睡眠時無呼吸について
今日(平成26年4月30日)のFMレキオはイビキと睡眠時無呼吸症候群について話をしました。以前イビキについてはブログに書きましたので(http://omoromachi.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-ecd8.html )、今日は睡眠時無呼吸症候群(SAS)について記します。
睡眠時無呼吸症候群はその名の通りですが、その定義は無呼吸(10秒異常の呼吸の停止)が頻繁に(1時間に5回以上)起こり、昼間の眠気など様々な症状が引き起こされる病態をよんでいます。
本人は気づきませんので、無呼吸状態になると、周りの家族が心配し、このまま呼吸が止まるのではないかととか、よく窒息して死んでしまうのではと心配され来院します。そのようなことは普通ありません。
しかし、無呼吸が続くと脳が短時間目覚めて(覚醒反応:本人は覚えていない)、息を吸えるよう努力するのです。 それは無呼吸から身を守る覚醒反応で一晩に数百回もおこると、睡眠はとぎれとぎれの質の悪いものとなります。
例えば普通に寝ている方の、鼻をつまんで息が出来ないようにして、動いたらはなしてを繰り返す様なもので、SASの状態は拷問みたいなものなのです。それを想像するとこの病気の怖さが理解出来ると思います。
如何でしょう?・・一晩寝ても、熟眠が得られないため、朝起きたとき頭が重く、昼間も眠気が強く、集中力がなくなります。このような状態では交通事故の危険性も数倍高くなることが報告されています。その他の症状として、夜間の尿量・回数が多くなること、夜間発汗が多い こと、寝相が悪いこと、性欲が低下することなどがしばしば見られます。
それよりに怖いのは合併症です。 無呼吸のため酸欠状態になり、心臓や血管系に負担がかかり、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などになりやくなります。無呼吸回数が1時間に20回以上の場合、5年間放置すると十数%の人がこれらの合併症で危険なことになるというデータがあります。これらの合併症には無呼吸と肥満の両方の要因が関係しています。
ただ日本人で注意しないといけないのが、欧米人のSAS患者さんは肥満が殆どですが、日本人の中には顎が小さい(小顎症)ため、気道がふさがれやすく、やせているのにSASである方もいらっしゃいます。
SASの患者さんは正常者に比較して、高血圧は2倍、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞などの心臓病)は3倍、とくに習慣性の強いいびきがある場合の方の心筋梗塞発生頻度は4倍、脳卒中は4倍、さらに日中眠気に襲われたり、集中できないため、交通事故は7倍多くなるとと報告されています。
中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群は重度に死亡率が大幅に上昇します。厚生省研究班の調査では、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が20回以上おこる場合の5年間の死亡率は16%と報告されています。8年で死亡率40%という報告もあります。これは平均寿命にして約7年短くなると言います。死因は脳梗塞、心筋梗塞など。睡眠中や朝方に死亡する例が多いとされています。
たかがイビキでも睡眠時無呼吸の状態になると危険を伴うことも了承して下さい。いつもながら脅してしみません
(2014/04/30のFMレキオ「いきいきタイム」はこちら視聴出来ますhttp://www.stickam.jp/video/182300066 )
« 老老介護事故判決・・それはないのでは | トップページ | 憲法記念日に »
「医療 FMレキオ」カテゴリの記事
- ジカウイルス感染症:ジカ熱について(2016.03.30)
- 地震、災害時の医療トリアージ(2016.03.23)
- 高齢者では男性も骨粗鬆症に注意(2016.03.09)
- 日本人の体型は良くなったのか?(2016.03.02)
- 人間はなぜむせてしまうのでしょう(2016.02.24)
勉強になります。
以前、体重が90kgぐらいありました。その当時は、妻から「しょっちゅう息が止まってるよ」と言われていました。今は67kgぐらいになり、その症状は治まっています。
投稿: 丸に橘 | 2014年4月30日 (水) 22時01分
丸に橘様、こんばんは。
イビキは口の中の咽頭部での空気の振動音です。元々イビキをかく方が体重増加と共に口の中のお肉もついて更に狭くなり、睡眠時に閉塞状態となるため息が吸えないくなり無呼吸になります。
90kg→67kgになったおかけで、命が伸びたと思いますよ。指摘してくれた奥様に感謝ですね。
後は頑張って維持して下さいね
投稿: omoromachi | 2014年5月 1日 (木) 00時35分
私は2年半前にSAS重症と診断されて、現在は毎晩CPAPのマスクを装着して寝ています。おかげでAHIが45から2.5に激減し改善しました。装置を装着すれば正常者と変わらないレベルになりました。
私の場合は自覚症状があって病院を受診しましたが、あごが小さいのが原因だと思っています。SASを放置しておくといろんな怖い合併症があるんですね。早めに受診して対策が取れて良かったです。毎日のマスク装着が結構面倒ですが。
投稿: いちろ | 2014年5月 1日 (木) 23時56分
いちろ様、こんばんは。
重症のSASと診断されて、CPAPをしているのですね。
治療を受けているのはとてもよいことだと思います。装着の違和感があって止める方もいますが、私はデーターを示したり、夜中に拷問を受けているようなものですという話をさせてもらっています。そして再度呼吸器内科の先生の受診を勧めています。
日本人の場合は肥満でなかったり、若い方でもいます。 比較的若い方で脳出血や心筋梗塞の既往の方が重症のSASだったことも経験していますので、早期診断・治療が重要だと思っています。
面倒くさいでしょうが、頑張って継続して下さいね。
投稿: omoromachi | 2014年5月 2日 (金) 00時53分