琉球王国と進貢貿易
先週、甲状腺ホルモンを作る原料のヨードに関連して、琉球王国時代の貿易の話を思い出したので書いてみます。
沖縄料理には沢山の昆布が使われています。 何故昆布が取れない沖縄が、全国一の昆布消費県になったのかについてお話しします(医者としての想像で書いているところもありますので、間違っているかも知れませんが、興味がお有りなら調べて下さいね)
1400年代からの琉球王国は中継貿易として大きな発展を遂げます。日本本土は勿論、中国、朝鮮は言うに及ばず、遠くはマラッカ海峡を越えてタイまでの貿易ルートを持っていました(泡盛の好きな人は判るのかも知れませんが、泡盛の原料はタイ米です)。
その中で大きなウエイトを占めるものに進貢(しんこう)貿易がありました。琉球王国と中国間の公貿易のことで、中国皇帝への進貢(朝貢)を名目として行われたそうです。 進貢船は皇帝への貢物(馬、刀、硫黄、貝、錫、南方産の蘇木や胡椒、香 木など)のほかに、昆布など一般貿易品を輸出し、皇帝(中国)からは金や絹織物などの頒賜品や鉄などの材料が輸入されました。
一般貿易でも多大な利益を上げることができ琉球王国の大きな財源となりました。 1609年に薩摩の侵攻を受け、薩摩が琉球を支配しますが、表面上は支配したことにせず中国に対してこの進貢貿易を続けさせます。 大きな産業がなく、財源の少ない薩摩藩にとっては、重要な収入源となり、財政破綻寸前だった薩摩藩が幕末・明治維新に活躍できたのは、琉球を支配したためだったとも言えるのです。
さて最初の昆布の話しに戻します。中国は北京にしろ南京にしろ、沿岸部から遠く離れた場所にあります。交通手段の発達していない当時、新鮮な海産物は内陸部の人々には届きませんでした。 ヨードが不足して甲状腺機能低下症になると元気が出ない、むくみ、除脈、心肥大などを引き起こすことになります。そのためヨードの入った漢方薬などは金と同じ値段で取引されるだけの価値があったのです。
昆布は乾燥させ日持ちする食品です。ヨードもたっぷり含まれています。沖縄では取れませんが、当時、大阪で北海道からの昆布を取引し沖縄に持ち込みます。 これを進貢貿易として、ヨード製剤を渇望している中国と取引をして莫大な富を得たのです。 進貢貿易の後半では取引の殆どは昆布で成り立っています。
中国は琉球を属国と見なし大国の権威を示すために、安い昆布を買って、大金を与えていたということが言われていました。 しかし医者の自分からすると、当時の昆布は慢性の甲状腺低下症になっていた中国内陸部の方々にとっては金と同じぐらいの値打ちのある食品(薬)だったので、当然その値段を付けただけだと思っています。
沖縄ではこのような背景もあり、多量の昆布が大阪経由で入港し、一般庶民にも比較的手に入りやすくなりました。その後沖縄で取れない昆布は琉球料理にとっては欠かせない食品となったのです。
色々な歴史があって今があるのですね。今を大切に、そして未来を共有出来たらいいですね
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omoromachi様
沖縄では確かにとれない昆布が
当たり前の料理の材料として
必要ですね。歴史は長いのですね。
投稿: nadoyama | 2014年7月15日 (火) 20時11分
nadoyamaさん、こんばんは。
普通、地元の料理には地域の特産品が使われる事が多いと思いますが、沖縄の昆布だけは遠い北の方から食材が使われていますね。沖縄が1人当たりの昆布の消費量がダントツです。
ブログの内容もあると思いますが、豚肉料理などと組み合わせると、カロリーも少なくミネラルも豊富な昆布は沖縄料理とよくあっているかも知れません。
沖縄は小さな島ですが、そこから日本のこと世界のことが沢山見えてきますね。
投稿: omoromachi | 2014年7月16日 (水) 00時06分
omoromachiさん、おはようございます
前回の甲状腺の話しも面白かったですが、
今回は沖縄の歴史にも関わる壮大な話で
とても興味がわきました
幕末や明治維新頃の薩摩の活躍の
裏に沖縄の貿易があったのには
ちょっとびっくり
今回もためになりました、また
沖縄に旅行に行きたくなりました〜
投稿: ririka | 2014年7月16日 (水) 08時06分
omoromachiさん おはようございます。
私はプロフィールにある様に道産子です。
北海道の昆布がこの様に進貢貿易として中国に行っていたのは知っていましたが
薬用としての意味が有ったのですね。恥ずかしながら知りませんでした。
先日、北海道に行って来ました。羅臼の海岸で昆布を干す場所の比較的大きな玉砂利を圧接した所を歩いてきました。
そのこともあり、興味深く読ませて頂きました。
投稿: yanbaru(やんばる) | 2014年7月16日 (水) 08時41分
ririkaさん、こんばんは。
私の様な歴史の素人が普通に話をしても面白くないと思い、甲状腺と絡めて昆布の貿易、進貢貿易について書いて見ました。 間違っているかも知れませんが、何となく私なりに解釈しています。
薩摩に支配されたことが悪いとか良いとかを話しているのではありません。 何事も歴史のせいにするのではなくて、今あることに感謝することからはじめなけれならないと思っています。
以前冬に沖縄を訪ねたことが書いてありましたが、今度は思いっきり夏の沖縄も経験して下さいね
投稿: omoromachi | 2014年7月16日 (水) 20時49分
yanbaruさん、こんばんは。
道産子のyanbaruさんも、北海道の昆布が進貢貿易に使われていたのはご存じだったのですね。 沖縄に住まわれて長いでしょうから、沖縄料理もよくご存じと思います。
昆布をダシではなくて、野菜のように食べるのも沖縄らしいと感じるのではないでしょうか? 料理の研究者からすると脂っこい食材とさっぱりとした昆布は組み合わせがよいようです。 その事も沖縄で取れない昆布が一人当たりの消費量が日本一になった原因かも知れませんね。
そうでしたか、北海道の天気はどうでしたでしょうか? 沖縄の暑さと直射日光になれるのは大変かも知れませんね。
投稿: omoromachi | 2014年7月16日 (水) 20時59分