クラクフから南東15Kmにヴィエリチカという小さな町があります。ここは町の美しさのための観光地ではなくて、地下が重要な観光地となっています。
1250年から1950年代まで稼働していた、世界有数の岩塩採掘場がこの町の地下には編み目のように広がっています。この規模や美しさから1978年に世界遺産に登録されています。
ヨーロッパにはハルシュタット(ハルはケルト語で塩、ショットはドイツ語で場所)やザルツブルグ(ザルツはドイツ語で塩、ブルグは町)など岩塩が見つかった場所を中心に町が発展してゆきます。またイタリアの最古の道といわれるビア・サライアは「塩の道」の意味です。
周りを海に囲まれた私達は比較的塩を簡単に手に入れることが出来たため、この重要性を認識出来ないのかもしれません。
人間は塩がなければ生きることが出来ません。人間の祖先はアフリカ起源とされ、これがヨーロッパへと徐々に移動し、白人となって行きます。 しかし人間は塩がないと生きてゆけませんので、人の移動もヨーロッパの海岸沿いに沿って北上して行ったのです。そのため海から遠い内陸部には人は移動できませんでした。
ところがヨーロッパ大陸にはもともと海であった部分が隆起した所があり、その地下には海水が濃縮され、岩塩となって残っていた場所があったのです。
この岩塩を探し出したお陰で人が住めるようになり次第に内陸にも人間が進出することが可能となります。 当時は塩は非常に貴重で金と同じ値段で取引されていたのです。この場所が見つかった国家は岩塩の採掘により莫大な富を得て、町を発展させていったのです。そのため国家は採掘場所を保存監視したのでした。
このヴェエリチカ岩塩もポーランドの国家財政を支えた一つで、厳重に管理されたいました。現在観光客は地下64〜325mの約2.5Kmの採掘場のほんの一部を見学出来る様になっています。それでも巨大ですので迷子にならないためにガイドさんと一緒に入るようになっています。
坑道へは抗夫達も使ったエレベータで降りてゆき、そこからガイドさんと共に2〜3時間のツアーとなります。
後は入り組んだ道や大きな空間を通り奥へと進みます。
最初の空間ですが、補強のための木材以外は全て岩塩です。ちなみに歩きながら壁に付いた手を舐めても塩辛いです

全て塩の結晶で出来上がっています


抗夫達が自分や家族を想い祈りを捧げたのでしょうか

更に奥へそして深くなってゆきます。道も壁も天井も全て岩塩です。

突然、地下の岩塩の採掘場に出来た巨大な空間、聖キンガ礼拝堂がみえて来ます。こんな場所が地下奥深くにあるとは想像出来ませんでした。遠景から眺めるだけで身震いする感動に襲われてしまいます。これも全てが塩で出来ています。

この祭壇も全て塩で出来たものです

天井から吊された巨大なシャンデリアも全て岩塩の結晶で出来上がっています

聖キンガ礼拝堂の側面に彫り込まれた「最後の晩餐」のレリーフも全て塩で出来ています。

地下深くには湧き水が出ますが、岩塩の中をしみ出ていますので、99%の飽和状態の水です。もしも泳いだら、有名なイスラエルの死海よりも軽々と浮くはずです(ちなみに死海の塩分濃度は40%程度です)

この様に高い空間も存在します。

ここの売店で売られていた塩の標本です。塩に含まれるミネラルの量で色合いが違うそうです。まるで水晶のような宝石に見えます。

出口の近くには営業を続けているレストランもあります。この様な所でランチを食べてみたいですね。
地上に出ると直営店もあり、様々な塩の商品を売っていました。高くもないのでここで自分用と友人用のお土産を買って帰りました。
**今回でバルト三国・ポーランドの旅も最後となります。すでに次回の場所も決めております
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