先人達は努力をしてきました。1860年代にドイツにて棒の先にレンズがあり、根元にカメラを取り付けたような装置が出来、最初は棒のように硬く曲がらない硬性胃鏡、その後この棒の部分が少し柔らかくなった(今の内視鏡と比べると太くて硬いです)軟性胃鏡が発明されましたが、おそらくサーカスかなどで観るような硬い棒を飲み込むような芸当が出来なとやれなかったと思われます(左のイラストはウッキペリアからとりました、著者権は切れています。こんな胃カメラなら絶対受けませんね)。

1950年代に初めていわゆる「胃カメラ」が日本で開発されます。その当時の状況を昔、研究に携わった先生から聴いたことがありましたが、失敗の連続だったそうです。その中で胃の中が写った写真を見たときには衝撃的だったと話されていました。Th_8cdc73a2d41a8d8ad96f8baf175f77b1

基本は軟性胃鏡と同じ感じです。カメラの先にレンズがあり、根元にカメラの本体があります。ただカメラ本体と入っても、のぞき窓などありません。 胃の中に入っていると思われたら、レントゲンをみたりして、だいたいこの辺と考えて、カメラのシャッターを押すわけです。何枚か写真を撮り終えて、現像したら真っ暗で何も写っていなかったなんてことも何度もあったそうです。

その後アメリカでファイバースコープが開発され、1970年代から胃カメラにも応用されてゆきます。 ファイバースコープのため、カメラの先端から光をだしたレンズから拾った画像を手前の1cm程度の窓からのぞき込むことが出来る様になりました。 私も初めてカメラをやったことはこのタイプでした。 当然窓は1つですので1人しかみれませんし、写真を撮って現像ですので、患者さんにも後日の説明になる時代でした。最初は白黒で後にカラーだったような気がしますが記憶が定かではありません

その後1980年代から、モニターに映し出せるビデオスコープが開発され、現在のようにモニターで映し出されるため、周りの医療者含めても本人もみることが可能となりました。今やフルカラーからハイビジョン撮影、色々な色調を強調できたり、微小な病変を拡大出来たりするカメラが出現し診断技術の向上により早期発見や内視鏡的処置手術の拡大に繋がっています。

画像処理の進歩と共にファイバーそのものを細くする技術も格段に進歩しました。 細くなった利点はやはり大きいです。 私が始めた1980年代でもカメラの直径が15mm程度が細いと感じましたが、今では色々な処置が出来る普通のカメラでも9mm程度の太さになっています。更に細径ファイバーと呼ばれる直径が5〜6mm前後のカメラが普及型として出回ってきました。

Th__2 細くなった利点は、口からの挿入でも太いより細い方がより楽です。それでも口からのカメラは一番反射が強いベロ(舌)を押さえ込みながら入るので、麻酔をしてもゲロゲロと苦しいことも多いのです。 細径カメラの一番の利点は、この大きさなら多くの方が鼻の穴から挿入可能となった点です。 それによって嘔吐反射が減り、お喋りをしながらのカメラも可能となったのです。 更に鎮静剤を併用することで、眠っている間に終わったと感じることも多くなりました。

まだまだ、早期発見に勝る治療はありません。胃カメラが苦しくて2度と受けたくないより、楽に挿入できて、気楽に胃カメラを受ける方が早期発見にとって重要です。

胃カメラの進歩は受ける方の安楽と、そして診断や治療をより高度に行えるようにと日々進歩しているのです。

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コメント

院長先生
 こんばんは。
早、2月も今日で終わりですね。
 胃内視鏡検査、末妹がその検査の結果、
胃がんと診断され、そして大腸にも転移!
20日に両方の手術が終わりました。
昨日は高熱が出たそうで、暫くは大変だと思いますが、
頑張って欲しいと思っております。
 私も不整脈などで3回もキャンセルしたままですので、
今年は是非、受けたいと思っております。
早期発見に勝るものはございませんものね?
 今日も貴重なお話ありがとうございました。

様々な研究があっての胃カメラが現在に至っているんですね。俺は意気地なしと言われるのですが、胃カメラというだけでビビっちゃうんです。4~5回はそれでもやっているんですが…胃カメラというだけで、体が硬直しまうのです。過敏性何とかと言われます。鼻からの方が楽だよと言われますが、それはまだやったことがありません。楽に受けられるには、どうしたら良いのでしょうね?
透しも楽ではないものの、例年ドックでは胃カメラではなく、透しでやっています。困った神経です…(;´д`)トホホ…
以前に胃カメラの研究を扱った小説、読んだことがありましたね。吉村昭の本でしたか、タイトルも忘れてしまいましたが…

マコママさん、こんばんは。

末妹の手術も無事終えられて良かったです。両方同時でしたの、本人にとってはある意味よかったのかも知れませんが、その分手術時間が延びたり侵襲も大きくなるので、術後は用心しながら観察する必要がありますね。 頑張って欲しいです。

マコママさんは、不整脈に対するアブレーションの経過も良さそうですので、今年は胃の検査を受けて下さいね。

こちらこそ、いつも読んで貰えて、コメントまで頂き本当に感謝致します。

でんでん大将さん、こんばんは。

沢山の医療従事者や光学系の技術開発者などが共同して沢山の医療機器を開発して、現在に至っています。本当に大変だったと思います。
喉の反射は人によってかなり違いがあります。敏感の方は胃カメラは地獄のような気になるかも知れません。

現時点で一番楽に受けるには、経鼻にして、少し安定剤を使って貰えたら苦手な人も殆ど苦痛なしに終えることが出来ます。大将さんもご相談なられてチャレンジして下さいね。

胃カメラの開発のことを書いてあるのは、吉村昭さんの「光る壁画」という小説ではないでしょうか? 日本のものつくりの原点みたのがありますね。

胃カメラの発達、大変助かります。
昔、胃カメラの検査を受けた際に
無意識のうちに暴れてそのときの
病院では、胃に何かあれば胃カメラを
つかい、そのときまではバリウム検査で
しましょうねと言われました。
昨年、久しぶりに胃カメラ検査を受けて
胃がんが無事に見つかり、治療が
出来て良かったです。今後とも
再発防止に向けて、治療をお願いしたいと
思っています。

nadoyamaさん、こんばんは。

医療機器の進歩は目覚ましいものがあります。私達医療側も受ける方になるべく負担にならないようにと考えています。 医療機器の開発者もより正確により安全・安楽にと切磋琢磨したお陰で今日の発展があると考えます。

昔と比べて現在の胃カメラは苦痛が少なくなりましたのでnadoyamaさんも以前と比べて楽だったのではないでしょうか? 楽に受けることが出来ると言うことは次ぎも受けてみようと思うでしょうから、検査の閾値が低くなって皆が検診を受けるようになってくれたらと願っています。

これからも色々とあるでしょうが、1歩ずつ乗り越えてゆかねばなりませんね。

有り難うございました。
『光る壁画』ですね、光るまでは頭にありましたが…その後が浮かびませんでした。
胃の検査は受ける前からビビっていますので、このあと相談してみます。有り難うございました。

でんでん大将さん、おはようございます。

吉村昭さんの本はこのタイトルで当たっていたようですね。

胃の検査はきつい思いをすると、受けることに躊躇してしまいますよね。鼻炎とかなければ、経鼻のカメラをやっている医療機関を探して、直前に安定剤の注射も行うと楽に行えます。捜してみて下さいね。

ニュースでも伝えられていますが、秋田の方は風が強くなるようですのでお気をつけてお過ごし下さい。

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