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2014年8月27日 (水)

永遠の手術ビルロート法

今日のFMレキオは胃癌について話をしました。

現在においても(固形)がんの治療の第一は手術をして病巣を摘出することにあります。 摘出を基本にするのですが、消化器に関しては摘出後に消化管の再建という一連の操作が残っています

例えば肺がん、乳がん、甲状腺がん、子宮がん、腎がんなど多くは摘出をすれば終わりですが、消化器は食べ物が通る臓器ですので、つなぎ直さなければ食事がとれないわけです。

Th_ 1881年(明治41年)に胃癌手術で胃を部分的の取って、再建を行う手術で初めて成功した先生はオーストリアの外科医師ビルロート(テオドール・ビルロートChristian Albert Theodor Billroth)でした。 

この手術は胃の十二指腸側を切除し、残った胃と十二指腸をつなぐ手術方法で、彼の名前を取ってビルロートⅠ法と呼ばれています。
残った胃と十二指腸との距離があって直接つなげない時に十二指腸の奥の小腸(空腸)を持ち上げて、胃と空腸をつなぐ術式もビルトート先生が考案し成功したため、ビルトートⅡ法と呼ばれいます。

21世紀の今でも19世紀の手術法が胃の手術の主流です。 色々な手術方法が編み出されていますが、この術式を越えるスタンダードな手術はありません。

もう一つの胃のスタンダードな手術として、Th__2 胃を全部取った時に、一旦空腸を切り離して、切った奥の小腸(空腸)を持ち上げて、食道と空腸をつないで、下の方で切り端の空腸を空腸とつなぐ方法をRoux-Y(ルーワイ)法と呼んでいます。ビルロートⅠとⅡとRoux-Y法が胃の外科の永遠のスタンダードな術式なのです。

昔の先人達は凄いです(100年過ぎても輝いている術式です)。

胃の役割として、食事を貯める、胃液などを出して食べ物を消化し、お粥状に撹拌し、3〜5時間かけて十二指腸に送り込んで、小腸での消化吸収を助けます。更にビタミン吸収に必要な内因子を出すなどがあります。

手術で胃が小さくあるいは全部なくなると、食べ物の貯留能が低下しますので、1度の食事で沢山とれません。 そのためにはゆっくり食べて、少量を何回かに分けて食べる必要がありますし、一気に食べると小腸が刺激されて腹痛や冷や汗などを起こしてしまいます。 人間の体は実に巧妙に出来ています。

(2014/08/27のFMレキオ「いきいきタイム」はこちらから視聴出来ますhttp://www.stickam.jp/video/182354861

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医療 FMレキオ」カテゴリの記事

コメント

omoromachi様、ご無沙汰していました

いつも分かり易い解説、本当にためになります

がんの手術は摘出することしか頭になかったのですが、
消化管は更に再建という手段を追加しないといけない
のですよね。考えてみたら当たり前なのでしょうけれど
言われて初めて気が付きました

イラストもいつも自分で書かれているのですよね。
先生の患者さんへの説明を一度聞いてみたくなりました
きっと判りやすいのだろと思います

いつも楽しく読ませてもらっています
ありがとうございます

ririkaさん、こんばんは。

お元気でした? 最近コメントがなかったので心配していました

いつも励ましのコメント頂き、こちらこそ感謝しています。
今年の九州の天気はどうでした? 日照時間の短い夏だったのではないでしょうか。

私は難しい話は分かりませんで、出来るだけ素人が理解しやすいように、いつもイラストを描きながら説明しています。言葉だけでなくイラストなどを書くことで分かり易いようです。

20代の頃より患者さんが理解出来て初めて説明したことになるんだと自分言い聞かせていました。 その積み重ねが少し役立っていてくれら良いのですが・・・

ririkaさん初め皆様の応援を頂きながら、これからも頑張って行ければと思います。いつもありがとうございます

おはようございます。
胃の病気について,まったくわからなかったのですが
また一つ,ためになることがわかりました。人間ドックで
胃が異常があるとでたことはありませんが,胃についても
健康でいてほしいと思いました。
今後とも健康に気を付けて過ごしていきたいと思います。
ありがとうございました。

nadoyamaさん、おはようございます。

そうですね胃について症状がなければ気にすることはないと思います。若い方で特に萎縮性変化(ピロリ菌感染)がなければ殆どがんにならないと思います。(ただしスキルス胃癌という特殊なタイプはありますが・・)

お忙しい中いつもコメントを頂き感謝しています。

はじめまして。
omoromachiさん、というお名前に魅かれブログを拝見しています。
沖縄では、おもろ(思い)ってことでしょうか?
関西では、おもろ(面白い)って使います。

私は、26年前に肺がん(カルチノイド)の手術をしました。
術後11日目の退院でしたが、消化器系の手術をされた人は、当時1か月近く入院されていました(今はもっと短いでしょう)
先生の昨日のブログで、久々に入院時を思い出しました。

元気な今と健診に<感謝感謝>です。
30日の病院での講演に、出向けないのが残念です。
有難うございました。

こんばんわ!

この間、人間ドックやりました。大方の人は胃の検診は胃カメラでしたが、俺は胃カメラが苦手で透視で行いました。
俺の友人が春先に、胃がんの手術やりました。その前に内視鏡手術したのでしたが、再度の手術となったようです。
以前に透視でやったときに、ひっかかりました。再検査したら、胃潰瘍の跡が残っていたとのことでした。これは、ずーっと残るものでしょうか?きょうの解説を読ませて頂き、そんなことを思いました。
今後も読ませて頂きます。

神戸のomoroおばさんさん(←さんが二回続いてしまいました)、はじめまして。

現在病院が建っている場所を含めて戦後、那覇市内の広範囲の土地が米軍に強制接収されて、金網の向こうにありました。昭和62年に返還されその後、整備を進めるにあたり中心部の地名を公募し、沖縄の古語にあたる「おもろ(思い)」から名付けた「おもろまち」が採用されています。

よく関西の方から「何か面白いことがあるのですか」と尋ねられることもあるのですよ

26年前に肺カルチノイドの手術をなされてのですね。今、元気でお過ごしとのことですのでなによりです。

ホームベージもみて頂けたのでしょうか? 8月30日は当院で琉球大学の市民向けの公開講座があります。今回は緩和医療がテーマです。 私は30年近く外科をやって来たなかで、がんを告知された時の心の動きやその後癌と向き合うにはどうしたらよいのか、正しい情報を得るにはどうすればよいのか、またこの30年でのがんに対する考え方や治療法が変わってきたことも話が出来たらと考えております。

神戸のomoro様、コメント頂きありがとうございます。


でんでん大将さん、こんばんは。

人間ドックを終えたのですね。結果の通知はまだなのでしょうか? バリウムによる胃の透視は影を見るようなものですので、以前潰瘍を患ったことのある場合は、その部分が治るときに周囲の粘膜を引きずって治るためバリウムにもこの影が映ることもあります。 多くは良性と判断出来ますし、以前の画像が残っていれば比べることも可能かと思います。

もし今回も再検となるようでしたら、次回から細いカメラで鼻から挿入する方法(経鼻ファイバー)を試してみるのも良いかもしれません。 挿入時の「オエッ」となるのが少なくて楽かと思います。
そして御友人様が順調に回復していることをお祈り致します。

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