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2017年11月22日 (水)

メニエール病の歴史

今日のFM「いきいきタイム」はめまいについての第2段として話をしました。ブログでは何度かめまいについて説明しましたので概要は省略します。 まあ私自身は外科が専門ですので、めまいについてはあまり知らないのですが自分への勉強のつもりで書かせて貰っています。

めまいの原因となる1つに「メニエール病」があります。普通はこの様な専門用語に関しては多くの方は知らないのですが、何故かこの病名については知っている方が意外に多いのにビックリしています。                      Th_dsc01358

めまいにも色々なタイプがあり、回転性、動揺性、眼前暗黒感などが代表で、めまいに伴う随伴症状も嘔気、難聴、頭痛など様々です。

今でこそ、めまいの多くの原因が耳から来ていると分かる様になっていますが、昔はめまいは頭の病気(脳卒中など)から来ていると考えられていました。現在ではめまいの原因は大まかに耳が7割、脳が1割、その他が2割と言われています。

メニエール病は耳からもめまいが起こるということを広く知らしめた疾患として歴史上、臨床上重要な疾患となっているのです。

19世紀半ば、フランスで17歳の少女が街から街への移動中に冷たい風雨にさらされます。その移動の途中で突然の激しいめまい、耳鳴り、聴覚障害を訴えて病院に運ばれて来るのです。しかしその3日後には肺炎となりとうとう帰らぬ人になします。

この女性の病理解剖を行ったのがフランスの耳科医のメニエール先生でした。これまでめまいなどは脳出血などの脳の病気と医学会でも思われていました。しかしこの少女の解剖をした結果は脳や髄液などには全く異常がなくて、聞こえなくなった側の耳の内耳に出血が認められるのみでした。
Th_ これまでにもメニエール先生はめまい、耳鳴り、難聴を繰り返す患者さんを何人も観て来て、脳の病気ではなくて、内耳の病気ではないかと考えていたのです。この少女の解剖の結果をみて、耳鳴り、難聴を伴うめまいは内耳障害によるものと確信し学会で発表します。

当時の医学会を巻きこむ論争となりますが、フランスでは評価を受けなかったのですが、ドイツ医学会がその報告を支持し、一気に世界的に認められる様になります。

これを機にめまいが内耳の障害でも起こることが認められ、これを提唱したメルエール先生にちなんで「メルエール病」と世界に知れ渡ったのです。

メニエールという言葉の響きがいいのか分かりませんが、何故かこの「メニエール病」は広く日本国民にも知れ渡っている気がします。と言うのはめまいで来る患者さんが「私はメニエール病ではないでしょうか」と来院する機会もあるからなのです(時々経験します)

ただし、メニエールが最初に報告した内耳の出血によるものは今では「突発性難聴」で、本当のメニエール病は「内耳のリンパ液の水腫(水ぶくれ)」が原因であるとされているのです。

メニエール先生のお陰で、めまいが耳からも起こることが世に知らしめられた点と、逆に「めまい=メニエール病」と世間が認識してしまったという功罪もあります。

まあそれでも、時代と共に病気も原因が究明されてゆくのです。こらからも今は原因不明な病気もその原因が判るようになるのかも知れません。医学の進歩に期待したいものです

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医療」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

メニエール病って、そのような出来事から始まったことだったのですね?!

わたしは昔、仕事がとても忙しく休みもろくに取れなかった頃、
まるでぐにゃぐにゃの地面を歩いているようなめまいと共に耳鳴りが続き、突発性難聴と診断されました。

当時、担当された耳鼻科の先生が「メニエールっぽい感じもするんだよね」と仰ってたような記憶があるのですが…このようなことだったのですね。
完治はしませんでしたが、そんなに支障なく生活できています(^^ヾ
病気って、いろいろなことが原因してるので、判断が難しそうですねぇ・・・。

アケさん、こんばんは。

突発性難聴と診断されたのですね。現在でもはっきりした原因は掴めていませんし、治療も難治性のことがあります。おおよそ1/3が完治し、1/3は改善、1/3は改善せずでしょうか? アケさんは改善の方となっているのでしょうか?

症状が似かよっていますが、メニエールとは違いがあります。症状が重なる部分もあり、完全に診断がつかないこともあるようです。これから更に解明は進んで行くと思います。

めまいといっても色々な病態が含まれているようです。難しいですね。

こんにちは。
最近、ごくまれなんですが、めまいが起きることがあります。
メニエールって、お医者さんの名前だったのですね。
亡くなった少女には気の毒ですが、彼女の死を無駄にせず、原因究明につなげた偉大なお医者さんのお名前だったのですね。
最初に定義を発見してもなかなか認められない事もあるんですね。

ナニワさん、こんばんは。

めまいは多くの方が経験することなのですが、症状の重さと病気の重篤度が一致しない場合もありますので、持続したり悪化するようなら一度調べて下さいね。

沢山の方の貴重な経験、資料から次第に病気について解明されて行きました。メニエール先生もこの亡くなった少女の解剖から医学界に内耳障害とめまいの関連を報告したのですが、これまでの学説とは異なったために最初は受け入れなかったのですね。

ひとつひとつの事実を積み上げて科学的な見地は定着してゆくのでしょうね。 偏見無しに事実を観て行く目が新しい発見には必要なのでしょう。今も昔も変わらない真理ですね。

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