ビタミンB1欠乏症:脚気について
今日のFMレキオはビタミンについての第1弾と言うことで話をしました。
ここではビタミンB1欠乏症の脚気について説明します。(非常におおざっぱな話ですので細かいところは違うのかも知れませんがご了承下さい)
ビタミンについてはその存在が発見されてまだ100年しか経ちません。 脚気は日本人にとって結核と共に不治の病と言われていました。 当時ビタミンについては誰も知りませんでしたので、脚気による死亡者が莫大でも、その原因は不明のままでした。 有史以来あった病気でしょうが、皮肉にも脱穀技術が進んだ江戸時代以降急速に増え国民病とまで言われました。
当時の食生活は副食も殆どないのに、ビタミンを始め色々な栄養素を含んでいた糠の部分も精白し、白米にすることが出来る様になったため悲劇が起こったのです。
健康な人でもおかずを食べずに白米だけを食べていると脚気になります。ハトやネズミを白米だけで飼うと1ヶ月以内に痙攣を起こして死んでしまいます。
脚気は今では殆ど診られなくなりましたが、ビタミンB1が欠乏すると、手足のしびれ、動悸、むくみ、食欲不振が現れ、進行すると歩行困難となり最終的には心不全で死亡します。 脚気は明治から大正にかけて日本人の死因の上位を占め、特に日露戦争では戦闘による死者の10倍以上の兵士を脚気で失います。
明治時代の軍隊において、海軍と陸軍では対応が異なり戦死者に差が出ました。 陸軍の軍医総監はドイツ留学から帰国した森鴎外で、鴎外は脚気の原因を細菌感染と考えて研究を進めました。それに対し海軍軍医総監の高木兼寛は、兵士の食料に注目し、疫学的に白米だけでなく麦などを食べる方が脚気が少ないと判断し、栄養学の点から改善を行います。 当時高木の考え方は医学界では受け入れませんでしたが、その対応の違いにより陸軍と海軍では脚気による死者の数で大きな開きが出たのです。
文壇でも有名で、最新のドイツ医学を学んだ森鴎外も、柔軟に対応する力を持っていれば脚気による死者を減らすことが出来たかも知れません。それから何十年かたった1912年に世界で初めてビタミンが発見されたのです。
脚気は昔のことと思われるかも知れませんが、インスタント食品など非常に偏った食生活の学生さんなどで脚気になる方もいますので、今でも気をつけなければならないのです。
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ビタミンの話し面白かったです。脚気は足の病気ではなくて最終的には心不全でなくななったのですね。ビタミン不足で人が死ぬなんてなんか不思議な気がします。
森鴎外と高木兼寛のお話も面白く、戦争する前に先ずは食を満たさないといけませんね。
追記:FMレキオの放送も面白かったです。特に尾崎豊のファンとしては音楽もよかったです
投稿: miyaakino | 2014年3月 6日 (木) 08時10分
はじめまして。
ココログ広場ではお世話になってます。ありがとうございます。
脚気、という病気があることは、NHKの大河ドラマ「風と雲と虹と」(古いですが・・)で
始めて知りました。
足の病気だと思っていましたが、死にいたることもあるんですね。
全くの知識不足でお恥ずかしい・・・。
陸軍と海軍で、そんな食糧対策の違いがあったのですか。
またひとつ、知ることが出来ました。
投稿: ナニワ | 2014年3月 6日 (木) 10時30分
miyaakino様、こんにちは。
「脚気」と言う病名に脚(あし)という漢字をあてていますので、何となく脚の病気と思われている方が多いと思います。
森鴎外は超エリートで、医学界でもいわゆる東大派閥で高木先生を一段低い身分として扱っていることがあったようです。だた脚気の解決に対してはやはり高木先生は世界から評価され、日本での地位も最終的には男爵となり鴎外先生よりも高くなったようです。
時代は予期せぬことで変わってしまうのかも知れませんね。
投稿: omoromachi | 2014年3月 6日 (木) 13時24分
ナニワ様、こんにちは。
私は残念ながらテレビを殆ど見たことがありませんので「風と雲と虹と」こと知りませんでした。このドラマの中で脚気が出て来たのですね。
脚気は全身に影響を及ぼす病気ですが、特徴的なのは脚の症状ですのでその名前がついたのかも知れません。
ビタミンB1欠乏により多発神経炎の状態となり、足部しびれや熱感、痛みなどが現われ、進行すると手足の感覚障害が強まり、筋力低下や筋萎縮が起こります。この様に歩行障害が起こると陸軍の歩兵などではまず戦闘が不能の状態となりますし、原因も判らなかったのですからこのまま悪化し心不全で亡くなってしまったのですね。
ビタミンの存在すら知らなかった昔は脚気は怖い病気だったのです。
コメント頂き有り難うございます。これからもよろしくお願い致します。
投稿: omoromachi | 2014年3月 6日 (木) 13時53分