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2015年12月 9日 (水)

外科医はお裁縫上手なのか?:血管吻合

今日(平成27年12月9日)のFMレキオは動脈硬化が足に行く血管に起こり、冷感、歩行時や安静時の足の痛み、ひどくなると足が壊死し切断の可能性もある下肢閉塞性動脈硬化症について話をしました。

今日は血管をつなぎ合わせる血管吻合・縫合について話をしたいと思います。 古い時代より戦争などで怪我をしたときに、糸などで傷を縫い合わせることは行われていました。

近代外科学においても、以前ブログにもかいた消化器外科の基礎を築いたウィーン大学のビルロート教授は19世紀後半には胃の切除など消化管を吻合する方法を確立しました。 当時はその先生でも心臓や血管の吻合は行うべきでないと述べていました。 摘出する手術において血管は出血しないように縛る(結紮)ものだと考えられ、優れた縫合糸や抗生剤のない時代に血管をつないでも上手く行かなかったのだろうと想像します。また血管が切れた場合その血流が途絶えるためその部分は死んでしまい元に戻らないと考えた様です。

Th_ 血管吻合への道を創ったある事件が起こりました。1894年フランスのリヨンで当時のフランス大統領が暴漢に襲われ、腹部を刺され、血管が切れた事件が起こりました。当時は血管は吻合しても駄目だと医学会では定説となっていて、手術をせずに大統領は命を落としました。

その病院で働いていたカレル先生は「皮膚や腸は縫えるのだから血管も縫えるはず」と主張したのですが研修医の意見は受け入れてもらえませんでした。その事件を契機に彼は血管の縫合法の研究に没頭します。                    Th_aaa

もちろん当時誰も血管のつなぎ方を教えたり学んだ人はいません。では彼は誰から細かい縫い方を学んでのでしょうか? 

・・・・リヨンは当時綿織物の産地で、刺繍やレース編みの上手な職人が沢山いました。カレル先生はその女性職人から裁縫での糸の通し方や留め方を学んで腕を磨いて言ったのです。

その後カレルは米国に渡り、血管吻合の技術を確立し、大血管から小血管までの吻合・縫合術を成功させました。現在の血管吻合やバイパス術も彼のお陰です。その業績にて1912年に米国在住者として初のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

Th__2 私も時々、手術を終えると「先生は編み物も上手ですか」と聞かれることがあります・・・・「並縫い」「返し縫い」「まつり縫い」「ボタン留め」などは小学校の家庭科の授業で習った気はしますが・・・・自分で作業をやったことはないです。

やってみたら上手いかな? 自分の服ぐらいつくれたらいいですね。リタイヤしたら挑戦してみてもいいかもですねhappy01

血管外科のお師匠さんはリヨンの街の刺繍職人だったのです。 医学の歴史も楽しいですshine

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医療 FMレキオ」カテゴリの記事

コメント

院長先生
こんばんは。
いつもありがとうございます。

外科の先生でいらっしゃるのでやはり手先は
器用でいらっしゃると思います。
血管など細いものの吻合・縫合をされるのですからね。
私も子宮筋腫の手術を受けたので
吻合・縫合をして頂いたと思います。感謝ですsmile

リタイアされたら?手編みsign05や刺繍もいいかも知れませんよ?

マコママさん、こんばんは。

外科医は基本的には手先の器用な方が多いと思いますが、かなり練習を積んで少しずつ上手くなって行きます。上手い下手は持って生まれたものがありますが、アクロバット的なことをやるわけではありませんので、基本に忠実に行うのが一番です。

筋腫の手術をされてのですね。基本的には外科の手術は切って結んで、縫い合わせてですので色々な手技が一連に行われて手術が上手く行きます。

リタイアしたら、ボケ防止に刺繍でもしましょうか(笑)。

こんにちは~

裁縫の技術が医療にも役立つなんて…
意外でした。
私はお裁縫苦手なので、生きているものを縫うなんて想像の向こう側です。

お医者さんにも縫合が得意な方とそうでない方といるんでしょうね。
うちの息子が幼児だった時に瞼の縁に近いところに怪我をしたのですが、近所の外科のお爺ちゃん先生がうまく縫い合わせてくれて、ほとんど痕が残らずにきれいに治りました。
その2年後に、また同じように瞼の縁に近いところに怪我をして同じ病院に行ったのですが、お爺ちゃん先生は既に引退。
跡継ぎの息子のお医者さんが処置してくださったのですが、彼は外科ではなくて内科が専門だったようで、テープで貼って縫合なしの処置でした。
テープの方は傷跡が残ってしまいました。

yuukiさん、こんばんは。

血管吻合にこのような歴史があったことを知ったのは外科医になった後の事です。細かな縫い方は刺繍などをやっている方が参考になったのですね。

縫合は練習次第で上手くなりますが、やはり天性のものもあると思います。 今は切り傷でも浅い部位なら縫わずにテープでいけます。 しかし深い傷の場合は傷を正確に合わした方が綺麗になりますので、細い糸を使って縫合します。

患者さんからはでこぼこではなくて等間隔で綺麗に縫ったりするのをみて、先生裁縫上手いですかと聞かれることが時々ありました。

yuukiさんのところはこれからクリスマスに向けて家の中を飾ったりと忙しくなりそうですね。 寒くなっているようですのでお体気をつけて下さいね。

omoromachi様、ご無沙汰
しておりますshine

私も外科の先生は縫い物が
上手なのかと気になっていました

リヨンの刺繍の職人が
血管外科医のお師匠さん
なのにもビックリannoy

小学校の家庭科で私も
そのような縫い方教わり
ました。なんかomoromachi様
が身近になった気がしました

・・済みません勝手に書いて
しまいましたheart04

ririkaさん、こんばんは。

お元気でしたか?
私も血管外科をやっていたことがあったのですが、血管吻合の基本はカレル先生が実践した手技から派生していますが、それを刺繍職人から学んだことを知ったのは医師になって10年目頃のことでした。

外科の手術は沢山やってきたのですが、自分の服は作ったことはありません。まあボタン付け程度はやりますが・・・coldsweats01

ririkaさんの福岡も寒くなっていると思いますのでお体気をつけて下さいね。沖縄も突然の大雨がありましたが九州は大丈夫でしょうか?

血管吻合には興味を持っていましたし、実際オペをされた我が身、先生の説明で動脈がどのようにして縫い合わさるのかがよく分かりましたが静脈など毛細血管はどうしているんだろう・・? と疑問を抱き続けていました。
一つひとつ縫い合わせるのは不可能ですね。再生されるのでしょうか?
すみません、変な質問をして。

術後の皮膚の状態が綺麗だと腕の良いDr だと思います。omoromachi先生さすがです。

yasuさん、こんばんは。

血管の手術をなされたのですね。
yasuさんの素朴な疑問うなずけます。 勿論繋ぐのは重要な血管だけになります。動脈はそれが流れる組織に酸素や栄養素を運んでいます。河を例にたとえると本流から支流へ分かれて行くと考えてみて下さい。 その支流でも支配地域に水が流れないと涸れてしまいますので、その場合は繋いで流れを確保します。 逆に静脈は小さな支流から雨水を集めて本流へと流れまると考えたら、小さな支流(静脈)がなくてもの問題は起こりません。ですから小さな静脈は繋ぐ必要はなく、出血しない様に結んでしまえばいいのです。

実際問題としては動脈より静脈はアーケードが発達していますので、他の静脈を介して心臓に戻って行きます。 大きな静脈は繋ぎ直します。縫い方は基本的には同じです。

私の場合、腕がいいかどうかは分かりませんが、最後の一頑張りで皮膚も均等に綺麗に縫うように心がけています。

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