魔女の一撃(ギックリ腰)
厚生労働省は毎年色々なアンケートを実施しています。私達医療人にも関わりが高い国民生活基調調査の中で、自覚症状の統計があります。これは病名ではなくて、国民が日常生活や病気、怪我などで実際に感じている症状についてアンケートした結果です。
公表された最新のデーターは平成25年版で、それによると、男性の場合の自覚症状は多い順番に①腰痛 ②肩こり ③鼻がつまる・鼻汁が出る ④咳や痰が出る ⑤手足の関節が痛む となっています。女性では①肩こり ②腰痛 ③手足の関節が痛む ④体がだるい ⑤頭痛 となっています。いずれも関節に関しての訴えが多く、腰痛が全体で一番多いことがわかります。
米国人のはっきりとしたデーターを捜せませんでしたが、一番多い症状は頭痛と言われています。腰痛を訴えるのは15〜30%で日本人に比べて低いようです。痛みの場所に関してもある程度人種差やライフスタイルの違いが関係しているかも知れません。
上記アンケート調査での日本人の訴えは慢性的なことだと思いますので、腰痛の中でいわゆる慢性腰痛をさしていることが殆どと思います。腰痛は多くの日本人が感じていることですが、実は正確な診断がつくのは15%程度で、残りの85%は明かな原因を絞れない状態なのです。
私達の腰回りは 体を支える大黒柱の脊椎(腰の部分は腰椎)、周りの様々な筋肉、神経、結合組織、皮膚などからなっています。 上半身を支え、前後左右の運動をしなければいけません。 腰は姿勢を維持するだけでも沢山の努力をしないといけないので、絶えず緊張(ストレス)を強いられている組織でもあります。 この腰回りだけでなく、例えば尿管結石などの泌尿器疾患、生理痛を含めた婦人科疾患、便秘や腸炎などの消化器疾患、大動脈瘤などによる神経の圧迫、さらには精神的な要因でも腰痛として出現することがあるのです。
そのこともあり腰痛の診断、治療、予防などに関しても多岐にわたって賛否両論が出ているのが現状です。 それでも先ずは慢性の腰痛がある場合、整形外科、内科、精神科、泌尿器科、婦人科、外科など様々な分野での診察が必要となることもあります。その中で診断がつけば治療を開始した方がよいと思われます。
急性腰痛の一つにギックリ腰があるのですが、これも一つの病態だけではありません。重い荷物を持った瞬間、捻った瞬間、あるいはクシャミをした瞬間など様々な動作で、急激に腰の痛みを生ずる病態をさしています。
ヨーロッパなどでは「魔女の一撃」と呼んだりしています。確かにこの方が痛みが伝わって来そうです。 骨、椎間板、筋肉、腱膜などに発生した急性炎症ですので、炎症を起こした時の鉄則、安静、アイシング、固定が重要です。痛みが和らいで来ると少しずつ運動を加えて行きます。 痛みが強い場合は何も出来ませんし、生活の質の低下にも繋がります。痛みが強ければ専門外来(ペインクリニック)などで神経ブロックを受けるのもよいかも知れません。
ハロウィンが近づいていますが、魔女の一撃は避けたいものです
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院長先生
こんばんは。
魔女の一撃!!3回も経験あり!自慢にはなりませんね?
1回は当時飼っていた猫に餌をやる時にやられましたよ。
全然無理な姿勢ではなかった思いますが・・・。
繰り返した結果「椎間板ヘルニア」を発症!もう泣きました。
痛くて痛くて約2カ月ほど入院!後はリハビリなどに通いましたが、
現在も月1回ほど通院しております。
腰痛は脳が痛みを記憶?していて治りにくいなどとTVで観た事がありますが・・・。
投稿: マコママ | 2016年10月26日 (水) 22時07分
マコママさん、こんばんは。
こんな痛い思いを三回もされたのですね。ぎっくり腰を経験した友人も、またやってしまったと言っていますので、一人で何度か起こすことがあるようです。
腰の骨を構成する椎体と椎体の間にある軟骨成分の椎間板が、圧力に負けて横に滑り出ることが腰椎椎間板ヘルニアです。周りの神経を刺激して痛みが出ます。
痛みの回路は複雑です。慢性の痛みはそれを脳が記憶していて痛みを助長することが知られています。 痛みが出た場合は早めにペインクリニックなどで痛みを取ってあげるのも後々によい結果が出ることも多いようです。
寒くなるとぎっくり腰が発生しやすくなりますので、これからの季節お気をつけて下さいね。
投稿: omoromachi | 2016年10月26日 (水) 23時50分