フォト
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

« 手を挙げる(キレる)前に考えよう | トップページ | 今週の生け花(平成29年10月第1週) »

2017年10月 4日 (水)

肺がんの治療法の変遷

今週のFM放送は「肺がん」について説明しました。

肺がんは日本人のがん死亡の1位(男性で1位、女性で大腸癌の次の2位で男女併せて1位)を占めています。 がんになる順位でいうと男性は胃癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌、肝臓癌で、女性は乳癌、大腸癌、胃癌、肺癌、子宮癌となります。

Th_ このことより肺癌が治療に難渋する病気であることが伺われます。肺癌は無症状で進行することも多く、発見時にすでに手術の適応でない方が6〜7割を占めています。 このことが一番重要でしょうが、肺癌の特殊性もあります。

肺癌といっても性質が異なる癌が主なものでも4種類存在します。それぞれが違う治療法を求めらますし、喫煙との因果関係も様々です。

肺癌はまず大きく小細胞肺癌(15%)とそれ以外の非小細胞肺癌(85%)に分類されます。非小細胞癌は腺癌(50%)、扁平上皮癌(30%)、大細胞癌(5%以下)に別れます。

小細胞肺癌は増殖が早く、転移しやすい癌のため、以前よりごく早期以外に手術療法の適応がなかったために、その他の手術療法の重要性が高かったタイプ(非小細胞癌)に分けて考えていました。しかし抗がん剤や放射線療法が効果があるタイプです。

非小細胞肺癌はⅠ期から中期(ⅢA期)までは手術適応があり、手術に加えてその他の化学療法や放射線療法の組み合わせて行われています。進行癌では手術は不可能で化学療法や放射線療法が主な治療となります。

喫煙と因果関係が特に高い小細胞癌や扁平上皮癌は日本においても喫煙率が低下するにつれて今後低下することが予測されています。 いま喫煙とも関連の少ない腺癌が女性の増加と共に問題となっています。手術可能ならいいのですが、最初に書いた通り進行して発見される肺癌が多く、このタイプはこれまで抗がん剤や放射線療法があまり奏効しないことがありました。

この治療に光明が差したのが、分子標的薬、さらにはⅣ期の非小細胞癌に対して「免疫チェックポイント阻害剤」の出現です。 これは癌の細胞が持つ遺伝物質を解析して、どのタイプで効果があるかもおおよそ目星をつけてから治療を開始します。 

この薬剤は一般の方々では高額医療で医療費を圧迫しているニュースで話題となった薬剤で知っていらっしゃるかも知れません。 この薬だけで1年間投与し続けると1人に対し1400万円以上の薬代がかかっています。 肺腫は稀な癌ではなく多くの国民がなっている分、使用する患者数も非常に多くなります。ですのでより国民の医療費の高騰が危惧され、厚生労働省も非常手段として薬剤メーカーに薬価の改訂前に薬の値段を下げさせたほどだったのです。

しかしながら、これまで効果がなかった治療に著功するケースもあり更なる治療薬の開発が求められています。                          Th_40b720f8eab2db2baa336d8f299ba8_2

肺がんの原因として喫煙は大きな要因で、肺がんの発生の関連でいえば喫煙が85%関与しています(上記の腺癌のように喫煙と関連しない肺がんも15%存在します)。1番大きな要因となる喫煙をなくすだけで医療費の高騰を防ぐことも出来ます。

死亡第1の肺癌も早期発見と併せて色々な治療法と組み合わせ、今後日本でも肺癌は低下に転じると予想され、更なる効果のある治療法が出てくるのを望むのです。

« 手を挙げる(キレる)前に考えよう | トップページ | 今週の生け花(平成29年10月第1週) »

医療」カテゴリの記事

コメント

omoromachi様、ご無沙汰しております

肺がんでも色々な種類があるのですね
肺がんの治療よりも高額医療の問題で
話題になったお薬について漠然として
いましたが、これだけの費用がかかる
だけでなく、人数が多いと大変な
問題となるのですね

今回も勉強になりました。いつも
有り難うございます。

院長先生
 こんばんは。
御地でも中秋の名月はご覧になられましたかしら?

 肺がんですが、実は夫が2月に受けた泌尿器科の定期検診で左肺・下葉に転移がみられ、翌日、呼吸器外科へ・・・。先生が「切りましょうかね?」と
おっしゃったそうで夫が「実は家内がアブレーションを受けるので・・・」と申し上げ、
5月に定期検診となりました。2月の段階で私の妹が仕事にしている「清涼飲料」ですが、それを毎日飲むようにしましたら、5月の段階では大きくなっていない、で8月にまた定期検診(泌尿器科)のCTの結果、消えていたのですよ。
呼吸器外科の先生も驚いて夫が飲んでいるものの説明書きをお見せしたら、
「清涼飲料」ですね。こんなこともあるのですね、と驚かれたそうです。
念のために12月にまた検診が入っておりますが、たばこがやめられず・・・です。
一時、ひどかった咳も少し治まってきておりますが、慢性肺気腫もあるのですよ。
まったくどうしようもありません!
長々とすみません。

ツクシンボさん、こんばんは、お元気でしたか?

肺癌の診療で難しいのは、進行して発見される場合が多いのと、癌腫によって治療が複雑になってしまう点にあります。癌の診療は外科がリードして来ましたので、手術が出来ることの多い非小細胞癌と化学療法+放射線治療の小細胞癌を分けて考えることが何十年前よりありました。

次第に増加のある肺腺癌について進行癌で効果のある薬が付くなかったのが現在幾つかの有効な薬が出て来ました。ニュースでも話題になっているように非常に高価なお薬ですので、厳密な適応を限定して使われています。それでも患者さんが多いため国民医療費への負担が考えられるようになりました。

いつも読んで頂きありがとうございます。

マコママさん、こんばんは。

今日は、外来、手術、ラジオ放送、そのご審議会の仕事があり今しがた帰ってきました。中秋の名月・・・すっかり忘れておりました。今、月を見に外へ、雲の間から綺麗に満月が見えました。

ご主人さんの検査の経過はともあれ良かったと思います。CTの画像だけでは肺に腫瘤があっても直ぐに転移かどうか判断は出来ません(大きければ直ぐに分かる場合もありますし、泌尿器科系なら腫瘍マーカーの増加も参考になるかも知れません)。

いずれにしても経過を十分追うようにして下さいね。

マコママさんのお陰で名月を見逃さずに済みました。忙しさで季節を忘れてしまいそうでした。もう少し心に余裕を持たねばと反省しています。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 肺がんの治療法の変遷:

« 手を挙げる(キレる)前に考えよう | トップページ | 今週の生け花(平成29年10月第1週) »