現代の医療において放射線診断は欠かすことが出来ない検査となっています。骨折や心筋梗塞、脳卒中など診断だけでなく癌の治療などにも使われています。今日のFM放送「いきいきタイム」は放射線被曝についてお話をしました。以前も書きましたが再投稿となります。
放射線被曝と聞くと日本では医療被曝や原爆による被害を思い浮かべるかも知れません。医療利用に関しては「効果や有効性があるだけでなく安全性が担保されなければ利用することが出来ない」と言う大原則があります。
薬もそうですが、副作用がない薬はありません。しかしながら様々のデーターをもとに「効果>>副作用」が判明したのが医療薬として認められています。今回のテーマの放射線も被曝というデメリットがありますが、診断や治療に有効というメリットが高い場合に使用が出来るのです。
日本はヨーロッパ諸国と比べてCTの普及率と使用率が高く、医療被曝によるがんの発生が多いのではないかと指摘が以前からありました(最近のデーター(何処で読んだかはっきりしませんが🙏)では米国では1台のCTの稼働率が高く、人口比で言うと米国のCT利用率が高いとのこと)。
・・・では日本人の放射線検査(治療を含めて)でがんが増えたかどうか?・・・結論から言うと「そうではない」ようです。
では、<実際の医療における放射線被曝量は>どれぐらいかと言うと、
①撮影の条件によっても、多少異なりますが、胸のレントゲン撮影では、0.05mSV。胃のバリウム検査では、2.0mSV。頭部のCTでは0.5mSV、胸部のCTでも3.0mSVといったところです。(mSV:ミリーシーベルト:放射線の量の値です)
・・・これまでの原爆による影響や原発事故或いは放射線装置のソフトのミスによる医療事後(米国)などから、人体に対する影響が分かっています。
②人体に影響が出る放射線量は、年間200mSVまでは人体に影響がない値となっています。私達のように放射線検査や治療を行う医療従事者は毎月放射線測定パッチを着けて毎月の放射線被曝量を測定し、年に2回の採血や視力検査、皮膚の状態などが法律で義務づけられて行っています。
放射線に携わる医師や放射線技師、看護師などの職業人などの年間被曝線量は安全の確保からも上限が50mSVまでと定められています。
②のことを頭に入れて①の検査時の放射線量を考えると、一般の方が受ける検査での放射線の危険度は高くないと言える訳です。だからといって不必要な検査を受けるべきではありません。
<自然界から受ける放射線量>
・・・外来にて、以前結核を患ったことのある患者さんに、ここ2〜3年胸部レントゲン(被曝線量は0.05mSV)を撮っていませんので(結核後のことやがん発生のことを念頭に)レントゲンを撮りましょうかと説明したところ「被爆したくないのでいいですと」答えられました。時々過度に放射線を怖がる方がいますが、私達は実は周りから年間約3mSVの放射能を浴びています。これは防ぎようがありません。
胸部レントゲンの被爆が怖くて検査を拒否した方は、実は胸部レントゲンを年間60回撮影をしたのと同じ量を自然界から受けているのです。
私達は何もしなくても年間3.0ミリシーベルトを自然界から受けています。これが多いか少ないかは医療被曝の量と照らしあわせて下さい。 自然放射線による被爆についてどこから放射線を受けているかを今回は主に記載したいと思います。
(1) まず 宇宙より放射線が飛んできます。
地球には、常にいろいろな放射線が宇宙より降り注いでいます。宇宙線は、海抜高度によって変化します。だいたい,1500m上昇するごとに約2倍になると言われています。
(2)続いて 大地より
大地からの放射線の源は,地球内部に含まれる放射性の核種です.それらは約45億年前につくられ,大地に含まれるウラン、トリウム、カリウム40(K)などの自然の放射性同位元素です.
(3)そしてもう一つ 「食物より」
飲料水中に含まれる自然放射能には、ウラン、トリウムなどでこれらは非常に微量ながら存在します。食事と水をとっている限り体内被曝を浴びていることになります。
(1)、(2)、(3)のように自然界から受けて来た放射線量は人類発生時から受け続けていて現在があるわけです。毎年自然界から放射線を3mSVを受け続けて人類は進化したのです。
無駄なレントゲン検査を受ける必要はありませんが、過度に不安がる必要もありません。専門家ではありませんが、皆様も心配しないで、検診を受けていただいて、水もお食事も普通にお取りになって下さいね😊
事後以外では制御可能な医療被曝と違い、原発事後や原爆の影響は制御不可能でその影響は半永久的に続く事もあり得るのです。人類が使用する放射線は人類史か制御することも出来ません。放射線を賢く利用出来るがどうかは人間の心の問題なのかも知れません。
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