エネルギーの供給源ミトコンドリアの不思議
今日のFMは疲労について話をしました。
慢性の疲労は活性化酸素などが貯まったために起こる現象の1つとも言われています。そのため抗酸化作用のある物質を取る方がいいと・・・巷では言われているのです。
私達は酸素を細胞内で燃焼させてエネルギーを作りだしています。この時に過酸化酸素も発生しますが、通常は抗酸化物質により処理されて消失します。この均衡が破れるのが疲労となるのです。
恐らく、多くの方は酸素を燃やしてエネルギーを造っていると何となく理解出しているつもりでいると思います。では肺で酸素を燃やしてエネルギーを造っているのでしょうか?・・・この辺になると「???」マークが付くことになるのではないでしょうか?
肺では酸素を取り入れて、二酸化炭素をはき出しています。その取り入れた酸素は血液に入り全身をくまなく流れます。 この酸素は私達の体にある60兆以上という細胞の一つ一つにに取り入れられることで生命を維持しています。
生命を維持するためにはエネルギーが必要となります。実はこのエネルギーを造り出しているのは、皆様方も聞き覚えのある「ミトコンドリア」という細胞の中にある非常に小さな器官なのです。
私達の細胞の一つ一つの中に、沢山のミトコントリアが入っていて、細胞に必要なエネルギーを酸素と化学合成(もの凄く沢山の工程がありますが私も詳しく知りません)をすることで、細胞のエネルギーを絶えず造り出しています。
食事や水を飲まなくても直ぐに命は付きませんが、酸素が止まる(呼吸が止まる)と数分で細胞の中のミトコンドリアでエネルギーが造れなくなり、細胞が死んでしまうのです。
私達の何兆もある細胞の一つ一つに数十から何十万のミトコンドリアが存在しており、単独の組織としては最大で人間の体の10%を占める強大なエネルギー産生工場なのです。体重60Kgの方ならミトコンドリアだけで6Kgあるのです
さて、私達の細胞の中には両親から受け継いだDNAが入っていて、それによって分裂などを行うのですが、実はミトコンドリアにも自身をコピーするDNAがあるのです。
細胞の中には両親から半々に受け継いで、私達の体を作っているDNAがあります。一般的に遺伝情報をもっている細胞核のDNAはこのことを指します。しかし、ミトコンドリアは独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を持っているのです。 何となく細胞の中に細胞があるようなものです・・・普通は考えられません。
これは、地球上の生物の進化の中で、ミトコンドリアのDNAが私達の細胞の中に紛れ込んで共生した状態となったからなのです。
地球の始まりは、酸素のない状態でした。30億年前に、酸素を造り出す生物が現れることになります。酸素が出来ることで地球の環境は一変します。しかし酸素は実は生物にとっては有毒となる危険なものなのです。 ミトコンドリアの祖先はその環境の中で酸素を水に変え、酸素を利用してエネルギーを生みだす力を備えました。
ある時にウイルスと同じ様な形で地球の生物の細胞に入り込んで来たのです。酸素のある環境で進化しなければならない地球の生物の細胞は、危険な酸素を利用してエネルギー造り出すミトコンドリアに場所を提供することで、彼らの造ったエネルギーを利用するという、win-win の関係が生まれたのです。
ミトコンドリアは私達の体を乗っ取るのではなくて、ひっそりと主張せずに共存していったのです。ですから私達の細胞の中には種の遺伝子情報以外に、自身の遺伝子を持っているミトコンドリアが存在することになったのです。
面白いことにミトコンドリアの遺伝子は母方の遺伝子だけを引き継ぎます。そのことを利用して人類の祖先を辿ってゆくと、アフリカを起源とした1人の女性に突き当たります。これをミトコンドリアイブと呼んで、私達全ての人類の共通の母親だと言われているのです。
エイリアンのようなミトコントリアは実にユニークな存在なのです。
« 世界を夢みて 40 : 聖ニコライ教会 死のダンス | トップページ | 今週の生け花(平成28年12月第3週) »
「医療」カテゴリの記事
- 「バテる」とはどのようかことか?(2024.09.04)
- 尿管結石が出来やすい条件とは(2024.08.28)
- アニサキスの食中毒(2024.08.14)
コメント
« 世界を夢みて 40 : 聖ニコライ教会 死のダンス | トップページ | 今週の生け花(平成28年12月第3週) »
omoromachi様、おはようございます
ミトコンドリアの名前久々に聞きました
一瞬「ミドリムシ」と勘違いしてしまい
ましたが・・・私の知的レベルが分かります
ミトコンドリアの遠い祖先は、違う生き物で
まさしく私達の体内に入り込んで共生
したとのことなのでしょうか?
まだ分からないことは沢山あるのですが
細胞の中にもう一つの細胞、
私のからでも二つの生き物から
なっていると考えると不思議な気に
なります。
本当にいつもためになる情報
有り難うございます。
このブログのお陰で医療が
身近になっています。
投稿: ツクジンボ | 2016年12月15日 (木) 08時41分
ツクシンボさん、こんばんは。
ミトコンドリアとミドリムシですか? 何となく名前がにていますし、両方とも生物の教科書に出て来そうですものね
人間のDNAを調べていると、ウイルスの感染後にDNAに取り込まれてものもありますので、このミトコンドリアも何かの転写で細胞内に入り込んだと思いますし、これがなければ宿主の私達の細胞も生きてゆけなかったのですから、共生以上かも知れません。
ミトコンドリアの凄いのは自己主張を余りせず、宿主の細胞に危害を加えなかったことや、これ以上数を増やすこともしなかったからなのです。
ミトコンドリアだけでも一冊の本以上の面白い部分か書けるぐらいあるようです。実にユニークな存在です。
投稿: omoromachi | 2016年12月15日 (木) 19時30分