フォト

« 何度も繰り返される悲劇 | トップページ | 今週の生け花(平成28年5月第4週) »

2016年5月25日 (水)

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群という疾患があります。慢性的に便秘や下痢を繰り返すも、内視鏡や血液検査などをしても異常を指摘できない疾患群です(今の現代医学で解明されていないだけでもっと違う病態があるのかも知れませんが・・)。

多くの方もストレスでお腹が痛くなったり、トイレに行きたくなった経験はしたことがあるかも知れません。

私達の胃や腸(小腸、大腸)の運動は私達が意識的には調節出来ない自律神経がコントロールしています。この胃腸をコントロールする働きに異常が起こると、便秘や下痢などの排便異常、腸蠕動異常による腹痛、嘔気などが出現します。

Th_hl12_08 この様な病態は日本人では10%程度の方に認められるそうで、頻度が高いのは20〜40代に多く、男女比では2:3でやや女性に多く認められます。男性では下痢型が多く、女性では便秘型が目立ちます。

過敏性腸炎のタイプは①下痢型、②便秘型、③交代型に分かれます。下痢型は突然起こる下痢が特徴です。そのために通勤や通学、あるいは仕事上で支障が出ます。便秘型は腸の蠕動がスムーズに行かずに便が停滞します。コロコロした硬い便となり排便が困難になったりします。交代型は下痢型と便秘型が交互に繰り返します。

潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患や、食中毒や感染症では下痢などが起こりますし、腸の動きの弱い女性では便秘になったりします。 過敏性腸炎の便秘は一般的な便秘と違い、腹痛や腹部不快感を伴い、時に強く、また排便後は症状が軽快します。一般的に食事によって症状が誘発されるも、睡眠中は余り症状がないと言う特徴があります。

「腸は第二の脳」と書いてある文献もあります。以前は胃腸の動きは自律神経が担っていますので、私達の意志(脳)とは関係ないと思われていました。しかし今では脳と胃腸は自律神経やホルモンなどを介してお互いに関連しあって調整する仕組みが次第にわかってきています。「脳腸相関」と言われているメカニズムが少しずつ解明されるようになっています。

解り易い例から説明しますと、お腹が減ると食事がいつ入って来ても大丈夫のように胃腸は活発に動く準備をしています。その時に胃が「ぐ〜」となったりします。胃腸から出されるホルモンや血糖などの推移を感じ取って脳は「腹が減った〜」と私達に信号を送っています。

下痢や便秘などを繰り返しても内視鏡や検査をしても異常が見つからない過敏性腸症候群は脳が感じ取るストレスとの関連が重要と言われています。色々なストレスを受けて胃腸の自律神経に乱れがおこり、胃腸の運動障害が起こっているのです。自立神経が乱れることで頭痛や疲労感、抑うつ気分などの胃腸以外の症状も出てきたりします。Th_img_4243

過敏性腸症候群は胃腸症状が主ですが、その原因にストレスなどの心的要因も多いため、胃腸科のみならず心療内科や精神科とも相談して治療を進める必要もあるのです。

脳腸相関と言う難しいメカニズムは解らなくても、昔から日本人は精神的なことが胃腸に来ることは皆判っていたのですね。日本語で怒っていることを「腹が立つ」「はらわたが煮えくりかえる」とか「腹の虫が治まらない」などと使用し、感情と胃腸が繋がっていると解っていたのでしょうね。 先人達の知恵をもう一度学ぶ必要があるのかも知れません。

« 何度も繰り返される悲劇 | トップページ | 今週の生け花(平成28年5月第4週) »

医療」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、ガルボです。いつもためになるお話を有り難うございます。自信に心当たりがあるお話も多く、大変参考になります。ぽち友さんにお医者様がいらして心強く感じております。これからも宜しくお願いいたします。

ガルボさん、こんばんは。

私の方が外科以外の知識は余り多くないので、自分の勉強のためにも書いています。間違ったことを書くかも知れませんがその時はご了承下さい。

私の方は医者でもその前に「ヤブ」が付くかも知れませんので、余り信じないようにして下さいね

コメント頂きありがとうございました。

こんにちわ。腸の話なっとくです。私も以前便秘に悩みましたが
今は健康です。ストレスに強い人とそうでない人も当然いるでしょうが
どちらかと言えば私はストレスに強いのか?と思うふしがあります
私にも「耐難い苦痛、心配ごと」が何度か来ましたが病気にもならず
今に至ってます人様から見ればそうでもなかった
のかも、知れませんが・・・あと沖縄の事件ほんとうに許せません。
基地の問題は正直よくわかりませんが、沖縄の人が安心して
暮らせることを願うばかりです。

フーミンさん、こんばんは。

今は便秘も解消されて健康体となりましたか
生きてゆく以上色々なストレスに曝されます。フーミンさんも大きな危機を何度が乗り越えて来たのですね。

沖縄での事件事故は後を絶ちません。起こる度に謝罪や綱紀粛正がうたわれます。しかし言葉だけです。何も変わらなかった現実を私は生まれてからずっとみてきたのです。 今回の安部首相とオバマ大統領が会見で示したのは、パフォーマンスでしかありません。 本当になくしたければ簡単です。 「まずは日米地位協定の差別を廃止しましょう」たったそれだけです。2人ならやろうと思えば直ぐに出来ることです。

憲法改定をしようとしている方が、それこそ米国から押し付けられた法律を何故変えないのか、私には不思議です。

過敏性腸症候群、勉強になりました。
どうも私の胃腸も過敏性腸炎①の症状によく似ています。
日本人の10%に該当しますね、でも年齢は該当しなく少しだけ・・かな? オーバーしています。(笑)
自律神経の歯車が上手くかみ合っていないのかも・・? いつもの量よりも多めに食べたり、美味しいものを食べたりした時も①の現象が表れ困っています。(損した気分になります)
草食系の体質になっているのか・・安上りの体に出来上がっているのか、今風にいえばエコ体質になっているのかな?
脳腸相関の今昔メカニズムを読んで関心するやら、笑えるやら・・いつも体の仕組みや働きなど興味を持って読まさせて頂いております。 ありがとうございます。

yasuさん、こんにちは。

yasuさんは①に近い症状を持っているのですね。この方が一番多くて,一番困るのもこの症状だと思います。

ストレスと自律神経の仕組みはまだまだ解明されていないことも多いのですが、先人達は経験から多くのことを知っていたようですね。日本語の表現にも沢山の知恵が隠されているのかも知れません。

yasuさんはエコ体質で地球に優しいのでしょうが①の症状はやはり困ったものですね。
いつも暖かいコメント頂き有り難うございます。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 過敏性腸症候群:

« 何度も繰り返される悲劇 | トップページ | 今週の生け花(平成28年5月第4週) »