唾液の役割
今日のFMレキオは口腔粘膜疾患について話をしました。主に耳鼻咽喉科、口腔外科、内科、小児科で対象となる疾患で、私の外科では外傷、消耗疾患、抗がん剤の副作用などで診ることの疾患です。以前ブログで口内炎の話をしましたので(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-ed13.html )、今日は私達の唾液について書いてみます。
私達は1日に1〜1.5リットルの唾液を出しています。
かなり多量に分泌されていると感じると思います。何故?と思いませんか? やはり唾液がないと口の中は乾燥するでしょうし、唾が出ないのは苦しいことになります。
先ずは唾液の役割について説明します。
①湿潤と自浄作用:常に唾液が流れていることより口腔内の乾燥を防ぎ粘膜を保護します。口の中を清潔に保つ作用があります。僅かですが唾液には免疫物質が含まれ、細菌、ウイルスから守ってくれています。
②食事の咀嚼・嚥下を助け、中和をはかる:ご飯を食べても唾液が出ないとぱさぱさして食べにくいはずです。唾液が食べ物と混ざり合うことで飲み込みやすい塊を形成して嚥下を助けてくれます。 酸性やアルカリ性の食品でも唾液が持つ緩衝作用で一定のPHに保たれるようになり傷害を防いでくれます。
③消化作用:僅かですが唾液中には消化酵素のアミラーゼが含まれます(アミラーゼは主に膵臓から分泌されます)
④脱石灰化作用:口の中では細菌が炭水化物などを分解して酸を作り出します。この酸により虫歯になりやすくなりますが、唾液の中には歯の成分であるカルシウムやリンが含まれていてそれにより酸によって溶け出した歯の表面のエナメル質を補う作用があります。
⑤味覚を助ける:唾液で食物が混ざり舌の表面の味覚センサーに味を届けやすくしてくれています。
では口のどの部位から分泌されるのでしょう。唾液は耳下腺(じかせん:おたふくの時に腫れるところ)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)と呼ばれる大唾液腺と口の中の粘膜に多数ある小さな分泌腺の小唾液腺から分泌されています。
美味しい食事を想像したり、梅干しやレモンなどを思い浮かべるとこの唾液腺から唾液が条件反射的に分泌されます。耳下腺などが収縮することであの心地よい(?)痛みがでます。
自律神経とも密接に関わっていて、緊張状態(交感神経優位)だと唾液は粘稠性で殆ど出ませんし、リラックスした副交感神経優位の状態では唾液は水様性で量も多く出ます。彼女に告白しいようなどと考えていたらきっと口の中は乾燥して滑舌が回らなくなるはずです
唾液が出にくくなる病気の代表としては自己免疫疾患のシェーグレン症候群、更年期障害、薬の副作用、放射線療法後などがあります、詳しくはお調べ下さいね。
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ご無沙汰しております。
今、私は嚥下障害の出ている家族の食事介助に通っています。
おかげさまで、口の中で起きていることの想像ができます。
私自身も20年前に耳下腺腫瘍(良性)の摘出をしました。
味覚が怪しくなっているのは年齢のせいと思っていましたが
、この手術も少しは影響しているのでしょうか?
長く生きていれば家族にも肉体的精神的にいろいろな問題が
起きてきます。
向き合い方を考える時に、おもろまちさまのブログが私にはとても
参考になります。 有難うございます。
投稿: お黒ちゃん | 2015年12月24日 (木) 11時16分
お黒ちゃんさん、こんばんは。
嚥下障害の方の食事の介助は本当に大変だと思います。唾液が上手く出ない場合は咀嚼に問題がなくても飲み込みが難しくなります。食事が十分に取れないとカロリーだけでなくビタミン、ミネラル不足となったりしますので、嚥下は本当に重要な機能です。
耳下腺の腫瘤摘出をなされてのですね。唾液腺の分泌の問題もあるのかも知れませんし、味覚は加齢もそうですが内服などにも影響を受けます。
皆、年齢と共に身体的精神的な衰えがくるものですね。私のブログが少しでも皆様方の参考になっているのであれば嬉しいです。これからも宜しくお願い致します。
投稿: omoromachi | 2015年12月24日 (木) 22時10分